藤宮かすみ

元和八年、京の柳生道場。剣才に恵まれながらも速さに溺れる若き武士、水城一馬。師・柳生十兵衛の言葉「真の強さは、呼吸にあり」を追い求めるが、父・宗矩の謎めいた雑用と問いかけに迷いを生じる。やがて寺で出会った盲目の少女・椿との交流が、彼の剣の道を根底から揺るがす。盗賊に襲われ、椿が危機に瀕した時、一馬は初めて「柳生の呼吸」の真意を知る――それは、己のためではなく、守るべき者の命と共に呼吸する剣。これは、一人の若者が真の強さと剣の道を求め、愛する者を守るために己を変えていく、感動の成長物語である。

婚約者に裏切られ、国外追放の運命にある悪役令嬢アイリーン・ロゼンクロイツ。彼女は前世の記憶を持ち、自分が乙女ゲームの悪役だと気づいていた。回避策を考えていた彼女の前に現れたのは、使えないと噂の新米メイド・リリィ。絶望の淵にいたアイリーンだが、リリィに思わぬ才能を見出し、彼女を一流のメイドに育てることで運命を変えようと決意する。メイド教育に没頭するうちに垣間見える貴族社会の秘密と、リリィの隠された過去。二人の絆は、アイリーンの運命をどう変えていくのか——。

事故で命を落とした主人公・瀬戸陽介は、気がつくと美しく神秘的な異世界「アルカディア」に転生していた。慣れない環境に戸惑う中、深い森で一つの卵と出会う——それは伝説の存在「蒼炎竜」の卵だった。 偶然にも孵化の瞬間に遭遇した陽介は、生まれたばかりの小さなドラゴン「アオ」と強い絆で結ばれる。この世界ではドラゴンとその守護者は互いに影響し合い、共に成長するという。 最初は弱小だった二人だが、様々な試練を乗り越えながら絆を深め、力を育んでいく。ドラゴンが炎を吐けるようになれば、陽介も炎の魔法を使えるように。アオが空を飛べば、陽介もその背に乗り大空へ。 しかし、伝説の竜の血を狙う者たちの魔の手が迫り…。 守るべきもの、見つけた居場所、そして大切な絆——。 ドラゴンと人間が紡ぐ、心温まる成長の物語。

戦乱の世を駆け抜けた男、徳川家康。 天下統一の野望を胸に秘める彼の夢枕に、ある夜、奇妙な老僧が現れる。 「剣を捨て、糸を手にせよ。天下は商にて治まる」――。 謎の言葉に導かれ、家康は「康次郎」と名を変え、駿府の地で密かに商人の道へ足を踏み入れる。 戦場で培った慧眼で織物の真贋を見抜き、京や大坂の豪商と渡り合う日々。そこで彼は、貧しいながらも類まれな才能を持つ織女・お菊と出会う。彼女の絹に魅せられ、家康は巨万の富と、そして民の暮らしが「商い」によって支えられている現実を知る。 しかし、家康の異様な動きを織田信長が見咎め、駿府に猜疑の影が迫る。商人としての顔、武将としての宿命、そしてお菊との間に芽生えた絆。 家康は、究極の選択を迫られる――。 もし、徳川家康が商人の道を選んだなら？ これは、歴史のifが紡ぐ、天下人の知られざる秘話。剣と糸、武力と経済、その狭間で葛藤し、新たな天下への道を切り拓いた男の、激しくも心温まる物語。

大阪の片隅、廃部寸前の高校演劇部。自信を失くした副部長、進路に悩む部長、才能を隠す新入生、異色の転部組、寡黙な裏方、そして家庭問題を抱えた顧問──。バラバラだった個性が、一つの舞台を目指す時、青春の葛藤と情熱が交錯する。これは、かつての栄光を取り戻すため、そして何より自分自身と向き合うために、不器用ながらも輝こうとする高校生たちの、汗と涙と笑い溢れる再生の物語。果たして、彼らは満員の客席の前で、最高の「幕が上がる時」を迎えることができるのか？ 大阪の温かい人情とリアルな演劇描写に乗せて贈る、感動の青春群像劇！

関ヶ原の激戦を制し、江戸に新たな天下を築かんとする徳川家康。だが、泰平への道のりは米一粒にも阻まれた！ 深刻な米不足が江戸を襲う中、家臣の反対を押し切り、家康は正体を隠し、しがない米問屋「徳兵衛」として市場に降り立つ。「戦は金、治世は米だ！」と意気込む天下人を待ち受けていたのは、戦場以上の策略と欲望が渦巻く商人の世界。豪商・淀屋の卑劣な吊り上げに苦戦する家康は、懐刀・本多正信と手を組み、大胆不敵な奇策に打って出る！ 民のため、そして江戸の未来のため、家康はいかにしてこの難局を乗り越えるのか？ 天下人の知略と商人の魂が交錯する、痛快歴史フィクション開幕！

断罪された悪役令嬢は、未来を知っていた。 待ち受ける破滅から逃れるため、彼女が選んだ道は「魔法」を極めること。 辺境へと追いやられたその身で、古の英知と向き合い、誰にも真似できない力を手に入れる。 これは、追放された悪役令嬢が、自身の力で運命を切り開き、世界の歴史に名を刻む伝説となる物語――。

