王太子である彼と、公爵令嬢である彼女は、誰もが認める婚約者同士。
人前では距離を保ちながらも、二人は確かに想い合っていた。
――あの日、“聖女”が現れるまでは。
国と民に求められる存在である聖女。
彼女を拒めば、王太子としての立場は揺らぐ。
そして何より、大切な婚約者を巻き込んでしまう。
だから彼は選んだ。
彼女を守るために、距離を取ることを。
冷たく振る舞い、関係を曖昧にし、あえて突き放す。
それが最善だと信じていた。
だが彼女は、すべてを理解していた。
だからこそ何も言わず、
ただ静かに――婚約解消を申し出た。
「それが殿下のご判断であれば、従います」
彼女は最後まで優しく微笑んでいた。
そして、すべてが終わった後で彼は気づく。
守られていたのは、自分の方だったのだと。
もう遅い。
彼女は今も穏やかに微笑んでいる。
――その微笑みが、自分に向けられることは、二度とない。
文字数 11,634
最終更新日 2026.04.24
登録日 2026.04.21
婚約者である王子から、静かに告げられた言葉。
――「君は、もう必要ない」
感情をぶつけることもなく、彼女はただ頷いた。
すべては、予定通りだったから。
彼女が選んだのは、“自分の記憶を世界から消す魔法”。
代償は、自身という存在そのもの。
名前も、記憶も、誰の心にも残らない。
まるで最初からいなかったかのように。
そして彼女は、消えた。
残された人々は、何かが欠けていることに気づく。
埋まらない違和感、回らない日常。
それでも――誰一人、思い出せない。
遅すぎた後悔と、届かない想い。
すべてを失って、ようやく知る。
“いらない存在”など、どこにもいなかったのだと。
これは、ひとりの少女が消えたあとに、
世界がその価値に気づく物語。
そして――彼女だけが、静かに救われる物語。
文字数 14,331
最終更新日 2026.04.24
登録日 2026.04.18
王都の春。
社交界が最も華やぐ季節に、公爵令嬢レティシアへ突然の婚約が命じられる。
相手は名門貴族でも王族でもなく――
平民出身の王城騎士、カイル・グレイ。
身分違いの婚約に周囲がざわめく中、レティシアはすぐに気づく。
これは恋でも偶然でもなく、王城の思惑によって“配置された関係”だということに。
貴族社会を読み解く令嬢と、剣で国を守ってきた騎士。
二人は形式だけの婚約者ではなく、互いの役割を補い合う「対等な契約」を結ぶ。
しかし調査を進めるうちに、十年前に王国を揺るがした事件の真実が浮かび上がる。
王弟の罪とされた粛清、消された記録、そして王権そのものを変えようとする思想――。
婚約は罠であり、試験であり、そして未来を選ぶための舞台だった。
やがてレティシアは社交界を動かし、
カイルは王としての資質に目覚めていく。
恋が政治を動かし、政治が国の歴史を書き換えるとき。
“予想外の婚約者”は、やがて――
共に王と王妃となる存在へ変わっていく。
これは、政略結婚から始まった二人が、
国と未来を選び直すまでの物語。
文字数 22,060
最終更新日 2026.04.24
登録日 2026.04.09
名前を呼ばれた瞬間、
人は「役割」を背負わされる。
主人公は、
怪異が“見えてしまう”人間だった。
そして同時に、
誰かに頼られ、
誰かを救う位置に
立たされやすい人間でもある。
助ければ、感謝される。
応えれば、期待される。
それは善意であり、
同時に――逃げ場を奪う呪いでもあった。
怪異は問いかけてくる。
世界は状況を用意してくる。
「それでも、お前がやるんだろう?」
主人公は逃げる。
距離を取る。
見届けるだけで済ませようとする。
だが、逃げきれたと思ったその瞬間こそが、
いちばん危ない。
救えたと思ってしまう。
役割を終えたと、勘違いしてしまう。
第三章までで描かれるのは、
怪異との戦いではない。
世界を変える物語でもない。
――自分を、
“使われる人”にしないための、
