ライト文芸 小説一覧
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拍手が好きだ。自分に向けられたことは、一度もないけれど。
高校三年の三谷波瑠は、ピアニストを目指す幼なじみのコンクール書類を整え、小説家志望の後輩の原稿に感想を書き、進路に悩む下級生の推薦状を練る。
放課後活動支援部、通称ゆめ部のたった一人の部員。
誰かの夢を裏方で整えることが、波瑠の放課後のすべてだった。
高三の二学期、転入生の瀬戸内廻がゆめ部にやってくる。なんでもそこそこできるのに、なんにも本気になれないという廻は、ある放課後、波瑠に尋ねた。
「お前は、何がしたいの」
波瑠は答えられなかった。その問いの形をした穴が、ずっと前から胸の真ん中に空いていたことに、気づいてしまったから。
幼なじみのピアノの才能は、遠い舞台の上でますます輝いていく。後輩の小説は、波瑠の知らないところで誰かの心を動かし始めている。みんなが前に進む。でも、波瑠だけが客席に座ったままでいる。
支えているつもりだった。でも本当は、自分自身と向き合うことから、ずっと目を逸らしていただけなのかもしれない。
夢を追って家族を置いていった父。才能を信じることをやめた母。十六年間閉ざされていた書斎の奥に眠る、一枚の絵。
すべてが繋がったとき、波瑠の足元が揺れる。
海が見える丘の上の高校で過ごす、最後の半年間。
夢を持てない少女が、夢を持てないまま、自分の足で立ちあがるまでの物語。
あの日、コンクール会場の暗い客席で流した涙の意味を、波瑠はまだ知らない。
文字数 1,594
最終更新日 2026.04.09
登録日 2026.04.09
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ガイが規制のカップル2組が富豪の息子の別荘へと旅行に行くが、其処には凶悪な生物が存在し、またカップルの美しい女性と可愛らしい女性を獲物にしようと凶悪犯四人が大学生四人に襲い掛かる。恐怖体験の中でそれぞれが選んだ道とは何か。
文字数 28,224
最終更新日 2026.04.09
登録日 2026.04.04
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私の心には穴が……!とっても淋しい……!そんな事を!物思いにふけながら、歩いていたら! 「!」 "ドスッ!" と 何かが、私めがけて 落下した!
文字数 303
最終更新日 2026.04.09
登録日 2026.04.09
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「見失っても、また見つけられる。時間は巻き戻るから――」
1984年のヒット曲『タイム・アフター・タイム』の調べに導かれ、人々が時空を超えて「大切な誰か」と再会する三つの物語。
第一部は、現代の赤羽に住む中学生・甘夏とハッサク。初期型ウォークマンを手に取った瞬間、二人は1984年の赤羽台団地へと転移する。そこは甘夏にとって亡き母が生きている「赦しの場所」だった。しかし、ハッサクは元の世界にいない妹への贖罪のため、帰還を願う。別れの夜、甘夏がハッサクに託した「冷たいキス」が、42年後の再会を約束する。
第二部は、2026年から1984年の老舗旅館「時雨庵」に転移した黒猫のクロ。人間(翔馬)の姿になった彼は、若き日の店主夫妻・真白と洋平の恋を見守ることになる。未来から来た「大女将」の意識が宿る白猫のユキと共に、歴史の綻びを修正しながらも、クロは切ない別れと再生の道を選ぶ。猫と人間の境界を超えた、究極の「メラコメ」ストーリー。
第三部は、2018年の女子大生・美玲。亡き父・タカシの遺品であるウォークマンを聴き、1984年の若き日の父母に出会う。母・めぐみが自分以外の誰かと恋をしている現実に焦る美玲だが、父との交流を通じ、ある「命を繋ぐ約束」を交わす。それは、父が未来で病に倒れる運命を書き換えるための、唯一の希望だった。
不自由で、タバコ臭くて、でも温かいアナログな1984年。三つの時間旅行を通じて、登場人物たちは「後悔」を「希望」へと昇華させていく。失ったはずの誰かに、もう一度会いたくなる連作短編集。
※表紙画像の作成に、生成AI(にじ・ジャーニー)を使用しています。
文字数 97,555
最終更新日 2026.04.09
登録日 2026.04.09
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僕を下の名前で呼ぶのは、君だけだった。
――昭和59年。広島。
小学四年生の「僕」は、男たちの粗野な群れが苦手だった。
ひんやりとした六角形の図書館の片隅で、ただ一人、世界のノイズから逃れるように本を探していた。
