「鉄」の検索結果
全体で1,660件見つかりました。
……風は吹かない。
空は灰色。地面はひび割れて、死んだ土の匂いが鼻を刺した。
どこまでも広がる、枯れた世界。
黒く錆びついた鉄の塔が無数に突き立ち、沈黙の中に、わずかな機械音だけが漂っていた。
僕はそこにいた。
ただの鳥――ムサシ。
どうしてここにいるのか、わからない。
目を開けたら、もうこの世界だった。
命の気配はない。
動物も、草も、空気すらも、どこか死んでいた。
でも、僕の中にはまだ何かが残っていた。
本能が、動いていた。
体を少しだけ沈める。
そして――
……落ちた。
乾いた地面に、小さな湯気が立つ。
それは、静かにそこに在った。
何も起こらないと思った。
でも、土のひびの間から、じわりと何かが芽吹いた。
色のない大地に、かすかに滲む緑。
細い蔓が震えながら、光のない空に向かってのびていく。
それを、僕は動かずに見ていた。
この世界で、初めて目にした、生きものの色だった。
それは、小さな芽だった。
ひび割れた地面の隙間から、そっと顔を出していた。
風もなく、音もない世界で、それだけが……確かに生きていた。
僕は目を離せなかった。
どうしてかなんて、わからない。
でも、見ていると――
この世界の沈黙が、少しだけ揺らいでいくような気がした。
*
そのときだった。
背中に、ひやりとした気配が落ちた。
見られてる――そう思った。
振り返ると、遠くの塔のてっぺんで、赤い光が点滅していた。
冷たい、機械のまなざし。
そして、低い音。
ガリ……ゴガガ……。
塔の根元が裂け、鋼の塊のような何かが這い出してくる。
八本の脚、赤い単眼、蒸気を吐きながらのそのそと迫ってくる金属の虫。
「侵入生体、確認」
「排除対象:有機活動物」
無機質な声。
命令しか喋れない、殺すための存在。
僕は本能で走り出した。
飛ばない。走る。
芽があった場所が、巨大な脚で踏み潰される。
緑は、あっけなく消えた。
……でも、走りながら、ふと振り返った。
踏み荒らされた地面。
そのひびの奥に、なぜだか、かすかな違和感があった。
ほんの一瞬だけ、やわらかくなっているように見えた。
いや――
見えた、というより、感じた。
僕の“それ”が落ちた場所。
芽が生えた場所。
今は何も見えないけど……そこにはまだ、何かが、息を潜めている気がした。
たぶん、ただの勘だ。
根拠なんてない。
でも、僕の中で何かがはっきりしていた。
あれは、終わってない。
消されてなんか、いない。
走りながら、知らず口元が引き締まった。
鼓動が少しだけ強くなった。
この世界で僕だけが持っているもの。
この世界にとって、きっと、異物であり――可能性。
文字数 4,606
最終更新日 2025.07.22
登録日 2025.07.22
雨の匂いに、鉄錆が混じっている。
終わった時代の、終わった港町。
俺の親分は、決して多くを語らない。
負け戦でも背を見せず、傷を縫わせても眉一つ動かさない。
俺はその半歩後ろ、鉄の背中を追いかけることだけが、自分の生きる意味だった。
これは、不器用な二人の男の、最期の時間の記録。
誰にも弱みを見せなかった男が、たった一度だけ見せたかもしれない「何か」を、俺は墓場まで持っていく。
ハードボイルド・任侠・主従。
短い生涯をかけて、ひとつの背中を追い続けた男の独白。
※重複掲載先:カクヨム / アルファポリス / エブリスタ / Pixiv / ハーメルン
文字数 3,655
最終更新日 2025.12.30
登録日 2025.12.30
オレンジ色の夕刻、閉ざされた扉の向こう。
少女の小さな世界は、冷たい床の上で静かに終わりを迎えた。
誰も助けてくれなかった。
誰も、目を合わせてはくれなかった。
遺されたのは、消えない鉄の匂いと、
少女が最後に夢見た、優しかった兄の記憶――。
数日後。
蝉時雨のように無邪気な笑い声が響く教室に、一人の少年が揺らめき立つ。
天井に滲む、血の色をした歪な十字架「†」。
それは、あの日見捨てられた少女の墓標。
そして、終わらない夜の始まりを告げる合図。
笑っていた者、
突き落とした者、
そして、ただ黙って背を向けた者たち。
――さあ、等しく、奈落の底へ。
最愛の妹を捧げた世界へ、兄が贈る、最も美しい審判の詩。
文字数 10,856
最終更新日 2026.05.31
登録日 2026.05.26
兵庫県尼崎市の住宅地にある古い一軒家。
そこは多数の警備用ビデオカメラと鉄条網で守られた城のような作りで、ご近所に多大な迷惑と騒音を振り撒く老人・末松武弘の棲み処である。
滅多に他人は近寄らないのに、ある日、冴えない見た目の浅子という男が訪ねてくる。
威嚇用の金属バットを手に浅子を連れ込み、何が狙いか詰問する末松。すると浅子は公的な奨学金債権を回収する取り立て屋である事を白状する。
粗暴な末松に反抗し、六年前に家出して京都の大学へ入った息子・末松敬一の借金を代りに払えと言うのだ。
負債は巨額であり、末松邸の不動産を売却しなければ返済は覚束ない。それに敬一自身にはどうしても支払えない事情があるらしい。
拒否しようとする末松と、あの手この手で説得を試みる浅子の間で、目まぐるしい駆け引きが展開するが……
エブリスタ、小説家になろう、ノベルアップ+、カクヨムにも投稿しております。
文字数 22,475
最終更新日 2025.10.10
登録日 2025.09.28
運悪く工事現場の鉄骨落下事故に巻き込まれた御園梨々香は、目を覚ますと生前大好きだった恋愛小説「国王陛下の白薔薇」に名前だけ出てくる、エルルーシア・ドミニコフに転生していた。
エルルーシアは小説のヒロインアリアナ・グランバートの親友だが、名前だけしか出てこない侯爵令嬢。
つまりモブキャラ。
大好きだった小説の世界で、大好きなヒロインと男主人公達との恋愛模様が、ヒロインの親友という特等席ポジションで見れると喜んだ梨々香だったが····。
「ああ···エルルーシア。私達の女神···」
男主人公達が興味を持ったのはなんと···私!?
