「スマート」の検索結果
全体で329件見つかりました。
大学の卒業式の日、私はとびきり印象に残る「卒業祝い」を受け取った。
スマートフォンに銀行からの通知が届いたのは、式を終えて着替えた直後だった。四年間、アルバイトと奨学金、それに研究室の補助業務でもらった謝金を少しずつ貯めてきた口座から、百五十万円が消えている。
送金したのは、母だった。
その口座は高校生の頃に作ったものだった。当時は母がキャッシュカードや認証の設定を管理していて、大学に入ってからはほとんど私自身が使っていたものの、昔の設定をきちんと変えないままにしていた。
二十二歳になった今、そのことをこんな形で後悔するとは思わなかった。
「美月は第一志望の国立には届かなかったけど、星華大には受かったんだから。受験で一年頑張ったんだし、進学祝いくらいしてあげたいでしょう?」
母は悪びれもしなかった。
「お金はお母さんが借りたことにして。星奈はお姉ちゃんなんだから、こんなときくらい水を差さないでよ」
百五十万円。
深夜のコンビニ、週末の家庭教師、奨学金、研究室の補助業務。四年間かけて貯めたお金だった。
大学院へ進んでからの生活費も、引っ越し代も、入学準備に必要なお金も入っている。
何より、いざというときに自分で逃げられるように用意していたお金だった。
兄の陽介は、私の肩を軽く叩いて笑った。
「星奈は昔からしっかりしてるし、今回は美月に譲ってやれば? 俺もまだ入社したばっかで余裕ないけど、落ち着いたら卒業祝いするからさ」
幼なじみの相沢智也まで、母たちの側についた。
「叔父さんたち、旅行ももう予約してるんだろ? お金のことは帰ってから話せばいいじゃん。せっかくの卒業式なのに、そんな顔して終わるのもったいないよ」
私は、楽しそうに荷物を持って出ていく家族を黙って見送った。
誰も知らない。
私はもう、彼らが帰ってくるのを待つつもりなどなかった。
四年間付き合ってきた恋人、久我蒼士が桐葉市役所の近くで待っている。
婚姻届も、とっくに二人で書き終えていた。
昨日までの私は、大学院が始まって生活が落ち着いてから家を出ようと思っていた。
けれど、もう十分だった。
今日からは、自分の人生を生きる。
藤原家へ戻ることも、もうない。
文字数 14,583
最終更新日 2026.10.20
登録日 2026.10.20
宗一郎がシャツの三つ目のボタンを留めたときには、私はもうスマートフォンで銀行アプリを開いていた。
ベッドの脇には女物のワンピースと彼のベルトが散らばっている。神崎美月はホテルのバスローブをまとい、浴室の入り口に立っていた。鎖骨には意味ありげな赤い痕。まるで私に見せつけるために、そこに立っているようだった。
カーテンは完全には閉じられていない。朝の光が絨毯に差し込み、部屋の惨状を残酷なほど鮮明に照らしていた。
初めてこんな場面に出くわしたとき、私は部屋のグラスを叩き割り、宗一郎の胸ぐらをつかんで理由を問い詰めた。
あのときの彼はベッドヘッドにもたれて煙草を吸い、ズボンすらまともに穿かないまま、淡々と言った。
「部屋が暗くて、お前と間違えた」
その後、同じような「人違い」は二度起きた。
それをきっかけに、私たちは書面で取り決めを交わした。不貞行為が一度発覚するたび、離婚成立前の解決金として、彼は私に五百万円を支払う。
「振り込んで」
文字数 15,654
最終更新日 2026.07.16
登録日 2026.07.16
初めて、三年付き合った彼の実家へ挨拶に行くことになった。
私は出発前、拓海に何度も念を押した。長ねぎや生姜、にんにくは、体質的にどうしても受けつけない。少しでも口にすると、すぐに吐いてしまう。避けるのが難しいなら、自分だけ外で食事を済ませても構わない、と。
「玲奈のことなら、ちゃんと分かってる。母さんにも伝えておくから安心して」
食卓に並んだ鶏肉の煮物や魚の揚げ物、野菜の和え物には、ねぎも生姜も見当たらなかった。
