「体温」の検索結果
全体で142件見つかりました。
祖父・透が逝去して一年。十九歳の櫻谷青慈は、浪人期間の勉強部屋として、寂れた商店街にある『櫻谷古書店』を継ぐことになった。
数年ぶりに訪れた店先で、青慈は作務衣姿の精悍な男、木島朔夜と再会する。彼はかつて祖父が連れてきた店番兼居候で、幼い青慈の遊び相手でもあった。
「本当に、長かったぜ。待ちくたびれた」
そう笑う朔夜の熱い体温と、どこか浮世離れした佇まいに、青慈は懐かしさと同時に、身体の芯が疼くような奇妙な感覚を覚える。しかし、青慈には中学三年の夏を境に、彼との記憶が不自然に抜け落ちているという空白があった。
文字数 12,015
最終更新日 2026.02.25
登録日 2026.02.25
「この水槽(へや)が割れるとき、私たちは窒息する」
都心の高級マンション、愛情のない夫、完璧に整えられた静寂。
主婦・麻衣子の日常は、観賞されるためだけに用意された、温度の一定な水槽だった。
その透明な壁を叩き割り、彼女を剥き出しの熱情へと引き摺り出したのは、新進気鋭の建築家・健司。
二人は世間から隔絶された「密室」という名の水槽で、互いの体温だけを酸素に、溺れるような愛を重ねていく。
しかし、その聖域を濁らせる、一滴の毒。
健司の側に現れた若い助手・莉奈。
彼女の指先に灯る「赤いネイル」が、二人の隠れ家のドアを執拗にノックし始める。
「私にも、その水槽の中を見せてほしい。三人で、この遊びを続けましょう?」
暴かれる秘密、届けられる不穏な写真、そして崩れ去る日常の仮面。
莉奈という「毒魚」に侵食され、愛は次第に狂気へと変質していく。
追い詰められた麻衣子が最後に選んだのは、自らガラスを叩き割り、氷のような冬の海へと身を投じることだった。
誰の目も届かない最果ての地で、二人は最後の一息を分け合う。
不倫という閉塞的な愛の極北を描く、衝撃の官能サスペンス。
――たとえ、その自由が死へと繋がっていても、私たちはもう、この場所でしか息ができない。
エブリスタにも掲載中
文字数 52,407
最終更新日 2026.02.23
登録日 2026.02.12
『召喚された聖女様がドラゴンスレイヤーの称号を!?』
どこにでも居る普通の女子大生――柊木冬莉が異世界に召喚されてから、一年が経とうとしていた。
今日はアルトクランツ王国の祝祭『冬送り』
かつて自分を助けてくれたドラゴン娘、フランとのデートの日だ。
うきうき気分なフユリは雪道で転んだり、屋台飯を頬張ったりで、フランからも心配されるほどはしゃぎすぎ?
それもそのはず。未知の土地で、聖女としてフランと旅をしてきた冬莉はいつしか彼女に並々ならぬ想いを寄せていた。
種族も違うし、女の子同士。
それでもフユリは想い続け、奇跡の力で幾度となく困難を乗り越えてきた。
そして、今日も。二人は最大の困難を乗り越える。
古の火竜ブレイフルムの末裔であるフランは体温が高く、体の一部は火傷するほど熱い。
「火傷してもいい。回復し続ければ平気です! 私、聖女ですから!」
――これは、聖女がドラゴンスレイヤーな異種百合ファンタジー。
百合の間に挟まる男は絶対に許さない物語である!
*この作品は、全5話となる短期連載作品です。
R15タグは保険です。
感想などいただけると嬉しいです!
