「論」の検索結果

全体で3,137件見つかりました。
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歴史・時代 連載中 長編
「この戦争は、もう勝てない」 昭和十八年。 陸軍参謀本部の中で、その現実を直視していた男がいた。 松谷誠、陸軍大佐。 英米の国力を知り、補給と物量を重視する異端の幕僚。 敗北を口にすることさえ許されない軍中央で、彼は密かに終戦への研究を始める。 やがて彼のもとに、外務省の加瀬俊一、宮中の松平康昌、海軍の高木惣吉がつながっていく。 陸、海、外、内 交わるはずのなかった四人の官僚たち。 【陸】悲観論を恐れず和平案を練り続ける陸軍大佐・松谷誠。 【海】海軍大臣の特命で海軍を善導し、活路を探る海軍少将・高木惣吉。 【外】外務大臣の傍らで外交の道を拓く外相秘書官・加瀬俊一。 【内】天皇の御意向を汲み、宮中から静かに策を巡らす内大臣秘書官長・松平康昌。 彼らの敵は、連合国だけではない。 徹底抗戦を叫ぶ軍部。 和平派を監視する憲兵。 敗北を認められない国家の空気そのもの。 どう勝つかではない。 どう終わらせ、日本を残すか。 【作品について】 この物語は公式記録、専門家の分析、関係者の証言を基に構成しています。なお、なるべく忠実をベースとしてますが、演出上、筆者の創作箇所や小説用に再構成している箇所もありますのであらかじめご承知おきの上お読みください。 ※執筆に先立ち、熊本県人吉市の「高木惣吉記念館」にて、四人組の一人である高木惣吉氏のご遺族の方に長時間の取材と貴重な史料のご提供を頂きました。ご協力に心より感謝申し上げます。
文字数 745,397 最終更新日 2026.06.26 登録日 2026.04.24
歴史・時代 完結 短編
「人面獣心」と呼ばれた十九歳の少年。 その完璧な裏切りは、たった一人の父親に捧げる、命がけの筋書きだった。 関ヶ原で「裏切り者」「人面獣心」と蔑まれた小早川秀秋は、本当にその評価のとおりの人物だったのだろうか。 幼き日より「豊臣の未来」として持ち上げられながらも、秀頼の誕生によって立場を失い、やがて外に養子として出されることになった金吾(秀秋)。彼の立場は常に他者の欲と打算、政治の論理によって揺さぶられ続けるものだった。 そんな中で出会った小早川隆景、そして自らが結果として追い出すこととなった秀包。彼らとの関わりが、金吾の価値観を静かに変えていく。 朝鮮出兵での激闘後、不遇の時を経て、関ヶ原の戦いにおいて彼は歴史を大きく動かす決断を下すことになる。しかしその行為は、勝者からも敗者からも理解されることなく、「裏切り」という一言で切り捨てられてしまう。 秀秋(金吾)が終生胸に抱き続けた信念とは何だったのか。そして彼が守ろうとしたものは、歴史の中でいかに歪められていったのか――。 当時の一次史料や実際に起きた出来事に基づき、彼の等身大の足跡を追い、その真実を描く。
文字数 60,805 最終更新日 2026.05.29 登録日 2026.05.29
歴史・時代 完結 長編
魏・呉・蜀が覇を競う西暦200年代、孫呉の国。 呉の若き天才「諸葛恪(しょかつかく)」は、正論で人を捻じ伏せる悪癖を持つ嫌われ者だった。 そんな彼が<頭と胴が離れる怪異“落頭民”>の美青年「楊甜(ようてん)」と出会うことに。 馬鹿が嫌いな人間"諸葛恪"、馬鹿で純粋な怪異"楊甜"。 何の因果か異なる者同士が手を取り合い、呉を蝕む難題に挑んでいくことに。 これは三国志の世界を舞台に、天才が怪異の相棒と共に乱世へ飛び込む、成長と立志の伝奇物語である。
文字数 126,788 最終更新日 2026.01.28 登録日 2025.12.01
