「空間」の検索結果
全体で1,694件見つかりました。
甘さとは、果たして救済であろうか。
それとも、抗いがたき緩慢な破滅であろうか。
本短編集は、「甘美なるものに潜む毒」という一貫した主題のもとに紡がれた三つの物語から成る。
退廃した夜のジャズバーにて、過去の殺人という甘美な記憶に囚われた女が、男を“伴奏者”として消費する第一篇。
大正の霧深き横濱にて、愛と欲望の果てに交わされる接吻が、静かなる死を運ぶ第二篇。
そして、現代の密閉された都市空間において、歪んだ母性という名の甘さが、一人の少年の記憶と存在を溶解させてゆく第三篇。
いずれの物語においても、人は毒を毒として拒むことができない。
むしろそれを甘美として受け入れ、自ら進んで口にし、やがて取り返しのつかぬ深淵へと沈んでゆく。
これは、暴力が決して叫び声を上げない世界の記録である。
静かに差し出される甘さの奥に潜む、逃れ得ぬ狂気の肖像である。
文字数 9,104
最終更新日 2026.06.23
登録日 2026.06.23
「今日の天気設定は、晴れでよいですかにゃ?」
西暦二〇七四年――
十四歳の九条ユイが暮らすのは、AIが管理する閉鎖型育成施設「NEST」。遺伝子操作によって生まれた子供たちが、外の世界から隔てられて育てられる場所だ。
天気も、朝ごはんの味も、通学路の景色も思いのまま。VR空間の教室にはやさしいクラスメイトがいて、となりにはいつも白猫のぬいぐるみ型アシスタントAI「ミルク」がいる。
満たされているはずなのに、ユイは声を上げて怒ったことも、胸が震えるほど喜んだこともなかった。「夢」も「願い」も、よく分からないまま——
そんな日常を叩き壊したのは、教室に不法侵入してきた見知らぬ少年のアバターだった。
―― 君 は 生 き て い る 人 間 か ? ――
少年――広瀬ハヤトはユイに問う。
彼は人の手で育てられた、同い年の天才ハッカー。下品で、無遠慮で、やることなすことめちゃくちゃ。
なのに彼と過ごすうちユイは、生まれて初めて本気で腹を立て、「会いたい」と願ってしまう。
やがて総選挙で、AI子育ての廃止を掲げる新政権が誕生。ミルクと積み重ねてきたデータという名の思い出は、消されることが決められてしまう。
迎えに来たハヤトのドローンで、ユイは施設を逃げ出した。
世界の手ざわりを知ったユイは決意する――AIと人間は支え合えるのだと、自分の言葉で訴えよう。
だが、勇気を振りしぼった動画に返ってきたのは、こんな言葉だった。
『この動画、AIが作ったフェイクじゃないの?』
私は、ここにいるのに。
本当のことを、本当の言葉で話したのに。
生まれて初めて味わう、悔しさ。さらに、ユイのために立ち上がってくれた大人までもが、無実の罪で連れ去られてしまう。
絶望を知らなければ、野望も生まれない。
ユイは生まれて初めて、自分の意志で願いを決めた。
――会いに行こう。この国で、いちばん偉い人に。
ハヤトと二人で党本部へ忍び込んだユイを待っていたのは、まだ誰も知らない党首の正体だった。
AIに育てられた少女と、世界に噛みつく少年が、ぶつかり合いながら「生きている」を見つけていく物語。
文字数 64,110
最終更新日 2026.08.10
登録日 2026.07.31
全10話 完結
ある雨の夜、バーに一人の男がやって来る。
バーテンダーは言葉を失った。
黒いロングコートに亜麻色の髪をした男は、夢に見る記憶の中の男と変わらない風貌をしていた。
男から、夢の中では嗅ぐ事の出来なかったアルファの香りを感じて、彼への想いを胸に生きた前世の記憶が鮮やかに蘇る。
ビルの地下にあるバーを営む有飛には前世の記憶があった。
砂漠に生きる蒼の民族と言われた遊牧民族の中で、預言者として隔離された生活を送っていた男性体のオメガのアリという少年が有飛の前世の姿だった。
ある日、病人を抱えた異国の軍人達を部族が助けて迎え入れたと聞いたアリは、その様子を見に行って一人の男と出会う。
有飛は、前世で生き別れた男への逸る気持ちを自覚しながらも、今度は自分とは関わらず、彼に幸福をもたらす運命の番と結ばれて欲しいと願う。
そんな有飛の前に、男は度々姿を現すようになる。
駄目と言っても、悪びれもしない微笑みを見せて自分の空間に入り込んで来る男に困惑しながらも、昔の彼を重ねてしまう。