小さくて、静かな抵抗。
名前を呼ばれないまま、
立っていられるかどうか。
この物語は、
そこから始まる。
文字数 55,312
最終更新日 2026.04.24
登録日 2026.02.08
王城には、誰も知らない部署がある。
婚約破棄、断罪、追放――
華やかな“悪役令嬢の最期”の、そのあとを担当する場所。
王城更生局・断罪後支援係。
侍女ミレイユの仕事は、断罪された令嬢たちの生活を立て直すことだった。
名前を捨てる者。
身分を失う者。
恋を置き去りにしたまま生き直す者。
彼女は感情を挟まない。
救うのではなく、ただ「生き方」を整えるだけ。
――そう決めていた。
だがある日、担当になったのは
“史上最悪の悪役令嬢” エルシア・フォン・ラーデン。
完璧に揃った罪状。
誰もが納得した断罪。
けれど彼女は静かに言った。
「私は、何もしていません」
調べるほど浮かび上がる不自然な記録。
そして王国に存在する、“悪役令嬢を必要とする仕組み”。
これは、物語から追い出された者たちが――
舞台の外で幸福を選び直す物語。
断罪の翌日から始まる、再生の悪役令嬢譚。
文字数 16,804
最終更新日 2026.04.18
登録日 2026.04.09
「その断罪は、本当に“真実”ですか?」
公爵令嬢レティシア・フォン・アルヴェインは、いずれ“悪役令嬢”として断罪される運命にあった。
婚約破棄、名誉の失墜、そして孤立――
すべては、巧妙に仕組まれた“誤解”と“印象”によって導かれる破滅の結末。
だが、その運命を知る者が一人だけいた。
彼女の幼馴染であり、侍女でもあるミレイユ。
過去に“守れなかった後悔”を抱える彼女は、未来に起こるはずだった破滅の流れを読み取り、静かに介入を始める。
密室を避け、証言を残し、誤解の芽を摘む――
“断罪される条件そのもの”を、一つずつ潰していくために。
やがて訪れるはずだった断罪の夜。
しかしその場で起きたのは、断罪ではなく――
「何も起きない」という、静かな崩壊だった。
これは、悪役令嬢が救われる物語ではない。
“悪役令嬢という役割そのもの”が消えていく物語。
運命は回避するものではなく、選び直すもの。
静かに、確実に、未来を書き換えていく――
侍女視点で描かれる、異質な悪役令嬢物語。
文字数 10,977
最終更新日 2026.04.16
登録日 2026.04.12
世界の端に、地図に載らない小さな宿がある。
そこへ辿り着けるのは、
旅に疲れた人、居場所を失った人、
そして――少しだけ立ち止まりたくなった人だけ。
宿の決まりは三つ。
滞在は三日まで。
名前を名乗らなくてもいい。
出発の日、灯りをひとつ置いていくこと。
宿を守るのは、無口な管理人リノ。
彼女はただ食事を出し、話を聞き、見送るだけ。
救うわけでも、答えを与えるわけでもない。
けれど訪れた人々は、帰る頃にはほんの少し前を向いている。
元勇者の青年。
魔法を怖がる少女。
それぞれの「終わりかけた物語」が、静かに動き出す。
これは、終わりの場所ではない。
また歩き出すための、途中の宿の物語。
文字数 15,127
最終更新日 2026.04.04
登録日 2026.03.26
【13話+α 完結・投稿済】
「悪役令嬢」と噂される侯爵令嬢エリシア・ローゼンフェルト。
冷酷無比と名高い公爵家嫡男レオンハルト・グランディールの婚約者である彼女は、社交界では“いずれ婚約破棄される存在”として密かに注目されていた。
なぜなら――物語ではいつだって、選ばれるのは聖女だから。
聖女候補、令嬢たち、そして貴族社会の思惑。
次々と現れる「婚約を奪おうとするヒロイン枠」。
しかし当の公爵令息は。
「彼女は私の人生の最優先事項ですが?」
……まったく揺るがなかった。
これは、
悪役令嬢だと思い込んでいる真面目な令嬢と、
婚約者を溺愛しすぎて常識が少しズレている完璧公爵令息の、
外野だけが騒がしい勘違いラブコメディ。
断罪? 婚約破棄?
