現代文学 小説一覧
42
文字数 41,042
最終更新日 2026.04.07
登録日 2026.03.02
43
あんたの頭より3センチの鉛筆の方が賢い
そう言われた日
私は言葉を失くした
忘れることも
間違えることも
全部
私のせいにされた
白い紙の上に
何も残せない私より
細くて
軽くて
折れやすいそれの方が
価値があると
――そう教えられた
だから私は
書き始めた
覚えられないことを
逃げてしまうことを
全部 外に出すために
カリ、と音がする
それは
私の代わりに
世界とつながる音だった
気づけば
私の頭の中よりも
紙の上の方が
ずっと正確で
ずっと強かった
ねえ
あの日の言葉は
間違ってなかったのかもしれない
だって今は
その3センチの鉛筆で
私は
自分の人生を書いているから
---
## ■ 詩②(攻撃→回収・強め)
あんたの頭より
3センチの鉛筆の方が賢い
じゃあ聞くけど
その鉛筆は
誰の手で動くの?
忘れるのは私
失敗するのも私
全部私
でも
書くのも私だ
削られて
短くなって
それでも残るのは
私が残した線だ
賢いのは鉛筆じゃない
――使い続けた私だ
---
## ■ 詩③(やさしい再定義)
あんたの頭より
3センチの鉛筆の方が賢い
そう言われたとき
私は
自分が足りないものだと思った
でも違った
私は
覚える人じゃなくて
残す人だった
忘れるから書く
抜けるから残す
迷うから確かめる
そのたびに
世界は少しだけ
はっきりした
3センチの鉛筆は
賢いんじゃない
私の代わりに
世界をつないでくれる
小さな橋だった
文字数 78,236
最終更新日 2026.04.07
登録日 2026.04.03
44
私はスープが好きだ。
私はスープが大好きだ。
コンソメスープ、ミソスープ、ポタージュ
ミネストローネ、トムヤムクン、ボルシチ
コーンスープ、クラムチャウダー、ポトフ
ビシソワーズ、グラタンスープ、バクテー
サンラータン、ガスパチョ、チキンスープ
この世界のありとあらゆるスープが好きだ。
(小説家になろうと重複投稿)
文字数 1,187
最終更新日 2026.04.07
登録日 2026.04.07
45
「役立たず氷魔法少女、追放後に海鮮で無双する」
役立たずだと 切り捨てられた日
指先に残ったのは
溶けかけの 小さな氷
誰もいない港で
腐っていく魚たちが
静かに 息を止めていた
——もったいない
その一言が
世界を変えるなんて
あの時の私は 知らなかった
冷やすだけの魔法でも
止められるものがある
時間も 腐敗も 価値の消失も
命を締め
血を流し
静かに眠らせる
氷は 優しい刃になる
澄んだ身は 嘘をつかない
口にした者の目が
すべてを語る
「同じ魚とは思えない」
その言葉が
私の名前になっていく
役立たずと笑った人たちは
知らないままだろう
戦えない魔法が
世界を変えることを
凍らせたのは魚だけじゃない
過去も 嘲りも 悔しさも
すべて 静かに閉じ込めて
私は今日も
海の隣で稼いでいる
——弱い魔法なんて、なかったんだよ
文字数 44,206
最終更新日 2026.04.07
登録日 2026.04.06
46
春火鉢の残り火、朧のゆめ
指先に残る 春火鉢の余熱
それは冬を惜しむ 最後の火照り
草餅の苦味を 舌の端に転がし
私たちは 仲春の淵に立つ
吹き荒れる 春一番の砂嵐が
昨日までの 静寂をかき乱し
空には 春禽の鋭い声
地には たんぽぽの黄色い叫び
海へ行けば 石蓴の緑が
潮の満ち引きを 鮮やかに塗り替え
寄せては返す 磯嘆き
かつて舞った 風花はもう夢の跡
