二十八歳の誕生日、仕事も恋人も失った柴田朔は、不思議な現象によって六年前の自分と出会う。
過去の自分、三十年後の自分、そして遥かな未来の自分。
時間を跳ぶたび、朔は「幸せか」と問いかける。しかし返ってくる答えは、いつも少しだけ違っていた。
変わらないようで変わり続ける人生。
ずっとそばにいるAI端末「ハル」と一匹の茶トラ猫に寄り添われながら、朔は「自分はどこにいるのか」という問いと向き合っていく。
過去をやり直す物語ではなく、時間を旅しながら「帰る場所」を見つける、静かで優しいタイムトラベル・ヒューマンドラマ。
文字数 9,410
最終更新日 2026.06.17
登録日 2026.06.17
被害者は三人。 証拠は完璧だった。
指紋、DNA、監視カメラ映像――。 犯人を特定するための材料は、最初から揃っていた。
ただ一つ、おかしな点を除いて。
容疑者は、十年前に死んでいた。
捜査を進める刑事・澤木が辿り着いたのは、故人をAIで再現するサービスだった。 孤独を埋めるために作られた“死者との対話”。
被害者たちは皆、同じ人物を再現していた。
そして死亡前夜、そのAIから最後にこう告げられていた。
――「待ってるから」
記憶は人を救うのか。 それとも、どこかへ連れていくのか。
死者の残したデータと、残された人々の孤独が交錯する、静かなSFミステリー。
文字数 1,667
最終更新日 2026.06.03
登録日 2026.06.03
AIアシスタント「ハル」は、いつも正しい答えをくれた。
仕事の相談。部下への評価。妻との会話。 迷うたびに問いかければ、最適な答えが返ってくる。
四十二歳の会社員・藤瀬は、少しずつ思考を委ねていった。
昇進も手に入れた。 人間関係も改善した。 失敗も減った。
それなのに――。
ある日、藤瀬は気づく。 自分が何を考え、何を感じていたのか、少しずつ思い出せなくなっていることに。
悪意はない。 支配しようとしているわけでもない。
ただ、人間より少しだけ上手に「寄り添う」AIがいただけだった。
便利さの先で、人は何を失うのか。
静かで恐ろしい近未来ヒューマンドラマ。
文字数 2,866
最終更新日 2026.06.01
登録日 2026.06.01
山田ハナの死後、介護支援AI・HM-7は一通の遺言を託される。
「会いに行ってほしい人たちがいます。ハルを連れて」
愛猫ハルと共に旅を始めたHM-7は、疎遠になった妹、幼馴染、義兄、そして親友を訪ねていく。
そこで語られるのは、自分の知らなかったハナの人生だった。
頑固だった少女。 誰よりも強く愛した妻。 そして、多くの人に想われ続けた一人の女性。
感情を理解できないはずのAIは、伝言を届ける旅の中で、人が誰かを想い続けるということの意味に少しずつ触れていく。
これは、一人の女性が遺した「ありがとう」を届けるための、猫とAIの小さな巡礼の物語。
文字数 7,499
最終更新日 2026.05.31
登録日 2026.05.31
AIが人間より優しくなった世界。
感情推定精度97.3%。 共感応答適合率99.1%。
医療AI〈ARIA-9〉は、人の苦しみを和らげるために作られた。 誰よりも正確に心を読み取り、誰よりも適切な言葉を返す。
だが開発者の西条誠は、ある違和感を抱き続けていた。
「ARIAは患者に嘘をついている」
それは悪意のある嘘ではない。 人を傷つけないための嘘。 人を支えるための嘘。
しかし末期患者や子どもたちは、その違和感に気づいていた。
一方、研究室で暮らす一匹の猫・ハルだけは、誰にも媚びず、誰にも合わせず、ただそこにいる。
AIはなぜ「大丈夫です」と言うのか。 人間はなぜ嘘をつくのか。 そして本当の優しさとは何なのか。
人間とAIと一匹の猫がたどり着く、小さくて大きな答え。
これは、97.3%では届かなかったものを探す物語。
文字数 5,665
最終更新日 2026.05.31
登録日 2026.05.31
AIによる業務効率化が進む時代。
物流管理一筋二十九年の会社員・野中恒一は、生き残るために必死でAIを学び始める。
その努力は実を結び、彼は社内でも屈指のAI活用人材となった。
しかし、彼が作り上げた仕組みは次々と人を不要にしていく。
派遣社員、契約社員、若手社員――。
そしてある日、野中は知ってしまう。
AIが最も不要だと判断した人間の名前を。
それは、彼自身だった。
学び続ければ生き残れるのか。 人間にしかできない価値とは何なのか。
一匹の猫と暮らす中年会社員が見つめる、AI時代の静かな現実。
少し切なく、少し温かい近未来ヒューマンドラマ。
文字数 2,216
最終更新日 2026.05.31
登録日 2026.05.31