「怖」の検索結果
全体で5,665件見つかりました。
夜のオフィス街。
時刻はすでに深夜に差しかかろうとしている。
総務課の美咲は、足取りもおぼつかなくフラフラと帰ってきていた。
取引先との接待。乾杯を何度も重ね、気がつけばグラスを手放すこともできなくなっていた。
強い酒に火照った頬は紅潮し、足元は揺れて、視界はぼやける。
「……つかれた……」
デスクに鞄を置き、椅子に沈み込む。
(少し、休もう……)
そう思った瞬間、心の奥に沈んでいた黒い言葉が、アルコールにほだされて浮かび上がる。
口にしてはいけないはずの言葉。
絶対に、誰にも聞かれてはいけない秘密。
それが、美咲の唇からこぼれた。
――「……課の経費を横領した……。もしバレたら解雇、裁判……終わりだ……」
酒のせいだと分かっている。
酔いに任せて、心の奥底の不安を口にしてしまった。
誰もいないと思い込んでいたから、余計に無防備に声が漏れた。
だが、その油断は致命的だった。
「……なるほど。終わり、か」
背後から、低く湿った声。
美咲の肩がビクリと跳ねる。
振り返った瞬間、血の気が引いた。
そこには一人の男が立っていた。
スーツ姿、手にはスマートフォン。
黒い瞳が光を反射し、獲物を見下ろす捕食者のように冷酷だった。
「き……聞いて……たの……?」
酔いで舌が回らない。
掠れた声は震え、言葉にならない。
男はスマートフォンを掲げてみせる。
画面に浮かぶのは、録音中を示す赤いアイコン。
「証拠は、もう手に入れた」
その一言で、美咲の心臓がどくんっと大きく跳ねた。
頭の奥がじんじんと痺れ、呼吸が荒くなる。
(だめ……これが……外に出たら……私は……)
家族、職場、すべてが崩れる光景が頭をよぎる。
言い訳はできない。確かに口にしてしまったのだから。
「やめて……お願い……」
震える声。涙で濡れた目が男を見上げる。
だが、返ってくるのは冷たい笑みだけだった。
「従え。逆らえば、この録音はすぐに世間に曝け出す」
その瞬間、美咲の背筋を冷たいものが這い上がった。
自分の未来を、人差し指一つで握られている――その現実が、体を硬直させる。
恐怖と羞恥と、どうしようもない無力感が、彼女を締めつけていた。
――こうして始まる。
美咲が「堕ちる理由」の物語が。
文字数 132,334
最終更新日 2025.10.30
登録日 2025.08.30
「処刑されるなんて真っ平ごめんです!」 無実の罪で投獄された悪役令嬢レティシア(中身は元社畜のアラサー日本人)は、処刑前夜、お腹の子供と共に脱獄し、辺境の田舎村へ逃亡した。 それから五年。薬師として穏やかに暮らしていた彼女のもとに、かつて自分を冷遇し、処刑を命じた夫――「氷の公爵」アレクセイが現れる。 殺される!と震えるレティシアだったが、再会した彼は地面に頭を擦り付け、まさかの溺愛キャラに豹変していて!?
