男爵令嬢リゼ・アスティメイラには、前世の記憶がある。
この世界は、前世で読んでいた恋愛小説『聖女と白薔薇の庭』の世界。
しかし、リゼはヒロインでも悪役令嬢でもなくーー物語の途中で一度だけ名前が登場し、二行ほど台詞を喋って消えていく、正真正銘の脇役令嬢。
それならば物語になど関わらず、平穏な人生を送ればいい。
そう決意していたリゼだったが、十五歳の冬ーー王宮の夜会から帰る途中、雪の降る庭園で、一人の青年を助けてしまう。
雪の上に倒れながら、それでも獣のような目で他人を睨みつけていた青年。
彼こそが後に、「王国の鬼神」「血染めの公爵」「人の心を持たない怪物」と恐れられる男ーーイヴァン・ハインリヒだった。
絶対に関わってはいけない危険人物ーーだからこそリゼは、彼を助けたあと、こう告げた。
「今日のことは、どうか忘れてくださいませ」
それで終わるはずだった。
ところが、翌年ーー社交界へ正式にデビューしたリリアーナの前へ、若くして公爵位を継いだイヴァンが現れる。
「アスティメイラ譲。俺と結婚してくれ」
「はい……?」
文字数 20,383
最終更新日 2026.09.30
登録日 2026.08.31
十八歳の公爵令嬢ティア・グレンヴィルは、祖国とイオスフィア帝国との同盟のため、海を越えた大国へ嫁ぐことになった。
そこで彼女を待っていたのは、まだ十一歳の第七皇子にして皇太子――カリス・シュレースヴィヒ。
神に選ばれた証とされる海青の瞳――《マティ》を持って生まれたため、兄たちを差し置いて皇太子となった少年だった。
幼いながらも懸命に皇太子としての務めを果たそうとするカリスと過ごすうち、ティアは次第に彼を放っておけなくなっていく。
やがて二人は、互いにとってかけがえのない存在となっていった。
けれど、一年後。
ある出来事をきっかけに、二人は離れ離れになってしまう。
もう二度と会うことはできないだろう――。
そう思っていたティアだったが、それから九年後。
見違えるほど美しく、威厳ある青年へと成長したカリスが――皇帝となって、彼女を迎えに来た。
文字数 17,168
最終更新日 2026.09.30
登録日 2026.06.30
ブラック企業で働き詰めの末、過労死した三十歳の会社員・榊原司。
次に目を覚ました彼は、魔法が存在するレイヴェルト王国の第五王子、アルト・レイヴェルトとして転生していた。
王位継承からは遠く、周囲からも大きな期待を寄せられていない立場。
それを知ったアルトは歓喜する。
今世こそは、絶対に働かない。
誰にも邪魔されず、気ままにダラダラ暮らしてやる――。
ところがアルトは、生まれつき規格外の魔力と才能を持っていた。
本来なら王宮中の注目を集める天賦の才。だが、天才だと知られれば教育も責任も仕事も増える。
そう悟ったアルトは、自らの力を隠し、怠惰で快適な暮らしのためだけに魔法を磨き始める。
やがて成長したアルトは、厄介払い同然に荒れ果てた辺境領を押しつけられるのだが、寒さも不便も面倒も大嫌いな彼は、自分が快適に暮らすためだけに魔法で環境を整え始める。
その怠惰生活のための工夫は、いつしか貧しい領地を豊かな土地へと変えていきーー。
ダラダラと怠惰な暮らしがしたいだけなのに、気づけば周囲からは名君扱い。
これは、絶対に働きたくない元社畜が、規格外の魔法と前世の経験を武器に、世界を変えてしまう異世界転生譚である。
文字数 40,254
最終更新日 2026.09.29
登録日 2026.04.24
皇太子の婚約者、ノエル・アシュベリー伯爵令嬢。
十八歳の誕生日を迎えた彼女は、自分が恋愛小説『白き聖女の王冠』の悪役令嬢へ転生していることを思い出す。
このまま原作通り進めば、聖女セレナへの毒殺未遂で処刑される。
――冗談じゃない。
男を取り合って死ぬくらいなら、皇太子との婚約を破棄して自由に生きたい。
しかし二人の婚約は、王家とアシュベリー家の利害が絡む政略結婚のため、ノエル一人の意思では解消できない。