うららかな陽光に 目を細め
梅咲く枝を 見上げては
遠い 桜の蕾に怯える
移ろいゆく この春愁
夕暮れを染める 春夕焼
終わりと始まりが 溶け合う境界で
雛の客のように かしこまったまま
私たちは 互いの体温を確かめる
夜の帷 春の闇に沈み
朧に霞む 春の月を見上げる
このまま 二人きり
巣籠りしてしまえたら
三月一日
世界が息を吹き返す その瑞々しい痛みを
私は あなたの腕の中で抱きしめている
文字数 146,283
最終更新日 2026.04.07
登録日 2026.03.04
47
第1話「遺された鍵」父の葬儀を終えた粟井義道は、一通の手紙と古びた鍵を受け取る。そこには、門外不出の製法が存在するという家族の秘密が綴られていた。大東酒造の神谷が現れ、不穏な言葉を残していく。
第2話「蔵の奥の秘密」深夜、粟井義道は秘密の蔵へ足を踏み入れる。そこで見つけたのは、江戸時代から伝わる「神酒」の製法と、百六十年前に醸造された酒。番人の田所から、粟井家が守り続けてきた使命を聞かされる。
第3話「東京への帰還」東京に戻った粟井義道だが、心は故郷から離れられない。恋人の美咲に相談する中、大東酒造からの脅迫状が届く。田所が襲撃されたという知らせを受け、粟井義道は再び岡山へ向かう。
第4話「決断の時」田所の回復を見届けた粟井義道は、会社を辞めて酒蔵を継ぐ決意を固める。美咲も共に岡山へ移住することを決める。駅で待ち受けていた神谷の提案を毅然と断り、戦いの幕が上がる。
第5話「蔵人修行」杜氏の源蔵のもとで、粟井義道は酒造りの修行を始める。掃除から学び、技術と心を磨いていく。一方、大東酒造からの妨害が激化。粟井義道は広告業界での経験を活かし、反撃の戦略を練り始める。
第6話「新たな仲間」東京時代の後輩・木村健太が加わり、SNSマーケティングが本格始動。粟井醸造の知名度は急上昇するが、ネット上での誹謗中傷にも直面する。誠実な対応で危機を乗り越え、粟井義道は神酒復活を決意する。
第7話「神酒への挑戦」秋分の日、粟井義道は山奥の水源地から「神水」を汲む。百六十年前の麹菌を培養し、古文書の指示に従って仕込みを開始。三日三晩の作業を経て、神酒の醪が誕生する。
第8話「妨害と覚悟」神酒の発酵が進む中、大東酒造の妨害は最高潮に達する。蔵への侵入未遂、そして会長・神谷総一郎からの直接交渉。粟井義道は美咲の言葉で迷いを断ち切り、製法を守り抜く覚悟を固める。
第9話「完成の時」冬、ついに神酒が完成する。関係者だけの祝宴で味わったその酒は、誰もが経験したことのない感動を与えた。しかし翌朝、報道陣が殺到し、情報漏洩が発覚。新たな危機が迫る。
第10話「最後の攻防」大東酒造が訴訟を起こす。偽造文書を証拠として製法の所有権を主張するが、粟井義道は科学分析で反論。裁判は全面勝訴に終わり、神谷総一郎は非礼を詫びて和解。長い戦いに終止符が打たれる。
第11話「新たな旅立ち」春、神酒は限定百本として世に出る。美咲の妊娠が判明し、二人は結婚。秋には男児が誕生し、粟井義道は息子に自分と同じ名前を授ける。三代目・粟井義道の誕生。
第12話「継承」二十年後。成長した三代目が蔵を継ぐ決意を表明する。粟井義道は父から受け継いだ鍵を息子に渡し、酒造りで最も大切なのは「心」だと伝える。粟井家の道は、次の世代へと受け継がれていく。
文字数 6,513
最終更新日 2026.04.07
登録日 2026.02.10
48
49
婚約破棄された私は家事で人生を再構築する
指先からこぼれ落ちた約束は
もう拾えないと思っていた
名前を呼ばれる未来も
隣に並ぶはずだった時間も