◇小説家になろう、カクヨムにも投稿しています◇
https://ncode.syosetu.com/n2660in/
https://kakuyomu.jp/works/16817330667547330423
文字数 12,914
最終更新日 2023.12.01
登録日 2023.11.27
現代詩形式の文体での挑戦:【詩小説】
全編を通じ、ノベルのドラマチックな展開を詩的なリズムに乗せて綴る、挑戦的な読書体験を提供します。
キャッチコピー
「愛している」という言葉が、雪のように白く、嘘のように冷たい。
あらすじ
王都でも指折りの美貌を誇る伯爵令嬢・セシリア。彼女が嫁いだのは、幼い頃から慕い続けた初恋の君、公爵嫡男のギルバートだった。
誰もが羨む結婚。しかし、その実態は一度も肌を合わせることのない「白い結婚」。
セシリアは信じていた。彼が自分を大切に想うあまり、清らかな関係を望んでいるのだと。あの、冬の陽だまりのような優しい声で「君が一番だ」と囁いてくれるから。
だが、真実の香りは、深夜の静寂と共に運ばれてくる。
帰宅した夫が纏う、自分のものではない甘すぎる花の匂い。触れた指先から伝わる、雪解けのように生々しい「他者の体温」。
彼は、私を「一番」と呼びながら、その口で他の女の温もりを、悦びを、情熱を語っている。
美しく塗り固められた「白」が剥がれ落ち、初恋の記憶が泥にまみれていく時、セシリアは決意する。この空虚な寝室を、そして愛という名の欺瞞を、自らの手で終わらせることを。
これは、純白のドレスを泥で染め上げ、偽りの楽園から這い出す女の、美しくも残酷な訣別の詩(うた)。
作品の魅力・特徴
温度と匂いの対比: 夫との冷え切った関係(氷・白)と、彼が持ち帰る浮気の残滓(熱・泥・情欲)を、徹底した五感描写で描き出します。
文字数 35,331
最終更新日 2026.04.26
登録日 2026.03.29
【Introduction】
舞台は西暦2070年、青森。
人々の五感は「Layer-Eye」と「ハプティクス」によって完全に管理されている。
視界を覆う美しいデジタルスキン、AIが最適化した味覚、そして痛みさえも補正される「透明な幸福」。
そこは、不快な現実が1ミリも入り込めない、演算されたエデン。
主人公の真実は、誰もが同期率100%の笑顔で繋がるこの街で、ある非公式のスクリプトを走らせる。
目的は、AIが「ノイズ」として消去してしまう、コンマ数秒のラグを見つけること。
システムが完璧な表情をレンダリングする直前、心が先に肉体を突き動かす、わずか「0.2秒」の真実を。
親友の陽菜と結衣との、何気ない散歩。
仮想の「のっけ丼」を噛み締める、偽物の弾力。
そして、サーバーダウンが剥き出しにした、本物の星空。
すべてが偽造できる世界の中で、それでも消せなかった「0.2秒の体温」を巡る、非同期な少女たちの聖域(サンクチュアリ)。
[T+0ms] セッション開始。
この物語は、あなたの脳に直接、不完全な「本物」を書き込む。
全10話 完結
文字数 12,058
最終更新日 2026.04.12
登録日 2026.04.12
社会のゴミから人間になろうとする二人の、破滅を伴う儚く刹那的な愛
この小説はノベラボにも掲載しています。
題名の意味に真に気づいたとき、貴方の胸は締め付けられる……触れるほどに、願うほどに遠くなる、彼。
赤方遷移……観測者から遠ざかる光源から発せられる光が赤く見える現象。
生きた屍、理想を持ってはならない者がそれに気づいたとき、ゾンビたちは届かない体温を求めて彷徨うのだ……
登録日 2017.11.14
自分を捨てた元カレが手に入れたのは、金と権力、そして疑心暗鬼が渦巻く冷めきった家庭だった。
一方、献血ルームで奇妙な縁を結んだ寧々と英雄は、ささやかでも体温の通った「循環する幸せ」を築いていく。
誰かのために流す血と、自分のために奪い合う血。二組の夫婦が迎える、残酷なまでの明暗とは。
◇◇◇
【偽KAC20261】【お題「血」】~偽カクヨム・アニバーサリー・チャンピオンシップ 2026~
主催者:馬村 ありん 2026年3月2日 20:08 作成
https://kakuyomu.jp/user_events/822139846259532686
に参加させて頂きました。
文字数 5,772
最終更新日 2026.03.05
登録日 2026.03.05
君と目が合うと、僕の体はいつもより1度高い熱を持つ。
君に触れると、僕の体は周りより2度高い熱に包まれる。
おかしいのかな?だって僕らは親友で──男同士だ。
文字数 2,920
最終更新日 2017.07.12
登録日 2017.07.12
過去の恋を忘れられないまま毎日を過ごしていく朔。
いつものようにその場限りの体温を求め、ある男と一晩過ごすことに。
だがその男、杏里は朔自身に興味を持ってきて、朔のからだにある傷や、自分の心うちを話していく。少しその男に興味が湧いた朔は少しずつ距離を詰めていき…。
紆余曲折ありその男と付き合うようになった朔。だが、彼のまえに忘れられない元カレ、龍二が登場する。
そのほかたくさんの登場人物の恋愛模様が交差する。読み手によってハッピーエンドかバッドエンドか変わるストーリー。
この物語に名前を付けるのはあなたです。
文字数 16,204
最終更新日 2025.10.08
登録日 2025.10.05
侯爵令嬢ルイーズは卒業記念パーティで一方的な婚約破棄を宣言される。
どうにか婚約者を言い負かしたものの、もはや疲労困憊。
退席しようとする彼女に、第二王子ステファンが近づき愛の言葉を囁く。
「私の妻になってほしい。君を愛している」
芝居がかった仕草で右手を握られ、指先と指先が絡み、彼の体温と汗が伝わってくる。
次いで隣国の王子チャムカが、王宮魔術師のアズベルが。
「僕は君のことが好きなんだ」
「ずっと前から君のことを想っていた、オレと付き合ってほしい!!」
困惑するルイーズに彼らからの愛の囁きが追い打ちをかけていく。
お気持ちは嬉しいですが、それは今言うことですの?