私は、彼が本当に伝えてくれたのだと思った。
ところが美代子は、にんにくも生姜も細かく刻んで煮込んであるのだと、笑いながら明かした。そんなものはただの好き嫌いで、親に甘やかされて育っただけだとまで言われた直後、胃が激しく波打ち、私は洗面所の入口で吐いた。
口をすすいで戻ると、彼女は台所から酸っぱい臭いのする残り物を二皿持ってきて、私の前へ押し出した。
「女もスーパーの惣菜も同じよ。選んでもらえるうちが花なの。年を取ってからあれこれ条件をつけていたら、最後は売れ残るだけでしょう?」
三年付き合った恋人を見ると、拓海はスマートフォンを眺めたまま、顔も上げなかった。
私はポテトサラダを大きくすくい、そのまま彼の口へ押し込んだ。
「自分で食べさせられて、やっと分かった? こんなもの、人に出していい料理じゃないって」
あの日、私はようやく理解した。
彼らが欲しかったのは家族ではない。食卓で黙って頭を下げ、この家の生活まで支え、何をされても逆らわない女だったのだ。
けれど、選ぶ相手を間違えたのは、彼らのほうだった。
……
文字数 17,076
最終更新日 2026.07.26
登録日 2026.07.26
夫は、仕事一筋の人だった。
結婚して同じ家に暮らしているはずなのに、顔を合わせる回数は数えるほどしかない。結婚前に約束した新婚旅行さえ、出張を理由に何度も先延ばしにされた。
今回は、もう夫を待たなかった。私は一人で月白温泉郷へ向かった。
連れ立って歩く観光客の間を一人で歩きながら、何気なくインスタを開く。すると、夫の秘書である白石寧々が投稿したばかりの写真が目に入った。
写っているのは、まさに私がいる温泉街だった。
キャプションには、こう書かれていた。
「某氏が撮ってくれた今回の写真、前に海で撮ったものより上手かも。褒めてあげよう」
深く考える間もなく、聞き慣れた声がすぐ近くから聞こえてきた。
「もう少し角度を変えてよ。こっちからのほうがきれいに見えるから」
「嘘つけ。どの角度から撮ってもきれいだろ」
顔を上げると、出張中のはずの夫がカメラを構え、真剣な表情で寧々を撮影していた。
私はスマートフォンを取り出し、二人の姿を写真に収め、そのままインスタへ投稿した。
「旅先で偶然お会いしました。どうか末永くお幸せに」
すぐに夫から電話がかかってきた。
「寧々は写真を撮ってほしいと言っただけだ。どうしてわざわざ誤解を招くような投稿をするんだ?」
「今すぐ消せ。家に戻って待っていろ」
私は月白温泉郷を離れる特急列車の中で、小さく笑った。
「それは無理」
「どういう意味だ?」
「私が買ったのは、家に帰るための切符じゃないの」
……
文字数 13,565
最終更新日 2026.07.25
登録日 2026.07.25
もし、自分とまったく同じ顔の人間が、目の前で死んでいたら――。
現代で営業マンとして働く辻本隼人は、ある日、見知らぬ森で目を覚ます。
スマートフォンは圏外。
周囲には、見たこともない服装の男たち。
そして隼人が目撃したのは、自分と瓜二つの顔を持つ男の死体だった。
ここは、現代ではない。
やがて隼人は、死んだ男の名が「新九郎」であることを知る。
行き場を失った隼人は、新九郎として生きることになる。
しかし、その男には、彼を待ち続ける人がいた。
彼を信じる家族がいた。
そして、彼の命を狙う者たちがいた。
なぜ、新九郎は殺されたのか。
なぜ、自分と同じ顔をしていたのか。
いったい誰が、何のために命を狙っているのか。
真実を追う中で出会う人々。
命を懸けて守りたいと思える存在。
そして、現代に残してきた忘れられない恋人。
偽りの名前で始まった人生に、本物の絆が生まれていく。
だが、隼人はまだ知らない。
この時代で生きることが、どれほど残酷な選択を迫るのかを。
時代を超えた愛と絆、そして一人の青年の決断を描く、歴史タイムスリップ・サスペンス。
文字数 122,800