「愛しているレティシア! 二度と離さない!」 「(顔が怖いです公爵様……!)」
不器用すぎて顔が怖い旦那様の暴走する溺愛。 そして、二人の息子であるシオン(1歳)は、実は前世で魔王を倒した「英雄」の生まれ変わりだった! 「パパとママは僕が守る(物理)」 最強の赤ちゃんが裏で暗躍し、聖女(自称)の陰謀も、帝国の侵略も、古代兵器も、ガラガラ一振りで粉砕していく。
文字数 123,273
最終更新日 2026.01.20
登録日 2026.01.20
ある日、婚約者アルバン様が私の事を悪く言ってる場面に遭遇してしまい、ショックで落ち込んでしまう。
しかもアルバン様が悪口を言っている時に側にいたのは、美しき銀狼、又は冷酷な牙とあだ名が付けられ恐れられている、この国の第三王子ランドール・ウルフイット様だったのだ。
だから、問い詰めようにもきっと関わってくるであろう第三王子が怖くて、私は誰にも相談できずにいたのだがなぜか第三王子が……。
○○sideあり
全20話
文字数 75,436
最終更新日 2021.05.01
登録日 2021.04.12
ぼっち陰キャでゲーム知識だけは妙に豊富な高校生、壁山とおる。
ある日、謎のゲームソフトを起動した彼は、気づけば剣と魔法の異世界に転送されていた。最初こそ戸惑ったものの、ラノベ知識と地味な努力を武器に、辺境の村でスローライフを満喫。畑を直し、魔物を倒し、村人に頼られ、気づけばすっかり村の中心人物になっていた。
そんな彼のスキルは――〈壁〉。
指定した場所に壁を出すだけ。一見すると地味。とても地味。勇者っぽさはゼロ。
しかし三年間、こつこつ鍛え続けた結果、とおるの〈壁〉はなぜか剣も魔法も魔力回路も止められる、かなりおかしな能力へと成長していた。
そんなある日、王国の騎士団が村にやってくる。
「この村は閉鎖区域に指定された。住民は退去せよ」
突然の日常終了宣言に、村人たちは大混乱。納得できないとおるは、誇り高き女騎士団長リディア・アルヴェインに決闘を申し込む。
圧倒的な剣技を前に追い詰められるとおる。
だが、最後の最後で放った渾身の〈壁〉が、奇跡のような、事故のような、いや完全に事故な結果を生む。
気づけば王国最強クラスの女騎士団長が、村の壁に埋まっていた。
「貴様……ッ! 今すぐ解除しろ!」
「解除した瞬間、俺を斬りません?」
「斬らん!」
「今の間、めちゃくちゃ怖かったんですけど」
村を守りたい陰キャ村人代表と、威厳を守りたい女騎士団長。
地味スキル〈壁〉から始まる、異世界防衛コメディ開幕!
文字数 187,520
最終更新日 2026.07.28
登録日 2026.07.20
復活しました!
読んでいた皆様、いきなり消えて申し訳ございませんでした!
これからも、よろしくしてくれると嬉しいです!
両親の離婚を期に母が去り、地下書斎に軟禁されて育ったロレティカは父に認められたい一心で第一王子バレックに仕えるも、虐げられる日々を送っていた。
唯一優しく接してくれた国王陛下が崩御し絶望する中、異母兄弟の後継者争いに終止符が打たれると、即位したバレックと王太后による恐怖政治が始まった。
前陛下を亡くした悲しみに囚われていたロレティカは国を崩壊させようと動き、その後、王弟レイリスよる反乱が起こる。
敗れたバレックは家臣と共に投獄され、ロレティカも地下牢へ繋がれる。
そこでレイリスの護衛騎士サルクの優しさに触れ、無償の温もりを注がれて恋を知り……。
処刑寸前に「今度はサルクのために生きたい」と願いながら断罪されたが、目覚めると登城前に時間が巻き戻っていて──!?
文字数 155,568
最終更新日 2026.07.26
登録日 2026.03.10
17歳、その生涯を終えた。
転生した先は、生前妹に借りていた乙女ゲームの世界だった。
悪役令嬢の兄に転生したからには、今度こそ夢を叶えるために死亡フラグが立ちまくるメインキャラクター達を避けてひっそりと暮らしたかった。
しかし、手の甲に逆さ十字の紋様を付けて生まれて「悪魔の子だ」「恥さらし」と家族やその周辺から酷い扱いを受けていた。
しかも、逃げ出した先で出会った少年はメイン中のメインキャラクターの未来の騎士団長で…
あれ?この紋様、ヒロインのものじゃなかったっけ?
