現代文学 小説一覧
1
制限時間は30分だ。そして、すでに25分が過ぎた。残りは当然、5分。
これまでの25分で、突破に成功した道を振り返る。奴はいない。どこか物陰に隠れている可能性も考慮したが、ゴールまでの距離を考えたら伏兵がいる可能性は薄い。
残りの5分で目的地まで走り抜ける確率は、そう高くはないが、かといって低いとも言い難い。一世一代の大博打だ。
駆ける。駆ける。駆ける。駆ける。
若干の高揚感と共に、今までの25分間の過程が走馬灯のようによみがえる。
そう、この勝負が始まったのは、僅か25分前のことに過ぎなかった……。
文字数 3,865
最終更新日 2025.12.05
登録日 2025.10.25
2
3
4
文字数 1,110,481
最終更新日 2025.12.05
登録日 2024.03.24
5
季節の織り糸
季節の織り糸
さわさわ、風が草原を撫で
ぽつぽつ、雨が地を染める
ひらひら、木の葉が舞い落ちて
ざわざわ、森が秋を囁く
ぱちぱち、焚火が燃える音
とくとく、湯が温かさを誘う
さらさら、川が冬の息吹を運び
きらきら、星が夜空に瞬く
ふわふわ、春の息吹が包み込み
ぴちぴち、草の芽が顔を出す
ぽかぽか、陽が心を溶かし
ゆらゆら、花が夢を揺らす
はらはら、夏の夜の蝉の声
ちりちり、砂浜が光を浴び
さらさら、波が優しく寄せて
とんとん、足音が新たな一歩を刻む
季節の織り糸は、ささやかに、
そして確かに、わたしを包み込む
文字数 892,903
最終更新日 2025.12.05
登録日 2024.08.18
6
7
ある日、突然、小説家になろうから腐った蜜柑のように捨てられました。
エラーが発生しました
このユーザは規約違反のため、運営により削除されました。
前科者みたい
これ一生、書かれるのかな
統合失調症、重症うつ病、解離性同一性障害、境界性パーソナリティ障害の主人公、パニック発作、視野狭窄から立ち直ることができるでしょうか。
2019年12月7日
私の小説の目標は
三浦綾子「塩狩峠」
遠藤周作「わたしが・棄てた・女」
そして、作品の主題は「共に生きたい」
かはたれどきの公園で
編集会議は行われた
方向性も、書きたいものも
何も決まっていないから
カオスになるんだと
気づきを頂いた
さあ 目的地に向かって
面舵いっぱいヨーソロー
文字数 34,889
最終更新日 2025.12.05
登録日 2019.11.30
8
『赦されない恋の沼から――私が私を取り戻すまで』
赦されない恋の沼は
静かなふりをして
足もとをつかんだ。
甘い声が
やさしい指先が
孤独の隙間に
そっと入りこんで
光のように見えたのに。
気づけば
沈む音しかしなかった。
妊娠の知らせは
祝福ではなく、
四方八方からの
命令と責任の押しつけだった。
産むなと言う人。
産めと言う人。
責める人。
黙る人。
私の声だけが
どこにも届かない。
母の言葉は
凍ったナイフ。
「自業自得」
その刃先が
胸の奥で何度も折れた。
夫の家は
家族を名乗りながら
私ではなく
“子どもだけ”を欲しがった。
不倫相手は
恋を語った舌で
「困る」と言った。
世界中が
私を罰しているようだった。
一番苦しい時に
一番近い人たちが
誰も手を伸ばしてくれなかった。
それでも
お腹の奥の、小さな光だけが
責めることをしなかった。
助産師の手は
痛みに触れられる
初めての温度だった。
「あなたの人生の主役はあなた」
その言葉は
沼の黒い水を
ひとしずく、ひとしずく
すくい上げるように
心に落ちていった。
私は気づいた。
誰かに赦されるために
生きているんじゃない。
誰かの期待に
身体を差し出すために
生まれてきたんじゃない。
私を赦すのは
私だ。
あの日、出て行くと決めた瞬間
肺の奥で
初めて呼吸の音がした。
「私が育てる」
震える声でも
確かに私の声だった。
未来という名の
小さな掌が生まれた日に
私は泣きながら笑った。
赦されない恋が
私を壊したのではない。
誰かの都合に
自分を明け渡した日々が
私を沈めていただけ。
だからもう進む。
私の足で。
私の名前で。
私の選ぶ光へ。
沼はまだ背後で
ゆらりと揺れているけれど
私は振り返らない。
この腕の中の温度が
私を呼んでいるから。
赦されない恋の沼から、
私は今日、ようやく
“私”を取り戻した。
文字数 25,474
最終更新日 2025.12.05
登録日 2025.12.05
9
今年も「クリスマス作品」の依頼を受けました!