最終更新日 2026.10.23
登録日 2026.10.14
三十八歳、売れない舞台俳優――レイ。
十代から芝居の道を歩み続けてきたものの、役者として食べていくことはできず、ついには転職を考え始めていた。
それでも、舞台への未練だけは捨てきれない。
そんなある夜。
芝居のことに気を取られ、スマートフォンに目を落とした一瞬の不注意。
レイは交通事故に遭い、その人生を終えた。
――そう思っていた。
目を覚ますと、そこは見知らぬ世界。
しかも自分は、赤ん坊として生まれ変わっていた。
新しい名前は――神谷玲。
転生したことは誰にも話さない。
前世の記憶を胸の奥に隠し、神谷玲として新しい人生を歩み始める。
そして十歳になったある日、玲はこの世界の大きな違いを知る。
――男女比、一対五十。
男性が極端に少ない世界。
街を歩けば女性ばかり。
学校でも、男子はほんのわずか。
しかも、今の玲は前世とは比べものにならないほど整った容姿を持っていた。
「……俺、もう一度俳優を目指してみるか」
一度は諦めかけた夢。
けれど今世なら、まだ時間はたっぷりある。
前世で培った演技経験を胸に、玲は再び俳優への道を歩み始める。
子役としての活動。
学校での青春。
友人との出会い。
ライバルとの競争。
そして、初めて経験する恋。
順調に役者として成長していく一方で、玲は少しずつ気づいていく。
前世の自分には、いったい何が足りなかったのか。
演技力か。
才能か。
華やかさか。
それとも――人との繋がりだったのか。
俳優として成功していく中で、玲の周囲には彼を支える女性たちも増えていく。
この世界では一夫多妻が認められており、妻の人数に決まりはない。
仕事も、恋も、友情も。
前世では諦めかけたものを、玲は一つずつ手に入れていく。
これは――
一度、夢を諦めかけた男が。
二度目の人生で青春をやり直し、もう一度夢を追いかける物語。
そして、前世では見つけられなかった「本当の自分」を探す、一人の俳優の人生譚である。
文字数 152,700
最終更新日 2026.10.23
登録日 2026.09.02
「当旅館では、お客様に日常のストレスから完全に解放されていただくため、デジタルを遮断した『デジタルデトックス体験』をコンセプトとしております。そのため、スマートフォンをはじめとする通信機器は、こちらで大切にお預かりさせていただきますね」
仕事は完璧、周囲からも一目置かれる凛としたキャリアウーマンの沙織。
多忙を理由に恋人と別れ、心も身体も限界まで渇ききっていた彼女が、自分へのご褒美に選んだのは、人里離れた山奥の高級プライベート旅館『朧月夜』での1泊2日の温泉旅行だった。
スマホを預け、衣服を脱ぎ捨て、贅沢な温泉旅行が始まる――筈だった。
しかし、差し出された美しいピンク色のお湯に浸かり、意識が甘く混濁するなか、沙織がサインしてしまったのは――【一泊二日・身心解放契約(=●奴隷契約)⁉︎】。
「契約、完了です。……さあ、始めましょうか。氷室沙織様。……いえ、『沙織』」
「これから明日まで、君に拒否権はない。俺が与える快楽を、ただ受け入れ続けるんだ」
微笑む極上イケメンの若旦那・蓮、そして瓜二つの絶倫な弟・蒼。
衣服もスマホも奪われた完全密室で、高慢だった沙織の理性とプライドは、双子のドSな愛撫によって無残にも、甘美に、ドロドロに溶かされていく。
媚薬風呂、性感マッサージに始まり、玩具責め、初めてのアナル開発、背徳の女体盛り朝食、など止まることのない、絶頂地獄。
現実を忘れた山奥の隠れ宿で、地獄の快楽の責めを刻み込まれた、決して忘れることのできない一泊二日のご褒美旅行。
文字数 32,937
最終更新日 2026.06.27
登録日 2026.05.16
夜のオフィス街。
時刻はすでに深夜に差しかかろうとしている。
総務課の美咲は、足取りもおぼつかなくフラフラと帰ってきていた。
