「月」の検索結果
全体で30,815件見つかりました。
大夜会の真ん中で、王太子から婚約破棄を宣言された公爵令嬢クラリッサ。
本来なら泣き崩れるはずだったその瞬間、彼女は三人の子を育て上げた四十九歳の前世を思い出す。
「殿下。そのお話、ご両親には通してありますの?」
国王にも王妃にも、双方の家にも無断。おまけに「真実の愛」の相手は、王太子を好きでも王太子妃になる気などなかった。
クラリッサの一言で公開婚約破棄は無効となり、暴走した王太子には即日仮処分が下る。
三か月後の正式審議まで、クラリッサは自分の名誉を取り戻すため社交季の仕事を続けることに。
恋に浮かれた令息、悪辣な婚約者、条件を知らされない令嬢たちを、前世の生活力と貴族令嬢の実務能力で救っていく。
そして彼女の隣には、冷徹と恐れられる王弟公爵レオナールがいた。
役割ではなく一人の女性として見てくれる彼との距離は、仕事を重ねるたび静かに近づいていく。
だが、誰かのためにと差し伸べた手が、相手の選択を奪ってしまった時――。
「あなたは、私のお母様ではありません」
これは、正しいつもりで間違えた大人の女性が、責任を引き受け、自分自身の恋と人生も選び直す物語。
王太子との復縁なし。公的責任あり。年の差の大人恋愛、ハッピーエンド。全40話完結。
文字数 92,818
最終更新日 2026.09.07
登録日 2026.08.27
十五夜の晩、榛ヶ丘市にある鳴海家の屋敷では、親戚を招いて食事会が開かれていた。
縁側にはすすきと月見団子が飾られていたが、あいにく外は雨だった。庭に面した広間には季節の料理が並び、食事が進んだ頃、婚約者の鳴海修吾と幼い頃から親しい早乙女莉央が、余興を始めようと言い出した。
莉央はバッグから四枚のカードを取り出し、楽しそうに読み上げた。
「榛ヶ丘の出身じゃない。大学はごく普通のところ。実家にお金もなければ、頼れる親戚もいない。おまけに両親はもう亡くなってる。さて、誰でしょう?」
食卓が一瞬静かになり、親戚たちの視線が私に集まった。
修吾の甥の陽斗が、勢いよく手を挙げた。
「わかった! 澄花お姉ちゃんだ! おばあちゃんが言ってたもん!」
修吾の母親、鳴海佳代は陽斗の頭を撫で、よく覚えていたわね、と笑った。周囲からも笑い声が上がる。
私の名前は宮原澄花。
十七歳のとき、両親は誘拐された修吾を助けようとして、使われなくなった倉庫で命を落とした。
修吾は、そのとき何があったのかを誰よりもよく知っている。
けれど今、彼は莉央のためにカニの身をほぐしていた。細かな殻を丁寧に取り除き、彼女の小皿に載せている。
「修吾まで笑うの?」
彼は顔を上げ、わずかに眉を寄せた。
「何が? 莉央はちょっと冗談を言っただけだろ。嘘を書いたわけでもないし。家柄も学歴も莉央のほうが上なのは、お前だってわかってるだろ」
莉央が修吾の袖をそっと引いた。
「修吾、そんな言い方しないで。澄花がかわいそうよ。私はちょっと場を盛り上げたかっただけなんだから」
そう言いながら、彼女は笑ってカードをしまった。
そのあとは佳代と莉央が地元の知人や昔の出来事について話し始めた。私の知らない名前が次々と出てきて、会話に入る隙はなかった。ときおり、学歴や育ちについての言葉だけが耳に入った。
スマートフォンが震えたのは、そのときだった。
大学の先輩、久我律からLINEが届いていた。
「澄花、いつまであの事務所にいるつもり? 冬篠の席はまだ空けてある。本当にこっちへ来ないのか?」
私は顔を上げた。
修吾はおしぼりを手に、莉央の口元についたソースを拭ってやっていた。
画面に目を戻し、律に返事を送った。
「今月で辞めます。来月、そちらに行きます」
文字数 18,342
最終更新日 2026.10.30
登録日 2026.10.30
文字数 378,135
最終更新日 2026.11.01
登録日 2026.02.24
宗一郎がシャツの三つ目のボタンを留めたときには、私はもうスマートフォンで銀行アプリを開いていた。
ベッドの脇には女物のワンピースと彼のベルトが散らばっている。神崎美月はホテルのバスローブをまとい、浴室の入り口に立っていた。鎖骨には意味ありげな赤い痕。まるで私に見せつけるために、そこに立っているようだった。
カーテンは完全には閉じられていない。朝の光が絨毯に差し込み、部屋の惨状を残酷なほど鮮明に照らしていた。
初めてこんな場面に出くわしたとき、私は部屋のグラスを叩き割り、宗一郎の胸ぐらをつかんで理由を問い詰めた。