クリスマスと言えば「イエス様」の誕生日(?)。
イエス様のお母さんは「処女懐胎」の「マリア様」!
と言う事で今作は「まりあさん」主人公でーす!
ニコニコ商店街、ニコニコプロレスを舞台に「2025年のクリスマス」を締めくくりたいと思います!
クライアントさんから「新興宗教」や「マフィア」等の「社会問題」を絡めて欲しいとの依頼がありましたので、「こってりした」ストーリーにしてみました!
今回の「まりあさん」の名前の「万石《まんごく》まりあ」と言うのは、昭和の週刊誌の報道をきっかけに国会まで巻き込んだ「大誤報」事件の「千石イエス」様&「イエスの方舟」事件モチーフです!
是非とも「ウィキ」で「千石イエス事件」を先に読んでもらえるとわかりやすいと思います!
現在、「裁判中」の「元首相暗殺事件」の元になった「ややこしい宗教団体」や「チャールズマンソン事件」などとは違い、「ほっこりする宗教団体」っていうのもあるんですよねー!
まあ、私は「八百万《やおよろず》の神様」を信じてるのでいろんな神様がいて良いと思ってます!
「プロレスの神様」と呼ばれた「カール・ゴッチ」氏も大好きです(笑)。
途中、「カルト宗教扱い」された「まりあさん」と「ニコニコプロレス」が「ギスギス」、「ばたばた」としますが、最後は「くすっ」っと笑っていただけるようにする予定ですので、お付き合いいただけると嬉しいです!
では、昨年の「クリストキント」、「稀世ちゃん&サブちゃんのクリスマスデート」に引き続き、「大変な年末を過ごすニコニコメンバーを応援してくださいねー!」
よろひこー!
(⋈◍>◡<◍)。✧💖
文字数 27,888
最終更新日 2025.12.05
登録日 2025.11.29
10
赤井です。今回は「恋愛小説」です(笑)。
舞台は令和7年と昭和20年の陸軍航空隊の特攻部隊の宿舎「赤糸旅館」です。
80年の時を経て2つの恋愛を描いていきます。
「特攻隊」という「難しい題材」を扱いますので、かなり真面目に資料集めをして制作しました。
「第20振武隊」という実在する部隊が出てきますが、基本的に事実に基づいた背景を活かした「フィクション」作品と思ってお読みください。
日本を護ってくれた「先人」に尊敬の念をもって書きましたので、ほとんどおふざけは有りません。
過去、一番真面目に書いた作品となりました。
ラストは結構ややこしいので前半からの「フラグ」を拾いながら読んでいただくと楽しんでもらえると思います。
全39チャプターですので最後までお付き合いいただけると嬉しいです。
それでは「よろひこー」!
(⋈◍>◡<◍)。✧💖
追伸
まあ、堅苦しく読んで下さいとは言いませんがいつもと違って、ちょっと気持ちを引き締めて読んでもらいたいです。合掌。
(。-人-。)
文字数 124,743
最終更新日 2025.12.05
登録日 2025.11.02
12
『全部あげるって言ったよね?じゃあ責任も全部どうぞ』
笑顔で言うと、
あなたはようやく気づく。
“与える”って言葉は
光みたいに綺麗に響くけど、
その影にはいつも
重さと義務と現実がついてくる。
あなたが差し出した紙は、
自由の宣言じゃなかった。
逃げるための切符だった。
でもね。
私、黙ってサインするほど
もう馬鹿じゃないの。
家をくれる?