その気のないルイーズは彼らの求愛にただ辟易とする。
更に【ある人物】からの思わぬ告白。
守り抜いた侯爵令嬢としての矜持は砕け落ち、ルイーズの本音が露わになっていく。
彼女が最後に愛した男性は、いったい誰?
婚約破棄直後のドタバタを描く、困惑と苛立ちの求愛ストーリーです。
■婚約破棄の描写はほぼ導入だけ。その後に起こった出来事が主のお話です。
最後はハッピーエンドです。
設定などゆるめのシチュエーション重視。お気軽にお読みください。
■小説家になろう・カクヨム様でも掲載しています。
文字数 18,293
最終更新日 2022.11.06
登録日 2022.11.04
「余命一年」。
透化病を患った彼……。
既に、残された時間は多くはなかった。
最後に、彼の隣にいるのが私でいいのだろうか。
そんな葛藤をしながら、刻一刻とともに入れる時間は少なくなっていく。
これは、私と彼が透明な町で紡ぐ物語だ。
ーー透化病についてーー
理論上では認知されていても、実際には認知されていない病。存在しているはずなのに存在していない病。この病にかかった人は時間をかけて五臓六腑が透過してしまい、体温や心拍も透過し、機械ですら読み取れなくなってしまう。そして最期、この世界のすべての人の記憶から消えてしまう。つまり、生きていた証明が完全消滅してしまう病である。
文字数 7,278
最終更新日 2025.11.20
登録日 2025.04.03
成功という名の氷壁。溶かしたのは、東京を知らない君の体温だった。
冷たい成功と、虚ろな孤独。全てを手に入れたはずの男が、唯一知らなかった「温度」とは——。
30歳にしてIT会社を経営し、華やかな成功を手に入れた結城。タワーマンションからの夜景を見下ろし、女性に不自由しない日々を送る彼だったが、その内面には深い孤独と、過去の経験から生まれた冷たい心の壁があった。誰かを深く愛することから距離を置き、東京という都市と同じように、自らの心の温度を凍らせていた。
そんな彼の前に現れたのは、上京してきたばかりの純粋な22歳、小春。東京のリアルを知らず、無防備なほど真っ直ぐな彼女の「体温」は、結城の理屈や経験則を超えて、彼の冷え切った内奥に触れていく。最初は対照的な存在として面白がっていたはずが、共に時間を過ごすうちに、結城の心にはこれまで感じたことのない苛立ちや独占欲、そして抗えない「欲」が芽生え始める。小春もまた、彼の纏う冷たさと「毒気」の奥にある人間的な魅力に気づき、その感情は複雑なものとなっていく。
互いの心の動き、感情の粒度を細やかに描き出しながら進む物語は、やがて二人の関係性を脅かす最大の困難へと向かう。ビジネスの危機、過去の清算、そして周囲からの圧力――全てを失うかもしれない状況で、結城は小春への偽りのない「欲」、つまり誰よりも大切で、手放したくないという本質的な愛情と向き合うことになる。
これは、氷のような東京という街で、体温を失くした男が、一人の女性と出会い、自らの温度を取り戻していく物語。困難を乗り越えた先に、二人の温度で温められた東京で彼らが見つけるものとは。
大人のための、艶とリアリティに満ちた恋愛小説。なぜこの相手に惹かれてやまないのか、その答えが読者の心に深く響き、温かい余韻を残す。
文字数 110,220
最終更新日 2025.05.09
登録日 2025.05.09
午後の校舎に響く気怠いチャイムの音は、今の僕にとって最高の子守唄だった。
「体調が悪い」と嘘をついて逃げ込んだ保健室。白いカーテンの向こう側で、僕はシーツの匂いに包まれて深い眠りに落ちていた。しかし、ふと目が覚めたとき、視界に映ったのは見慣れた天井ではなく、見上げるほど巨大な「白衣」の壁だった。
「あら、やっと起きたの? 授業をサボる悪い子くん」
耳をつんざくような轟音として響いたのは、保健医の長谷川先生の声だった。彼女はモデルのような高身長と、切れ長の瞳が美しい「保健室のマドンナ」。だが、今の僕にとって彼女は、天を突くような巨人だった。