大帝国の神の子と呼ばれたこの世で唯一精霊の加護により魔法が使える冷淡(溺愛)騎士団長×悪魔の子と嫌われているが、生きるために必死な転生少年とのエロラブバトル。
「……(可愛い可愛い)」
「無表情で来ないでよ!怖い怖い!!」
脇CPはありません。
メイン中心で話が進みます。
文字数 663,482
最終更新日 2023.09.30
登録日 2019.12.13
# あなたは一度も聞かなかった
## 〜噂だけを信じた婚約者の後悔〜
幼い頃に魔力を暴走させたことで、“危険な公爵令嬢”と噂されるようになったキアラ・フォン・リュシエル。
黒髪に赤い瞳。
人を寄せ付けない見た目と、王都から離れて育った環境のせいで、社交界ではあることないことを囁かれていた。
そんな彼女には、正義感が強く優秀だと評判の婚約者――公爵令息アレクシス・フォン・クラウディアがいる。
けれど彼もまた、噂を信じていた一人だった。
「怖い令嬢」
「魔力を盾にわがままを言う娘」
「感情を制御できない危険人物」
学園で再会したキアラは、婚約者としてではなく、“一人の人間として”アレクシスと向き合おうとする。
お茶会に誘い、
行事で声をかけ、
少しずつ関係を築こうと努力するキアラ。
だがアレクシスは最後まで彼女に壁を作り続ける。
やがて彼は、明るく社交的な伯爵令嬢に心を惹かれていき――。
卒業間近。
二人は“円満”に婚約解消する。
その別れ際、キアラは静かに言った。
「結局、あなたは一度も私に聞かなかったのですね」
そして数年後。
仕事を始めたアレクシスは知ることになる。
噂だけで人を判断する愚かさを。
そして、自分がどれほど誠実な少女を見ようとしなかったのかを。
これは、“ざまぁ”ではない。
信じるべきものを見誤った、一人の青年の静かな後悔の物語。
文字数 16,647
最終更新日 2026.06.02
登録日 2026.05.28
王太子妃内定を発表するはずの舞踏会で、リリアナは無能の烙印を押され、婚約を一方的に破棄される。幼少期の事故で封じられていた強大な魔力と、その恐怖を抱えたまま、彼女は反論すらできず王都から追放される。だがその裏では、宰相派による政治的策略と、彼女の力を利用し隠してきた王家と貴族の思惑が渦巻いていた。すべてを失った夜、リリアナは初めて「役目ではなく自分の意思で生きる」選択を迫られ、死地と呼ばれる北辺境へと旅立つ。
文字数 148,845
最終更新日 2026.05.02
登録日 2026.05.02
嫌われ魔術師の俺は元夫への恋心を消去する
レンタル有り旧題:恋愛感情抹消魔法で元夫への恋を消去する
☆11/28完結しました。
☆第11回BL小説大賞奨励賞受賞しました。ありがとうございます!
冷酷大元帥×元娼夫の忘れられた夫
——「また俺を好きになるって言ったのに、嘘つき」
元娼夫で現魔術師であるエディことサラは五年ぶりに祖国・ファルンに帰国した。しかし暫しの帰郷を味わう間も無く、直後、ファルン王国軍の大元帥であるロイ・オークランスの使者が元帥命令を掲げてサラの元へやってくる。
ロイ・オークランスの名を知らぬ者は世界でもそうそういない。魔族の血を引くロイは人間から畏怖を大いに集めながらも、大将として国防戦争に打ち勝ち、たった二十九歳で大元帥として全軍のトップに立っている。
その元帥命令の内容というのは、五年前に最愛の妻を亡くしたロイを、魔族への本能的な恐怖を感じないサラが慰めろというものだった。
ロイは妻であるリネ・オークランスを亡くし、悲しみに苛まれている。あまりの辛さで『奥様』に関する記憶すら忘却してしまったらしい。半ば強引にロイの元へ連れていかれるサラは、彼に己を『サラ』と名乗る。だが、
——「失せろ。お前のような娼夫など必要としていない」
噂通り冷酷なロイの口からは罵詈雑言が放たれた。ロイは穢らわしい娼夫を睨みつけ去ってしまう。使者らは最愛の妻を亡くしたロイを憐れむばかりで、まるでサラの様子を気にしていない。
誰も、サラこそが五年前に亡くなった『奥様』であり、最愛のその人であるとは気付いていないようだった。
しかし、最大の問題は元夫に存在を忘れられていることではない。
サラが未だにロイを愛しているという事実だ。
仕方なく、『恋愛感情抹消魔法』を己にかけることにするサラだが——……
☆お読みくださりありがとうございます。良ければ感想などいただけるとパワーになります!
