十年前、事故で両親を亡くしたわたし。以来、母方の叔母である奏さんと一緒に暮らしている。
「これからは、私が一緒にいるからね」
そう言って、幼いわたしの手を握ってくれた奏さん。
敏腕編集者で仕事人間な彼女は、家事がちょっと……というか、かなり苦手。
だから、ずっとわたしが家事を担ってる。
奏さんのために、彼女の好物を作って帰りを待つ日々。
ゴハンを作るのは楽しい。だって、奏さんが「美味しい」って言ってくれるから。
「おかえりなさい」と出迎えて、「ごちそうさま」を聴くまで。それがわたしの至福の時間。
だけど最近、奏さんの様子が少しおかしくて――。
一緒に並んで手をつないでくれていた奏さん。彼女が自分の人生を一歩前へと歩きだした時、わたしの手は何を掴んだらいいんだろう。
文字数 42,078
最終更新日 2023.04.18
登録日 2023.04.09
14歳の少年、航輝。
もう海に出る船もほとんどない寂れた漁師町に両親と祖父と暮らしている。
海には、コンビナートと高速道路を繋ぐ橋の橋脚が林立していて、その先にある海と空を切り取っている。額縁のように、手に届かない世界のように。
「まるで牢獄みたいだ」
航輝は思う。
いつか、あの先の、幼い頃に感じた海をこの手に取り戻す。
少年の海への憧れ。
ゴムボートを手に入れたという友達和宏、幼なじみの健太。
航輝は彼らを誘って、海に出ること、あの橋脚の向こうの世界へと冒険を提案する。
中学3年生の夏。
少しずつ未来が決められていくことに反発し、思いっきりバカをやりたかった三人の、ひと夏の無茶で無謀な冒険物語。
文字数 12,279
最終更新日 2023.04.01
登録日 2023.04.01
私の彼は死にやすい。
五百年ぶりの聖女として認められたアリューシア。彼女の婚約者として選ばれたのは、第一王子のセイラム。
しかし、セイラムは死にやすかった。
幼い頃から何度も継母である王妃に殺されかけ……というか、殺された。
でも。
――チュッ。
アリューシアが聖女の証である竜の石に口づけ、時を戻す。
聖女として選ばれたアリューシアだけど、彼女にできるのは、この時戻しだけ。
時を戻して、セイラムが死ぬ未来を回避する。
何度でも、何度でも。
侍女のミレットと従僕のレフに協力を(強制的に)あおぎ、今日もアリューシアはセイラムを生かすために竜の石を使って時を巻き戻す。
セイラムを殺させやしない。彼と絶対幸せになるの。
そんな死亡フラグ、何度だって叩き折ってやるんだからっ!!
文字数 51,698
最終更新日 2023.03.19
登録日 2023.03.19
貧乏令嬢が、元冒険者の従者を連れてモンスター退治の旅に出たら、森の中でうっかりスライムの触手に襲われちゃって、嘘を重ねた従者においしくいただかれちゃうお話。
文字数 14,647
最終更新日 2023.02.18
登録日 2023.02.18
とある中国の後宮。皇帝は皇后となった女を蛇蝎のごとく嫌っていた。
――女が、皇帝の愛した寵姫を殺してまでその地位に上り詰めたから。寵姫を殺したのは皇后。
「お飾りの皇后」「寵愛をいただけない哀れな皇后」
そんな皇后の冷たい室へ、九年ぶりに皇帝が訪れる。
「九年前のご寵姫だけじゃない。新たに後宮に上がることになった妹にまでその悋気をみせた」
愛されないとわかっていても、その皇后という地位にしがみつくのか。自分の妹ですら叩き出すのか。
嫉妬、悋気、強欲、傲慢、そして冷酷。稀代の悪女。笑い方を忘れた女。
皇帝は語る。
「今まですまなかった」――と。
―――――――
「念其霜中能作花」は「念(おも)え 其(そ)れ霜中に能(よ)く花を作(さく)すを」と読みます。雪の中であってもよく花を咲かせる梅を素晴らしいと褒め称える漢詩。中国南北朝時代の詩人、鮑照の『梅花落』から採用させていただきました。
梅の花=開花期は1月~3月。花言葉は「上品、高潔、忍耐」。
香栄=梅の別名、「香栄草(かばえぐさ)」から。
恵風=2月の別名、「恵風(けいふう)」から。
文字数 9,199
最終更新日 2023.02.18
登録日 2023.02.18
記憶を失くし、ポテンというかコロンと道端に転がっていたのを助けられたわたし。“ミリア”という名前をつけ、面倒を見てくれたのは、“魔王”とあだ名される将軍、ヴィラード。その勇猛さもさることながら、何より顔が怖い!! つり上がった目から放たれる、鋭すぎる眼光は、まるで石化光線。
そんな将軍だけど、なんと、この国の後継者たる王女殿下の王配候補に選ばれて……!?