あのときの彼はベッドヘッドにもたれて煙草を吸い、ズボンすらまともに穿かないまま、淡々と言った。
「部屋が暗くて、お前と間違えた」
その後、同じような「人違い」は二度起きた。
それをきっかけに、私たちは書面で取り決めを交わした。不貞行為が一度発覚するたび、離婚成立前の解決金として、彼は私に五百万円を支払う。
「振り込んで」
文字数 15,654
最終更新日 2026.07.16
登録日 2026.07.16
「彼氏と別れたい…。」
完璧…?大スター人気俳優シンデレラボーイ攻め×献身的で尽くし系のネガティブ平凡受け
⚠️ 注意
・当て馬?モブおじ?がいます
愛ゆえに身を引こうとする男vs愛ゆえに縛ろうとする男
<あらすじ>
15年近く付き合ってる幼馴染の攻めは、かつての貧乏だった頃から大逆転して大スターになったシンデレラボーイ。あまりの格差と引け目から、受けは、自分が相手の人生の足枷になってると思い込む。そこで、攻めに『1ヶ月だけ別れること』を提案するが…?
<名前>
攻め:入江翼
受け:宮凪龍樹
<各種リンク>
🎁FANBOX(先行公開/プロフィール/裏設定/後日談など)
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💌マシュマロ(感想など)
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※誤字脱字・表現の修正はサイレントで行う場合があります。
※タグは定期的に整理します。
※批判・中傷コメントはご遠慮ください。
文字数 15,086
最終更新日 2026.10.22
登録日 2026.10.22
嫌われ者の俺はやり直しの世界で義弟達にごまをする
レンタル有り
母を亡くした侯爵令息シャルルは、父の再婚相手と義弟のジェイドとリエンを冷遇し、不幸の連鎖から非業の死を遂げる。
しかし死んだはずの彼が目を覚ますと、なぜか義弟たちと出会う前に戻っていた。
今度は悲惨な人生を辿るまいと彼らを大切にしてみたところ、義弟たちに溺愛されるようになりーー!?
愛され義兄の逆行転生BL、開幕!
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本編は完結しました☆
【書籍化決定!】
2022年6月13日刊行です(^^)
番外編を投稿していますが、書籍化改稿前に投稿していた番外編はweb掲載していた時の設定で書いている場面もあります。
※いくつか番外編を更新していますが、R7年12月現在更新メインとしているのは【ジェイドとリエンのやり直し】の番外編です。
よろしくお願いします🙇
文字数 459,645
最終更新日 2026.08.09
登録日 2020.10.04
公爵令嬢であるセラフィーヌ・レンブロンはたびたび不思議な夢を見ていた。戦いの末に誰かと一緒に力尽きて死んでいく夢だ。
挙式まであと一カ月という時、婚約者の浮気現場を目撃してしまう。
これまで感じたことのない怒りを覚えたセラフィーヌは領地へと家出するが、そこで得体の知れない黒い物体に襲われる。助けてくれたのは黒髪の男性と幼女エルフだったが、面識のないはずの二人はセラフィーヌのことを以前から知っているようで──。
文字数 114,431
最終更新日 2026.10.31
登録日 2026.10.18
月明かりの中、彼女の瞳の色のリボンを握りしめ、貴方は愛おしそうに口づけた。
「…アンジュ…」
その唇から紡がれた愛しい名は、苦しそうな、切ないような、そして隠しきれない愛が声に現れていた。
冷たい貴公子と呼ばれる貴方の姿は、まるで物語のワンシーンのようで、わたくしは胸を打たれました。
…ただ、貴方がわたくしが心からお慕いする婚約者でなければ…
文字数 95,441
最終更新日 2026.09.26
登録日 2026.05.23
強い召喚士であることが求められる国、ディスコミニア。
その国のとある侯爵の次男として生まれたミルコは他に類を見ない優れた素質は持っていたものの、どうしようもない事情により落ちこぼれや恥だと思われる存在に。
両親や兄弟の愛情を三歳の頃に失い、やがて十歳になって三ヶ月経ったある日。
自分の誕生日はスルーして兄弟の誕生を幸せそうに祝う姿に、心の中にあった僅かな期待がぽっきりと折れてしまう。
自分の価値を再認識したミルコは、悲しい決意を胸に抱く。
相棒のスライムと共に、名も存在も家族も捨てて生きていこうと…
のんびり新連載。
気まぐれ更新です。
BがLするまでかなり時間が掛かる予定ですので注意!