文字数 184,109
最終更新日 2025.08.06
登録日 2023.10.27
『紬、次の発情期が来たら、オレのために”巣”を作ってよ』
その約束は、僕にとってしあわせの始まりになるはずだった。
でも、その約束が原因で、僕は自分が”普通”じゃないんだと知ってしまった。
新しい恋人である優しいα・奏さんと暮らし始めても、あの日のトラウマは消えない。
彼に”巣”を見られるのが怖くて、発情期が近付くたび、僕は小さな嘘をつく。
誰にも見つからない場所で、ひとりぼっちで”巣”を作り、彼が帰って来る前に片付ける。
これは、“普通”のΩになれなかった僕と、大好きな恋人とのかくれんぼ。
どうか、僕の”巣”が見つかりませんように。
――そう願っているのに、本当は少しだけ、奏さんに見つけて欲しいと願ってしまった僕のお話。
文字数 9,945
最終更新日 2026.07.10
登録日 2026.07.10
【作品紹介文(あらすじ)】
「君の力がないと、俺の料理は完成しない」
「植物を少し元気にするだけ」という地味な能力を理由に、役立たずの烙印を押され、王太子から婚約破棄と追放を言い渡された公爵令嬢リリアナ。
冷たい雨の中、辺境の村で行き倒れた彼女を拾ったのは、鋭い眼光と傷跡を持つ大柄な男・龍魔呂(たつまろ)だった。
彼が営む小料理屋『鬼龍』で出された、極上の出汁が香る温かい肉椎茸の雑炊。
冷え切った心と体を溶かすその味と優しさに、リリアナは涙を流す。
行く当てのない彼女は店で住み込みで働くことになるが――。
一見するとヤクザか死神のように恐ろしい龍魔呂。しかし、彼はリリアナの歩幅に合わせ、重い荷物を全て持ち、極上のご飯で徹底的に彼女を甘やかしてくる「超・過保護」なスパダリ料理人だった!
さらに、リリアナの隠された「植物を爆発的に育てる」チート能力も開花し、店には伝説の食材が次々と実り始める。
一方、リリアナ(実は国を支える大聖女)を失った王国は、作物が枯れ果てて崩壊の危機に陥っていた。
慌てて彼女を連れ戻そうとする愚かな王太子たち。しかし、彼らは知らなかった。
リリアナを溺愛する龍魔呂の正体が、かつて裏世界を恐怖で支配した伝説の処刑人であることを。
そして、リリアナを愛でる親友・ユイが、国を丸ごと消し炭にできる『雷帝神』であることを……!
「俺の女に指図していいのは、この世界に俺だけだ」
最強の強面料理人による胃袋を掴む極上ご飯と、甘すぎる規格外の溺愛。
ヒロインを傷つける者には一切の容赦がない、最高に爽快な「ざまぁ」をお届けします。
心もお腹も満たされる、極上異世界スローライフ、開幕!
本作品はAIを活用して制作しています。企画・設定・世界観・登場人物・ストーリーは作者が考案し、本文の文章生成にはAIを利用しています。掲載内容は作者が確認・修正・監修しています。
文字数 31,964
最終更新日 2026.07.27
登録日 2026.07.27
エブレトルエ子爵家の長女ミレティーアの人生は、母アリアの死を切っ掛けとして一変してしまいました。
6歳の頃に父親が再婚した継母エリッタ、エリッタを愛するあまり何でも従ってしまう父ルーカス、そして腹違いの妹ルナミエ。ミレティーアは3人に虐げられ続け、地獄のような辛い日々を送っていました。
それでもミレティーアは挫けず生きていたのですが、17歳の誕生日の日に状況が更に悪化。ミレティーアはエリッタ達の策略により、奴隷商人に売られてしまうことになったのでした。
「怖がらせて済まなかった、君に危害を加えるつもりは微塵もないよ。……久しぶりだね、ミレティーア」
ですが目の前に現れた奴隷商人は、幼い頃に一度だけ会った大切な友人。彼はこの日のために長年努力を重ね、商人に擬態して駆け付けていたのでした。
文字数 29,218
最終更新日 2026.07.28
登録日 2026.07.08
意味コワ! 10秒で読めるゾッとする話
レンタル有り
文字数 81,693
最終更新日 2026.07.27
登録日 2024.07.14
「ぼくの夏休みの自由研究は、遠野で本物の河童を釣ることです!」