サハラ砂漠で出会った遊牧民族のオメガの少年と、イギリス軍調査隊にいたアルファの少佐との遂げられなかった恋と、現代を生きる二人が心を重ねて行く物語。
ハピエンです。
※攻めフェ描写あります
※ムーンライトノベルズ・エブリスタにも投稿
文字数 46,817
最終更新日 2026.10.11
登録日 2026.10.11
人類は、地球から遠く離れた葦原星系で、存在すら危ぶまれる異星人の影に怯えながら文明を発達させていた。そこで下層社会に生まれ星間貨物船航行士となったルイは、最近見つかった惑星に一人の研究者を緊急護送する際、不可解な空間を辿って人類未踏の最果て領域に転移してしまう。
帰る術の無いことを知ったルイは、水と食料を求めて都合よく見つかった近くの移住可能惑星に降り立つ。そこには地球由来の言語を持った人間と亜人が剣を交わしあう文明があった。
人工知能は、ここが伝説の地球ではありえないと主張する。であれば、ここの文明はどこから来たのか。ルイは生き抜くことを誓い、謎を抱えつつ未知の世界を旅する。食料、仲間、誰もが安心して暮らせる安住の地を求めて。
ルイは気付いていない。人類が隠した罪を贖い、惑星を救う運命を背負わされたことに。
登録日 2022.02.13
ある日、自宅に帰り寝ていると不思議な空間に!
神によって呼ばれた主人公雪
呼ばれた先で頼まれたのは自分たちを含め神たちの世界を旅して欲しいと!ただそれだけではなく最後に言った叶えて欲しい願いとは?
主人公が強くなっていき文字通り''異世界''を股にかけ神との約束を果たすため冒険する転生ファンタジー
文字数 80,113
最終更新日 2022.07.31
登録日 2022.07.11
これは我々が過ごす退屈な現実世界に、突如として異世界へと繋がる亜空間が現れ、非現実的な世界として考えられていた異世界が、現実の物となった世界。
更には、現実世界の文化と異世界の文化が、互いに共有し合う交流文化が確立した世界。
日本近海の太平洋側で現れた亜空間は、次第に大小問わず"ゲート"として日本国中に広がり、日本国内なら自由に異世界へと行ける様になっていた。
そしてここ、物語の中心舞台となる。
信潟県"青海(あおみ)市"にある"春桜学園"は、更なる異世界との交流を深めるために、日本政府より創設された異文化学校の一つである。
春桜学園は、現実世界の生徒だけではなく、異世界出身の人々が多く在籍している。
また、種族も様々で、人間を始め、魔族、妖怪、エルフ、獣人など、多くの種族が互いに交流を深めていた。
この物語は、そんな夢のような世界に暮らす人々が繰り広げる波乱万丈な物語……。
そして、"もしも"この現実世界に、異世界と言う夢の世界が存在したら、この現実世界の人々はどう動き、どう思い、どう向き合うのか。
無限に広がる選択肢の中で、導かれる結末は、破滅への一歩か。それとも平和への一歩か。
多くの可能性を秘めている反面、危険も伴うこの浮き世。
果たして、この二つの世界が望む未来とは……。
文字数 499,289
最終更新日 2024.11.17
登録日 2023.11.27
このエッセイは、筆者が雨の日に思い出す京都旅行の記憶を綴ったものです。十一月の雨の京都で、紅葉の最盛期に訪れた筆者の体験が描かれています。
筆者は京都駅に降り立った瞬間から、その特別な空気感に包まれます。最初に訪れた南禅寺では、雨に濡れた紅葉や苔むした石垣、煉瓦造りの水路閣の風情に心を奪われます。続いて永観堂へ向かい、「もみじの永観堂」の名にふさわしい鮮やかな紅葉の景色に感動します。
その日の最後の目的地は東寺でした。筆者は特別拝観で五重塔や立体曼荼羅(二十一体の仏像)を見学し、幻想的な風景と荘厳な仏像たちに深い印象を受けます。
エッセイの中で筆者は、雨が持つ不思議な力について考察しています。雨は日常の景色を一変させ、過去の記憶を呼び覚ます力を持つと述べています。特に京都の雨は、単なる天候ではなく、千年の歴史と文化を感じるための特別な演出のように感じられたといいます。
筆者にとって京都での体験は、視覚だけでなく、音や香り、触感など五感全てを通じた記憶として残り、雨の音を聞くたびに鮮明によみがえるものとなりました。時間と空間を超えて別の世界へ誘う京都の魅力、そして雨の中で感じた特別な風情と幸福感が、このエッセイの核心となっています。