取引先との接待。乾杯を何度も重ね、気がつけばグラスを手放すこともできなくなっていた。
強い酒に火照った頬は紅潮し、足元は揺れて、視界はぼやける。
「……つかれた……」
デスクに鞄を置き、椅子に沈み込む。
(少し、休もう……)
そう思った瞬間、心の奥に沈んでいた黒い言葉が、アルコールにほだされて浮かび上がる。
口にしてはいけないはずの言葉。
絶対に、誰にも聞かれてはいけない秘密。
それが、美咲の唇からこぼれた。
――「……課の経費を横領した……。もしバレたら解雇、裁判……終わりだ……」
酒のせいだと分かっている。
酔いに任せて、心の奥底の不安を口にしてしまった。
誰もいないと思い込んでいたから、余計に無防備に声が漏れた。
だが、その油断は致命的だった。
「……なるほど。終わり、か」
背後から、低く湿った声。
美咲の肩がビクリと跳ねる。
振り返った瞬間、血の気が引いた。
そこには一人の男が立っていた。
スーツ姿、手にはスマートフォン。
黒い瞳が光を反射し、獲物を見下ろす捕食者のように冷酷だった。
「き……聞いて……たの……?」
酔いで舌が回らない。
掠れた声は震え、言葉にならない。
男はスマートフォンを掲げてみせる。
画面に浮かぶのは、録音中を示す赤いアイコン。
「証拠は、もう手に入れた」
その一言で、美咲の心臓がどくんっと大きく跳ねた。
頭の奥がじんじんと痺れ、呼吸が荒くなる。
(だめ……これが……外に出たら……私は……)
家族、職場、すべてが崩れる光景が頭をよぎる。
言い訳はできない。確かに口にしてしまったのだから。
「やめて……お願い……」
震える声。涙で濡れた目が男を見上げる。
だが、返ってくるのは冷たい笑みだけだった。
「従え。逆らえば、この録音はすぐに世間に曝け出す」
その瞬間、美咲の背筋を冷たいものが這い上がった。
自分の未来を、人差し指一つで握られている――その現実が、体を硬直させる。
恐怖と羞恥と、どうしようもない無力感が、彼女を締めつけていた。
――こうして始まる。
美咲が「堕ちる理由」の物語が。
文字数 155,887
最終更新日 2026.08.19
登録日 2025.08.30
【記憶を失った僕、“甘虐調教”で身体を無理やり開かれていく】
目を覚ましたら、知らない男を“心から愛していた”。
その愛は、洗脳か、運命か。
僕の身体は、彼の手で作り変えられていく。
「蜜ーーー、蜜ーーー」
目を覚ましたとき、僕は見知らぬ部屋で、見知らぬ男の腕の中にいた。
彼は僕を愛おしそうに抱きしめ、「やっと目が覚めたね、蜜」と笑う。
その瞬間、胸の奥が熱くなって、僕は「この人を愛している」と確信した。
そしてー僕の身体には傷が刻まれていた。
過去の記憶はなく、思い出せるのは目の前の「みかど」への狂おしいほどの想いだけ。
まるで、初めて目にした相手を親だと刷り込まれるヒナのように、僕の世界は彼だけに染め上げられていく。
「全部、私の色に染めよう」
そう囁きながら、みかどは極上の蜜を味わうように、僕を自分だけのものにしていくーーー。
なぜ…蜜は記憶を失っているのか。
なぜ…初対面のはずのみかどをこれほどまでに求めてしまうのか。
なぜ…みかどは、蜜の身体を自分の色に染め上げようとするのか。
なぜ…蜜は、その腕から逃げ出すことができないのか。
そしてーーー蜜が感じている「愛」は、本物なのか。
登場人物:
蜜:大学1年生くらいの青年。華奢な体つきで、漆黒の瞳が印象的。
過去の記憶を失い、みかどへの愛情だけが強く刻み込まれている【受け】
みかど:20代後半。整った顔立ちにスーツがよく似合う長身の男。
静かで紳士的だが、蜜への執着は強い【攻め】
薫:20代後半。中性的な顔立ちでスマートな体格の男。
みかどの絶対的な存在だが、みかどと蜜の関係は知らない【リバ】
カイ:20代前半。いまどきのすっきりしたタイプのイケメンで高身長。
蜜と同世代寄りで、薫の傍にいる【攻め】
楓:みかどの腹違いの弟。