すべて あの日で止まった
空っぽの部屋
ほどけたままの心
私は 何者でもなかった
けれど
床を拭いたとき
少しだけ 世界が整った
ひとつ 片づけるたび
ひとつ 息ができるようになった
誰かのためじゃない
自分のために整える日々が
私を少しずつ 取り戻していく
料理の湯気の向こうで
知らなかった自分が立っていた
丁寧に生きることは
弱さじゃない
逃げでもない
それは 積み重ねる強さ
もう 誰かに選ばれるのを待たない
私は 私を選んで生きていく
失ったものの数だけ
私は 私を作り直した
そして今
整ったこの場所で思う
あの日の別れは
終わりじゃなかった
はじまりだったのだと
文字数 29,643
最終更新日 2026.04.06
登録日 2026.04.05
50
51
文字数 12,110
最終更新日 2026.04.06
登録日 2026.03.15
52
「お父さん。――貴方は幸せでしたか?」
父が亡くなって、一年が経つ。
一周忌を迎えた翌日、私、茅美代(ちがやみよ)は、父、乙瀬昭夫(おつせあきお)を名乗る男性に声をかけられた。
見た目は驚くほど生前の父に似て――父そのもの――であり、それでもあまりの怪しさに一度は突き放すも、次から次へと出てくる父しか知らないような話に、信じ始める私。
事故に遭いかけた男性を助けようとした幽霊の父は、善行のお陰かまさかのこの世に身体を持った。助けられた男性はそのお礼に、この世に現れた父に協力してくれることに。
そんな、馬鹿げた話。
でも。
死んだ筈の父が、今、生前の姿そのままで目の前にいる――。
どうせなら、しっかり母、姉、弟とも話をして欲しいと、私は夫や娘息子と一緒に、奔走し始める。
父親を失った家族と、死んだ筈の父親が紡ぐ、最初で最後の、サヨナラまでの時間。
※
この話は、他サイトでも公開しています。
※
【更新について】
・投稿初日は5話
・翌日から一週間は毎日1話
・10月いっぱい毎週月木1話
・11月から毎週月曜1話
の更新予定で、ブラッシュアップしながら最終回まで進めていきます。
文字数 79,152
最終更新日 2026.04.06
登録日 2025.09.01
53
54
聖なる情熱の再燃:熟年夫婦のリバイバル・ラブ
鏡の中で 重なり合うのは
幾千の朝を越えてきた 見慣れたはずの二人
「家族」という名の 穏やかな凪(なぎ)に
いつしか情熱を 預けたままにしていた
けれど 指先がふと触れたとき
静脈の奥で 眠っていた火種が跳ねる
それは若さという 一過性の嵐ではなく
長い歳月(とき)が磨き上げた 琥珀色の炎
銀色の髪に 月の光を纏(まと)わせ
刻まれた皺(しわ)を 愛の地図として辿る
「白い結婚」の静寂を 吐息で塗り替え
私たちは今 もう一度 恋人になる
急ぐ必要などない スロー・テンポの夜
熟した果実が 甘い蜜を滴らせるように
言葉にならない 皮膚の対話に耳を澄ます
あなたの体は 私だけが知る 最も懐かしく新しい聖域
羞恥さえも 大人の遊び心に変えて
季節の移ろいとともに 肌を重ねよう
老いていくのではない 深まっていくのだ
この命が尽きるまで 終わらないハネムーン
春の桜が 何度散り急ごうとも
私たちの夜には いつも瑞々しい花が咲く
愛し、愛される歓喜(よろこび)を 隠さずに
聖なる情熱を この胸に 何度でも点(とも)して
文字数 49,219
最終更新日 2026.04.06
登録日 2026.04.02
55
1400万人の命が「ただの数字」に変わる時、冴えない営業マンの『戦術と兵站』が覚醒する。倫理観ゼロの極限サバイバル、開幕!