財産をくれる?
子どもたちも?
それから――あなたの老いた両親も。
ええ、確かに言ったわね。
「全部、君にあげる」
じゃあ私は返すだけ。
あなたが避けた責任、
あなたが押し付けようとした家族、
あなたが**“いらない”と切り捨てた未来**。
受け取るべき手は、
私じゃなくて――あなたよ。
私は行くわ。
子どもと、自由と、これからと。
背筋を伸ばし、笑って。
あなたは残りなさい。
親と、介護と、義務と、あなたの言葉と。
「全部あげるって言ったよね?」
――だから私は、受け取らない。
愛でも、言い訳でも、未練でもない。
ただ、正しさだけを置いていく。
そしてドアの向こうで、
私はようやく呼吸する。
軽い空気。
私の空。
私の未来。
あなたがくれたものは何ひとつ要らない。
だって私は――
自分の人生を取り戻したから。
―― 💐
文字数 20,941
最終更新日 2025.12.05
登録日 2025.11.29
14
『小さなアパートの家賃が1000万円を超えた日』
六畳の和室と、
六畳の台所。
十三年分の冬が、そこに積もる。
湯沸かし器は沈黙し、
冷たい水だけが
生活の痛みを語った。
ベランダはなく、
布団は陽を知らず。
褥瘡の匂いを抱えた夜、
わたしは祈るように
窓の外の空気を吸い込んだ。
京都に住む大家は、
年に数度だけ戻ってきて
庭の門に鍵をかける。
「不用心だから」と
軽く言うその言葉に、
わたしの生活は閉ざされていった。
洗濯物が風にさらわれても
取りにゆけない。
布団も干せない。
冬の陽射しさえ
遠い国の出来事だった。
六万五千円の家賃。
二年ごとに十万三千円の更新料。
積み上げた金額は、
いつのまにか
一千万を超えていた。
けれど、
その一千万に
「安心」という文字は
一度も含まれていなかった。
眠れぬ夜、
息子の褥瘡の匂いと向き合いながら、
わたしは思った。
――払ってきたのは家賃じゃない。
ここで生きるための、
わたしの歳月だったのだと。
十三年の冬を越えた今、
静かに気づく。
この小さなアパートで、
わたしは
折れずに立ち続けた。
誰も知らなくていい。
誰にも届かなくていい。
ただ一つだけ、
胸を張って言える。
「私はここで、生き抜いた」 と。
文字数 18,860
最終更新日 2025.12.05
登録日 2025.12.04
15
この国の未来を、誰かに任せたままでいいのか。
将来に希望を持てず、社会に埋もれていた一人の凡人――坂本健人(31歳)。
政治家でもなければ、有名人でもない。
それでも彼は決意した。
「自分が変えなきゃ、何も変わらない」と。
無所属で立候補し、泡沫候補と嘲笑されながらも、
一つひとつの握手、一つひとつの言葉が、やがて国を揺らす波になる。
腐敗した政界、動かぬ官僚、報道を操るメディア、利権に群がる財界。
立ちはだかる巨大な壁に、彼はたった一人で挑む。
味方は、心を動かされた国民たち。
言葉と覚悟だけを武器に、坂本健人は“凡人のまま”総理へと駆け上がる――。
希望は、諦めなかった者の手の中に生まれる。
すべての“変わらない”に立ち向かう
これは、「総理になった男」の物語である。
文字数 245,807
最終更新日 2025.12.05
登録日 2025.09.07
16
『70歳、豊かさのゆくえ』
静かな朝の光が、
昔よりゆっくりと
カーテンのすき間を滑り落ちてくる。
70年生きて、ようやく気づいた。
人生は「持つもの」で測れない。
けれど「失ったもの」だけでも測れない。
退職金を握りしめて始めた投資。
数字は増え、
通帳は明るい色に育った。
けれど、心のページは
ときどき風にさらわれて、
ぽっかりと空白のまま。
友の笑顔は、
いつから影を帯びただろう。
「すごいね」
