献身 小説一覧
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16件
1
「あなたは母の代わりじゃない」と拒まれ続けた継母が去った後、実母の命日の白い花が、十二年分遺されていた
母を亡くした年、屋敷に来た継母リーゼロッテを、わたし——クラーラは一度も母と呼ばなかった。
「あなたは母の代わりじゃない」。そう言って拒むたび、彼女は静かに頷くだけで、決して母の座を求めなかった。
父が亡くなり、後ろ盾を失ったリーゼロッテは、何も言い残さず屋敷を去る。せいせいした、と思っていた。
けれど、彼女が消えた屋敷で、わたしは見つけてしまう。実母ユーリアの命日に毎年供えられていた白い花の、十二年分の包み紙。実母の故郷料理を古参女中から書き取った、継母の筆跡の覚書。そこには実母の名で「クラーラの好物・薄味に」と記されていた。
わたしが「母を奪おうとしている」と憎んだ人は、わたしのために、亡き母を生かし続けていた。母の代わりになろうとしなかったのではない。なってはいけないと、ずっと自分に禁じていたのだ。
気づいたときには、もう、白い花を渡す相手はどこにもいなかった。
感想数 1
文字数 8,378
最終更新日 2026.06.10
登録日 2026.06.10
2
婚約を破棄して薄情と嗤われた令嬢が、彼の家を十年、影から守り続けていた
わたし——アデルは、十年前、愛していた人に「あなたを愛したことなど一度もない」と告げて婚約を破棄した。
わたしの父が犯した罪が露見しかけていた。あの人の家と婚姻で結ばれれば、わたしの家の敵は、容赦なくあの人の家ごと潰しただろう。だから薄情な女になった。自分から去れば、あの人は何も失わずに済む。
社交界はわたしを「家の傾きを嗅ぎつけて逃げた薄情者」と嗤った。わたしはそれでよかった。あの人が、わたしを憎んでくれれば、振り返らずに済むから。
それから十年。わたしは名を変え、あの人の家の見えない敵を一つずつ片づけ、傾きかけた領地の負債を、誰にも知られず肩代わりし続けた。あの人の母君が病に伏したときは、素性を隠して看病に通った。
あの人——いまは辺境伯となったユリアンが、古い帳面と、母君が遺した一通の手紙から、十年の影を辿り当てる日まで。気づいたときには、わたしはもう、彼の前に立てる女ではなくなっていた。
感想数 0
文字数 14,012
最終更新日 2026.06.12
登録日 2026.06.12
3
『君の薬はもう要らない』と言って妻を遠ざけた夫は、彼女が千八百回の朝、自分を生かしていたことを知らなかった
伯爵家に嫁いで五年。セレーネは、心の臓を病む夫オーウェンのために、毎朝まだ暗いうちに起きて薬を煎じ続けた。匙の角度、湯の温度、煎じる拍数——夫の発作を遠ざけたのは、誰にも気づかれない、その地味な手仕事だった。けれど回復した夫は、若く快活な従妹に心を寄せ、「君の薬はもう要らない」と言って妻を遠ざける。セレーネは言い返さず、ただ静かに離縁を受け入れて去った。残された薬棚の引き出しには、千八百回ぶんの調薬記録が、几帳面な筆跡で綴られていた。彼女が消えた朝、屋敷の誰もその薬を煎じられないことに、オーウェンはようやく気づく。失われた手の重さに輪郭が見えるのは、いつも後になってから。
感想数 1
文字数 16,550
最終更新日 2026.06.04
登録日 2026.06.04
4
『お姉様は私が嫌いなのだと思っていました』——妹が遺された刺繍の裏を返した日、そこには千を超える縫い目で、自分の名だけが綴られていた
妹のエルフィは、ずっと姉のヴィオラに嫌われていると思っていた。冷たい目、そっけない言葉、決して褒めてくれない刺繍。家中が「出来損ないの姉」と「愛らしい妹」と呼ぶなかで、姉だけが妹の幸福から半歩退き続けた。妹が嫁いだ朝、姉は誰にも告げず家を出る。数年後、訃報とともに妹の手元へ届いた、姉が遺した一枚の刺繍布。その裏地を返したとき——表の冷たい幾何文様の裏に、千を超える細かな縫い目で、ただ妹の名だけが綴られていた。失われた姉の手の意味を、妹が読み解くのは、いつも後になってから。
感想数 0
文字数 14,578
最終更新日 2026.06.08
登録日 2026.06.08
5
『君がいなくても眠れる』と妻を遠ざけた夫は、二千の夜、彼女が自分を眠らせていたことを知らなかった
公爵家に嫁いで五年。フィオナは、夜にだけ生きられない夫アルヴィスのために、毎晩そっと寝室を整え続けた。眠れぬ夫が眠りに落ちるまで、火加減も、香も、寝物語の声の高さも——すべてを夜ごと調えるのは、誰にも気づかれない地味な手仕事だった。けれど健やかな眠りを取り戻した夫は、よく笑う若い令嬢に心を寄せ、「君がいなくても眠れる」と言って妻を遠ざける。フィオナは言い返さず、ただ静かに離縁を受け入れて去った。残された手控えには、二千の夜ぶんの「眠りの覚え書き」が几帳面に綴られていた。彼女が消えた夜から、屋敷の誰も夫を眠らせられないことに、アルヴィスはようやく気づく。失われた手の重さに輪郭が見えるのは、いつも後になってから。
感想数 0
文字数 19,258
最終更新日 2026.06.06
登録日 2026.06.06
6
【長編版】欲しがり王女の侍女はつらい
『王女殿下は欲しがり王女』の長編版です。侍女視点。
短編未読でも読めるように書いていく予定ですが、
短編もお読みいただけたら嬉しいです!