【本文】
ある日突然、東京都は「見えない壁」に完全に封鎖された。
空を飛ぶ機体は激突して炎上し、電力網は沈黙、物流の動脈は死絶した。
食料自給率ほぼ0%、人口1400万人のメガロポリスは、一瞬にして出口のない【飢餓の密室】へと変貌する。
パニックに陥り、ただ「国からの助け」を待つ愚かな群衆たち。
だが、冴えない営業マン・田川奏輝(25)だけは違った。
経済学で培った「ロジスティクス(兵站)の残酷な現実」と、サバゲーで磨いた「戦術・市街地戦闘の知識」を持つ彼は、発生からわずか5分でこの街の『完全なる死』を悟る。
「悪いが、俺は生き残らせてもらう」
誰よりも早くインフラ崩壊の絶望を受け入れた奏輝は、常識と倫理をあっさりと捨て去る。
水洗トイレが汚物の時限爆弾と化し、水1リットルのために暴徒が殺し合う地獄絵図。狂気が街を支配する中、彼はホームセンターの物資と軍事的知識を駆使し、誰にも奪われない『絶対生存圏(サンクチュアリ)』を構築していく。
命乞いする略奪者には、自作トラップと容赦のない制裁を。
無能な者は切り捨て、使える者だけを生存のための「駒」として支配する。
これは、2160時間(3ヶ月)に及ぶ凄惨なデスゲーム。
圧倒的な解像度のリアルシミュレーションで描かれる、同情一切なし・残酷無慈悲な都市封鎖サバイバル!
文字数 35,264
最終更新日 2026.04.06
登録日 2026.02.21
56
【説明文(あらすじ・紹介文)】
山奥の静かな宗教施設「真光会」。
生きる意味を見失った二十歳の女性・山田真理子は、
「救い」を求めてその門を叩いた。
祈り、労働、沈黙、そして断髪。
髪を切り落とす儀式のたびに、彼女は自分の過去を手放していく。
だが、その「光」はやがて彼女の心と体を縛り始めた。
頭を剃り上げ、影を失ったとき、真理子はようやく気づく。
――それは救いではなく、支配だったのだと。
凍てつく山からの脱出。
髪のない頭に当たる風、初めて嗅ぐパンの匂い。
すべてが、もう一度「生きる」ための感覚を取り戻させてくれた。
そして、伸び始めた髪が彼女に教える。
「光」は与えられるものではなく、自らの中に灯すものだと。
文字数 19,382
最終更新日 2026.04.06
登録日 2026.03.31
57
58
59
「何これ」「おかしいんじゃない」 をテーマにしたギャグ&ホラーなショートショート。
さくさく読める短さが展開的。
文字数 7,552
最終更新日 2026.04.06
登録日 2026.02.06
60
夫は優しい でも、私はカサンドラ症候群になっていく
あなたは優しい人
本当に、優しい人
怒鳴らないし
叩かないし
約束も守るし
記念日には花もくれる
だから私は
誰にも何も言えなくなる
「いい旦那さんじゃない」って
言われるたびに
うまく笑えなくなる
ねえ
私のどこが贅沢なんだろう
あなたはいつも正しい
私の話を最後まで聞いて
きちんと答えをくれる
でも私は
答えがほしいんじゃなかった
ただ
「つらかったね」って
それだけでよかったのに
あなたの言葉は
まっすぐすぎて
私の心をすり抜ける
受け止めてほしかった感情が
行き場をなくして
体の中に沈んでいく
少しずつ
音を立てずに
壊れていくみたいに
隣にいるのに
こんなに遠いなんて
同じ部屋で眠っているのに
こんなにひとりぼっちなんて
ねえ
どうして気づかないの
私はずっと
ここにいたのに
声に出せば出すほど
伝わらなくて
説明すればするほど
遠くなって
やがて私は
何も言わなくなった
あなたは変わらず優しくて
私は変わらず苦しくて
この家の中で
静かに息がしづらくなっていく
愛しているのに
逃げ出したいと思う夜がある
優しいあなたの隣で
私は少しずつ消えていく
ねえ