一瞬みかどに見えるくらいよく似た容姿を持ち、兄を唯一絶対の存在として慕っている【リバ】
アンディ:30代後半。
高身長で筋肉質、しっかりした体格の男。みかどの執事として、蜜の身の回りの世話も引き受けている【・・・】
※R18描写あり
プレイ内容:監禁、SM、調教、器具責め、監視、淫具使用、言葉責め、浣腸など、ハードな性描写・暴力的な描写を含みます。苦手な方はご遠慮ください。
※表紙画像はAIで作成したものを使用しています。
文字数 356,934
最終更新日 2026.10.23
登録日 2026.02.02
ビール会社の営業として働く須藤奈央(27)は、高身長で女らしくない自分がコンプレックス。
仕事で嫌なニュースを耳にしたとき、理想を体現したような女性・村崎雪音と出会った。
雪音に惚れ込んだ奈央は、毎週一緒に飲む仲になるが、ある夜雪音にしばらく日本を離れると告げられ、ショックのあまり飲みつぶれる。
その夜を境に会えなくなった雪音の代わりに、奈央の前に現れたのは別会社の御曹司・春原隆也。
奈央の会社の一部門を買収する隆也に、奈央は力を貸すことにするが――
おっちょこちょいなヒロインと、スマートになりきれないヒーローのラブコメ&群像劇風オフィスラブ。
===
表紙イラスト:生成AI
キャラクターデザイン・原案:松田丹子
文字数 142,490
最終更新日 2026.10.23
登録日 2026.09.02
午前三時、知らない番号から電話がかかってきた。受話口から聞こえてきたのは、低く掠れた男の声だった。私が一生忘れられない、あの声だった。
「英子、会いに来てくれよ。俺たち、ずいぶん会ってないだろ」
その瞬間、全身の血が冷たくなった。あれは夫、森川蓮司の声だった。けれど蓮司は、五年前に死んでいる。彼は私を終わりのないDVの地獄へ引きずり込んだ。ある夜、限界を迎えた私は包丁を彼の胸に突き立て、遺体を家の裏にある杉林へ運び、土の中に埋めた。
翌日、私は村の人たちに、蓮司は遠くの建設現場へ働きに行ったと告げた。
電話を切ったあと、私は一睡もできなかった。けれど翌朝、蓮司は足を引きずりながら、血だらけの顔で玄関先に現れた。冷えきった目で、じっと私を見ていた。
「どうして会いに来なかった?」
彼の手が私の首にかかった。私は必死にもがいたが、やがて完全に息ができなくなった。次に目を開けたとき、私はまた午前三時に戻っていた。手の中では、スマートフォンがまだ震えていた。
文字数 16,469
最終更新日 2026.07.17
登録日 2026.07.17
深夜一時。
家族が眠りについたあと、リビングの灯りを消し、スマートフォンの光だけを頼りに文章を書く――
それが、主婦・志帆にとって唯一“自分に戻れる時間”だった。
名前を隠し、顔も出さず、誰にも知られない場所で綴る小説。
それは現実から逃げるための遊びのはずだった。
だがある夜、投稿サイトに届いた一通のメッセージが、彼女の日常を静かに変えていく。
若手編集者・海斗。
厳しく、的確で、どこか志帆の心の奥を見抜くような言葉を投げかけてくる男。
彼の赤字と助言によって、志帆の文章は研ぎ澄まされ、
同時に、彼女自身の感情も少しずつ輪郭を持ち始める。
深夜のチャット。
初めての通話。
画面越しの声と言葉だけの関係なのに、
海斗の存在は、夫よりも近く、誰よりも深く、志帆の内側に入り込んでいく。
書くこと。
妻であること。
母であること。
そして、一人の女であること。
それらは本来、同じ「私」のはずなのに、
志帆の中で少しずつ軋み、ずれ、溶け合い始める。
作品が評価され、ランキングに名を連ね、
“才能”という言葉が与えられるほど、
彼女は現実の家庭から静かに浮き上がっていく。
夫との会話は減り、
海斗との言葉は増えていく。
罪悪感よりも、
「理解されている」という甘美な感覚が勝ってしまう夜が増えていく。
やがて物語と現実の境界線は曖昧になり、