妖怪が大好きな小学五年生・水城湊は、クラスメイトに笑われながらも、堂々とそう宣言した。
河童の写真を撮って、妖怪が本当にいると証明したい。
そのために湊は夏休みの三週間、家族と離れ、岩手県遠野市にある古い民宿「かざぐるま荘」で暮らすことになった。
毎朝、釣り竿ときゅうりを持って川へ通う湊。しかし河童は釣れず、引っかかるのは古びた草履や空き缶ばかり。
そんな湊の前に、地元の少年・川守九郎が現れる。
「河童を釣りたいなら、そんな間抜けな餌はやめろ」
川に詳しく、泳ぎが得意で、なぜか河童の話をされると機嫌が悪くなる九郎。
しかも湊が川へ落ちたとき、九郎の頭には丸い皿のようなものが見えて――。
民宿で靴下を隠す正体不明の少女。
雨の日だけ山道に現れる団子屋。
夜の橋で、通行人の名前を尋ねる老人。
遠野で出会う人々の中には、人間の姿に化けた妖怪たちが紛れ込んでいた。
ところがある日、妖怪たちが自分の名前や大切な思い出を、少しずつ忘れ始める。
名前を失った妖怪は姿を保てなくなり、やがて誰の記憶からも消えてしまうという。
妖怪を捕まえて、存在を証明したかった湊。
けれど、妖怪にも秘密があり、家族がいて、知られたくない事情があることを知ってしまう。
河童を捕まえて東京へ帰るのか。
それとも、三週間だけの友だちを守るのか。
妖怪に憧れていた都会の少年と、人間に化けて暮らす妖怪たちが過ごす、笑って、怖がって、喧嘩して、少しだけ泣ける、ひと夏の自由研究物語。
文字数 177,336
最終更新日 2026.07.28
登録日 2026.07.18
普通に暮らしていた高校生の誠也(せいや)が突如怖いヤグザ達に誘拐されて監禁された後体を好き放題されるお話。親にも愛されず愛を知らずに育った誠也。だがそんな誠也にも夢があった。だから監禁されても何度も逃げようと試みる。そんな中で起こりゆく恋や愛の物語…。ハッピーエンドになる予定です。
文字数 434,091
最終更新日 2025.10.23
登録日 2024.07.15
文字数 31,276
最終更新日 2025.03.17
登録日 2025.02.27
二十歳の大学生・相沢奏汰は、事故で命を落とし、剣と魔法の異世界へ転生した。与えられたのは火・水・風の三属性と、他人の感情を色や温度として感じ取る《共感の眼》。三属性だけでも天才と呼ばれる世界で、奏汰にはさらに誰も予想できない異常があった。
この世界の魔法使いは、決められた詠唱を唱え、完成された魔法陣へ魔力を流す。しかし奏汰の目には、詠唱は音声コマンド、魔法陣は条件分岐や終了処理を組み込んだプログラムにしか見えなかった。既存の術式を脳内で解析し、火に風を重ね、水を霧へ変え、複数属性を同時に制御する。本人は少し工夫しただけのつもりでも、その無詠唱魔法は世界の常識を次々と壊していく。
転生直後の市場で奏汰が出会ったのは、薄桃色の髪をした旅の少女リュミナだった。ひったくりを追って泥だらけになった奏汰に、彼女は不思議そうに尋ねる。
「どうして、関係のない私を助けたの?」
「みんなが笑ってる方が、楽しいだろ」
その答えに興味を持ったリュミナは、正体を隠して旅へ同行する。奏汰は知らない。焚き火の前で「俺が守る」と誓った少女こそ、一人で国を滅ぼせる世界最強の十人《十天外》第五位、“陽だまりの怪物”であることを。
しかも奏汰は聖人ではない。美人に弱く、誘惑に負け、サキュバスに騙され、面倒事に首を突っ込んでは毎回後悔する。それでも誰かの笑顔の奥に悲しみを感じれば、怖くても手を伸ばしてしまう。
種族差別、奴隷商、偽りの宗教、十天外を騙る犯罪者。弱く未熟だった青年の善意と異常な成長速度は仲間を増やし、やがて国々と十天外を巻き込んでいく。
これは、魔法を使うのではなく設計する転生者が無詠唱で最強へ駆け上がり、強すぎて人の痛みを忘れかけた少女に、守られる喜びと恋を教える物語。やがて世界最強の第一位さえ、奏汰という存在の未来を恐れ始める。だが当の本人は、今日も隣の少女の正体を知らないまま、本気で彼女を守ろうとしている。
文字数 122,438
最終更新日 2026.07.28
登録日 2026.07.11