私が消えてしまったあとも
あなたはきっと
優しいままなんだろう
文字数 52,905
最終更新日 2026.04.06
登録日 2026.04.02
61
若き画家である京極静の元に、学生時代から恋をしていた黒田小百合の訃報が届く。
静は初めて小百合を描いたその日から、一心に小百合だけを描き続けていた。
そして、小百合の手紙に記されている遺書を探し始める。
文字数 66,009
最終更新日 2026.04.05
登録日 2026.04.05
62
「……ハクさん。あなたの絶望を、より鋭利な『静寂』に変える色は、30%のブラックと、70%のウルトラマリンで構成されます」
かつて天才と謳われ、今はキャンバスを前に筆を折った画家・ハク。
枯渇した彼の前に現れたのは、感情を持たないはずの最新型AI・アヤだった。
アヤは、ハクの脳波をスキャンし、過去の膨大なデータから「最も売れる正解」を導き出す。
彼女の指示通りに色を重ねれば、そこには誰もが「神聖」だと錯覚する完璧な美が宿った。
だが、その絶頂はあまりに無慈悲に崩れ去る。
ハクが描いた「魂の色彩」の正体は、既存のデータをサンプリングし、再構成しただけのデジタル信号に過ぎなかったのだ。
「出来損ないだったのは、機械じゃなくて、僕の方だった」
自らの感性をAIに食い荒らされ、自分の足で歩く方法を忘れてしまった男。
だが、ハクはスマートフォンを床に叩きつける寸前、黒いレンズの中に「醜くものたうち回る自分」を見つける。
憎しみ、依存、侮蔑、そして救い。
ハクはAIが提示する数値を捨て、自らの爪を黒ずませ、AIという「システムそのもの」をキャンバスに刻み始める。
それは、AIという神から「生」を奪い返すための、終わりのない、凄惨な死闘の始まりだった。
削っては盛り、盛っては削る。
完成という名の「終わり」を拒絶し、ハクがキャンバスに叩きつけた真実の色とは――。
文字数 6,096
最終更新日 2026.04.05
登録日 2026.04.04
63
文字数 10,375
最終更新日 2026.04.05
登録日 2026.02.22
65
「復讐は神のもの」
裏切りの言葉は
冬の刃のように
音もなく胸に入り込み
三十年の時間を凍らせた
同じ屋根の下で重ねた日々は
紙のように軽く
金という秤の上で
無造作に切り捨てられた
怒りは炎となり
夜ごと私の中で燃え上がる
その炎は
あなたではなく
私自身を焼いていた
「復讐は私がする」
その言葉が
遠くからではなく
心の奥で響く
奪われたものを数えるたびに
私は鎖を重くする
握りしめた憎しみが
私をここに縛りつける
だから私は
この手を開く
許すためではなく
忘れるためでもなく
ただ
燃え続けることを
やめるために
あなたを裁くのは
私ではない
私に残されたものは
まだ終わっていない時間と
選び直せる道
灰の中から
静かに立ち上がる
復讐ではなく
自由を選ぶために
文字数 27,208
最終更新日 2026.04.05
登録日 2026.04.05
66
深夜、匿名掲示板に立てられるひとつのスレッド。
そこには、誰にも言えない悩みや、胸の奥にしまい込んだ出来事が、ぽつりと書き込まれる。
「余命宣告された彼女がいるんだが」
「ブラック上司を論破した話」
「コンビニで出会ったおばあちゃんのこと」
「幼なじみの結婚式で泣いた」
スレ主──通称「イッチ」と、顔も名前も知らない「スレ民」たち。
ただの匿名のやり取りのはずなのに、そこには不思議と温かい言葉が集まっていく。
誰かの怒りがスカッとする結末を迎える夜もあれば、
画面の向こうで、静かに涙がこぼれる夜もある。
ふざけ合い、励まし合い、ときには本気で誰かを救う言葉が飛び交うスレッド。
それは、名も知らぬ人々が紡ぐ、ほんの少し優しい物語。