え!? 将軍なんか選んで大丈夫!? 王女さま、石化させられちゃうよ!?
もう一人の候補、アルディンさまのが数倍マシだよね!? お優しいし、身分も高いし、カッコいいし。なにより、怖くないし。
まあ、将軍自身も、自分が選ばれるとは露ほどにも思ってないみたいだけど。将軍にお仕えする、(唯一の)侍女としては、主の未来が気になるわけで。
――王女さま、本当に将軍を選ばないのかな。
怖いのはわかるけど。でも、優しいところもあるのにな……。
拾われ侍女の、魔王お仕えライフ。とりあえずの目標は、目を見て魔王と話すこと――です!?
文字数 71,472
最終更新日 2023.02.16
登録日 2023.02.10
伯爵家でキッチンメイドとして働いていたリーナは、空から降ってきた灰色猫を助け、不思議なひとときを猫と過ごす。
数か月後。一方的な理由で伯爵家を解雇され、次の新たな勤め先となった公爵家の屋敷で、猫と再会を果たす。猫を〈アッシュ〉と名付け、再会を喜ぶリーナ。
その一方で、リーナは屋敷の主であるヴィッセルハルト公爵家の嫡男、クラウドという人物を知ることとなる。
銀灰色の髪、深い青色の瞳の主には、なにか秘密があるようで……⁉
「リーナ、お前の協力が必要なんだ」
クラウドの言い出した、とんでもない協力とは……⁉
文字数 94,436
最終更新日 2023.01.31
登録日 2023.01.17
「お前に期待するのは、その背後にある実家からの支援だけだ。それ以上のことを望む気はないし、余に愛されようと思うな」
新婚初夜。政略結婚の相手である、国王リオネルからそう言われたマリアローザ。
持参金目当ての結婚!? そんなの百も承知だ。だから。
「承知しております。ただし、陛下の子種。これだけは、わたくしの腹にお納めくださいませ。子を成すこと。それが、支援の条件でございますゆえ」
金がほしけりゃ子種を出してよ。そもそも愛だの恋だのほしいと思っていないわよ。
出すもの出して、とっとと子どもを授けてくださいな。
文字数 76,180
最終更新日 2023.01.27
登録日 2023.01.27
――リーゼファ・アインローゼ。汝をナディアード殿下付き護衛に任命する。
憧れのナディアード殿下のおそばに♡ 護衛なんだから、ずっと一緒にいられるのよね♡ いっぱいお守りしちゃって、「リーゼファ」なんて名前まで呼ばれるほど仲良くなったりして♡
そして、そして、そして……。
――きみといると、僕はただのナディアード、一人の男として安らぎを感じるんだ。
――殿下……。
――二人っきりの時は、「殿下」ではなく、「ナディアード」と名前で呼んでくれないか。
――ナ、ナディアードさま……。
なーんて甘い展開が待ってたりして……キャーッ!!
とかなんとか、頭のなかでイロイロ妄想するけれど、実際の私は、表情一つ変えない(変わらない)し、口に出して何かを伝えることもない。頬を染めたこともなければ、眉一つ動いたこともない。
寡黙な父と厳格な祖母に育てられた結果、ついた二つ名は、「氷壁」。
氷のように冷たく、硬く、取り付く島のない女。
騎士として充分な実力を備えているものの、女性としては面白味もかわいげもない。
今日も、脳内煩悩を爆発させながら、黙々と護衛の任に就く。
思考と現実。ギャップ激しい一人の騎士の物語。
文字数 85,170
最終更新日 2023.01.17
登録日 2023.01.17
「借金を肩代わりする条件として、後宮に上がって欲しい」
ポヤポヤ父さまが詐欺にあってこさえてしまった借金五百五十貫。それを肩代わりしてくれたのは、皇帝の侍中を務める、范 啓騎。
後宮嫌いの皇帝。その皇帝の寵愛をいただくこと。それが、借金肩代わりの条件だった。
ならばと勇ましく後宮に乗り込んだものの、全く姿を現さない皇帝。代わりに出会ったのは、高 栄順と名乗る武官。
「見せかけの月でよろしければ、差し上げましょう」
見せかけの月。すなわち、みせかけの妃になるということ。
後宮からのラブコールに辟易としていた皇帝のみせかけのご寵妃となって、陛下に平穏を授ける。それが栄順から提案された仕事。
栄順が、かくれんぼ皇帝その人だった?
これは、奏帝国第十二代皇帝景帝と、唯一の寵愛を得た妃の、ヒミツの出会い(と契約)の物語。
※ このたび、「第16回恋愛小説大賞」で奨励賞をいただきました!!ワーイ(/・ω・)/
499位と半ば諦め順位だったので、メチャクチャうれしいです。
うれしすぎて泣きそう。てか、泣いた。
応援してくださった方、本当にありがとうございました。
※ そして、二度目の正直? 2024年1月に開催される、「第7回キャラ文芸大賞」にエントリーしました。コンテストでも応援いただけると幸いです。
文字数 96,002
最終更新日 2022.08.30
登録日 2022.08.05
公爵令嬢、エリーズ・ルロワは断頭台にいた。
王太子、フェルディナンの新たな婚約者となったアンジェリーヌ嬢をイジメた。たったそれだけの理由で。
私、イジメてなんかいないわ。なにもしていない!! 冤罪よっ!!