――その予定は最初から存在しない。
「悪役令嬢なのに、誰も敵になれない」溺愛物語。
文字数 21,262
最終更新日 2026.03.31
登録日 2026.03.22
VRMMO《アストラル・リンク》――
それは、女性向けファンタジー世界を舞台にした自由度の高い冒険ゲーム。
ゲーム初心者のミアは、偶然テイマー職を選び、相棒として小さなスライム「スラ」と出会う。
しかしそのスライムは、誰も見たことのない“特別な個体”だった。
ひょんなことから出会ったのは、ゲーム最前線を走る10人のトップランカーたち。
守られるだけだった初心者は、仲間と共に戦い、成長し、やがて世界中から注目される存在へと変わっていく。
これは――
小さな相棒と初心者テイマーが、最強プレイヤーたちと紡ぐ冒険のはじまりの物語。
「初心者だけど、一緒なら戦える。」
心が繋がるとき、奇跡の進化が始まる。
文字数 12,898
最終更新日 2026.03.27
登録日 2026.03.18
「死に様なら、もう八通りも見てきたわ」
公爵令嬢レオノーラは、義妹ミアを「聖女」として引き立てるための「悪役」として、九回の人生をループしてきた。
どれほど善人に振る舞おうと、どれほど婚約者の王太子に縋ろうと、最後は常に処刑台か追放。
すべては、周囲の好感度を強制的に書き換えるミアの「偽りの奇跡」のせいだった。
十度目の十六歳。
累計八十年の人生を経験し、精神年齢も魔導知識も「枯れた」域に達したレオノーラは、ついに決意する。
「いい子を演じるのは、もう飽きたわ。今世は悪役令嬢らしく、あなたの『幸運』をすべて奪い尽くしてあげる」
ミアが手に入れるはずだった【癒やしの聖杯】を先回りして献上し、
ミアの信奉者になるはずだった【最強の騎士団長】を魔導の力で救済して味方につけ、
王太子との「思い出の場所」を物理的に整地してバラ園に変える。
「あら、殿下。ゴミ(思い出)を片付けて何が悪いのかしら?」
冷徹に、そして優雅に「ざまぁ」を完遂していくレオノーラ。
そんな彼女の前に、前世では「死神」と恐れられた隣国の皇帝ギルバートが現れる。
彼は、聖女の補正が効かない唯一の男。そして、誰よりも重すぎる独占欲を抱えた男だった――。
「君は世界を奪え。私は、そんな君を奪うとしよう」
これは、九回殺された悪役令嬢が、十回目で「真の幸福」と「最強の地位」を力ずくでもぎ取る、逆転無双の物語。
【全10話+後日談 完結まで投稿済 最終投稿は3/27】
文字数 15,249
最終更新日 2026.03.27
登録日 2026.03.19
結婚して十三年。私たちの旅行は、いつも車で気ままに走るドライブ旅だった。
予定はゆるく、目的地もその場しだい。それが当たり前だと思っていたある日、夫が突然予約してきたのは――クルーズ船の旅。
海の上で過ごす七日間。急がなくていい時間。何もしなくても進んでいく景色。
最初は落ち着かなかった船旅も、知らない人との出会い、寄港地の街歩き、そして静かな夜を重ねるうちに、私たちは少しずつ「同じ時間」を取り戻していく。
これは、大きな事件も奇跡も起きない物語。ただ夫婦ふたりが、もう一度同じ方向を向くまでの、やさしい船旅の記録。
文字数 18,854
最終更新日 2026.03.21
登録日 2026.03.11
気が小さくて、人に頼るのが苦手な52歳の由紀。
ある日、信じてしまった一本の連絡から、彼女は詐欺被害に遭ってしまう。
誰にも言えない。
責められるのが怖い。
何より、自分自身を許せなかった。
外に出るのも怖くなり、静かに縮こまっていく日々。
けれど――
同じように傷ついた人たちとの小さな出会いが、止まっていた時間を少しずつ動かしていく。
これは、特別な誰かの成功物語ではありません。
失敗したままでも、怖いままでも、
もう一度前を向こうとした「普通の人」の、小さな再出発の物語。
もし今、ひとりで抱え込んでいるなら。
この物語が、あなたの隣に座れますように。
文字数 16,743
最終更新日 2026.03.21
登録日 2026.03.12