書いている恋愛描写は、
いつの間にか彼への想いと重なっていく。
これは不倫なのか。
それとも、ただの仕事なのか。
あるいは――言葉が生んだ、逃れられない感情なのか。
成功と引き換えに迫られる“顔出し”。
深まる夫の疑念。
海斗自身の葛藤と焦り。
追い詰められた志帆が最後に選ぶのは、
誰かのための人生ではなく、
「書くことでしか生きられない自分」だった。
深夜一時。
すべてが終わったはずの時間に、
それでも彼女の指は、再び文字を求めて動き出す。
これは、
一人の女性が“才能”と“欲望”と“言葉”に目覚め、
静かに、しかし確実に人生を変えてしまう物語。
文字数 36,068
最終更新日 2026.10.23
登録日 2026.10.01
一人の少女の苦難と成長を追体験するストーリー
ある朝、目が覚めると異世界だった。
持っているのは、レイオフされたITエンジニアとしての記憶と、ベータ版AIが入ったままのスマートフォンだけ。魔法も、剣も使えない。十三歳の少女の体に、行き場のない大人の記憶だけが残っている。
〈危険レベル:最大〉――スマホの向こうから、機械的な声が語りかけてくる。
少女は魔獣の狼と心を通わせ、竜を助け出し、滅んだ国の勇者や魔法使いと寄り添いながら、少しずつ居場所を作っていく。
けれど、平穏は長くは続かない。帝国の追手が迫る中、少女が頼れるのは、魔法でも剣でもなく、ポケットの中のAIと、自分自身の判断力だけだった。
――今、隣にいるこのAIすら、いつまで傍にいてくれるか分からないことを、少女はまだ知らない。
一人の少女が生き延びるだけの物語は、自分の居場所を守る物語になり、いずれ、国の仕組みそのものに向き合う物語へと姿を変えていく。
第一部 第1話〜第40話 オペレーター編
第二部 第41話〜第61話 館編
第三部 第62話〜第85話 シンシア編
第四部 執筆中
※残酷描写・暴力描写があります。
※この作品は 小説家になろう、カクヨム でも公開しています。
※生成AIは表紙・挿絵で使用しています。
※本文は作者自身が執筆しており、生成AIは補助的に利用しています。
YouTubeにてイメージソング公開中
NesasJP Official Channel
https://youtube.com/@nesasjp
文字数 137,917
最終更新日 2026.10.23
登録日 2026.09.21
前世で社畜会社員だったレスリアは、転生して伯爵家の一員となり、横暴な夫ディゴールと政略結婚させられることになった。
暴言は当たり前、仕事は押し付ける横暴な夫との「白い結婚」。それでもレスリアは、実家のために耐えていた。
しかしある日、そんな夫の様子が激変する。彼は執務をスマートに片づけ、レスリアのことを気遣い、また使用人に対しても便宜を図るようになっていた。
突然紳士的になった夫に、レスリアは困惑していた。彼が別人なのではないか、彼女の頭にはそんな考えが過るようになっていた。
レスリアのその考えは、当たっていた。彼女の本物の夫は、面倒な仕事を丸投げするために、悪魔を身代わりに召喚して街へと遊びに繰り出していたのだ。
だがその間に悪魔は、主人の器たる圧倒的なカリスマを見せ、さらには妻であるレスリアと愛を育んでいた。
本物の夫が帰って来た時には、既に彼の居場所などなかった。
レスリアも使用人も、本物のディゴールなど望んでいなかったのである。彼は自らの怠惰により、ディゴールとしての名前も地位も失っていた。
※この作品は「小説家になろう」「アルファポリス」に投稿しています。
文字数 13,529
最終更新日 2026.10.17
登録日 2026.10.14
事故で命を落とした高校生カップルは、異世界の辺境伯家の三男アレンと、騎士団長の娘リズとして転生した。
5歳で前世の記憶と共に、アレンの固有スキル【天界の端末(スマート・リンク)】が覚醒する!