そんな僕を、土埃の舞う眩しい校庭へと引っ張り出す友達がいた。
大人になる前の、あの無防備で残酷な季節。
やがて僕たちは、ファミコンソフトの貸し借りをきっかけに、取り返しのつかないうねりへと飲み込まれていく。
僕の名を呼ぶ君の声が、今でも鼓膜の奥で鳴り響いている……。
最後の季節に経験した、残酷で美しい喪失の物語。
※本作は著者の過去の実体験を元にした私小説です。昭和59年の広島の情景や、少年たちの間で起きた主な出来事は、事実に基づいています。
文字数 10,162
最終更新日 2026.04.08
登録日 2026.04.04
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この物語の主人公は、ある分野のアンチとDMで繋がった女性
注意※この作品はフィクションです。作中の行為を推奨、肯定するものではありません。
文字数 2,968
最終更新日 2026.04.08
登録日 2026.04.08
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番外編は時系列順ではありません。
4/8『神話の国の白い猫 4』(全4話)
4/5『神話の国の白い猫 2,3』
3/22 『神話の国の白い猫 1 』みふゆと京司朗が出会う前の、京司朗の話です。
R8 1/13 『ネコおどり大賞』
12/30 『プレゼント5,6』(結局全6話になりました)
12/27『プレゼント4』
12/26『プレゼント3』
12/24『プレゼント1,2』
11/13『日常のひとこま』再公開
08/22 『大きな栗の木の下で』全3話
05/25『お遊戯会 2,3』
05/11『お遊戯会 1』
-本編大まかなあらすじ-
*青木みふゆは23歳。両親も妹も失ってしまったみふゆは一人暮らしで、花屋の堀内花壇の支店と本店に勤めている。花の仕事は好きで楽しいが、本店勤務時は事務を任されている二つ年上の林香苗に妬まれ嫌がらせを受けている。嫌がらせは徐々に増え、辟易しているみふゆは転職も思案中。
林香苗は堀内花壇社長の愛人でありながら、店のお得意様の、裏社会組織も持つといわれる惣領家の当主・惣領貴之がみふゆを気に入ってかわいがっているのを妬んでいるのだ。
そして、惣領貴之の懐刀とされる若頭・仙道京司朗も海外から帰国。みふゆが貴之に取り入ろうとしているのではないかと、京司朗から疑いをかけられる。
みふゆは自分の微妙な立場に悩みつつも、惣領貴之との親交を深め養女となるが、ある日予知をきっかけに高熱を出し年齢を退行させてゆくことになる。みふゆの心は子供に戻っていってしまう。
令和5年11/11更新内容(最終回)
*199. (2)
*200. ロンド~踊る命~ -17- (1)~(6)
*エピローグ ロンド~廻る命~
本編最終回です。200話の一部を199.(2)にしたため、199.(2)から最終話シリーズになりました。
※この物語はフィクションです。実在する団体・企業・人物とはなんら関係ありません。架空の町が舞台です。
現在の関連作品
『邪眼の娘』更新 令和7年1/25
『月光に咲く花』(ショートショート)
以上2作品はみふゆの母親・水無瀬礼夏(青木礼夏)の物語。
『恋人はメリーさん』(主人公は京司朗の後輩・東雲結)
『繚乱ロンド』の元になった2作品
『花物語』に入っている『カサブランカ・ダディ(全五話)』『花冠はタンポポで(ショートショート)』
文字数 588,538
最終更新日 2026.04.08
登録日 2021.07.04
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新人社員の藤田さんに興味がある俺
忘年会でやらかすやつなんてたくさん見てきた。
俺はそんなやつになるまいと思っていた。
文字数 6,930
最終更新日 2026.04.08
登録日 2026.04.08
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「ふんっ! あんたみたいなザコが決勝に残るなんてね!!」
相手チームのキャプテンがこちらを睨みつける。
彼女こそ、春の大会を制した『スターライト学園』のキャプテンであるハルカだ。
「今日こそはお前を倒す。信頼できる仲間たちと共にな」
俺はそう言って、スコアボードに表示された名前を見た。
そこにはこう書かれている。
先攻・桃色青春高校
1番左・セツナ
2番二・マ キ
3番投・龍之介
4番一・ミ オ
5番三・チハル
6番右・サ ユ
7番遊・アイリ
8番捕・ユ イ
9番中・ノゾミ
俺以外は全員が女性だ。
ここ数十年で、スポーツ医学も随分と発達した。
男女の差は小さい。
何より、俺たち野球にかける想いは誰にも負けないはずだ!!