我が国の王女は欲しがり王女だ。
王女の欲しがりを断った、先の宰相はその立場を失ったという噂すら流れている。
微笑みのまま行われる王女の欲しがりは断ってはならない。そんな不文律から、各貴族家は多くのものを差し出した。
伯爵家の家宝、辺境伯家の家畜まで。
王女は欲しがって欲しがって欲しがって、誰かを守ってきた。
しかし、本人も周りも真実を公にはしない。
だからこそ、悪名高い王女殿下。そんな王女殿下から、子爵令嬢に招待状が届いて?
関連小説
『王女殿下は欲しがり王女』
『公爵閣下、社交界の常識を学び直しては?』
感想数 1
文字数 96,061
最終更新日 2026.03.24
登録日 2026.03.12
7
~不器用な騎士から届く花の手紙~ 傷ついたあの人へどうか少しでも元気になりますように
傷ついたあなたの、そばにいることは叶わない。でも、あなたに寄り添いたい、どうか元気になってほしい。不器用な騎士は、暴力を受けて心に傷を負った愛しい人に手紙を送る。かける言葉はみつからない、そうだ花を描こう。彼はいくつも、いくつも花を描き、彼女に送り続ける。
※直接的な描写はありませんが、女性に対する暴力行為を想像させる描写があります。
感想数 0
文字数 11,707
最終更新日 2024.11.30
登録日 2024.11.29
8
華間 -カカン-
『十二国記』と『王家の紋章』の要素をかけ合わせたハイファンタジー
「ようやくお見つけいたしました、夜華君(やかぎみ)」
華間(かかん)は華界の花畑に生まれ、蟲間(ちゅうかん)と契る民。蟲間は蟲(むし)として生まれ、唯一人の華間に生涯を捧ぐ僕(しもべ)。
いにしえ、ある王が己の蟲間の命と引き換えに、華界唯一の王位に就いた。だが安寧は続かず、瀕死となった王に啓示が下る――華界はやがて赤(せき)・橙(とう)・黄(おう)・緑(りょく)・青(せい)・藍(らん)・紫(し)の七国に割れ、終わりなき戦に沈む。幾千年の乱を制す王は唯ひとり、幻の"夜華間(やかかん)"を得た者だ、と。
夜華間は闇(やみ)色の髪、象牙色の肌、落栗(おちぐり)色の瞳、そして他者を輪廻転生させる力を持つ。賢王に付き、その国を久しき繁栄に導くとされる夜華間を、七国中が探し求めていた。
人界に生きる男子高校生・黒瀬真宵(くろせまよい)は、幼くして"蟲無し(蟲を惹きつける力のない華間)"と誤られ人界に落とされた夜華間だった。雷雨の夜、真宵は赤蟲間・立羽(たては)に見出され、緑蟲間・翠鎌(すいれん)の追撃を逃れて華界へ転移する。
何も知らず育った真宵は人界へ帰りたいと願うが、帰るためには、華界の上位たる玄天(げんてん)へ行き、七神の許しを得ねばならない。
七国から求められ、狙われ、攫(さら)われ、抗いながら真宵は果たして、無事に人界へ帰ることができるのか。
七色の国を舞台に、真宵の冒険が今、始まる――
感想数 0
文字数 73,428
最終更新日 2025.10.25
登録日 2025.08.11
9
薄幸の佳人
この世のものとは思えない美貌を持つ藤泉院 無月。
孤高の名家の令嬢である彼女は、父と継母に屋敷に閉じ込められ、緩慢な日々を過ごしていた。
そんな彼女の心の支えは、幼馴染の春乃宮 日向だけ。
この先もこの屋敷でずっと生贄のように生きていくのだと思っていた。
そんなある日、青年、深草 槙とその妹女子高生の深草 一葉と出会い、運命は大きく動き始める。
誰よりも世界を知らなかった令嬢と、彼女を取り巻く人々の現実味のない世界が、解き明かされる過去とともに、少しずつ色を帯びていく。
それは日々色味を増して。
そして、彼女は希望と恋を知る。
今、彼女は孤独な屋敷から歩み出したばかり。
感想数 0
文字数 248,316
最終更新日 2023.05.23
登録日 2022.08.06
10
感想数 1
文字数 35,276
最終更新日 2022.06.13
登録日 2022.05.28
11