エリーズがどれだけ叫ぼうと、処刑は変わらない。粛々と刑は執行され、首が落とされた……はずだった。
次にエリーズが気づいたのは、自分の寝台の上。そこは三か月、時が巻き戻った世界。
私、タイムリープしたの!? 私、生きてる!?
そして思い出す前世。前世の自分は「日本」という国の普通のOLだったこと。
……いいわ。前世の知識も総動員して断罪回避よ。
あんな奴らに両親も誰も殺させやしない。
私たちを殺す!? 資産を奪う!?
いいわ、そっちがその気なら、こっちもやってやる。よろしい、ならば革命よ!!
文字数 47,327
最終更新日 2022.08.21
登録日 2022.08.05
「ねえ、リュリ。アナタ、協力してくれるわよね」
ローゼリィお嬢さまの一言で始まった、とんでもないお願い。
お嬢さまは、あたしたちのいるこの世界とは別の所、異世界からの転生者で、今いるこの世界は、「ゲーム」のなかなのだと言う。そしてお嬢さまは、「悪役令嬢」。主役の女の子をイジメて、婚約破棄、断罪、下手すりゃ処刑という、最悪な未来の待つお立場なのだ。
――げぇむ?
――てんせい?
――あくやくれいじょう?
なんのことやらサッパリわかりませんが、とにかく、あたし、リュリはお嬢さまのためにガンバリマスッ!! 最悪な未来を回避するために、なんだってお手伝いいたしますともっ!!
……って、え!?ええっ!?
お手伝いって、まさか、お嬢さまの身代わりに学園に通うことなんですかっ!?
いや、それは、ちょっとさすがに。
しかも、そこにはお嬢さまを破滅させる未来を引き寄せてしまう、「攻略対象者」の皆さまもいらっしゃるのっ!? それも七人っ!!
うえええっ!! あたし、バレずにお嬢さまのフリ、出来るんでしょうかっ!!
ええいっ、こうなったら、女は度胸よ、根性よ。やってやろうじゃない……の、って。やっぱり無理です、お嬢さまぁ!!
文字数 118,187
最終更新日 2022.08.02
登録日 2022.08.02
「リリー。アナタ、結婚なさい」
それは、ある日突然、おつかえする王妃さまからくだされた命令。
まるで、「そこの髪飾りと取って」とか、「窓を開けてちょうだい」みたいなノリで発せられた。
お相手は、王妃さまのかつての乳兄弟で護衛騎士、エディル・ロードリックさま。
わたしのあこがれの騎士さま。
だけど、ちょっと待って!! 結婚だなんて、いくらなんでもそれはイキナリすぎるっ!!
「アナタたちならお似合いだと思うんだけど?」
そう思うのは、王妃さまだけですよ、絶対。
「試しに、二人で暮らしなさい。これは命令です」
なーんて、王妃さまの命令で、エディルさまの妻(仮)になったわたし。
あこがれの騎士さまと一つ屋根の下だなんてっ!!
わたし、どうなっちゃうのっ!? 妻(仮)ライフ、ドキドキしすぎで心臓がもたないっ!!
文字数 72,812
最終更新日 2022.08.01
登録日 2022.07.30
――俺、入れ替わってる!?
俺、瀬戸和樹は、ある日起きたら、見知らぬ女性のなかにいた。
見知らぬ……!? いや、知ってる。これ、母さんの身体だ。それも22年前の。
1999年の年末。俺は、そこで母さんになっていた。
ちょうどその時期は、母さんが俺を妊娠する時期で。ってことは、ここには俺の知らない父さんがいるわけで。
誰が俺の父さんなんだ? んでもって、いつになったら元に戻るんだ?
母さんとして過ごす日々。母さんと仲のいい男性たち。俺の知らない母さんの過去。今さら父さんが恋しい歳でもないけど……やっぱり気になる、父さんのこと。
母さんと縁があるのは、幼なじみの「ヤマト」と「タカヒロ」。このどちらかが父さんなんだろうけど。
ヤマトは研究のためアメリカに旅立つし、残るはタカヒロか? タカヒロが俺の父さんなのか?
そんな時、ヤマトが倒れたと知らせが入る。病におかされた彼の生命はそう長くない。
死ぬ間際の人間だからか。ヤマトは、母さんのなかにいた俺を見つけてくれた。
そして。
―-生まれてくれてありがとう、と。
これは、俺が「俺」を知るための物語。
俺が、父さんと母さんから受け取ったものを未来へと繋いでいく物語。
文字数 21,435
最終更新日 2022.07.30
登録日 2022.07.30