サブCPに人外CPはありますが、主人公は人外CPにはなりません。
(この世界での獣人は人間の種類の一つですので人外ではないです。)
ストックなくなるまでは07:10に公開
2026/06/22分からは19:10に公開
他サイトにも掲載してます
文字数 785,452
最終更新日 2026.10.30
登録日 2025.02.23
[お知らせ] 書籍化決定!! 皆様、応援ありがとうございます!!
2023年03月20日頃出荷予定です!! 詳しくは今後の刊行予定をご覧ください。
施設で暮らす中学1年生の長瀬蓮。毎日施設の人間にいいように使われる蓮は、今日もいつものように、施設の雑用を押し付けられ。ようやく自分の部屋へ戻った時には、夜22時を過ぎていた。
そして自分お部屋へ戻り、宿題をやる前に少し休みたいと、ベッドに倒れ込んだ瞬間それは起こった。
強い光が蓮を包み込み、あまりの強い光に目をつぶる蓮。ようやく光が止んできたのが分かりそっと目を開けると…。そこは今まで蓮が居た自分の部屋ではなく、木々が生い茂る場所で。しかも何か体に違和感をおぼえ。
これは蓮が神様の手違いにより異世界に飛ばされ、そこで沢山の友達(もふもふ)と出会い、幸せに暮らす物語。
HOTランキングに載せていただきました。皆様ありがとうございます!!
お気に入り登録2500ありがとうございます!!
文字数 852,765
最終更新日 2026.07.08
登録日 2022.08.01
聖女を追放されたファナが始めた、神獣と人の休息宿《陽だまり亭》。ある夜、そこへ「一晩だけ眠りたい」と、星空を背負った神獣セレスがやってくる。世界の星を守るため、何百年もまともに眠っていないというのだ。
やがてファナは第二王国を訪れ、さらに驚く。強者は休むべきではないと言い張る雷虎、仕事を効率化してさっさと寝たい若い翠豹、人々へ眠りを与えながら自分は眠れない月兎、祈願を断れず働き続ける白鹿、国境を離れられない天狼、冬眠すら許されない山熊――。
「神獣さんって、休んじゃ駄目なんですか?」
ファナの素朴な疑問が、何百年も続いてきた“当たり前”を少しずつ変えていく。
働きすぎの神獣たちにも休日を。
もふもふ神獣×お昼寝宿の、ほのぼの異世界ファンタジー第二部!
文字数 23,823
最終更新日 2026.10.31
登録日 2026.10.25
前世、大好きだったBL小説のかませ犬である悪役令息に転生した主人公。お話を改変したくないので、お話通りに動くことを決意。だけど、キャラたちは全然違う動きを始めて…?!
本当なら恋しないはずの悪役令息に恋しちゃった公爵様×思い込みの激しい転生悪役(?)令息のラブコメです。
【書籍化が決定いたしました】
読んでくださっている皆様のおかげで紙書籍&電子書籍化が決定いたしました…!
本当にありがとうございます!
出版レーベルさんや発売日など、詳細決まり次第ご報告いたします!
【第14回BL大賞期間中のアルファポリスさんでの更新について】
現在、更新が停滞しており申し訳ありません🙇♀️
本作の更新ですが書籍化進行中なこともあり、BL大賞期間中はアルファさんでの更新をストップ予定です。
アルファさんでの更新は12月より再開いたします。
11月30日までの期間は、なろうさんでのみ更新予定です。よろしくお願いいたします🙇♀️
文字数 193,924
最終更新日 2026.09.27
登録日 2026.06.22
公爵家のメイド・クラリッサは、幼い主君アルベルトを庇って十五歳で命を落とした。
目覚めたとき、彼女は皇女セラフィナとして生まれ変わっていた——死の、わずか翌日に。
赤ん坊の身体に十五歳の記憶を持ったまま、セラフィナは新しい人生を歩み始める。
皇帝に溺愛され、優しい母に抱かれ、兄に慈しまれる日々。
前世で冷遇されていた彼女にとって、家族の愛は眩しすぎるほどだった。
しかし、セラフィナの心は前世の主・アルベルトへの想いに揺れ続ける。
一歳のお披露目で再会した彼は、痩せ細り、クラリッサの死を今も引きずっていた。
「わたしは生涯結婚もしなければ子どもを持つこともない。わたしにはそんな幸福は許されない」
そう語るアルベルトの姿に、セラフィナは決意する。