歴史・時代 完結 短編
【あらすじ】 江戸後期。姫路藩藩主の叔父、酒井抱一(さかいほういつ)は画に熱中していた。 憧れの尾形光琳(おがたこうりん)の風神雷神図屏風を目指し、それを越える画を描くために。 そこへ訪れた姫路藩重役・河合寸翁(かわいすんおう)は、抱一に、風神雷神図屏風が一橋家にあると告げた。 その屏風は、無感動な一橋家当主、徳川斉礼(とくがわなりのり)により、厄除け、魔除けとしてぞんざいに置かれている――と。 そして寸翁は、ある目論見のために、斉礼を感動させる画を描いて欲しいと抱一に依頼する。 抱一は、名画をぞんざいに扱う無感動な男を、感動させられるのか。 のちに江戸琳派の祖として名をはせる絵師――酒井抱一、その筆が走る! 【表紙画像】 「ぐったりにゃんこのホームページ」様より
文字数 10,678 最終更新日 2024.06.04 登録日 2024.05.31
歴史・時代 連載中 長編
ただの人斬りでも、武士に憧れた最後の武士でもない、新選組の”真実”の物語。 土方歳三を主人公として、新選組に詳しい方にも、新選組を全く知らない方にも楽しんでいただけるように書いていきます。 ■参考文献 伊東成郎『土方歳三の日記』新人物往来社・二〇〇〇年 菊地明他編『新選組日誌 コンパクト版 上』新人物往来社・二〇〇三年 菊地明他編『新選組日誌 コンパクト版 下』新人物往来社・二〇〇三年 山村竜也『早わかり新選組』日本実業出版社・二〇〇三年 歴史群像編集部編『図解 日本刀事典』学習研究社・二〇〇六年 相川司『新選組隊士録』新紀元社・二〇一一年 家近良樹『江戸幕府崩壊 孝明天皇と「一会桑」』講談社・二〇一四年 宮地正人『歴史の中の新選組』岩波書店・二〇一七年 相川司『土方歳三 新選組を組織した男』中央公論新社・二〇一七年
文字数 86,796 最終更新日 2026.01.03 登録日 2025.03.22
歴史・時代 連載中 長編
海軍内では八八艦隊の議論が熱を帯びていた頃、ある一人の天才によって地味ではあるが大きく日本の未来を変えるシステムが考案された。そのシステムとは、軍艦を一種の”箱”と捉えそこに何を詰めるかによって艦種を変えるという物である。海軍首脳部は直ちにこのシステムの有用性を認め次から建造される軍艦からこのシステムを導入することとした。 そうして、日本海軍は他国を圧倒する量産性を確保し戦雲渦巻く世界に漕ぎ出していく… こういうの書く予定がある…程度に考えてもらうと幸いです!
文字数 59,818 最終更新日 2025.12.07 登録日 2025.04.10
歴史・時代 連載中 短編
 平治元年に勃発した平治の乱は平清盛率いる平家と源義朝率いる源氏の合戦であった。  しかしこの戦いに於いて源氏は敗れたのである。  源義朝の子供が頼朝である。  私は今回、この頼朝にスポットライトを当てて脚色を加えながらこの小説を執筆中である。  この物語は史実に基づいている。    この物語を最後までお読み頂ければ幸いです。   日本史上初の武士による政府機能は鎌倉幕府である。  その源氏の棟梁は源頼朝である。  その源氏は元をたどれば貴族である。  それも天皇の皇子という血筋であり、勿論武家だけではなく、公家としての家流も大いに栄えたのだ。  源氏はいくつもの系統に分かれている。  頼朝を代表とする武家源氏では「清和源氏」という系譜がもっとも有名だ。  さて、どんな人物でもその出身である出自というものがある。  源頼朝の出自。  源氏の出自である。  「源(みなもと)」の姓の始まりは弘仁14年(841)嵯峨天皇の8人の皇子がこれを賜ったことによる。  