「……え?」
声が出ない。いや、正確には僕の体が、彼女の指先ほどのサイズに縮んでしまっていたのだ。パニックに陥る僕を、彼女は細く長い指でひょいとつまみ上げた。
「サボりの罰、何がいいかしら……そうね。ずっと私と一緒にいさせてあげる」
抗う術もなく、僕は彼女の指によって、ひんやりとしたシルクのような布地の中に放り込まれた。そこは、彼女のスカートの下——レースに縁取られた下着の中だった。
下着の中は、彼女の体温がダイレクトに伝わる密室だった。歩くたびに太ももの柔らかな肉が僕を押し潰し、肌の香りが脳を痺れさせる。
「んっ……少し動かないで。くすぐったいわ」
頭上から降ってくる彼女の声に、心臓が跳ねる。彼女は平然と仕事をこなし、同僚と話し、時折、僕が閉じ込められている場所を上からそっと押さえて愉しんでいるようだった。
やがて、放課後のチャイムが鳴り響く。校内から生徒の気配が消え、静寂が訪れた頃、彼女は保健室の鍵を閉めた。
「さて、そろそろ『お家』に帰りましょうか。でも、そこ(下着)じゃ落としちゃうかもしれないわね」
彼女はデスクに腰掛け、ゆっくりと足を広げた。視界が開け、僕は彼女の指によって、さらなる深淵へと運ばれる。
封印
「もっと奥なら、誰にも見つからないし、一生私のものよ」
彼女の指先が、熱を帯びた秘部へと僕を導く。ぬるりと湿った感触が全身を包み込み、僕は女性器という名の狭い通路へと押し込まれていった。抗おうにも、巨大な彼女の筋肉の収縮には勝てない。
「いい子ね……もっと奥へ。私の体の一部になりなさい」
ずるりと、視界が完全に閉ざされた。
行き着いた先は、拍動を繰り返す熱い壁に囲まれた、子宮という名の聖域。そこは命を育む場所であり、今の僕にとっては逃げ出すことのできない「肉の牢獄」だった。
外側から、彼女が自分のお腹を愛おしそうに撫でる振動が伝わってくる。
「ふふ、中で震えてるのがわかるわ。今日からここがあなたの教室よ。……ねえ、もうサボったりしないわよね?」
外の世界の光も、音も、もう届かない。
僕は、美しき巨人の胎内という名の永遠の闇に、甘く、残酷に封印されたのだった。
文字数 759
最終更新日 2026.05.09
登録日 2026.05.09
文字数 6,118
最終更新日 2025.11.22
登録日 2025.11.22
私は誰もいない船の甲板をふらついた足取りで歩いていた。
真っ暗な夜の海は、船が大きく揺れる度に冷たい水しぶきが私の体にあたって体温が奪われていくのがわかる。
でも、その凍えるような冷たさも感じないほどに、私は深い悲しみに囚われていた。
「ラナ、すまない。言い忘れていたが、俺には婚約者がいるんだ」
そう私に謝ったのは、人魚としての自分を捨ててまで愛した人間の王子様だった。
その彼の前に現れた隣国のお姫様が現れた日から、私はまるで船に最初からいなかったような存在として扱われている。
「でも、心配することはない。お前は俺の側室として迎えてやるよ」
その言葉を聞いたのは朝の出来事で、雲一つない青空を飛ぶたくさんのカモメを茫然と眺めていた。彼の言葉が信じられなくて、信じたくなくて現実逃避していたのかもしれない。
そして、私は知ってしまった。
今宵、彼が隣国の姫様と初夜を迎えているということを……
絶望の中、人魚姫ラナは最悪のタイミングで前世を思い出し、自分が知らない『人魚姫』の泡になって消えてしまう人魚姫に転生したことに気づいてしまう。あまりにも治安が悪い人魚姫の世界に、このまま泡になってしまおうとしていた。
そこへ、海を守る麗しい海神様が現れてーーー
「可哀想に……悪い人間に、誑かされてしまったのですね……」
眩しさすら感じる海神様の顔が近づいてきて、強引に口づけされてしまい………
麗しい海神様とキスしないと泡になって消えちゃう転生人魚の恋の行方は――⁉
文字数 57,463
最終更新日 2023.08.29
登録日 2023.08.18
霧島 冬夜
