「時間」の検索結果
全体で8,670件見つかりました。
虹ヶ丘公園の中央に、毎日虹がかかる噴水がある。夕方、西日が差すほんの少しの時間だけ、水しぶきが光を受けて七色に染まる。朝倉 跳馬(とうま)、水野 海凪(みなぎ)、橘 飛鳥(あすか)の三人は、その噴水を「虹の噴水」と呼んで、毎日放課後に集まっていた。
ある日、跳馬は水面に泣いている自分の姿を見た。なぜ泣いているのか、分からない。声も聞こえない。でも翌日、見覚えのある場所で、見覚えのある光の中に立ったとき、気づいた。あれは、今日のことだった。
噴水は未来を映していた。でも見せてくれるのは、映像だけ。なぜそうなるのかも、どうすれば変わるのかも、教えてはくれない。ただ水は揺れて、映像はぼやけて、一日遅れて意味になる。
言えなかった「ありがとう」。伝えられなかった「ごめんね」。声にできなかった「大丈夫?」。たった一言が足りなかっただけで、誰かが泣く未来がある。でも、知っていれば、変えられるかもしれない。
三人から始まった小さな輪が、少しずつ広がっていく。出会い、向き合い、踏み出すたびに、虹は今日も鮮やかになる。
これは、ヒーローのいない物語だ。悪役もいない。ただ、昨日より少しだけ優しくなれた子どもたちの、静かで温かな一年間の記録。
文字数 82,990
最終更新日 2026.07.16
登録日 2026.07.01
深い霧に包まれた山岳地帯の小さな村。
春の終わり、移牧へ向かった男達を残し、村には女達と子供だけが暮らしていた。
ある日、旅の姉弟デュリナとカイスは、山道で迷った末にその村へ辿り着く。
そこで二人を迎えたのは、村に暮らす少女エルシャと、静かで優しい人々だった。
白い霧、降り続く雨、羊の鈴の音。
外界から切り離されたような村で、エルシャ達は少しずつ心を通わせていく。
しかし、激しい雨による落石で道は閉ざされ、姉弟は村に留まる事になる。
限られた暮らしの中で過ごす穏やかな日々。
編み物や刺繍、食事を囲む時間、そして雨音の向こうに感じる不安。
やがてエルシャは、自分の中に芽生えた別れたくない気持ちに気付き始める。
これは、霧深い村で出会った人々の、静かで温かな交流と、小さな別れを描いた物語。
文字数 6,915
最終更新日 2026.07.17
登録日 2026.07.15
正しい時間って本当にひとつだけ?――明石の空と時計をめぐる物語。東京から「時のまち」明石へ引っ越してきた小学六年生の水野ひよりは、夏休みの自由研究に日本標準時を選ぶ。答えを調べて簡単に終わらせるつもりだったが、天文科学館の倉庫で不思議な星空時計と、偉そうに話す小さなフクロウ・テンに出会う。さらに、古い観測ノートには「七月三十一日、明石の時間が一分なくなる」と書かれていた。クラスメイトのナナ、星に詳しい少年ソラとともに、ひよりは子午線、太陽の南中、世界の時差、星の動き、ずれていく時計を調べ始める。しかし、正しい答えはいつも一つとは限らず、記録や時計さえ間違うことがある。そしてノートを書いた少女の過去と、消える一分の謎が少しずつつながっていく。時間に厳しいひよりが、明石の空と時計を通して、「正しさ」と「人を待つ時間」の意味を知っていく、夏休みの十日間の学びと冒険の物語。
文字数 45,925
最終更新日 2026.07.06
登録日 2026.07.01
図書委員の美羽が気づいたのは、図書室で大切に貸し出されている「金のしおり」がなくなっているという事件だった。
金のしおりは本を百冊借りた子だけが使える特別なしおり。本好きの子どもたちにとって憧れであり、図書室でたった一枚だけ貸し出されている。
最後にしおりを返したのは四年生の大地。しかし本人も美羽も「確かに返した」と証言する。図書室は休み時間には図書委員が見守り、放課後は施錠されているため、誰かが簡単に持ち出せる状況ではない。いったい、しおりはどこへ消えてしまったのか。
図書委員の彰は、小さな違和感を一つずつつなぎ合わせながら真相へと近づいていく。
本が好きな子どもたちの日常を舞台にした、児童向け図書室ミステリー。
文字数 5,048
最終更新日 2026.07.09
登録日 2026.07.09
広い海が見渡せる岬の上に、『うみのねこ』という料理店があります。
お店を切り盛りするのは、アラシとナギという双子の猫。
『うみのねこ』にはメニューがありません。
お客さんが食べたいものを作って出すのです。
さあ、いらっしゃい、いらっしゃい。