これは天皇の皇子が多く生まれた場合に皇籍ではなく臣下という待遇にするケースで、「臣籍降下」と呼ぶのだ。  この最初の源氏を「嵯峨源氏」という。  その後も仁明・文徳・清和・陽成・光孝・宇多・醍醐・村上・花山・三条の各天皇の皇子・皇女が源姓を賜った。  其々の始祖となる天皇の名を冠して「○○源氏」と呼び、多くの系譜へと分岐して行く。  武家源氏の系譜として特に有名なのは「清和源氏」である。  所謂源平と称した場合の源氏とはこの系譜を意味する。  源頼朝も清和源氏の系譜を汲んでおり、そのうち「河内源氏」と呼ばれる系統の棟梁という位置付けとなるのである。  また、源頼朝は北条政子と知り合い、愛し合うことにより、巨大な権力を手に入れることになるのである。  
文字数 91,331 最終更新日 2026.06.26 登録日 2026.02.15
歴史・時代 完結 長編 R15
柳沢保明は脇差を放り出して仁介の裸体を抱き締め、乱れた濡れ髪に顔を埋めた。「ああ、私を狂わせる、美しい宝玉め」「思う様抱いて、そして寝首を下され。いえ、今宵だけは全てを捨てて……」「言うな仁介。何も言うてはならぬ」……時の幕府側用人、柳沢保明(吉保)の策謀にて、水目藩加山家は存続の危機に陥る。 異形の敵・御伽衆に立ち向かうは、加山家目付にして愛洲陰流継承者・愛洲壱蔵と甲賀望月流の忍術を継承する3人の弟達! 一方で、藩断絶を目論む保明と、道ならぬ恋に身を焦がす次男・仁介。兄への思慕と保明への愛の狭間で苦しみながらも、兄弟を守るべく保明が放つ敵と刃を合わせる……。  仁介と保明の切ない恋の行方を軸に、破邪の剣がキラリと光る、兄弟の絆と活躍を描く元禄時代活劇!!
文字数 130,466 最終更新日 2024.05.27 登録日 2023.09.28
歴史・時代 完結 長編
 天空矢倉仕合とは、全国の武芸者、戦国浪人が一堂に集う一大イベントであり、諸国の情勢が飛び交う場だ。そのなかには天下を狙う戦国大名の間者や諜者も入り乱れる。  そんな陰謀と武芸の場に飛び込んでゆくのは新免無二斎門下の剣客・鶴見弦十郎。  弦十郎もまた、大いなる使命を背負って死の高楼矢倉に登ってゆく。  果たして勝負の行方は......?
文字数 28,771 最終更新日 2026.05.31 登録日 2026.05.06
歴史・時代 完結 長編
「この日本で、世界の現実と真の兵学を知っているのは、この俺一人だけだ」 嘉永三年、江戸。神田お玉ヶ池に、とんでもない男が塾を開いた。 その名は佐久間象山。自作の大砲をぶっ放しては見事に大爆発させ、江戸中から「ホラ吹き男」と叩かれながらも、眉一つ動かさず「職人の技術が俺の数式に追いついていないだけだ」と言い放つ、傲岸不遜な大天才。 そんな「鼻持ちならねぇおっさん」のもとに、時代の地殻変動を察知した若き怪物たちが吸い寄せられるように集まった。 貧乏長屋から死に物狂いで這い上がってきたオランダ語のバケモノ・勝麟太郎。 隻眼に冷徹なロジックを宿す長岡の麒麟児・小林虎三郎。 そして、純粋すぎるゆえに狂気を孕んだ長州の至宝・吉田寅次郎──。 水と油のような天才たちは、夜な夜な最新の西洋兵書を翻訳し、地球儀を回し、日本を救うための「知のデッドヒート」を繰り広げていく。 しかし、1853年。あの「黒船」の到来が、彼らの密やかな黄金期を容赦なく打ち砕いた。 襲いかかる時代の激流。引き裂かれていく師弟の運命。 松陰の死、海舟の台頭。そして、時代を先走りすぎた孤高の太陽・佐久間象山に迫る、暗殺の足音──。 黒船が来航してから、その男が京都の露と消えるまでの十一年間。 精神論を排し、数式と知恵を武器に世界と戦おうとした男たちの、可笑しくも壮絶な幕末青春群像劇!