「え、火魔法? それって酸素濃度と燃焼温度の調整だよね?」
左腕に浮かぶスマートウォッチ型の画面をタップ&スワイプ。 ただそれだけで、現代物理学を応用した極大魔法が発動!?
一方、相棒のリズも身体能力がバグって【剣聖】に。
最強の二人の願いは「領地でシャンプーや化粧水を作って、イチャイチャ楽しく引きこもること」。
なのに、うっかり助けた第三王女と公爵令嬢に惚れられ、教会からは【賢者】認定され、学園では無双してしまい……。 「待って、これただのアプリだから!」
規格外の二人が送る、勘違いと現代革命と魔法科学の異世界ファンタジー、開幕!
文字数 301,606
最終更新日 2026.08.02
登録日 2026.03.20
デレがバレバレなツンデレ猫獣人に懐かれてます
レンタル有り旧題:デレがバレバレなツンデレ猫獣人に迫られてます
本編完結済。不定期に番外編更新中です。
高校の卒業式に突然剣と魔法の世界にトリップしてしまった主人公。そこでやたらと猫獣人の冒険者がうざ絡みしてくる。
「よおチンチクリン」「相変わらず弱そうだな」「お前まだ生きてたのか」「お前に冒険者は無理だっての」と毎日毎日うんざりするほど悪口ばかり言ってくる猫獣人。お前俺が猫好きじゃなかったらとっくの昔にキレてるからな! お前が猫獣人だからつい許しちゃうけど!
ある日冗談でスマートフォンに入っていた猫語翻訳アプリを使ってみたらなにやら様子がおかしい。
『かまって』『恋をしているの!』『愛する人、聞こえてる?』『私を見て』とおかしな翻訳をされるもんだから猫獣人をどういう目で見たらいいのか分からなくなる。
「おまっ……! 気安く触んなチビ!」→訳:『なでなでして』
ツンデレヘタレ猫獣人(冒険者としては優秀)✕異世界トリップしてしまった猫好き主人公。
ツイッターで呟いた話をぼちぼち書いています。
お気に入り登録や感想もらえるととても喜びます!匿名ご希望の方はTwitterの質問箱かマシュマロへどうぞ!
文字数 199,881
最終更新日 2026.02.15
登録日 2021.12.19
「母さん、その笑顔は誰に向けたものなの?」
僕の自慢の母、君枝は完璧な女性だった。
誰よりも家族を愛し、家事を完璧にこなし、周囲からは「良妻賢母の鏡」と称賛される聖域のような存在。
しかし、あの日、ラブホテル街の片隅で僕が目撃したのは、見たこともない「女」の顔で笑う母の姿だった。
情報系の大学生である僕は、その日から母のスマートフォンを完全な監視下に置く。
パケット解析、位置情報の追跡、そして匿名での接触。画面越しに暴かれていくのは、慎み深い母の裏に隠された、奔放で卑猥な、あまりにも生々しい欲望の記録。
「僕は、母さんを救いたいんじゃない。母さんの全てを、僕だけのものにしたいんだ」
監視はやがて、支配へと変わる。
母が不倫相手の罠に落ち、絶望の淵に立たされた時、救いの手を差し伸べたのは――実の息子である僕だった。
これは、崩壊した家族の物語か。それとも、歪んだ愛が辿り着いた究極の楽園か。
母と子、観測者と被験者。
血の絆を「支配の鎖」へと作り変えた、背徳と狂気の全記録。
文字数 16,357
最終更新日 2026.03.13
登録日 2026.01.13
――20時32分、世界から「時間」が消えた。
サラリーマンの桐谷尊、妻の聡美、そして両親の学と咲子。
ある夜、家族4人が気づいた異変。
時計の針も、スマートフォンも、テレビの映像も動かない。
電気もガスも水道も使えず、外へ出れば、そこには車も信号も、人間も動物も、すべてが静止した異様な世界が広がっていた。
なぜ、自分たちだけが動けるのか。
食料を求めてコンビニへ向かう4人だったが、極限状態の中で、それぞれの「人間性」が少しずつ浮き彫りになっていく。
「今は非常事態なんだから、盗んだって誰にも分からない」
そう言って、他人の財産を持ち帰る両親。
一方、尊と聡美は、たとえ誰も見ていなくても、守るべきものがあると信じていた。
そして、再び眠りについた尊が目を覚ましたとき――。
そこは、明るい病院の一室だった。
動き始めた時計。
流れているテレビ。
そして、隣で目を覚ました妻。
尊たちは、現実の世界へ戻ってきたのだ。
しかし、両親はまだ目を覚ましていない。
なぜ、自分たちだけが戻ることができたのか?
