献身

時は大正時代から昭和初期でございます。身寄りのない私が里子として引き取られたのは、伊豆の国の山奥に佇む洋館でございました。
※男色的な表現あり


***
 旦那様は不幸なお方です。
 大変な美男でありましたが、両の足を悪くしてからは、そのご尊顔は不機嫌が常で、一日中書斎に閉じ籠るようになりました。
 そんな旦那様の僅かなサインに気がつけるのは、私ぐらいのものでしょう。

「手水ですか」

 恥じるように頬を染めて頷く美男に、私はどうしようもなく心が乱されてしまうのです。

***
つぶやき短編集
『不機嫌』×『サイン』より

朗読動画あります。
https://twitter.com/nao83466377/status/1484468214545338375?t=GKBY63poqZLHoA8N9-lmxg&s=19

表紙作成は、羽多奈緒さん(@hata_nao_)です。
ありがとうございます。
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