文字数 39,957 最終更新日 2026.06.10 登録日 2026.05.31
歴史・時代 連載中 長編
そこにある列強は、もはや列強ではなかった。大日本帝国という王道国家のみが覇権国など鼻で笑う王道を敷く形で存在し、多くの白人種はその罪を問われ、この世から放逐された。 いわゆる、「日月神判」である。 結果的にドイツ第三帝国やイタリア王国といった諸同盟国家――すなわち枢軸国欧州本部――の全てが、大日本帝国が戦勝国となる前に降伏してしまったから起きたことであるが、それは結果的に大日本帝国による平和――それはすなわち読者世界における偽りの差別撤廃ではなく、人種等の差別が本当に存在しない世界といえた――へ、すなわち白人種を断罪して世界を作り直す、否、世界を作り始める作業を完遂するために必須の条件であったと言える。 そして、大日本帝国はその作業を、決して覇権国などという驕慢な概念ではなく、王道を敷き、楽園を作り、五族協和の理念の元、本当に金城湯池をこの世に出現させるための、すなわち義務として行った。無論、その最大の障害は白人種と、それを支援していた亜細亜の裏切り者共であったが、それはもはや亡い。 人類史最大の総決算が終結した今、大日本帝国を筆頭国家とした金城湯池の遊星は遂に、その端緒に立った。 本日は、その「総決算」を大日本帝国が如何にして完遂し、諸民族に平和を振る舞ったかを記述したいと思う。 城闕崇華研究所所長
文字数 113,984 最終更新日 2026.02.22 登録日 2023.10.13
歴史・時代 連載中 長編
①登場人物の紹介  夜空を見上げて井戸に落ちるタレス、師に遠慮なく反論するアナクシマンドロス、息や風から世界を考えるアナクシメネス。数に秩序を見いだすピタゴラス、人間そっくりの神々を疑うクセノパネス、変わりゆく世界を厳しく見つめるヘラクレイトス。アテナイでは、言葉の力を磨くプロタゴラスとゴルギアス、笑いながら原子を語るデモクリトス、そして人々に問いを投げかけるソクラテスが現れる。やがてプラトンは失われた師の声を残すため学園を開き、ディオゲネスは大甕のそばから見栄を笑い飛ばし、アリストテレスとテオプラストスは世界を見つめて書き留める。さらにエピクロス、ゼノン、クレアンテスたちが、恐れや怒りに揺れる人々へ、それぞれの言葉を手渡していく。 ②あらすじ  古代ギリシャ、海沿いの町ミレトス。タレスが蝋板に刻ませた「答えを書く前に、問いを書け」という言葉は、弟子たちの反論とともに写され、時代を越えて人から人へ渡っていく。世界は水か、空気か、数か、火か。人は勝つために語るのか、善く生きるために問うのか。広場、法廷、牢、学園、庭、柱廊で、哲学者たちは互いに食い違いながらも、喪失や不安を抱えた人々に言葉を差し出す。唯一の正解を勝ち取る物語ではない。笑い、怒り、悲しみ、書き誤り、写し直しながら、人が明日を生きるための余白を残していく、
文字数 116,337 最終更新日 2026.06.27 登録日 2026.04.26
歴史・時代 完結 短編
文官が一人、惰眠をむさぼる。 主君に愛され、同僚達に認められ、議論の場で長椅子を専横して横たわることを許された男、簡雍。 倹約令の敷かれた城下で、軽微な罪によって処罰されそうになっている見知らぬ市民を救うべく、彼がひねり出した知恵とは。 ――御主君、あの二人を捕縛なさいませ――
文字数 13,829 最終更新日 2019.07.09 登録日 2019.07.04
歴史・時代 完結 長編
8世紀中頃のボェの国(チベット) 御家争いを恐れ、田舎の館に引きこもっていたナナム・ゲルツェン・ラナンは、ある日突然訪ねて来た異母兄ティ・スムジェによってナナム家の家長に祭り上げられる。 都に上り尚論(高官)となったラナンは、25歳になるまで屋敷の外に出たこともなかったため、まともに人と接することが出来なかった。 甥である王(ツェンポ)ティソン・デツェンや兄マシャンの親友ルコンに助けられ、次第に成長し、東方元帥、そして大相(筆頭尚論)となるまでのナナム・ゲルツェン・ラナン(シャン・ゲルツェン:尚結賛)の半生を書きました。 参考文献はWebに掲載しています。
文字数 143,260 最終更新日 2021.05.02 登録日 2021.01.11
歴史・時代 完結 短編
【あらすじ】 天和(てんな)三年。江戸。「はせを」という五分刈りの中年の男がいた。彼は、青物を売る娘「なな」の訪問を受ける。「なな」は天和の大火で見かけた、庄之介という侍が気になっていた。庄之介は吉祥寺の栴檀林(せんだんりん)というところで学ぶ身であり、おいそれと声をかけることはできない。そこで「はせを」は一計を案じ、「なな」に文(ふみ)を書かせて、それを庄之介に渡すという手段に出る。しかし庄之介は立身出世を目論んでおり、学問の邪魔と文を破り捨てる。怒った「なな」は栴檀林に火をつけるが……。
文字数 10,916 最終更新日 2024.06.03 登録日 2024.05.31
歴史・時代 完結 長編
三河進出を目論む今川義元から突き付けられた今橋城明け渡しの要求。 一戦辞さずで家中が一致する中、独り冷静だった人物が居たら……。
文字数 108,026 最終更新日 2025.02.02 登録日 2024.10.14
歴史・時代 完結 長編
剣の道より色の道。刹那の快楽に生きようと決めた流浪の剣客が挑んだ最後の戦いとは……?