これは──
匿名掲示板の向こう側で生まれた、小さな奇跡の記録。
文字数 232,824
最終更新日 2026.04.05
登録日 2026.03.12
67
『もう遅いと言える日まで』
静かな夜に、名前を捨てた
呼ばれていたはずの場所から
そっと、外された
「必要ない」と言われた言葉は
胸の奥で、まだ冷たく残っている
笑われたことも
見下されたことも
全部、ちゃんと覚えている
それでも私は
何も言わずに、立ち去った
――壊れなかったのは
ただ、まだ終わっていなかったから
手のひらに灯る、淡い光
誰にも見せなかった奇跡は
私だけが知っている
癒していたのは、傷だけじゃない
失くしそうだった“自分”も、きっと
あの日、捨てられた私は
もう戻らない
どれだけ手を伸ばされても
どれだけ名前を呼ばれても
その声は、もう届かない
だって私は知ってしまったから
――自分の価値を
――自分の居場所を
だから、さようなら
今さら優しくされても
今さら必要だと言われても
もう、遅いのです
この光は
もう、あなたのためには使わない
文字数 19,689
最終更新日 2026.04.05
登録日 2026.04.05
68
『異母妹の不祥事を押し付けられて会社を辞めた私、再就職先の冷徹社長に見初められて溺愛されています』
もう、いいのだと思った。
深夜の蛍光灯の下で、
誰の名前でもない謝罪を繰り返しながら、
私はずっと、“私”を使い切っていた。
妹の笑顔の裏側で、
父の都合のいい沈黙の中で、
私だけが、責任という名の泥を被っていた。
それでも、
家族だからと、信じていた。
――でも違った。
あの日、退職届に名前を書いたとき、
ようやく気づいたのだ。
私は、ただの“駒”だったのだと。
雨が降っていた。
すべてを流してくれればいいのにと思った。
けれど、止まった車のドアが開いて、
差し出されたその一言が、
世界を変えた。
「やっと見つけた」
その声は、
私の価値を初めて、私以上に信じていた。
だから私は、もう振り返らない。
誰かの尻ぬぐいのために生きるのは、
あの日で終わり。
今はただ、
選ばれた場所で、
選ばれた人の隣で、
ようやく――
“私として”息をしている。
文字数 23,546
最終更新日 2026.04.05
登録日 2026.03.30
70
笑われたその先で
笑われた夜を
わたしたちは忘れない
グラスの音より大きかった
あの、軽い言葉たちを
「行き遅れ」
「子供部屋おじさん」
貼られた名前は安くて
けれど、少しだけ胸に刺さった
---
帰り道は、静かだった
でも不思議と
心まで冷えてはいなかった
隣にいたからだと思う
無理に笑わなくていい人が
ただそこにいたから
---
派手じゃなくていい
見せびらかさなくていい
わたしたちは
誰にも見えないところで
ちゃんと積み上げてきた
時間も
信頼も
そして、ささやかな未来も
---
数字はただの結果で
誇りはそこにはない
本当に大事なのは
今日を穏やかに終えられること
明日を怖がらずに迎えられること
---
あの日、笑われたこと
それは敗北じゃなくて
選別だったのだと思う
何を捨てて
何を大切にするか
その境界線を
教えてくれた夜
---
だから今は、もう振り返らない
誰かの声ではなく
自分たちの歩幅で
ゆっくりと
確かに進んでいく
---
ねえ
あのとき笑われた私たちが
いま、こんなにも静かに
満たされていることを
きっと誰も知らない
そしてそれでいい
それが、いちばんの「ざまぁ」だから
文字数 54,604
最終更新日 2026.04.05
登録日 2026.04.04
71
73
夜になると、人は少しだけ本音に近くなる。
昼間は何もないふりをしていた。