私は貴方達の恋愛模様を特等席で見たいだけなの~!
お願いだから私を巻き込まないでよーー!!
※リハビリ作品なので誤字脱字や変換ミスなどたくさんあると思います。
もし見つけたら教えていただけると助かります。
リハビリ作品なのでお手柔らかにお願いします(*T^T)
設定はゆるゆるです。
文字数 36,712
最終更新日 2022.08.03
登録日 2022.06.28
文字数 3,027
最終更新日 2024.12.02
登録日 2024.12.02
天正四年(西暦一五七六年)、五月七日。摂津国天王寺。
石山本願寺攻めの拠点である天王寺砦に籠もる明智光秀以下三千の将兵が、本願寺勢一万五千の兵に囲まれ、絶体絶命の危機的状況。
今日明日にも陥落する恐れがあると聞きつけた織田信長は、敵中で孤立する将兵を助けるべく救援に向かう事を決意。但し、手勢はたったの三千!
一方、凄腕の鉄砲撃ち手・雑賀孫一は、滅多に戦場へ出て来ない信長の命を虎視眈々と待っていた……!
天下布武に立ち塞がる強敵・石山本願寺を倒したい、織田信長。
苦しむ浄土真宗の門徒達を救いたい、顕如上人。
顕如上人から重要な“願い”を託された男、雑賀孫一。
それぞれが譲れない戦いが、天王寺の地でぶつかろうとしていた――!!
◇メフィスト賞2021年上期 落選作品 ◇
(『悪人』より改題)
※この作品はメフィスト賞2021年上期に応募した作品に加筆修正を加えております。
※作中の読経は浄土真宗真宗大谷派のものを参考にしています。
◆この作品は『小説家になろう(https://ncode.syosetu.com/n0340ha/)』でも掲載しています◆
文字数 102,111
最終更新日 2022.05.18
登録日 2022.05.18
町工場の旋盤職人として52年間働き続けた職人気質の男が、80年の人生を終えて逆行転生した。
大河ドラマを観た程度の歴史知識しかない男は前田慶次に転生したが、気がついていなかった。
生き残るために必死で戦国乱世の知識と武芸、甲賀流の忍術を学んだが、幸か不幸か巨人症だったので、忍術よりは巨体を生かした武芸の方に突出した才能が有った。
叔父が尾張の池田家に婿養子に入っていた縁で、同じ様に荒子前田家の婿養子に入った男は、ここで初めて自分が前田慶次だと気づいた。
マンガとアニメで前田慶次が好きになった男は、前田慶次の事だけは少し知っていた。
織田信長の命令で養父が無理矢理隠居させられ、義叔父の前田利家が跡継ぎとなり、最初は意地を張っていた養父も自分も、屈辱を飲み込んで利家の家臣となる事を知っていた。
その原因となった信長と利家に復讐する心算だったが『大うつけ』との評判が広がり、家臣が足らない信長が荒子前田家にやってきて、男を家臣にすると言い出した。
信長の筆頭家臣の林家の寄り子が前田本家、その前田本家の家臣である荒子前田家、その荒子前田家の嫡男の婿養子という、手柄を奪われる立場からでなく、信長の直臣旗本という、史実の利家以上に恵まれた立場で武功を重ねた。
突出した怪力と武芸で、史実では信長が負けるはずだった合戦を全て勝利に導き、惚けた織田信秀と下剋上を狙う秀貞をぶちのめし、攻め寄せて来る今川義元の家臣を生け捕りにして莫大な身代金を手に入れ、鰯トルネードと鯨を追い込み漁で豊漁として、莫大な軍資金を手に入れた。
根来と雑賀の鉄砲衆を雇い、戦法を盗み取り、破竹の勢いで今川、武田、北条、斎藤、六角を破り、いつでも上洛できる状況になったが、余りにも突出した武功を重ねる慶次と信長の立場は、実力的には逆転してしまっていた。
信長は男を家臣から同盟者として上洛を果たし、男は友情を優先して信長と天下を二分した。
文字数 133,406
最終更新日 2024.09.30
登録日 2024.08.31
世界が魔物に蹂躙されて数年。
十八歳の少年・岩鉄守人は、東京湾に開いた“結界の裂け目”を、二年間不眠不休で守り続けてきた。
恋した少女との「帰ったらデートしよう」という約束だけを胸に。
だが、久々の休憩で知ったのは――
その少女が、守人を利用して別の男子と英雄になっていたという残酷な真実だった。
絶望した守備兵の少年は、唯一の味方である聖女・北裏日陰とともに運命を斬り拓く。
※「小説家になろう」「カクヨム」にも投稿しています。
文字数 7,428
最終更新日 2026.01.11
登録日 2026.01.09
僕は救いを求めた。終わりのない地獄を、終わらせてくれる誰かを。
ある施設…。
僕は冷たい床に今日も1人で座っている。鉄の壁に寄りかかり、次の恐怖をただ待つだけの日々。
そんな毎日が続く。ずっと、ずっとずっと。
しかし、救いの手はあった。
僕はその手をなんとか掴もうと、必死に手を伸ばすんだけど、それは崩れ去って、痛くなって、暗くなって……。
今日もまた、地獄の日々が続く。
文字数 20,239
最終更新日 2019.01.23
登録日 2019.01.14
初投稿です!感想やらご意見やら、どしどしお待ちしております!