ここは海に住む猫の料理店。
ちょっと風変わりでほっこりする時間をどうぞ。
ベリーズカフェでも公開中です。
文字数 4,245
最終更新日 2018.04.11
登録日 2018.04.03
セミ達の世界では、協定によって「鳴いても良い」時間が割り当てられている。
情熱に溢れて成虫へと変態したヒグラシのカンタは、友人のシシと共に、夕暮れの続く「夜のない国」を目指して旅に出る。
旅の途中で様々な虫に出会い、友情を育み、また敵対したりもする。
最後に辿り着いた「夜のない国」で、カンタは後続の仲間があることを願う。
文字数 12,221
最終更新日 2026.07.25
登録日 2026.07.25
市の児童文学賞で二位になった小学六年生の杏樹は、一位の作品を素直に祝えず、「運がよかっただけ」と口にしてしまう。悔しさを隠すため、誰かの欠点を探してしまう杏樹は、夏休みに港第三倉庫の整理を手伝うことになる。
そこで見つかったのは、壊れた木箱。中には、三十年前に上演されなかったコント「ラーメン店」の台本、ハート形の虫取り網、安物の口ひげ、そして「恋のハンター」と書かれた写真が入っていた。
登場人物は、脚本を書きたい杏樹、皆をまとめる望海、勢いで動く勇汰、空想好きの博己、絵で伝える天翼、木工が得意な匠平、会計を支える光信、動きで笑わせる大樹。そして、三十年前に相方の正治と舞台に立つはずだった元ラーメン店主の瑞枝、資料整理を担う司書の栞里。
杏樹たちは、七月三十一日の港朝市で古いコントを復活させようとする。けれど杏樹は、自分の台本を守ろうとして仲間の案を否定し、天翼の字を笑い、勇汰の失敗を責めてしまう。やがて瑞枝の過去を知った杏樹は、自分の悔しさと向き合い始める。
本番前夜、豪雨で紙の台本が読めなくなる。頼れるのは、天翼の絵札と、仲間たちが積み重ねた稽古の記憶だけ。失敗ばかりの舞台は、やがて港じゅうを笑わせる奇跡の時間へ変わっていく。
文字数 23,855
最終更新日 2026.08.09
登録日 2026.07.18
人の命のはかなさは、まるでカゲロウのようだ。
カゲロウは風に舞うかのように空中を浮遊する。
カゲロウという名前は空気がゆらめいて見える陽炎が語源らしい。
はかなく弱いカゲロウは、成虫になって数時間で死んでしまうらしい。
しかし、数時間というのは成虫となってからの命だ。
意外にも、幼虫の期間は昆虫の中では長い方らしい。
幼虫の時は何度も脱皮する。私たちも脱皮して成長してきたような気がする。
成虫の姿は生ある時の一瞬の姿だ。
カゲロウの幼虫から羽化したものは、亜成虫と呼ばれているらしい。
|翅《はね》があって空を飛び、成虫と似ているのだが、まだ成虫となってはいない。
亜成虫は、まるで私たちみたいだ。
ゆらゆら揺れる心。大人になりかけているのに、大人ではない。
無色透明な翅。私たちは見えない翅を持っている。羽ばたく準備をしている。
「死ぬ前に、俺と友達にならない?」
優し気な声が背中越しに聞こえる。
声の主は同じクラスの同級生。
飛び降りようとしている同級生の私に向かって平然と笑顔で手を差し伸べてくれた。
彼は不思議な光に包まれて私るように見えた。天使のように救いをあたえてくれる存在に思えた。
温かなぬくもりを全身に纏ったような人。
こんな状況なのに驚くこともなく、笑顔で対応する同級生の名前は羽多野空。
華奢で透き通るような肌色で中性的な雰囲気の少年だった。
「今、死ぬ必要ある?」
彼はそう言った。
「なんか疲れちゃって」
「俺は生きたくても長生きできないから、人生の長さを選択できる人が羨ましいよ。生まれつき病弱で成人まで生きられないと言われている。いつ、人生が終わるかわからない毎日を過ごしていっる」
「人生の長さをある程度選べる私は幸せなのかもしれないね」
彼と話していて価値観が変わった。
「親の干渉が辛いんだ。価値観を押し付けられてさ。コミュ力がないから、友達もできないし。スマホは親が持ってはいけない悪いものだと洗脳されている。勉強も一日中しろと監視されている。自由がないの」
でも、その人は成人の年齢、十八歳になってすぐに亡くなってしまった。
まるでカゲロウのようだ。
亜成虫の時期を共に過ごしていたのかもしれないと思う。
まるでカゲロウのように、成虫になってすぐに死んでしまうかのように――。
文字数 12,181
最終更新日 2024.06.25
登録日 2024.06.25