言葉も満足に話せない。自由に動くこともできない。前世の記憶を明かすこともできない。
それでも、彼を救いたい。彼に幸せになってほしい。
転生した皇女が、小さな身体で挑む、長い長い物語が始まる。
※ノベルアップ+、小説家になろうでも掲載しています。
文字数 988,633
最終更新日 2026.11.01
登録日 2026.01.12
【完結済】
「ドレスを着る予定は、人生のどこにもなかった」
特注の眼鏡で魅了の瞳と膨大な魔力を隠し、地味な店番として生きてきた宝飾店の跡取りのレオンに、誰にも言えない「秘密の仕事」が入った。
——その秘密の仕事の護衛についていたのは、魔石犯罪者を眉ひとつ動かさず叩き潰す〈氷の騎士団長〉クロード。彼はその日からレオンの「秘密」に少しずつ狂わされていく。
※R15(軽い性的描写あり)。AIと共作した作品です。
※イメージイラストをpixivに投稿しています。
https://www.pixiv.net/users/128171615
※R18版をムーンライトノベルズに投稿しています。
文字数 113,064
最終更新日 2026.10.31
登録日 2026.10.13
伯爵夫人セレスティアは、結婚初夜から三年間、夫アーヴィンに「飾りの妻」として放置されてきた。
父を亡くし、母から継いだルクレール商会を守るために結んだ婚姻。大恋愛ではなかった。それでもセレスティアは、いつか穏やかな夫婦になれるかもしれないと、ほんの少しだけ期待していた。
しかし半年ぶりに屋敷へ戻ったアーヴィンは、婚姻前から隠していた愛人リディアと五歳の息子ノエルを連れていた。
「この子を、オルブライト伯爵家の跡継ぎにする。君は今まで通り、飾りの妻でいればいい」
そう告げられたセレスティアは、静かに婚姻契約書を取り出す。
第七条。
夫が妻の書面同意なく婚外の子を跡継ぎとし、妻の持参財や商会権利をその子の相続財産に含めようとした場合、妻は即時離縁、持参財返還、違約金、資産回収を請求できる。
一か月前、王立契約院の立会人ユリウスに問われて、セレスティアはようやく自分の望みを言葉にした。
愛ではなく、自分の名を取り戻したい。
夫の契約違反が公の場で明らかになる時、飾りと呼ばれた妻は、自分の人生を取り戻す。
文字数 14,065
最終更新日 2026.06.12
登録日 2026.06.12
霧深きセレスタ王国、ヴェルナの町。
断崖に佇む屋敷に暮らすラスヴェート伯爵は、かつて魔女から「痣の呪い」を掛けられた。以来、住民たちから忌み嫌われ、誰とも心を通わせることなく、孤独な日々を送っていた。
一方、隣町で天涯孤独の画家として清貧な暮らしを送る青年・エンディミオン。ある日、肖像画の依頼を受け、伯爵の屋敷を訪れることになる。
しかし、そこはすべての窓が板でふさがれ、鏡も銀食器も一切置かれていない、異様な空間だった。
顔の左半分を仮面で覆ったラスヴェートに、戸惑いを隠せないエンディミオン。それでも、不気味な屋敷で肖像画を描き進めるうちに、ふたりは少しずつ心を通わせていく。
だが、そんな穏やかな時間の中、ベータであるはずのエンディミオンの身体に、突如として異変が訪れる。
医師から告げられたのは、「遅咲きのオメガ」という診断。そして、アルファである伯爵と自分が「運命の番」であるという、残酷な真実だった。
けれど、ふたりが結ばれる未来はない。
なぜなら、伯爵には五年もの歳月をかけて手紙を交わし続けてきた「婚約者」がいたのだから――。
呪われた孤独なアルファと、遅咲きのオメガとなった画家。
決して結ばれるはずのないふたりが紡ぐ、身を焦がすような愛と再生の物語。
(表紙イラスト・デザイン:あわのすい 様)
文字数 2,469
最終更新日 2026.10.31
登録日 2026.10.31
妹の代わりに伯爵家へ嫁いだオデットは、八か月の結婚生活で、夫アドリアンとの時間を大切にするようになっていた。
本の結末を話し、帰宅した夫を迎え、同じ食卓を囲む。
最初は家のために結んだ婚姻だった。それでも、今はこの暮らしを手放したくない。
ところが、縁談を嫌がって王都の男と家を出た妹リリアが、別れて戻ってくる。
父は離縁の書面を差し出し、オデットへ命じた。
「リリアが帰ってきた。オデット、夫を妹に返しなさい」
