『婚約破棄された令嬢は、名もなき秤を置いて去る』

「――君との婚約は、破棄する」

王太子アーヴェルから一方的に婚約を破棄された公爵令嬢、
ベルトーネ・ランナバウト。

だが彼女は、泣かず、縋らず、復讐も叫ばない。
代わりに選んだのは――静かに立ち去ることだった。

隣国グラーフ公爵家に身を置いた彼女が手にしたのは、権力でも名声でもない。
混乱する港、基準のない市場、決断が軽く扱われる町――
そこで彼女は、命令せず、名を出さず、ただ一つのものを「置く」。

それは、人々が自分で選び、自分で責任を引き受けるための
名もなき秤。

評価されない選択。
称えられない改革。
そして、気づかれないまま世界を支える仕組み。

一方、彼女を切り捨てた王太子と王国は、
「誰かが決めてくれる」世界の先で、ゆっくりと崩れていく――。

これは、派手なざまぁではない。
だが確実に、取り返しのつかない差がついていく物語。

婚約破棄から始まる、
名を残さない令嬢による“静かなざまぁ”譚。

選ばれるのは、声の大きい者ではない。
最後に立っているのは、
重さを知っていた者だけだ。
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