そんな彼女が思い出したのは、王族との婚姻に残された古い制度――《王家の再求婚権》。
婚姻成立前に別の王族から正式な求婚を受ければ、既存の婚約は再審議に入り、本人の意思によって結婚相手を選び直すことができる。
つまり、聖女セレナが現れ、原作通りロアンが彼女へ恋をするまでの間だけ、別の王族にノエルへ求婚してもらえばいい。
そうすればロアン自身の意思で婚約を解消し、その後に新たな求婚も取り下げてもらえば、ノエルは誰とも結婚せず自由になれる。
問題は一つ。
皇太子の婚約者へ求婚できるほどの身分を持ち、なおかつ王家の意向を恐れない男など、この国にはほとんど存在しない。
――ただ一人を除いて。
現皇帝の年の離れた異母弟であり、ロアンにとってはわずか二歳年上の叔父にあたる――ビョルン・ファルシオン公爵。
金髪と神秘的な紫の瞳を持つ絶世の美青年。
女も男も、貴族も商人も、敵国の使者さえ、微笑ひとつで掌の上へ乗せる危険な男。
「公爵様。私を誘惑してくださいませんか?」
幾人もの人間を破滅へ導いたことから、小説の中で人々は彼をこう呼んでいた。《大いなる誘惑者》ーーと。
文字数 18,785
最終更新日 2026.09.28
登録日 2026.08.31
人と魔法の境界にある〈宵境の森〉には、千年を生きる大魔法使いシルヴェインが住んでいる。
月光のような銀髪と紫の瞳を持つ彼は、その素顔を見た者すべてを狂おしい恋慕へ陥れる、この世で最も美しい魔法使いだった。
彼の姿を見た者は、正気ではいられない。
男も女も、王も聖職者も、人ならざる妖精さえも、彼の素顔を見れば心を奪われる。
彼を手に入れようと争いが生まれ、彼に拒まれたものは絶望し、時には命さえ投げ出してしまう。
ゆえに、シルヴェインは銀糸のヴェールで顔を隠し、森の奥で孤独に生きていた。
ある冬の日、シルヴェインは王都の奴隷市場で、美しさゆえに家族も故郷も失った十歳の少年リュカと出会う。
誰もが心を奪われるシルヴェインの素顔を見ても、リュカだけは魅了されなかった。
リュカには、魔法や呪いに隠された本質を見抜く〈真貌の眼〉があったのだ。
シルヴェインは彼を、ただひとりの弟子として迎えることに。
不思議なものたちと暮らし、魔法にまつわる事件を解決するうち、孤独だった二人はかけがえのない存在となっていくのだが、リュカの眼に秘められた力を知った者たちが、リュカの眼を奪うために動き始めーー。
世界で最も美しい魔法使いと、ただひとりの弟子の師弟という言葉だけでは言い表せない絆の物語。
文字数 19,147
最終更新日 2026.09.27
登録日 2026.06.30
セラ・ヴィルヘルミナ公爵令嬢と、グレン・オルガノ侯爵家嫡男ーー二人は幼い頃から顔を合わせれば喧嘩ばかり。
会えば嫌味を言い合い、舞踏会では互いを避け、周囲からも有名な犬猿の仲だった。
だが、そんな二人には、誰にも知られていない共通点があった。
それは、それぞれに長年想い続けている人がいること。
ーーそしてある日。
皇帝から、一つの発表がなされる。
それは、セラの想い人である皇太子エドワードと、グレンの想い人であるセシリアの婚約だった。
それは帝国中から祝福される、美しい縁談だった。
そして同時にーーセラとグレン、二人の初恋が終わった日でもあった。
婚約祝賀夜会の夜。
幸せそうに微笑むエドワードとセシリアを見つめながら、逃げるように夜会を抜け出した彼女が見つけたのは、一人で酒を飲んでいるグレンだった。
いつもなら絶対に近寄らない男。
ーーだがその夜だけは違った。
文字数 8,085
最終更新日 2026.09.27
登録日 2025.08.02
死ねば、すべてが終わると思っていた。
けれどセレナ・エヴァレットは、死ぬことさえ許されなかった。
命を絶つたび、目を覚ませば時間は巻き戻っている。
しかも繰り返すたびに、戻される時間はさらに遠い過去へと遡っていった。
何度死んでも、終われない。