文字数 25,989 最終更新日 2021.05.06 登録日 2021.04.27
歴史・時代 完結 長編
『やさぐれ坊主、京を創る ――炎の都に賭けた煩悩仏』のあらすじです(約1180字)。 あらすじ 天正十年六月二日、本能寺の変。 明智光秀の謀反により、織田信忠が二条御所で自刃を覚悟するなか、四十三歳の坊主・前田孫十郎(後の玄以)は、信忠の嫡男・三法師を抱えて炎の京を脱出する。「私はまだ死にとうない」――煩悩まみれの坊主が、たった一人で天下人の孫を守る決死行。 逃げた先の大原で、孫十郎は野盗に襲われたところを、薪を運ぶ女衆「大原女」の頭領・葵に救われる。前歯の欠けた笑顔の葵は、孫十郎にこう言った。「桃源郷、頼んだで」――この一言が、孫十郎の生涯を決定づけた。 清洲会議を経て織田家を継いだのは、孫十郎が長らく「なぜ信長公はあの粗野な男を」と訝っていた羽柴秀吉。しかし秀吉から「ブレーンになれ」と請われた孫十郎は、京の都を桃源郷に造り変える夢に賭けた。 風流踊り、関白相論、聚楽第、お土居、寺町、北野大茶湯――孫十郎、いま玄以は、心の中で毒づきながらも、表情ひとつ変えず、京を造り変えていく。途中、高野山では木食応其上人と運命的に出会い、空海の幻視を見て「大威徳明王の化身」とまで呼ばれる。葵もまた、玄以を守るため伊賀で忍びの修業を積み、くの一の頭領「青葵組」を率いるようになっていた。 しかし、絶頂の裏で、悲劇が始まる。 恩師・古渓宗陳の配流。茶聖・千利休の切腹。関白・豊臣秀次の高野山追放と自刃。聚楽第の破却。朝鮮出兵による民の疲弊。秀吉は権力に取り憑かれ、衆生救済の理想を捨て、暴君と化していく。 そして文禄五年閏七月、京畿を襲った未曾有の大地震。伏見城の天守は崩れ落ち、玄以が応其と心血を注いで建立した方広寺の大仏は、無残に砕け散った。慈悲の御顔に苦悶を浮かべる仏に、秀吉は冷酷に矢を放つ。 「役立たずめ。さっさと片づけよ」 すべてを失い、絶望の炎に飛び込もうとした玄以を、命を懸けて救ったのは、葵だった。「諦めんといてえなあ」――最後の言葉を残して、葵は前歯の欠けた笑顔のまま、息絶える。 四年後、関ヶ原。 玄以は前線に向かわず、ひそかに徳川と通じ、大坂城の留守を預かるのみで動かなかった。豊臣のためでなく、京のために。 「立派な城も、いずれは朽ち果てよう。曼荼羅は、心の中にあるのやも知れへん」 戦国の終焉を見届けた一人の坊主が、煩悩に泣き、笑い、駆け抜けた魂の物語。 ダイナミックに、神秘的に、そして時にコミカルに――歴史の表舞台で輝かなかった「都市の設計者」前田玄以の知られざる生涯を、現代の読者へ。
文字数 42,671 最終更新日 2026.05.09 登録日 2026.05.09
歴史・時代 完結 短編
【あらすじ】 今川義元の大軍が尾張に迫る中、織田信長の家臣、簗田政綱は、輿(こし)が来るのを待ち構えていた。幕府により、尾張において輿に乗れるは斯波家の斯波義銀。かつて、信長が傀儡の国主として推戴していた男である。義元は、義銀を御輿にして、尾張の支配を目論んでいた。義銀を討ち、義元を止めるよう策す信長。が、義元が落馬し、義銀の輿に乗って進軍。それを知った信長は、義銀ではなく、輿上の敵・義元を討つべく出陣する。 【表紙画像】 English: Kano Soshu (1551-1601)日本語: 狩野元秀(1551〜1601年), Public domain, ウィキメディア・コモンズ経由で