靴職人と王女と野良ウサギ ~ご主人様が絶望しているからボクは最高に幸せだよ~
人里を遠く離れた山奥に一人で暮らしていた半獣半人(アニオン)のラヴィ。孤独という概念を知らないラヴィは胸の痛みを病気と勘違いして、人間に頭をナデナデしてもらうために人里に降りた。しかしラヴィはアニオンが人間社会では奴隷として扱われているのを知らず「頭をなでて」と不用意に人間に近づいたため村中を追い回されるハメに。大けがをして逃げ込んだのは靴職人のラチアが仕事場にしている小屋だった。村の外れでストイックな暮らしをしている青年ラチアと、自分の感情が何なのかをまだ自覚できないチビッコ半うさラヴィの共同生活&バトル&冒険のお話。
誤字等有りましたら教えてください。あと、感想頂けると嬉しいです。
現在Webコンテンツ大賞に参加しています。よろしクマ~。
感想数 0
文字数 142,229
最終更新日 2019.09.08
登録日 2019.08.26
12
愛しのアリシア
彼女の名前は、<アリシア2234-LMN>。地球の日本をルーツに持つ複合企業体<|APAN-2(ジャパンセカンド)>のロボティクス部門が製造・販売するメイド型ホームヘルパーロボットの<アリシアシリーズ>の一体である。
しかし彼女は、他のアリシアシリーズとは違った、ユニークな機体だった。
まるで人間の少女のようにくるくると表情が変わり、仕草もそれこそ十代の少女そのものの、ロボットとしてはひどく落ち着きのないロボットなのである。
なぜなら彼女には、<心>としか思えないようなものがあるから。
人類が火星にまで生活圏を広げたこの時代でも、ロボットに搭載されるAIに<心>があることは確認されていなかった。それを再現することも、意図的に避けられていた。心を再現するためにリソースを割くことは、人間大の機体に内蔵できるサイズのAIではまったく合理的ではなかったからである。
けれど、<千堂アリシア>とパーソナルネームを与えられた彼女には、心としか思えないものがあるのだ。
ただしそれは、彼女が本来、運用が想定されていた条件下とは全く異なる過酷な運用が行われたことによって生じた<バグ>に過ぎないと見られていた。
それでも彼女は、主人である千堂京一を愛し、彼の役に立ちたいと奮闘するのであった。
感想数 4
文字数 1,108,690
最終更新日 2022.10.20
登録日 2019.04.24
13
作り物の献身
「私達が何をしようとしているか、お分かりになりますか」
AIはどこまで学びどこまで模倣するか。
※この作品はTwitter(@ojitw)・カクヨム・小説家になろう・エブリスタ・pixiv等に掲載しています。
感想数 0
文字数 2,524
最終更新日 2020.05.19
登録日 2020.05.19
14
感想数 0
文字数 2,935
最終更新日 2026.02.09
登録日 2026.02.09
15
Junction
Pointシリーズ第三弾は寺内・菅沼両家の子供達のお話です。
前半は明日美視点の「Guidance Point」
後半は拓也視点の「Crossing Point」の予定です。
感想数 0
文字数 5,251
最終更新日 2018.07.31
登録日 2018.07.31
16
沼に咲く華
ふらりと家出してしまった。
何故、彼との部屋から出て、自分は電車に揺られ、見知らぬ風景を眺めているのか。
車窓を流れる風景を眺めている。
またまた、暗めの話です(^_^;)
なんでもありの人向けでお願いします。
R18的な事も含まれてます。
暴力シーンもあります。
苦手な人は回れ右…m(_ _)m
ハッピーエンドにはなってます。
2話目に続編の『沼に咲く華 それから…』。
沼は恋愛の沼か依存の沼か。
華は相手か自分か。
そんな事を考えながら書いた作品。
感想数 0
文字数 19,335
最終更新日 2023.09.01
登録日 2023.09.01
16件