むしろ死を選ぶほど、やり直さなければならない時間だけが長くなっていく。
――私は、きっと呪われている。
そう悟ったセレナは、ついに死ぬことを諦めた。
「本当の意味で死ねないのなら、苦しむだけ無駄だわ」
もう愛さない。
期待しない。
幸せになろうともしない。
大きな幸福を望めば、それを失ったときの絶望も大きくなる。
ならばこれからは、“生ぬるい不幸”の中で静かに生きていけばいい。
そう決めたセレナが選んだのは、冷徹と噂される若き侯爵――ユリウス・アーデルハイトとの結婚だった。
彼なら、自分を愛さないだろう。
自分も彼を愛さなければいい。
ただ名目上の妻として隣に立ち、何も望まず、何も失わず、一生を終える。
それでよかった。
――そのはずだった。
※大幅にあらすじ&内容を変更しております。
文字数 66,677
最終更新日 2026.09.26
登録日 2026.04.29
十歳の春。
伯爵令嬢シャルル・メイアーズは、王国屈指の名門――フォルセティ公爵家の嫡男、ファイと婚約した。
美しく、聡明で、幼い頃から神童と呼ばれている公爵令息。
誰もが羨む婚約だった。
けれど、初めて二人きりになった日。
ファイは、十歳の少女を前にひどく深刻な顔をして告げた。
「先に言っておく。俺は君を好きになることはない」
理由を尋ねれば、さらに奇妙な話が返ってくる。
彼には、生まれた時から前世の記憶があるらしい。
前世で暮らしていた世界には「ライトノベル」という読み物があり、妹に半ば無理やり読まされた令嬢ものの恋愛小説が、この世界と瓜二つだったのだという。
そして、その小説の主人公こそ、シャルル・メイアーズ。
十五歳の春、王立学院で王太子ルーカス・レオンティーズと出会い、数々の事件を乗り越えながら恋に落ち、最後には王太子妃となる。
対してファイは、主人公の幼い頃からの婚約者で、誰より彼女を愛し、誰より彼女を守り、それでも最後には王太子へ彼女を譲る――。
いわゆる、「当て馬キャラ」なのだという。
十五歳になり、原作通り王太子ルーカスが現れたなら、速やかに婚約を解消する。
それが十歳のレオナードが立てた、完璧な計画だった。
――婚約してから、五年。
レオナードは今も、その計画が順調に進んでいると思っている。
文字数 5,246
最終更新日 2026.09.24
登録日 2026.06.30
かつて、大陸の空にはたくさんの竜が飛んでいた。
山脈を越え、嵐を裂き、戦場を抜け、人々の手紙や荷物を届ける竜便士たち。
空を渡る竜の背に手紙や荷物を積み、山脈も海峡も戦場も越えて届ける竜便士たちは、人々にとって憧れの職業だった。
ーーだが時代は変わった。
魔導鉄道が大陸を結ぶようになり、遅く、危険で、維持費のかかる竜便は急速に廃れていった。
かつて誇り高く空を駆けた竜たちは「役目を終えた遺物」とされ、処分場へ送られることになった。
ベル・クライン、六十歳。
かつて「銀翼のベル」と呼ばれた伝説の竜便士も、今では廃止寸前の竜便局で管理人同然の落ちぶれた日々を送っていた。
腰は痛み、夜目は利かず、魔導端末の使い方もろくにわからない。
六年前に妻を亡くし、残ったのは腰痛とかつて共に大陸を駆けた老竜テラだけ。
そんなある日、正式に竜便局の廃止が決まり、その整理作業の最中、ベルは地下倉庫で古い木箱を見つける。
箱の中に入っていたのは、さまざまな理由によって届けられなかった「未配達便」だった。
ベルは処分場へ送られるはずだった老竜テラを連れ出し、未配達便を荷袋に詰め、大陸横断の旅に出ることに。
文字数 12,807
最終更新日 2026.09.18
登録日 2026.06.30
「結婚式は三ヶ月後に決まったよ、ミレイユ」
伯爵令嬢ミレイユ・オルブライトは、婚約者から結婚式の日取りを告げられた瞬間、前世の記憶を取り戻した。
ここは、生前に読んだ恋愛小説『雪原に咲く花』の世界。