「ふーん……、面白いじゃん」
俺の言葉を聞いたハルカは不敵な笑みを浮かべる。
確かに、彼女は強い。
だが、だからといって諦めるほど、俺たちの高校野球生活は甘くはない。
「いくぞ! みんな!!」
「「「おぉ~!」」」
こうして、桃色青春高校の最後の試合が始まった。
思い返してみると、このチームに入ってからいろんなことがあった。
まず――
文字数 242,942
最終更新日 2026.04.08
登録日 2024.04.28
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❖『魂の愛 / きれいな儚さ』を語る──
夫の正義と気持ちが離れた時に、ふと出会った青年、美代志。
出会った時、美代志はホームレスになりかけていた。
由香は彼との出会いから、元気をもらい続ける。
だから夫とギクシャクしながらも、家庭生活を続けていくことが
できた。
正義の狡さ、由香のやさしさ、美代志の律義さ、息子たちの無邪気さ、
まほりの弱さ、婚活の場での駆け引きなど──それぞれの人間模様が
綴られていきます。
―――――――――――――――――――――――
登場人
蒼馬由香《そうまゆか》 40才
蒼馬正義《そうまただよし》 44才
蒼馬悟 《そうまさとる》 13才
蒼馬圭 《そうまけい》 11才
満島まほり《みつしままほり》 25才
月城美代志《つきしろみよし 19才
蒼馬晴恵《そうまはるえ》 66才 悟の祖母
蒼馬忠義《そうまただよし》 70才 〃 祖父
堀内貴史 28才
鍋本俊郎 32才
山本百合子 48才 結婚相談所スタッフ
2025年7月21日~2025年12月21日 執筆期間 [74,150字] 完結
文字数 74,939
最終更新日 2026.04.08
登録日 2026.01.17
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コウと煌子の物語が再び幕を開ける!
すったもんだを繰り返してようやく付き合い始めた
高村コウと田中煌子
しかし交際が始まってからも2人の行く先には様々な事件が
コウを探し続ける謎の女性の正体は?
そして2人を引き裂こうとする新たな刺客の登場
卒業、進路、ふたりの未来…
様々な試練にぶつかり葛藤しながらも
これからは1人ではなくふたりで一緒に
新たな門出に向けて選んだ道とは…
青春巨編学園ラブコメは遂に完結…?
シーズン1はこちらから↓
https://www.alphapolis.co.jp/novel/808072706/846575098
文字数 279
最終更新日 2026.04.08
登録日 2026.04.08
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地球温暖化が深刻化する近未来、日本政府は画期的な国策プロジェクト「新世界創造プロジェクト」を始動させる。これは、生産・消費活動を抑制し、リアルとバーチャルのハイブリッド生活へと人類のパラダイムシフトを促すため、壮大な仮想世界を創造し、人々を移住させる計画だ。この「新世界」のデザインを任されたのは、小説コンクールのファイナリストに選ばれた八人の高校生たち。彼らは那須の研修センターに集い、「物語を通じて世界を創っていく」という前代未聞のミッションに挑む。
物語の中心は、SF部門グランプリ受賞者でクールな理系女子「右左脳の姫君」城崎瞑と、コメディ部門準グランプリ受賞者で語り手の湯沢誠。瞑には、生まれてくることができなかった双子の姉・舞を仮想世界で蘇らせるという秘密の計画があった。誠は、瞑のパートナーとして新世界の一部、「ベーシック・ワールド」のデザインに協力する中で、彼女の個人的な願いに深く関わっていく。
※表紙画像の作成に生成AI(にじ・ジャーニー)を使用しています。
文字数 177,816
最終更新日 2026.04.08
登録日 2026.04.08
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母子家庭で生きてきた白山 廉(しろやま れん)。旧姓:笹原 廉(ささはら)。
かわいい妹の百々(もも)と協力して母を助けながら生きてきたが、ある日突然母親に再婚を告げられる。
そこからはじまる新たな生活に、、、
文字数 601,202
最終更新日 2026.04.08
登録日 2024.01.24
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TSして女の子になったおじさんが、バ美肉と称して配信をするという話です。どうなるかわかりませんが、試しに始めてみます。
文字数 126,711
最終更新日 2026.04.07
登録日 2025.12.03
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1000文字固定で作品を公開しています。
思いつくまま書いておりますので、ジャンルに決まりはございません。
原則「毎週火曜日 21:00」に更新します。
ぜひお楽しみください!