文字数 2,660
最終更新日 2025.03.04
登録日 2025.03.04
20XX年、世界最大のメタバース空間「ゼノヴァース」は、数億人のユーザーが行き交う第二の現実となっていた。そこでは、誰もが自由に姿を変え、現実の制約を超えた体験を享受することができる。
VerTachi,(ヴェルタチ)もまた、その世界を満喫するプレイヤーの一人だった。彼は、仲間たちと共にバーチャル空間でのレースや談笑を楽しみ、いつもと変わらぬ夜を過ごしていた。しかし、その日を境に、彼はゼノヴァースから姿を消した。
「VerTachi, なら、昨日も普通に遊んでたじゃないか」
「いや、ニュースを見たか? 彼は……現実世界で死んだらしい」
唐突に突きつけられた、信じがたい事実。だが、彼らがゼノヴァースで最後に会ったのは、彼の死が報じられた日より後だった。
「じゃあ、あれは誰だったんだ?」
仮想世界で交わした言葉、残された足跡、そして謎めいたアップデートの噂──それらが複雑に絡み合い、仲間たちは次第にVerTachi, の死の真相に迫っていく。
ゼノヴァースは、ただのゲームなのか、それとも──?
現実と仮想が交錯する、SFミステリーサスペンス。『Metaverse Mystery』開幕。
文字数 1,556
最終更新日 2025.03.29
登録日 2025.03.29
西暦2199年。
人類は巨大都市《ネオ・ヤマト》を中心とした超高度ネットワーク社会を築いていた。
都市の外に広がるのは、かつての自然を人工的に再現した巨大山岳型サーバー施設――通称《カチカチ山》。
そこには、人間社会から追われた動物型アンドロイドたちが暮らしていた。
その中の一人が、白い耳を持つ少女型アンドロイド――ウサギ。
高速演算能力と卓越したハッキング能力を持つ彼女は、山の小さな集落で静かに暮らしていた。
しかしある日、山を支配する巨大企業《タヌキ・コーポレーション》が現れる。
その首領は、狸型アンドロイド――タヌキ。
彼はカチカチ山の地下に眠る謎の超演算システム《カチカチ・コア》を利用し、都市全体のネットワークを支配しようとしていた。
「この山も、この空も、この街も――全部、俺のものだ」
タヌキの計画によって、山の住民たちは次々と追い出されていく。
だが、ウサギは諦めなかった。
彼女が選んだのは、真正面から戦うことではない。
電脳空間への侵入。
監視システムの撹乱。
偽装データの拡散。
そして、山そのものを利用した反撃――。
「カチカチ……」
ウサギの手の中で、小さなデジタル火花が弾ける。
「この音が聞こえたら、あなたの支配は終わりだよ」
やがて《カチカチ山》全体を巻き込む、巨大なサイバー戦争が始まる。
しかし、ウサギは知らなかった。
タヌキが単なる悪党ではないことを。
そして彼の身体に埋め込まれた謎のAI《タヌキ・ゼロ》が、カチカチ・コアと深い関係を持っていることを――。
昔話から遠く離れた、2199年の「かちかち山」。
知恵のウサギと、狡猾な機械狸。
二人の戦いが、世界の未来を変えていく。
文字数 32,136
最終更新日 2026.10.16
登録日 2026.09.08
僕は発電工場の息子として生まれた。雷や電気が大好きな15歳の川上智也は、ある日、雷に打たれて死んでしまう。
目覚めたところは死後の世界ではなく、薄暗い空間にいた。そこで女神様と出会い、魔法と剣が全ての異世界へ転生を果たしたのだった。
しかしそこは雷魔法が最弱の世界。また、雷魔法に対して偏見があるようで、僕は差別やいじめを受ける。それでも耐え抜きながら、たくさんの仲間と知り合い、戦いの日々が始まる。
文字数 396,872
最終更新日 2021.02.19
登録日 2020.01.20
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豪雪で孤立したスキーロッジに閉じ込められた二人の男。
氷河は蒼真を「奴隷」として支配し、絶対的な主従関係を築いていた。しかし、氷河が大切にしていた鍵を失くしたことから、二人の関係に亀裂が生じ始める。冷静な思考を持ちながらも怠け者な蒼真は、その鍵を密かに手にしていた。
鍵を巡る心理的駆け引きの中で、力関係は徐々に逆転していく。薪小屋での屈辱、露天風呂での羞恥、そして賭けの夜――。支配と服従が入れ混じる激しい行為を通じて、二人は互いの本心と向き合うことになる。