その言葉の裏に沈んでいた
痛みも、嫉妬も、孤独も、
私は見ていなかった。
お金は光をくれるけれど、
同じだけ影も伸ばす。
いちばん大切だったのは、
増えた資産ではなく、
減らしたくない三つの椅子だった。
あなたが座る椅子。
あの子が寄りかかる椅子。
そして、私自身の椅子。
三つそろって、
やっと“居場所”と呼べる。
老後は寂しさの始まりじゃない。
老後は、
ようやく自分の速度で歩き始められる
自由の季節だ。
お金は使えば減るけれど、
人に向ければ、かえって増えていく。
――70歳の私は、今日知った。
豊かさとは、
財布の中ではなく
手を差し出したときに
そっと触れる“温度”のことだ、と。
夕暮れのオレンジ色が
三つの影をゆっくり重ねていく。
失いかけた友情が、
小さな灯になって
私の胸を温める。
豊かさのゆくえは、
どこか遠くにはない。
人と人のあいだにうまれる
静かなぬくもりの中にある。
文字数 28,376
最終更新日 2025.12.04
登録日 2025.12.04
17
何も持っていなかった。
夢も、目標も、目的も、志も。
柳沢望はそれで良いと思っていた。
人生は楽しむもの。
それは、何も持っていなくても、充分に得られるものだと思っていたし、事実楽しく生きてこられていた。
でも、熱中するものに出会ってしまった。
サンバで使う打楽器。
スルド。
重く低い音を打ち鳴らすその楽器が、望の日々に新たな彩りを与えた。
望は、かつて無かった、今は手元にある、やりたいことと、なんとなく見つけたなりたい自分。
それは、望みが持った初めての夢。
まだまだ小さな夢だけど、望はスルドと一緒に、その夢に向かってゆっくり歩き始めた。
文字数 283,525
最終更新日 2025.12.04
登録日 2024.11.23
20
誰にでももう一度会いたい人と思う人がいるだろう。
俺がもう一度会いたいと思うのは親友の妻だ。
そう気がついてから毎日親友の妻が頭の片隅で微笑んでいる気がする。
仕事も順調で金銭的にも困っていない、信頼できる部下もいる。
妻子にも恵まれているし、近隣住人もいい人たちだ。
傍から見たら絵に描いたような幸せな男なのだろう。
だが、俺は本当に幸せなのだろうか。
日記風のフィクションです。
文字数 754,384
最終更新日 2025.12.04
登録日 2023.10.22
21
22
文字数 35,780
最終更新日 2025.12.04
登録日 2025.11.07
24
25
『マッチ売りの少女』
——雪の街角の詩——
白い息が
夜の闇にほどけていく。
街は急ぎ足の光で満たされているのに、
わたしの足元だけが
音のない雪に沈んでいく。
ポケットの中には
売れ残りのマッチがひと箱。
冷たい木の軸が
まるで凍った心臓みたいに
じっとしている。
一本、擦る。
ぱち、と小さく咲く火の花。
その一瞬だけ、
わたしの世界に
あたたかい色が戻る。
ローストの匂い、
テーブルの湯気、
祖母の手のひら。
全部、火といっしょに
ひと呼吸で消えてしまうけれど、
それでも火は、
わたしの“見てほしいもの”を照らしてくれる。
もう一本。
もう一度だけ、
おばあちゃんの声を聞きたい。
編みかけのマフラーに残った
羊毛のやわらかい匂いと、
「泣かないでね」と言った
あの胸の鼓動を思い出したい。
けれど、
通りの人は誰ひとりとして
わたしの火を覗きこまない。
寒さより、
見えないことのほうが痛い。
最後のマッチを握る手は
もう動かない。
火がつくかどうかより、
火がついた“その後”が
怖くなくなっていく。
だから、擦った。
ぜんぶ。
ひと束まとめて。
まぶしい光の中、
おばあちゃんが笑っていた。
こんなにも近くで。
こんなにもあたたかく。