※本サイトの他に「小説家になろう」「カクヨム」でも公開しております。
Vol.1はこちらから
https://www.alphapolis.co.jp/novel/305608041/57865084
文字数 11,000
最終更新日 2026.04.07
登録日 2026.01.27
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文字数 79,187
最終更新日 2026.04.07
登録日 2019.12.31
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道下千智は「とある事情」があり、都会から田舎にやってきた。居住先に選んだのは『思い出屋さん』の跡地に建つ、二階建てのアパート。
広さ、間取り、家賃。どれをとっても不服ナシの物件だが、千智は浮かない顔。
「自分で選んだ場所なのに、どうして『帰りたい』と思えないんだろう」
そこへ突然、過去から歌人、未来からAIを搭載した人型ロボットが現れる。住む所がないというので、とりあえずアパートの空き部屋を勧めるが――
思いもよらない波乱万丈のアパート暮らし。
異時代二人と過ごすことで今は無き「思い出屋さん」に導かれ、千智は自分の帰るべき場所を見つける。
文字数 15,786
最終更新日 2026.04.07
登録日 2026.04.04
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文字数 21,382
最終更新日 2026.04.07
登録日 2020.02.02
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「好きな子ほどいじめたくなる」は免罪符じゃない。
大人にこそ読んでほしい、子供目線の物語。
小学4年生の花には悩みがある。
同じクラスの宇宙(コスモ)から、毎日毎日嫌がらせをされるのだ。
先生は、「男の子って好きな子に意地悪しちゃうものなのよ」と言ってまともに取り合ってくれない。
そんな時、通学路の河川敷で出会った変な男・ユウマと、その知り合いらしい女性弁護士・ヒロミが、花の力になりたいと名乗り出る。
「あなたが今受けているそれ、『好きな子ほどいじめたくなるハラスメント』よ!」
熱弁するヒロミ。
「僕さ、他の生き物の体に宿る能力を持ってるんだよね」
まるで「僕ってAB型なんだよねえ」とでも言うようなトーンで説明するユウマ。
彼らの飼い猫・ヒューイが、花の持っていたフェルトのマスコットとよく似ているのは何かのご縁?
ライト文芸大賞エントリー中♪
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※エブリスタでも公開しています,
文字数 34,552
最終更新日 2026.04.07
登録日 2026.03.31
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①登場人物の紹介
健介――東京で父の総菜店を手伝っていたが、父のけがをきっかけに、祖母・富枝が営む海辺の喫茶店「深海カフェ」へ一か月だけ戻る。
心優――中学時代に町を離れ、二年前に帰ってきた女性。思いついたらすぐ動くまっすぐな性格で、閉店までの店を明るく動かしていく。
富枝――深海カフェの店主。店を愛しているからこそ、自ら閉店を決めた祖母。
将丈、真李亜、美帆たち商店街の人々――それぞれに「言えなかった別れ」を抱え、店に集う。
②あらすじ
八月末で閉店する深海カフェ。祖母の店を手伝うため帰郷した健介は、幼なじみの心優と再会する。店には、町の人が長年思いを綴ってきた「濃いノート」があり、二人はそれをきっかけに「言えなかったさよならを預かる棚」を作る。すると、先生へ感謝を伝えたい子ども、亡き妻を思い続ける常連、店に別れを告げに来る人々の思いが少しずつ集まり始める。
そんな中、健介はノートの中に、昔ふたりだけで使っていた暗号を見つける。そこに残されていたのは、あの夕立の夜に言えなかった本心だった。けれど店の閉店後、健介は東京へ、心優も別の土地へ進むことが決まっている。引き留めたいのに、引き留めない。止まらない時間の中で、大切な相手を想う切なさと温かさを描く物語。
文字数 2,789
最終更新日 2026.04.07
登録日 2026.04.05
