ライト文芸 余韻 小説一覧

6件
1

【短編021】 視線:見えないものを見つめる猫と少女

祖父を亡くした茜が実家に戻ると、そこには年老いた黒猫・ハルだけが変わらず残っていた。仏間で一点を見つめ続けるハルの不可解な行動に、茜は次第に「そこに何かがある」気配を感じ始める。しかし、その視線の先にあるものは誰にも見えず、語られることもない。喪失の静けさの中で、人と猫だけが共有する“見えない何か”を描いた掌編。
2

A Memory of an Angel | 三題噺Vol.20

孤独に戦い続ける天使。 役割を果たすだけの日々に、ひとりの人間との記憶が残っていた。 淡々と過ぎる日常に生まれた、わずかな綻び――。 それは天使をも変えていく。
3

【短編015】 残響:犯人は、十年前に死んでいた

被害者は三人。 証拠は完璧だった。 指紋、DNA、監視カメラ映像――。 犯人を特定するための材料は、最初から揃っていた。 ただ一つ、おかしな点を除いて。 容疑者は、十年前に死んでいた。 捜査を進める刑事・澤木が辿り着いたのは、故人をAIで再現するサービスだった。 孤独を埋めるために作られた“死者との対話”。 被害者たちは皆、同じ人物を再現していた。 そして死亡前夜、そのAIから最後にこう告げられていた。 ――「待ってるから」 記憶は人を救うのか。 それとも、どこかへ連れていくのか。 死者の残したデータと、残された人々の孤独が交錯する、静かなSFミステリー。
4

鉱石少女に手向けの花を

原因不明の現象「寄生鉱石」。 ある日、少女の肉体を侵す。 皮膚が。筋肉が。内臓が。 少しずつ、鉱石へと変わっていく。 感染はしない。治療法もない。 発症した理由も、終わる日も、誰にも分からない。 各話で少女は違う。 鉱石の種類も、視点人物も、社会の反応も、毎回異なる。 しかし物語の終わりに、必ず一輪の花が手向けられる。 鉱石は変容を象徴する。花は、人の感情と祈りを担う。 人は何を美しいと呼ぶのか。 何を崇め、何を恐れ、何を消そうとするのか。 これは鉱石になりゆく少女たちの寓話連作であり、彼女たちを「見る」人間の物語でもある。
5

【短編044】 キーボード:ハルの重みだけを頼りに、書いていた。

深夜、奈央は三週間ぶりに管理画面を開いた。 怖くて、ずっと確認できなかった。膝の上で眠る猫のハルだけを頼りに、誰にも言えないまま書き続けてきた夜のことを、誰かに説明する言葉は、まだなかった。 数字が表示された。ゼロじゃなかった。 ただそれだけのことが、体の重心に近い場所に、静かに落ちていった。 書くことの孤独と、届くことの静かな衝撃を描いた短編。
6

『聖女が夜に溶けるまで』―パンの香りとともに―

地方都市の古いビル,その地下1階にある小さなベーカリー。22歳の見習いパン職人,木村詩帆は,深夜2時から朝6時まで,一人で仕込みをしている。変わりたいと思いながら変われない。前に進まなければと思いながら,足が動かない。それでも毎晩,粉を量り,水温を測り,生地を捏ねる。繰り返しの中に,自分を,かろうじて,置いている。 ある深夜,シャッターを叩く音がした。光が見えたから,と言って現れたのは,同じビルの4階に住む,名前も職業も知らない男だった。眠れない夜に外を歩いていると,この地下の光が見えて,立ち止まれるのだという。詩帆はパンを売った。それだけのことだった。 それから,彼は週に3度,深夜に来るようになる。パンを買う。少しだけ言葉を交わす。また来る。ただ,それだけのことが繰り返された。でも詩帆の手は,彼が来る夜と来ない夜で,仕込みのリズムを変えていた。身体が,頭より先に,何かを知っていた。 包帯を巻いた夜があった。カウンターを越えて,その手を包んだ夜があった。厨房にコーヒーカップが2つ並んだ夜があった。深夜の厨房で,2人は話した。何について話したか,後から思い出せない。声の低さと,蛍光灯の白さと,コーヒーの冷め方だけを,覚えている。 やがて,彼の名前を知った。詩帆は,その名前を,のどの奥で,静かに,発音した。 2人の関係には,最後まで,名前がつかない。恋なのか,習慣なのか,それとも別の何かなのか。問いは宙吊りのまま,夜の中に,置かれる。でも詩帆は今夜も,ブリオッシュに丸印をつける。1つ,取っておくための,印を。来ても来なくても,焼く。待つことは,何もしないことではない。温度を保つことが,待つことだ。 停滞は,敗北ではない。前進も,義務ではない。変われない身体が,それでも夜の中を歩く。その事実を,この物語は,裁かずに,ただ,描く。
6件

アルファポリスのライト文芸小説のご紹介

アルファポリスのライト文芸小説の一覧ページです。
一般文芸よりもライトで読みやすい青春小説や感動小説などのライト文芸が満載です。
「家族」 「ヒューマンドラマ」 「切ない」 人気のタグからお気に入りの小説を探すこともできます。ぜひお気に入りの小説を見つけてください。