「指輪も外してね。今度は私の番なんだから」
嫁ぐときは、家のため。
妹が戻れば、役目は終わり。
父と妹にとって、オデットが築いた八か月の夫婦生活さえ、妹へ渡すための穴埋めでしかなかった。
けれど、今度ばかりは譲れない。
「アドリアン様とは、別れません」
オデットが未署名の書面を押し返すと、帰宅した夫も彼女の手を取り、はっきり告げる。
「私の妻はオデットです。妻を取り替えるつもりはありません」
それでも父と妹は諦めない。
夫の隣の席も、二人で出かける約束も奪おうとし、ついには人前でリリアを「もともとの花嫁」として紹介し始める。
いつも妹へ譲ってきた姉は、もう脇へ下がらない。
観劇の約束を守り、オデットが本の感想を話すのを楽しみに待つアドリアン。
家同士の約束だから優しいのだと思っていた夫もまた、オデットと暮らし続けたいと願っていた。
妹の代わりに嫁いだ姉が、家族の身勝手な要求を退け、夫と互いを選び直す夫婦恋愛。
全5話・ハッピーエンド。
文字数 11,874
最終更新日 2026.10.16
登録日 2026.10.16
十五夜の晩、夫の圭介と幼なじみの七海は、今年も私を巻き込んで月見団子のゲームを始めた。
団子の中に硬貨を一枚隠し、それを食べた人は一人でホテルに泊まる。そんなくだらない遊びだ。
結婚して四年。毎年、その役を押しつけられるのは私だった。
今年も、硬貨が歯に当たった。鈍い痛みに顔をしかめると、ソファに座った七海が楽しそうに笑った。
「莉央って、こういうとき運がないよね。今年もホテル?」
圭介は七海の隣で、面白がるように口を挟んだ。
「悪いけど、今夜はホテルで過ごしてくれ。俺は七海と月を見たいんだ」
私は唇を噛んだ。三歳のときに両親を事故で亡くし、親戚の家を転々として育ったことも、圭介は知っている。結婚してから私が望んでいたのは、ただ自分の帰る場所を持つことだった。節目の日には家族と食卓を囲み、何気ない話をしながら過ごしたかった。
それなのに、このゲームを嫌がるたび、圭介は不機嫌になった。
「ただの遊びだろ。そんなに怒ることか?」
今年、私は言い返さず、荷物をまとめて家を出た。
マンションの下まで来たところで、寝室に妊娠の検査結果を置き忘れたことに気づいた。取りに戻り、玄関の前まで来ると、室内から義母の澄江の声が聞こえた。
「七海は気が利くわね。うちの家族にぴったりだわ。圭介には最初から、莉央なんかと結婚する必要はないって言っていたのよ。親もいない子が、うちの嫁にふさわしいわけないでしょう?」
圭介は気のない声で答えた。
「母さん、心配しなくていいよ。こうして外に出ていったんだから」
七海がくすくす笑った。
「毎年、硬貨入りの団子を莉央に渡してるのに、本人は自分が運の悪い人間だと思ってるんだもんね」
三人の笑い声が、扉越しに聞こえた。
私はスマートフォンを取り出し、病院に電話をかけた。妊娠週数を伝え、中絶について相談したいと告げる。診察の予約を済ませると、圭介に送るはずだったメッセージを消した。
圭介には、私より一緒にいたい相手がいる。
だったら、私がこの結婚にしがみつく理由もない。
文字数 15,036
最終更新日 2026.10.28
登録日 2026.10.28
◎あらすじ◎
地方都市のある夏の夜、社会人の原峰果歩《はらみねかほ》は仕事帰りに会社仲間と打ち上げをしていた。飲み会が終わり、帰ろうとする果歩、は友人の制止も聞かず、酔ったまま地下鉄にて帰ろうとする。
だが気が付くと人気(ひとけ)のない地下鉄のプラットフォームにいた。果歩は不思議がりながらも、酔いのせいでさほど驚かず、やがてやって来た終電電車(?)へと乗り込んでいく。
……ソレが妖しい性欲と不気味な存在がひそむ、得体の知れない異常な電車などと、想像すらせずに――。
◎登場人物◎
・原峰果歩《はらみね かほ》:二十九歳の社会人女性。遊びは好きだが、仕事も割としっかりこなす。気はやや強め。
・南原弓《みなみはら ゆみ》:二十九歳の女性で原峰果歩の同期。面倒見が良い。
・六本指の存在:果歩が乗った不気味な電車に乗っている得体の知れない男(?)。その正体や目的は不明。
◎更新予定◎
毎週【月・水・金】の二十時
文字数 40,453
最終更新日 2026.01.26
登録日 2025.12.29