雪が舞い落ちる大晦日の街角で、
わたしはようやく気づいたの。
——炎は、消えるためにあるんじゃない。
誰かに届くために、
一瞬でも強く燃えるんだ。
わたしが残した小さな灰が
道ばたで風に揺れる。
もし、
だれかがそれを拾いあげてくれたなら、
わたしの火は、
まだ、
どこかで灯っている。
文字数 51,569
最終更新日 2025.12.04
登録日 2025.12.03
26
――あの夜、世界は燃えた。
九歳の少年・東雲蓮司(しののめれんじ)が引き起こした「聖霊護院事件」。
五十五人を殺したその名は、今もこの国の社会で禁句のように囁かれている。
それから七年。
炎と血の記憶を抱えたまま、蓮司は京都の片隅で、灰の中を歩くように生きていた。
贖罪の意味も、赦しの在りかも分からぬまま。
ただ息をして、ただ日々を繋ぐ
――そんな生の果てに、彼は再び「過去」と向き合うことになる。
罪は本当に消えうるのか。
人は、どこまで人としてやり直せるのか。
焦げついた記憶を背に、ひとりの青年が歩き出す。
灰色の現実の中で、人間の再生を描く社会派ボクシングドラマ。
これは、かつてすべてを壊した少年が、再び人として息をするまでの物語。
――灰の上を、踏み出せると信じてくれた。
文字数 73,696
最終更新日 2025.12.04
登録日 2025.11.01
27
オフィス街から少し離れた路地に、夜だけ灯る小さな居酒屋がある。
その名は「癒庵(ゆあん)」。
カウンター六席と座敷が二つだけの、知る人ぞ知る隠れ家だ。
店主・佐伯誠一は、誰の話にも否定せず耳を傾ける、穏やかな五十代の男。
客がふと漏らした悩みや愚痴を聞くと、
その人の心に寄り添う“特別な一皿”を、そっとサービスで差し出す。
落ち込んだ日には温かな煮物を。
言えなかった想いにはほろ苦い小鉢を。
泣きたい夜には、優しく染みる出汁の味を――。
ここで出される料理は、どれも注文できない。
けれどどれも、心を軽くするための一皿だ。
何気ない悩みにも、小さな奇跡が生まれる。
これは、人と料理がつむぐ温かなドラマ。
疲れた心をそっと解きほぐす、“癒しの物語”である。
文字数 3,917
最終更新日 2025.12.04
登録日 2025.12.03
28
『家の中の、いちばん遠い場所で』
同じ屋根の下なのに
あなたの足音だけが、遠い。
冷蔵庫の灯りが
真夜中の台所を、白く冷やしていく。
二つ並んだはずの茶碗は、
いまは別々の席で
湯気の行き場をなくしている。
呼べば届く距離なのに
言えば壊れてしまいそうで
わたしたちは、息を呑んで黙り続けた。
沈黙は、壁よりも厚く
ドアの音よりも鋭く
心に落ちていく。
だけど――
雨の夜
あなたが差し出した傘の影に
ほんの少し、春の匂いがした。
停電の暗闇で
初めて聞いたあなたの「……ごめん」に
胸の奥がじん、と温かくなった。
家は、壊れるときも静かだけれど
再び灯るときも、静かだ。
あなたと並んで座る食卓は
決して特別な場所じゃない。
けれど
同じ味噌汁をすくう音が
こんなにも心を撫でるなんて
昔のわたしたちは知らなかった。
家の中の、いちばん遠い場所で
わたしたちは
ゆっくり
ゆっくり
同じ未来へ歩き始めている。
もう一度、
ここから。
――おかえり。
文字数 35,155
最終更新日 2025.12.04
登録日 2025.12.03
29
30
こころ 自分を愛する365日
朝の光に
少し笑ってみる。
昨日の自分が、少しだけ愛おしい。
皺も、ため息も、
忘れた約束も、
今日の光の中では、全部赦されている。
「ごめんね」よりも
「ありがとう」を多く言う。
誰かのためにでもなく、
自分のために。
悲しみは、心の土。
その上に、希望の芽が出る。