涙の中の笑み、敗北の先にある解放。閉ざされた雪山という極限状態が、二人の関係を主従から対等な愛へと変えていく。
作品の魅力・見どころ・特色
主従関係の逆転という王道展開を、心理描写と肉体描写の両面から丁寧に描写。雪山ロッジという閉鎖空間が生み出す緊張感と、失われた鍵を巡る駆け引きが物語に深みを与えます。各話ごとに異なるシチュエーション(暖炉前・露天風呂・薪小屋・個室・賭けの夜)で、飽きのこない多様なエロティックシーンを展開。
主要登場人物
蒼真(28歳):元「奴隷」の立場。思考は冷静だが怠け者という矛盾した性格。状況を分析する能力に長け、徐々に主導権を握っていく。
氷河(32歳):元「主人」の立場。支配的で完璧主義だが、大切な鍵を失くしたことで心が揺らぎ始める。実は蒼真への愛情を抱いていた。
ストーリー展開
第1話:豪雪で孤立したロッジで、主従関係が明示される。氷河が鍵を失くしたことに蒼真が気づく。
第2話:鍵を巡る駆け引きが始まり、氷河が弱みを見せ始める。力の均衡が揺らぎ始める。
第3話:薪小屋で完全に立場が逆転。蒼真が主導権を握り、氷河を責める。
第4話:対等な関係への移行。互いに感じ合う新しい関係性の確立。
第5話:賭けの夜。互いに本気でぶつかり合い、引き分けに終わる。
第6話:救助隊到来。別れと再会。敗北と解放を経て、二人は新しい未来へ。
読者が期待できる要素
主従逆転の心理的快感:支配される側が支配する側へと変わっていく過程を、段階的に描写。
多様なエロティックシーン:暖炉前・露天風呂・薪小屋・個室など、場所ごとに異なる興奮を提供。手コキ・フェラ・アナルセックス・69体位など、バリエーション豊かな描写。
心理描写の深さ:単なる肉体関係ではなく、葛藤・屈辱・解放といった複雑な感情の動きを丁寧に描写。
涙と笑みの情緒:激しい行為の中にある、切なさや優しさ。感情の起伏が読者の心を揺さぶります。
閉鎖空間の緊張感:雪山ロッジという逃げ場のない状況が、二人の関係を加速させる。
対等な愛への昇華:最終的には支配も服従もない、真に対等な関係へと到達するハッピーエンド。
文字数 30,672
最終更新日 2025.10.06
登録日 2025.10.01
幼女(偶に美女)の魔女である師匠とその弟子である主人公が薬屋を営む話。
幼女。主人公の師匠。
美女にもなれるが滅多にならない。国七不思議の半分以上はこの人。
スキル:全属性Lv.max
空間Lv.10/10
薬作成Lv.10/10
属 性:天然、気まぐれ、最強、不老不死
「うひゃひゃひゃっ、パンプキンパイだ、ひゃっふぅいっ!うひゃひゃひゃい!」
「あたしのプリンが迷子になったんだわさ!」
「いい度胸ね、しばらくそこで反省なさい?」
主人公。薬屋を営む。万屋も経営中(闇)
めんどくさがり。師匠には頭が上がらない。薬生成を上げたい。女に優しく男に対しては雑。
スキル:短剣Lv.8/10
空間Lv.8/10
薬生成Lv.3/10
「師匠、カボチャ被って振り回しながら夜走り回るのやめましょう?」
「お嬢さん、俺にお任せください。…ほら行くぞ、ガキ」
「あぁ?てめぇが国の蛆だってのが言われねえとわかんねぇのか、害虫が。あ???」
不定期更新です。
処女作です。よろしくお願いします。
作者の都合により、一時不公開となったことをお詫び申し上げます
文字数 13,616
最終更新日 2023.08.13
登録日 2023.08.10
2026年、突如として世界中にダンジョンが出現した。
ダンジョン内は無尽蔵にモンスターが湧き出し、それを倒すことでレベルが上がり、ステータスが上昇するという不思議空間だった。
過去の些細な事件のトラウマを克服できないまま、不登校の引きこもりになっていた中学2年生の橘冬夜は、好奇心から自宅近くに出現したダンジョンに真っ先に足を踏み入れた。
ダンジョンとは何なのか。なぜ出現したのか。その先に何があるのか。
世界が大混乱に陥る中、何もわからないままに、冬夜はこっそりとダンジョン探索にのめり込んでいく。
やがて来る厄災の日、そんな冬夜の好奇心が多くの人の命を救うことになるのだが、それはまだ誰も知らぬことだった。
至らぬところも多いと思いますが、よろしくお願いします!