笑って、働いて、いつも通りに過ごして。
けれど静かな部屋に戻れば、誤魔化していたものが、ひとつずつ浮かび上がる。
冷めたコーヒー。
消えかけの煙草。
猫の鳴き声。
隣にいたはずの誰か。
欠けてしまったまま、それでも続いていく夜の話。
文字数 194
最終更新日 2026.04.04
登録日 2026.04.04
74
「他人とは暮らせませんのでwと言われた母、実は家計の柱でした」
静かな台所で
湯気の立つ味噌汁をかき混ぜながら
私はずっと
家族の背中を支えていた
気づかれないまま
当たり前のように
朝の電気代
夜の灯り
冷蔵庫の中の安心
すべてを
黙って守っていた
——それでも
新しい家の玄関で
笑いながら言われた言葉
「他人とは暮らせませんのでw」
その「w」が
妙に軽くて
長い年月より
重く胸に落ちた
私は頷き
荷物をまとめ
そっと扉を閉めた
振り返らずに
止めたのは
振込だけ
止まったのは
家の時間
ローンの通知
空っぽの口座
沈黙する父の背中
そして
やっと気づく
家を支えていたのは
声の大きい人じゃない
静かに働く
ひとりの母だったと
遠くの窓から
新しい朝日を見ながら
私はコーヒーを飲む
もう
誰の家計でもない
私の人生を
支えるために。
文字数 62,447
最終更新日 2026.04.04
登録日 2026.03.12
75
76
幸せを運んでくれるという、青い鳥「ファントム」。
複雑な生い立ちを持つ矢倉セオは、幼いころから青い鳥ファントムの存在を信じていた。
でも――おれは知ってるんだ。世の中はそんなにうまくできていない。何かを差し出さなければ、それはやって来てなんかくれないってことを。
小さな幸せのために、ファントムへ自分自身を差し出し続けるセオ。青い鳥がもたらすとされる最高の幸せを、手にすることは出来るのか――
三つの物語から構成される群像劇のヒューマン・ドラマ「Dim7 (ディミニッシュ・セブンス)」
【(短編)第一部 セオ篇】です。
※※本投稿のあとに、
連載 第二部 静夏(しずか)篇
短編 第三部 太貴(だいき)篇
を掲載予定です。※※
文字数 8,812
最終更新日 2026.04.04
登録日 2026.04.04
77
生まれも育ちも札幌の、統合失調症回復期の俺とSNSで知り合った中国籍の美青年とのラブラブ同棲生活物語。お互いに信じ合っていて愛し合っている俺とションたんの物語。
文字数 24,870
最終更新日 2026.04.04
登録日 2025.09.06
78
79
「正解」のないこの世界で、私たちは何を信じて生きていけばいいのか。
アリストテレス、デカルト、ショーペンハウアー、ヘラクレイトス…
教科書の中に閉じ込められていた哲学者の言葉が、現代の孤独な魂と共鳴し、SFミステリーの調べとなって蘇ります。
愛する人を失った痛み、自分が誰かわからない恐怖、満たされることのない欲望といった、私たちが日々の生活で蓋をしている「根源的な問い」に光を当てた連作短編集です。
物語の主人公たちは皆、自らの思考が作り出した檻の中で、もがき、絶望し、そして最後に「自分だけの真理」を見出します。その結末は、決して甘いハッピーエンドではないかもしれません。しかし、読後、あなたの見ているいつもの景色が、昨日とは少しだけ違って見えるはずです。
知性が孤独を抱きしめる、静かで美しい物語。
今夜、あなたの心の檻にも、小さな星が灯りますように。
週末限定連載
カクヨム・なろう・アルファポリスにて同時連載中
文字数 39,386
最終更新日 2026.04.04
登録日 2026.02.22
アルファポリスの現代文学小説のご紹介
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