泣くたびに、
根は深くなる。
失敗した日も、
人に冷たくしてしまった夜も、
胸の奥で、小さな灯が言う。
――大丈夫。まだやり直せる。
心は、壊れ物じゃない。
光と風と涙で磨かれる鏡。
曇っても、拭けばまた映る。
一年のうち、
何度でも、自分を好きになっていい。
何度でも、優しくなっていい。
それが「生きてる」ということだから。
愛しましょう。
今日のあなたを、
明日のあなたを、
まだ見ぬあなたを。
そして――
小さな「こころ」を、365日、抱きしめながら。
文字数 125,409
最終更新日 2025.12.04
登録日 2025.10.19
31
文字数 5,754
最終更新日 2025.12.04
登録日 2025.10.05
32
1996年8月25日。
私は、首に臍の緒を巻き付けて、僕は、産まれました。
四畳半の畳の上で、ベビーベッドに寝かされ、目の前の、天井には、何か分からないものが、クルクルと、回っていた。
姉の、小さな指は、僕の、両目を気にして、視力が良好か、確認していた。
白い、服に、身を包んだ、僕は、畳のこれを弄ってみたり、カメラに向かって笑ってみたり、小さな、乳児用の布団に仰向けになって、兄と、姉の、顔を見たりしていた。
僕の指は、おばあちゃんの指の傾き方と、同じ。
お母さん指と、お兄さん指と、お姉さん指が、寄り添っていて、小指が、一人。のような、寄せても、隙間のある、手。
文字数 2,687
最終更新日 2025.12.04
登録日 2025.11.24
34
35
『幸せは似ていて、不幸はひとつずつ違う』
朝の食卓に置かれた
三つの茶碗は
まるで同じ形をしていた。
湯気の向こう、
息をのみこむように
私たちは“似た幸せ”を演じていた。
同じ味噌汁、
同じ笑顔、
同じ「いってきます」。
けれど
ほんの一滴、
ひとりの心に落ちた影が
すべてを変えてしまうことがある。
愛が足りないのではない。
優しさが嘘だったわけでもない。
ただ――
満たされないものは
人によって
声の出し方が違うだけ。
泣く人。
黙る人。
笑いながら、心が崩れる人。
幸せは
ひとつの形を持つが、
不幸はいつも、
その人だけの名前を持っている。
そして、壊れるときは静かだ。
まるで
冬の窓に走る
最初の細いひびのように。
気づけば、
肩に積もる雪のように冷たくなり、
触れた手の温度さえ
思い出せなくなる。
けれど――
ひび割れた心にも
必ず春は来る。
夕暮れの駅のベンチで、
別れた二人が
同じ方向の夕焼けを見上げるように。
「幸せは似ていていい。
でも、
もう不幸まで似せなくていい。」
それぞれの場所で、
それぞれの灯りをかかげて
また歩き出せるなら。
壊れた家族ではなく、
形を変えても
あたたかい家族へ。
その日を信じて
今日も
ひとつずつ違う心を
そっと抱きしめていこう。
文字数 43,134
最終更新日 2025.12.04
登録日 2025.12.04
36
37
生まれも育ちも札幌の、統合失調症回復期の俺とSNSで知り合った中国籍の美青年とのラブラブ同棲生活物語。お互いに信じ合っていて愛し合っている俺とションたんの物語。
文字数 9,400
最終更新日 2025.12.04
登録日 2025.09.06
38
39
文字数 5,724
最終更新日 2025.12.04
登録日 2025.12.04
40
文字数 11,792
最終更新日 2025.12.04
登録日 2025.11.12
アルファポリスの現代文学小説のご紹介
アルファポリスの現代文学小説の一覧ページです。
ヒューマンドラマや純文学を中心とした現代文学が満載です。
人気のタグからお気に入りの小説を探すこともできます。ぜひお気に入りの小説を見つけてください。