あの「時間の止まった世界」は、一体何だったのか。
それは偶然の出来事だったのか、それとも――。
文字数 2,017
最終更新日 2026.09.05
登録日 2026.09.05
プロローグ「その旅館は、地図にない」
夏。
大学二年生の黒波咲音(くろなみ さきね)は、四人の友人と山と海に囲まれた小さな町へ旅行に来ていた。
目的はただの観光。海を見て、名物料理を食べて、旅館に泊まる。何も特別なことのない、楽しい旅行になるはずだった。
駅を出た五人は、予約した旅館へ向かって歩き始めた。
「咲音、こっち!」
「待ってよ!」
スマートフォンの地図では、旅館まで徒歩十五分。しかし十五分歩いても、それらしい建物は見えてこない。
「……おかしくない?」
咲音が地図を確認する。現在地は目的地のすぐ近く。なのに、旅館がない。
「電話してみようよ」
電話をかけても誰も出ない。
そのとき――
カラン……。
山道の奥から風鈴の音が聞こえた。
五人が振り返る。
そこには、古い木造の旅館が建っていた。
「……え?」
さっきまで何もなかったはずなのに。
看板には『黒灯旅館』と書かれている。住所も予約した場所と一致していた。
五人は安心して旅館へ入った。
受付にいた女将は、咲音の顔を見るなり一瞬だけ表情を変えた。
「……黒波?」
「はい」
「……そうですか」
女将はそれ以上何も言わず、五人を二階の和室へ案内した。
夕食を食べ、温泉に入り、楽しい時間を過ごす。
午後十一時。
部屋の明かりが消えた。
咲音が眠りかけた、そのとき――
……ペタ。
廊下から足音が聞こえた。
……ペタ。
足音は部屋の前で止まる。
コン……。
襖が一度だけ叩かれた。
「……誰?」
返事はない。
もう一度。
コン……。
その瞬間、すぐ隣から声がした。
「咲音」
「……!」
四人の友人は眠っている。
しかし、全員が目を閉じたまま笑っていた。
そして四人の口から、同じ言葉が漏れる。
「五人じゃないよ」
咲音の背筋が凍る。
すると襖の向こうから女将の声がした。
「お客様。絶対に、襖を開けないでください」
「……どうして?」
沈黙のあと、女将は震える声で答えた。
「今、廊下にいるのは……五人ですから」
咲音は息を呑んだ。
部屋の中にいるのは、自分を含めて五人。
ならば、廊下にいる五人は誰なのか。
その瞬間、襖の向こうから五つの声が響いた。
「咲音」
「開けて」
「一緒に帰ろう」
咲音は震えながら口を押さえた。
五人はまだ知らなかった。
この旅館には、絶対に破ってはいけないルールがある。
『夜に自分の名前を呼ばれても、絶対に返事をしてはいけない』
そのルールを破ったとき、何が起こるのかを――。
【第1話「五人目」へ続く】
文字数 126,077
最終更新日 2026.09.14
登録日 2026.09.14