*ここからあらすじ
平和な国、日本。
その都心部に、突如一人の男が現れた。
男は赤いマントを羽織り、左手に鉄の盾、右手には光輝く鋼の剣を持ち、己を『勇者』だと名乗った。
『勇者』は言った。私が世界を救ってみせる、と。
『勇者』の放った号令と共に、二次元にしか存在していないはずの者たちが三次元の世界を破壊し始める。
ゴブリンの棍棒によって人間は潰され、魔法使いの魔法によって建物が崩壊していく。
そして半年後……日本のみならず、世界は――崩壊した。
生き残った人々は瓦礫の山の中である存在をひたすら待った。
二次元の者を率いる『勇者』を倒す、三次元の勇者の存在を。
文字数 5,921
最終更新日 2017.05.16
登録日 2017.05.14
副官を庇って死んだら、アンデッドとして復活させられた女性騎士団長(総長)の話。
……話の展開上、下ネタ、直截的な表現が頻出しますが、エロス<<<シュールコメディ(たまにシリアス)です。
-----▲caution! この話には部下→上官へのセクハラ発言、下品かつ陳腐な下ネタ、性的行為(具体的描写なし)、バカップル化(中盤)、不死者ゆえの異形表現が含まれます。ヒーローは一途な変態です。ヒロインは鉄拳制裁を繰り出します。
文字数 42,051
最終更新日 2023.08.18
登録日 2023.07.31
人助けの為に荒廃した灰の世界を旅する、少し特殊な力を持つ少女プロミと、相棒の喋るカラスのナチャは、ある日荒原の中で倒れる少女を見つける。
プロミ達はひとまず少女を保護するが、少女、カナタは自身の名前以外の記憶を失っていることが判明する。
手掛かりはカナタが行おうとしていた謎の“お使い”の存在だけ。
そこでプロミ達は、旅の目的である人助けの為、カナタを故郷まで帰してあげる事を決める。
だが、カナタには世界すら揺るがす大きな秘密があった。
迷える青年、夢破れた男、鉄面皮の女性と奇妙な天才少女。道中で出会う人々を巻き込み、事態は予想だにしない方向へと転がり始める。
文字数 31,833
最終更新日 2024.03.22
登録日 2024.03.10
文字数 3,540
最終更新日 2025.05.21
登録日 2025.05.21
この学園には、誰も知らない“裁き”が存在する。
厳格な審議会――通称《五大賢》。
世界の均衡を保つため、罪と秩序を量り続ける謎の存在たち。
その一員である少女、相原咲夜。
彼女の役割は《境界の天秤》――善悪の狭間で揺れる事象を見極めること。
だがその正体は、どこにでもいる普通の高校生。
演劇部に所属し、友人と笑い合い、メロンパンが大好きな少女だった。
ある日、学園内で起きた不可解な盗難事件をきっかけに、
咲夜は「裁き」と「日常」の境界へと引きずり込まれていく。
絶対の法を重んじる《鉄律の法典》
深い罪を刻み続ける《深罪の刻印》
光による救済を掲げる《聖光の冠》
裁きを執行する《断裁の執行剣》
それぞれ異なる正義が交錯する中、
咲夜は問い続ける。
――裁くことは、本当に誰かを救うのか。
日常と審判が交差する、ファンタジー開幕。
文字数 52,208
最終更新日 2026.02.06
登録日 2026.02.02
鉄の令嬢と恐れられる悪役令嬢
第一王子に冷遇され浮気されても頑なに婚約破棄を認めない。
その裏にはある目的が……。
文字数 37,183
最終更新日 2026.02.22
登録日 2026.02.22