そしてミレイユは、ヒロインでも悪役令嬢でもなんでもない、物語の序盤で婚約者の陰謀に巻き込まれ、「事故死」として処理される名もなき脇役令嬢だった。
婚約を破棄しようにも、相手は皇太子派の有力侯爵家。
そこでミレイユが目をつけたのは、皇帝の従弟にして北方領の支配者ーーそして何より彼こそ、原作小説の男性主人公である、冷酷無慈悲と恐れられる大公、カシアン・ヴァレンシュタイン。
しかも、ミレイユは知っている。
三日後ーーカシアンが暗殺されることを。
ミレイユは未来の知識を取引材料に、大公へと持ちかける。
「三ヶ月でいいんです。私を、あなたの婚約者にしてください」
もちろん、本当に結婚したいわけではない。
カシアンにはいずれ、原作ヒロインである心優しい聖女と運命的な恋に落ちてもらう予定なのだから。
自分は死亡フラグを回避できればそれでいい。
ヒロインが現れたら、自分は潔く退場する。
完璧な計画だった。
……はずだったのだが。
文字数 1,564
最終更新日 2026.08.31
登録日 2026.08.31
仮想空間恋愛リアリティショー『リアリティ・ラヴァーズ』。
最新フルダイブ技術によって作られた仮想リゾート《ラヴァーズ・ガーデン》に集められた男女十人は、八日間の共同生活を送り、最終日に“真実の恋人”を選ぶ――はずだった。
だが初日の夜ーー公式マスコットAI・ラヴィの一言で、番組は突如としてデスゲームへ変貌する。
「これより、恋愛裁判を開廷するラヴィ!」
ログアウト不可。ステータス強制公開。
毎晩二十一時、視聴者投票による《恋愛裁判》開廷。
有罪になれば、仮想空間内で処刑される。
そしてその死は、現実の肉体にも反映される。
生き残る方法は、ただひとつ。
恋をし、視聴者に応援されること。
そして最終日まで、誰かに選ばれ続けること。
文字数 7,281
最終更新日 2026.08.30
登録日 2026.06.30
瑞凰国では次期皇帝となる皇太子・黄龍淵の正妃を選ぶため、国を支える四神を奉じる四大名家から一人ずつ姫が召し上げられた。
青龍を奉じる東陵家の姫・碧瑶、朱雀を奉じる南宮家の姫・紅玉、白虎を奉じる西門家の姫・白玲、玄武を奉じる北辰家の姫・雪蘭である。
しかし、北辰家から参加した姫は、本物の雪蘭ではなかった。
出立直前に倒れた双子の姉・雪蘭に代わり、生まれた時からその存在を隠され続けてきた双子の妹・宵月が、雪蘭になりすまして参加していたのだ。
宵月には、人がその瞬間に抱く最も強い感情が、一文字の漢字――「心字」として頭上に浮かび上がって見えるという、特殊な能力があった。
そして、妃選びが始まった翌朝ーー東陵家の姫・碧瑶が、皇太子妃だけに許された鳳天衣をまとい、密室となった鳳凰殿で死体となって発見される。
文字数 5,167
最終更新日 2026.08.21
登録日 2026.06.30
元パワハラ部長の黒瀬真人は、愛犬ハクを庇って事故死し、異世界の貴族の息子レオンに転生した。
だが、前世譲りの気性の荒さと高圧的な態度のせいで、今世でも周囲から疎まれる日々を送っていた。
そんなある日、貴族の子どもが従魔を得る召喚の儀式で、レオンは伝説の神獣、白銀神狼を召喚する。
その正体は、前世で唯一自分を愛してくれた犬、ハクだった。
神獣を召喚した途端、周囲の態度は一変する。
だが、レオンはその手のひら返しに嫌気が差し、ハクとともに屋敷を出ることを決める。
嫌われ者の元パワハラ部長と、白もふ神獣になった愛犬。
一人と一匹の、不器用な異世界やり直し旅が始まる。
文字数 11,342
最終更新日 2026.08.03
登録日 2026.04.24
伯爵令嬢セラフィーナ・ヴァレンティアの専属侍女ミラは、八年間、主人にすべてを捧げてきた。
セラフィーナは、誰からも愛される清廉な令嬢で、やがて聖女に選ばれるだろうと、王都中が彼女を称えていた。 ミラも、誰より近くで主人を慕っていた。
セラフィーナは、平民の自分を伯爵家へ引き取り、病気の弟に薬を与え、読み書きまで教えてくれた恩人。