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194
文字数 6,194
最終更新日 2026.04.07
登録日 2026.04.01
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都会の片隅にある小さなネイルサロン「ひだまり」。そこは、仕事や学校、日々の生活に少し疲れてしまった人々がふと立ち寄る癒しの場所。ネイリストは、優しい笑顔と丁寧な施術で訪れるお客さんを迎え入れます。ネイリストの暖かな雰囲気に施術中、ふと悩みを漏らせばさりげないアドバイスや温かい言葉を添えて、心にそっと光を灯し、爪先にも色を彩ります。
そんな「ひだまり」でおこる日常の、ほんの少しの癒しと希望を届ける心温まる物語です。
※注意※
・このシリーズは『カクヨム』『アルファポリス』(敬称略)に重複投稿しています。
・掲載されている内容はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
・無断転載は禁止しております。
文字数 11,444
最終更新日 2026.04.06
登録日 2025.01.22
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幼い頃から、織田信人はいつも近くにいた。
家が近く、自然と言葉を交わし、気づけば隣にいるのが当たり前になっていた幼なじみ。
優しくて、まっすぐで、ときどき無神経なくらい正直な信人に、出光千愛は何度も心を揺らされてきた。
大人になるにつれて、その想いは少しずつ恋へと変わっていく。
それなのに、好きになればなるほど、胸の奥に小さな痛みが走る。
なぜか素直になれない。
なぜか心のどこかで、彼を許せないような気持ちが生まれてしまう。
子どもの頃は気づかなかった。
親同士は会えば会釈をするのに、どこかよそよそしく、微妙に気まずい空気をまとっていたことを――。
そしてある日、千愛は家の奥にしまわれていた古い記録を見つける。
そこに眠っていたのは、出光家が長い年月のあいだ隠し続けてきた、ある過去だった。
好きなのに、許せない。
許せないのに、離れられない。
幼なじみとして始まった二人の恋は、やがて家に刻まれた歴史と、親世代の叶わなかった想いまでも巻き込みながら、静かに運命を変えていく――。
文字数 21,717
最終更新日 2026.04.06
登録日 2026.03.26
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休日のショッピングモールは、昼を過ぎても人で溢れていた。
源(みなもと) 加代子(かよこ)、二十三歳。県警勤務。
今日は貴重な非番だった。
本当なら、ただ服を見て、少し甘いものでも買って、早めに帰るつもりだった。
けれど仕事柄なのか、休みの日でもつい周囲を見てしまう。
人の流れ、不自然な動き、困っている子ども、騒ぎになりそうな空気。
意識しないようにしても、目が勝手に拾ってしまうのだ。
「……職業病、ほんと嫌」
小さく呟きながら、加代子は肩にかけたバッグを持ち直した。
その時だった。
人混みの向こうに、妙に目を引く男が立っていた。
最初はイベント関係者か、何かの撮影かと思った。
だが、どこか違う。
長い黒髪。
艶のある雅(みやび)な装束。
見慣れない重ねの衣。
まるで歴史絵巻から抜け出してきたような姿なのに、不思議と安っぽさがない。
周囲の誰よりも浮いているはずなのに、その男の立ち姿だけはやけに堂々としていた。
しかしその目は、明らかに戸惑っていた。
天井を見上げ、光る案内板に目を細め、エスカレーターが動くたびにわずかに身を引く。
きょろきょろと落ち着きなく辺りを見回しながら、それでも気品だけは崩れない。
――変な人。
加代子は眉をひそめた。
酔っている様子はない。だが、放っておいて何かあっても困る。
声をかけようかと一歩踏み出しかけたその時、男が不意にこちらを見た。
視線が合った瞬間、男の表情が変わる。
迷っていた顔が、ふっと和らいだ。
それから吸い寄せられるように、まっすぐ加代子のほうへ歩いてくる。
嫌な予感しかしない。
加代子は反射的に背筋を伸ばいた。
男は彼女の目の前で足を止めると、しばし見つめ、やがて心から感嘆したように言った。
文字数 50,243
最終更新日 2026.04.06
登録日 2026.03.19