文字数 10,718 最終更新日 2023.06.09 登録日 2023.05.31
歴史・時代 連載中 短編
題名『気違いに解釈』とは「気違い(キチガイ)に刃物」という意味である。 『精選版 日本国語大辞典』は「気違いに刃物」について、精神状態が尋常でない人が危険なものを持っていて、非常に危険に思われることのたとえ、と定義する。 建長二年(1250)平河良貞・師時兄弟の父師良が亡くなる。この代替わりによって、平河良貞が平河一族の惣領に就く。代替わりから一年が経とうとする時、肥後国求麻郡永吉庄に構えられていた、平河一族の本館であり、惣領・当主平河良貞の居館「地頭館」に、預所代官が領家発行の下知状を携え、来館した。 用件は、大江広元の預所職を引き継いだ外孫の近衛実春が、平河相伝の永吉庄地頭職を譲り受けたことを伝えるためだった。平河にとっては寝耳に水であり、預所のなした横領行為といえた。 さっそく平河の者たちによる衆議が開催された。一族内には自力による解決を主張する衆もいたが、平河惣領良貞は鎮西探題への提訴によって一所懸命の地である永吉庄の地頭職を取り戻すことを決める。 良貞たちは相論戦術会議を開き、御成敗式目を中心にした分析と検討を始める。その過程で、須恵尼狼藉を咎とした、幕府による永吉庄の南に隣接する須恵庄所領没収の一件および中求麻の地中に眠る、クヌサ国(狗奴国)の宝物が、今回の預所による永吉庄横領に関係があることに気づく。 ――代官来館から十年が経った。 鎮西探題から対審の知らせが届く。平川家惣領良貞と住職良円、智次郎美高の三人は、肥後国求麻郡永吉庄地頭館から筑前国博多、鎮西探題へと出立した。 預所近衛実春による恣意的かつ理不尽な気違い解釈が、平河家の人々に対し、相論申し立てから裁決状を受け取るまで実に三十二年にわたる時間、費用、精神的心労を生じさせた。本迷惑千万事件は鎌倉時代に起きたわけであるが、七百年余りたった現在でも、被害者本人とその家族は肉体的、精神的に深い傷を負わされ、あるいは遺族として一生を苦しみ続けていかねばならない凄惨極まる事件が、世界中で起こり続けている。人皮畜生の類い以下である加害者どもに対して憤りを覚える私は、本題名を付けることにした。 史実としての預所側の主張は次のとおり。譲状にみえる荘園名「西村永吉」は、一円という意味で解釈すべきである。もし別々の荘園ならば、『西村幷(ならびに)永吉』と記されているはずである。よって永吉庄の地頭職も預所が譲得することになる。ただ、この気違い預所による解釈では分かりにくさを感じる。そこで本作品では、平河所領を横領した預所側の理不尽な主張の根拠について、「西村永吉」は西村(庄)の内にある地区「永吉(庄)」と解釈するのが自然と言える。よって、西村と永吉は別々の荘園ではなく、一円の荘園である、と現地の実態を調べず、荘園名表記を曲解した気違い預所による解釈に変更した。
文字数 73,794 最終更新日 2026.05.08 登録日 2025.11.09
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