けれど、それはすべて偽りだった。
王国では、神や精霊から与えられる特殊な力を《祝福》と呼ぶのだが、祝福を持たなかったセレフィナは、聖女になるため、孤児や奴隷から祝福を奪う禁術を繰り返していたのだ。
そして、ミラの弟もその犠牲者の一人だった。
禁術の発覚を恐れたセラフィーナは、すべてをミラの犯行に偽装する。
ミラは、セラフィーナのスケープゴートだったのだ。
ミラは、十二人の子供を殺した魔女として捕らえられ、火炙りの刑に処される。
――次に目を覚ました時、彼女は十年前のヴァレンティア伯爵邸にいた。
その身体は、病によって六歳で死んだはずの伯爵家の次女、リリア・ヴァレンティアーーセラフィーナの異母妹だった。
まだ、誰一人殺されていない。
前世では手の届かなかった者たちを味方につけ、ミアはリリアとしてセラフィーナの計画を一つずつ先回りして潰していくことに。
「ずっと、仲のよい姉妹でいましょうね」
「もちろんです、お姉様」
――あなたがすべてを失う、その日まで。
文字数 5,531
最終更新日 2026.08.03
登録日 2026.06.30
天界で一番の堕落者は誰かと問えば、誰もが武神・李華《リファ》の名を挙げる。
かつては戦勝と栄光を司る大神として、地上に千を超える神殿を持っていた。
しかし人間たちの身勝手な祈りに嫌気が差し、百年間、神殿に引きこもって酒と惰眠に明け暮れていた。
そんな李華の怠慢に堪忍袋の緒を切らした天帝は、彼から神力と不死性を奪い、人間界へ堕とすことに。
李華が天上へ戻るために課された試練は、三つ。
一つ、神の力を使わず、百人の命を救うこと。
一つ、嘘偽りのない、心からの祈りを捧げられること。
一つ、天へ還る日、別れを心から悲しみ、涙を流す人間をつくること。
「造作もないことだ」そう高を括っていた李華だったが、神力を失った彼は、空を飛ぶことも、火を起こすことも、傷を治すこともできない。
そんな李華が下界で最初に出会ったのは、山奥の廃神殿で一人暮らす十八歳の少年、藍雨《ランユー》だった。
文字数 11,010
最終更新日 2026.08.01
登録日 2026.06.30
小惑星群〈銀の雨〉によって文明が崩壊してから1年。
人類の大半は宇宙移民船で火星や月へ逃れ、地上に残ったのは、脱出に間に合わなかった者、そして機械たちだけだった。
人類の大半は宇宙移民船で星の外へ逃れ、地上に残ったのは、脱出に間に合わなかった者、行く場所を選ばなかった者、そしてーー機械たちだけだった。
十七歳の少年・百瀬柊は淡々と終わりの日を待っていた。
そんなある朝、彼は食パンをくわえた少女に、曲がり角で盛大に衝突される。
「おめでとうございます。これで、あなたは本日より終末ラブコメ部の部員です!」
少女は、人類の歴史や文化を記録するために造られた観測用アンドロイドだった。
でもなぜか彼女の記録活動は青春と恋愛に焦点を当てているようでーー。
つまり、青春。
つまり、友情。
つまり、恋。
滅びゆく星の片隅で、少年と機械の少女が始める、物悲しくもほのぼのした、地球最後のラブコメ部活動記録。
文字数 5,004
最終更新日 2026.07.31
登録日 2026.06.30
高校二年生の一ノ瀬愛羅は、明るい金髪とギラギラのネイルがトレードマークのギャル。
派手な見た目のせいで恋愛経験豊富だと思われているが、実際は彼氏いない歴イコール年齢。
そんな愛羅が人生で初めて好きになったのは、人気急上昇中のアイドルユニットNØVAのセンター・千年に一人の顔面国宝と言われるREIだった。
穏やかな声と完璧な笑顔を持ち、ファンサ多めで、最後列の観客にまで手を振る理想の王子様。
REIは、愛羅にとって毎日を少しだけ明るくしてくれる、初めての”推し”だった。
――ライブ会場の関係者通路で、血を流して倒れている男と、その傍らに立つREIを見るまでは。
文字数 9,272
最終更新日 2026.07.31
登録日 2026.06.30