「ポテトロン？ 何それ、おでん種？」 片田舎でのんびり農業を営む祖父と暮らす、ちょっと元気な孫娘・小梅。ある日、畑の隅っこで掘り当てたのは、妙にテカテカ光る謎の芋だった。 その芋が突如しゃべりだし、「我は古代魔導具ポテトロン！ 魔力はマヨネーズで補充せよ！」とか言い出す始末。困惑する小梅をよそに、祖父がおでん種と勘違いして醤油をかけた瞬間――畑が浮いた！？ 空飛ぶ芋畑で、隣町の火事を消火したり、ポテトロンが「次はバターがいい！」とか言い出したり。町の特産品は「魔法の救世芋」に認定されたけど、調子に乗った市長が芋のSNSアカウント作ってまさかの大炎上！？ これは、しゃべる芋と頑固爺さん、そして普通の女の子が、世界をちょっとだけ面白くする、ドタバタ魔法畑コメディである！

江戸、深川。路地裏に佇む人気の鮨屋台「鶴乃鮨」。寡黙な老職人・弥兵衛が握る江戸前鮨は、一口含めば人生が変わると噂されるほど。 ある夜、現れた一人の浪人・庄太。彼は、かつて毒殺から主君を救ったという伝説の技――「影にぎり」の存在を知っていた。 そして、その技を持つ弥兵衛と、主を同じ毒殺者に奪われた庄太の邂逅は、江戸の闇に潜む巨大な陰謀の扉を開く。 その鮨は、命を繋ぐか、それとも真実を暴く刃となるのか。 喰って生きろ。生きて、知るのだ――。 老職人と若き浪人、二つの孤独な魂が、握られた鮨に託された宿命に挑む、圧巻の江戸人情時代劇。

「五年後、私はあなたの手で処刑される」――その残酷な未来を知ったのは、侯爵令嬢エマ・サンドグラスとして生まれ変わった、前世の記憶を持つ私だった。この世界の物語で、私は病弱な皇子アルバートを死に追いやる最悪の悪女として描かれていた。このままでは、愛しい家族も、私の人生も破滅してしまう。 運命を変えるため、私は禁忌を犯す覚悟を決めた。まだ幼く、ただひたすらに庇護を求めていた皇子アルバートのもとを訪ね、小さな砂時計を贈ったのだ。「この砂が全て落ちてしまう前に、どうか強くなって戻ってきてください。そうすれば、私はあなたのどんな願いも聞き入れましょう」と、ありったけの真心と前世の知識を込めて。 十年後。侯爵令嬢としての社交界の悪評に耐えながら、私は来るべき時に備えて準備を重ねてきた。そして、病に伏せ、死の淵を彷徨うと聞き及んだアルバート皇子のもとへ、私は薬を携えて向かう。その薬が、彼を救う希望となるのか、それとも前世の物語通りの毒となるのか――運命の分水嶺。 薄暗い病室で、久しぶりに再会したアルバート皇子は、かつての面影を残しつつも、深く澄んだ瞳で私を見つめた。私の差し出した薬に手を伸ばす前に、彼はそっと私の手を取った。十年前に贈った砂時計は、まだ僅かに砂を残している。「エマ。君が教えてくれた。運命は、与えられるものではなく、自分で選ぶものだと」 その言葉とともに、私たちの新たな物語は、今、静かに幕を開ける。これは、破滅を回避しようともがく悪役令嬢と、病弱な皇子が、共に運命に抗い、真実の愛と希望を掴むまでの、美しくも波乱に満ちた一大ロマンスファンタジー！

尾張の片田舎で、一介の百姓が夢を見た。「麦で、この国を変える」。戦乱の世にあって、鉄砲でも刀でもなく、ただひたすらに土を耕し、南蛮の技術を貪欲に吸収した男、木下藤吉郎。彼は播磨の地で飢饉をなくし、「麦奉行」と呼ばれ民に慕われた。だが、天下を狙う織田信長の軍勢が迫る。血と暴力で全てを支配しようとする覇王と、麦の力で民を救おうとする百姓。二つの異なる「天下」が、播磨の広大な麦畑を舞台に激突する！ これは、歴史の常識を覆す、もう一つの「天下人」の物語。知略と信念、そして土の匂いが織りなす、壮大な歴史絵巻、いざ開幕！

いろいろな短編を集めました。 ジャンルはいろいろです。

引退した刑事に届いた、死んだはずの相棒からの挑戦状。 40年前の未解決事件ファイルに隠された、見過ごされた「違和感」。 荒れ果てた山小屋で見つかった、一冊の古い日記。 そこに記されていたのは、あまりにも衝撃的な、犯人自身による「告白」だった。 事件は、他殺か、それとも――。 仕掛けられた「最後の遊び」と、相棒が託した「さよなら」。 これは、孤独な老人の最期の企みと、二人の刑事の絆が織りなす、切なくも深いミステリー。 あなたは、この謎の核心に辿り着けるか。