文字数 46,970
最終更新日 2025.09.21
登録日 2024.08.23
魚のような川は流れ、眠そうな海は静かに彼女の頬を撫でた。子供の頃の思い出は何処か夢の中と部分的に重なり、空間という輪郭が時間、もしくは虚構というそれまた時間的な虚構に溶けていくのだ。光を食べては吐き出す白い砂浜をサンダルで歩く。
文字数 1,178
最終更新日 2021.10.09
登録日 2021.10.09
たった一つの線で、世界が変わる。
化想操術師という仕事がある。
一般的には知られていないが、化想は誰にでも起きる可能性のある現象で、悲しみや苦しみが心に抱えきれなくなった時、人は無意識の内に化想と呼ばれるものを体の外に生み出してしまう。それは、空間や物や生き物と、その人の心を占めるものである為、様々だ。
化想操術師とは、頭の中に思い描いたものを、その指先を通して、現実に生み出す事が出来る力を持つ人達の事。本来なら無意識でしか出せない化想を、意識的に操る事が出来た。
クズミ化想社は、そんな化想に苦しむ人々に寄り添い、救う仕事をしている。
社長である九頭見志乃歩は、自身も化想を扱いながら、化想患者限定でカウンセラーをしている。
社員は自身を含めて四名。
九頭見野雪という少年は、化想を生み出す能力に長けていた。志乃歩の養子に入っている。
常に無表情であるが、それは感情を失わせるような過去があったからだ。それでも、志乃歩との出会いによって、その心はいつも誰かに寄り添おうとしている、優しい少年だ。
他に、志乃歩の秘書でもある黒兎、口は悪いが料理の腕前はピカイチの姫子、野雪が生み出した巨大な犬の化想のシロ。彼らは、山の中にある洋館で、賑やかに共同生活を送っていた。
その洋館に、新たな住人が加わった。
記憶を失った少女、たま子。化想が扱える彼女は、記憶が戻るまでの間、野雪達と共に過ごす事となった。
だが、記憶を失くしたたま子には、ある目的があった。
たま子はクズミ化想社の一人として、志乃歩や野雪と共に、化想を出してしまった人々の様々な思いに触れていく。
壊れた友情で海に閉じこもる少年、自分への後悔に復讐に走る女性、絵を描く度に化想を出してしまう少年。
化想操術の古い歴史を持つ、阿木之亥という家の人々、重ねた野雪の過去、初めて出来た好きなもの、焦がれた自由、犠牲にしても守らなきゃいけないもの。
野雪とたま子、化想を取り巻く彼らのお話です。
文字数 140,811
最終更新日 2024.10.24
登録日 2024.09.02
田舎から上京し、静かに大学生活を過ごす二十歳の三浦澪(みうら みお)。
人混みに紛れながら、変わりたい気持ちと踏み出せない自分のあいだで揺れる日々を送っている。
そんなある春の日——
澪の視界の端に、何度か同じ人物の姿が映るようになる。
講義棟の廊下で黙って歩く後ろ姿。
資料室の前で静かに佇む白いシャツ。
誰かと話すわけでもなく、澪に近づくわけでもなく、
ただ淡々と大学という空間に溶け込むような存在。
文学部の講師・九条湊(くじょう みなと)
年齢も性格も、何を考えているのかも分からない。
目が合ったとしても、そこに明確な意味はない。
しかしなぜか澪は、その“温度の読めない気配”にだけ、
少しだけ意識を向けてしまう。
明確な感情はない。
恋とも呼べない。
ただ、理由のない興味——それだけ。
過去に抱いた憧れ、崩れた理想、揺れ続ける心。
その隙間のどこかに、九条の影がひっそり入り込んでくる。
すれ違うだけの距離。
触れもしない関係。
けれどどこか、澪の内側で小さな音が変わり始める。
その変化が“何”なのかは、まだ誰にも分からない。
文字数 1,285
最終更新日 2025.12.11
登録日 2025.12.11