比較的背が低く病弱で容姿端麗。中性的な雰囲気を纏う。
クラスの女子からは人気が高いが、それを良く思わない一部の男子からいじめのようなものを受けている。
幼なじみでクラスの人気者の夏樹に憧れている。
両親に過保護なまでに溺愛されている。歳の離れた兄が居た。
金原 夏樹
幼なじみで身体の弱い冬夜をいつも気にかけている。
冬夜に庇護欲的なものを持ちそれを恋愛感情と錯覚している。
母親の連れ子で父親とは血縁関係が無い。
しかし母親が他に男を作り失踪した後は父親が引き取り父親と二人で暮らしている。
文字数 22,057
最終更新日 2023.11.21
登録日 2023.05.01
触れた肌から、体温が爛れるようだった。吐息が耳朶をくすぐり、胸を焦がす。
―…放課後、桜井みつきは美術教師の黄瀬立夏に穢される。痛みを伴い、生まれる熱は行き場を失くし、燻ったのだった。
文字数 2,359
最終更新日 2016.02.14
登録日 2016.02.14
夜。
強い雨が降る中、甘粕正彦は漆黒のサキュバスと出会った。
全身は雨で濡れて、服は体に張り付いている。細い体だ。サキュバスとしては異端なほど華奢な方だろう。
そのサキュバスは地面に座り込んでいた。誰も通らない道の真ん中で、力なく座っている。冷たい風と水が彼女の体温を奪っているのにすぐに気づいた。息をする度に白が走っている
金色の瞳に光はなく、呆然としていた。
甘粕正彦は雨に濡れる少女に言葉を刺す。
「サキュバス、リルカフェ。なぁ、オイ。どうして泣いているんだ?」
「……」
「理由は知っているとも。だが人としての礼儀として直接本人に聞くのが当然だろう?」
「貴方は私の体を見てどう思いますか?」
「ふむ、まぁ少数派であることは予想出来る。ああ、続けてくれ」
「私はサキュバスです。妖艶で、美しく、大きな胸と、くびれた腰、大きく柔らかなお尻。男性を蠱惑する魅力的な存在……そうなるはずでした。しかし」
「胸は小さく、肉付きは悪く、ごぼうように細い。所謂スレンダー体型だな、とても、サキュバスとは思えない」
「その、とおりです。私はサキュバスとして落第です。私はこの痩せ細った体が、醜い体が憎いッ! 誰もが私を笑う、醜いと罵る、下劣だと嘲笑う。みんな! みんな!! お母さんもお父さんも私を捨てた!! 友達は陰で私を罠にハメていた」
それを聞いて男は笑う。
「なぁ、オイ、立ち上がれよ」
弱りきった魔族のサキュバス。
俺はそんな存在だからこそ立ち上がって欲しいと願う。
「己を否定され、排斥され、罵倒され、苦しいだろう。悲しいだろう。わかる、とは言わんよ。だが想像はできる。コミュティから弾かれ過ごすというのは過酷なものだ。だから、こそ、俺はお前に話しかけた」
「俺はお前に立ち上がってほしい。周囲の圧力に屈せず、立ち上がり、勝ち上がってほしい。この殺し合いの運命を勝ち生き残ると信じている」
文字数 7,446
最終更新日 2022.10.23
登録日 2022.10.22
触れれば壊れてしまいそうなほど儚い、美しい少年。透真。
白い肌に淡い影を落とす睫毛、どこか諦めを含んだ静かな双眸。彼は、他人と深く関わることを避けて生きてきた。
そんな透真の前に現れたのは、無遠慮で傲慢、それでいてどこか危うさを孕んだ男。神代蓮と出会う。強引に距離を詰めてくる彼に、透真は戸惑いながらも、次第に逃げ場を失っていく。
「そんな顔、誰にも見せるなよ」低く囁かれる声と、逃がさないように絡め取られる視線。
触れられるたびに、拒絶と渇望が交錯する。
知らなかった熱、知られたくなかった弱さ。
壊れるのが怖いのに、壊されることをどこかで望んでいる。そんな矛盾を抱えたまま、透真は抗えない関係へと沈んでいく。
夜ごと重なっていく距離と、剥き出しになる本音。これは、守られることを知らなかった少年が、誰かの『執着』によって初めて自分の体温を知るまでの物語。
文字数 32,855
最終更新日 2026.05.17
登録日 2026.04.30