神様の手違いであっけなく死んだ俺。お詫びにもらったのは、見るからに地味なスキル【農耕】。 「まあ、異世界で静かに暮らすのも悪くないか」 そう思い、与えられた辺境の土地でひっそり農業を始めたんだけど……あれ？ このスキル、地味どころか超チートだった件。 不毛の土地は豊穣の大地に変わり、採れる作物は病を癒やし、力を増幅させる伝説級の代物と判明！ のんびり畑仕事したいだけの俺の元に、村人、貴族、聖女、果ては国王陛下までが殺到！ 「お願いです！ あの作物を譲ってください！」 静かに暮らしたい俺と、伝説作物を求める世界とのドタバタ攻防戦が今、始まる！ これは、最強の『農夫』が、自らの手で理想のスローライフを掴み取る物語！

潮風吹く港町に、愛されるパン屋があった。その名は「かもめベーカリー」。焼きたてのパンの香りは、町の朝を告げる優しい調べだった。しかし、ある日突然、店はもぬけの殻に。夜逃げか、事件か。ざわめく人々の間で、パン屋の常連だった老婦人・ハルは、店の前に光る一枚の外国のコインを見つける。それは、今は亡き船乗りの夫が、遠い海から持ち帰ったものと同じだった。古びたコインが解き明かす、パン屋の店主の隠された過去。そして、それが導くのは、切なくも温かい旅立ちの真実だった――。 これは、失踪したパン屋を巡る小さな謎と、港町の人々の温かい絆、そして海が繋ぐ人生の物語。

これは、身分がすべてを決める時代に、市場の布売りから「天下」を目指した、異端の男の物語。 嘲笑と侮蔑に満ちた視線をものともせず、彼はただ、己の才覚と知恵だけを信じた。 平民でありながら高貴な威厳を纏い、商いの手腕で財を成し、戦の書物で知略を磨く。 誰もが不可能と笑った「身分を超えた反逆」が、今、静かに幕を開ける。 血統か、才能か――。歴史の常識を覆す、型破りな英雄伝説がここに誕生する！

雨が降りしきる日、部屋に一人。窓ガラスを叩く単調な雨音は、世界の喧騒から切り離された静寂をもたらす。コーヒーの湯気に包まれながら、その音に耳を澄ませる時、失われたかに見えた色彩は、内なる風景の中に鮮やかに立ち現れる。これは、雨を触媒に、過去と現在が交錯し、自己の深淵へと潜りゆく一人の魂の物語。喪失、孤独、そして再生への微かな兆し。純文学の筆致で描かれる、心洗われるような内省の時。雨音に耳を澄ませるように、ゆっくりと、あなたの心で読んでほしい。

祖父が遺した勾玉に触れた瞬間、僕の世界は一変した。現れたのは、病魔を吸う力を持つ、透き通るほど儚い和服の青年。彼は「禍津玉の守り人」。使うたびに存在が薄れていく彼を、僕は見過ごせなかった。 彼を救う鍵は、祖父が隠した百年の秘密にあるらしい。戦時中の医療簿、不可解な記述。そこに浮かび上がるのは、人間を「器」とするおぞましい研究と、「禍ツ」と呼ばれる怪異の存在。過去の因縁は、現代の臓器ブローカーや、僕たちに迫る金貸しの影へと繋がっていた。 祖父の遺品、屋根裏に残された三日月の血痕──全ての謎が明らかになる時、祖父の封印された「優しさ」と、彼が背負った「裏切り」の真実が露わになる。守り神の最後のメッセージが示すものとは？ 過去の悲劇と現代の陰謀が絡み合う、和風の情景に宿る切なさと絆の物語。屋根裏部屋から始まる、新感覚ミステリーファンタジー。

「まさか、顔がバレるなんて！」平凡な会社員・木村には、秘密の顔がある。それは、光速で悪を討つスーパーヒーロー「フラッシュマン」！ ある日、銀行強盗を捕まえたまでは良かったが、マスクを忘れて防犯カメラに顔がバッチリ。翌日から、社内は「フラッシュ君」フィーバー！？ 隠したいのに隠せない正体、加速するヒーロー活動、迫り来る新たな危機…。これは、「正体バレ」から始まる、史上最もデンジャラスで愛おしい、サラリーマン×ヒーローの二重生活コメディ！ 果たして、木村は会社と世界を救えるのか――！？

帝国が誇る薔薇、アイリス・フォン・ローゼンブルグ。傲慢で冷酷な彼女は、平民の転校生メアリーを蔑み、学園中の畏怖を集めていた。しかし、ある夜見た悪夢――自身が「物語の悪役令嬢」であり、メアリー（実は隣国の王女）を虐げた罪で処刑される未来――を知ってしまう。破滅の運命を覆すため、アイリスは決意する。「私の人生は、私が選ぶわ！」 過去の自分と決別し、メアリーとの友情、そして領地と民を守る戦いへと身を投じることに。これは、運命に抗い、真の貴族として輝きを取り戻そうとする、一人の令嬢の物語。薔薇は、茨の道ではなく、自ら切り開いた道を歩み始める。