もう遅い 小説一覧
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1
三年前に捨てた女です。どうぞ、思い出せないままでいてください
三年前の雪の夜、わたくしは婚約者に捨てられ、そのうえ「死んだこと」にされましたの。
葬儀まで出していただきましたわ。参列者は八人。うち六人は、わたくしを笑いに来た方々でしたけれど。
――さて。
三年が経ちました。王都でいちばん人の集まる劇場に、新しい後援者が現れましたの。鴉羽色の髪に黒い扇の、どこの国の生まれとも知れない未亡人。名は、マダム・コルヴィナ。
「はじめまして。以後、お見知りおきを」
誰も気づきませんわ。気づかせませんもの。
彼らの過去は、これから舞台の上で、少しずつ演じられてまいりますのよ。客席で笑っていられるのは、何幕目までかしら。
「あの……どこかでお会いしませんでしたか」
「さあ。どちらさまでしたかしら」
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文字数 23,133
最終更新日 2026.09.08
登録日 2026.09.05
2
側妃への恋文まで書かされたので、代筆は今日でやめます
「アデリーヌ。これを、いつもの調子で頼む」
差し出された紙にはこう書いてございました。――側妃に迎えたい令嬢へ贈る、愛の手紙の下書き。
わたくし、七年間、殿下のお手紙をすべて代筆してまいりましたの。詫び状も、外交の親書も、お礼状も。筆跡も言い回しも、殿下ご本人よりずっと殿下らしく書けますのよ。
ですが、これは。
「――かしこまりました。これで、最後にいたしますわ」
その晩、婚約は破棄されましたわ。おめでとうございます。
翌朝から、殿下はご自分でお書きになりましたの。誤字も、敬称の間違いも、そのままに。隣国の陛下のお名前を、一文字違えて。
そして側妃候補のあの方は、やがて気づいてしまわれますのよ。ご自分が恋をしていたのは、手紙の中の、いない人だったということに。
わたくしは、何もしておりませんわ。だって、あれは――わたくしの言葉では、ございませんもの。
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文字数 20,046
最終更新日 2026.09.08
登録日 2026.09.05
3
聖獣の言葉がわかるだけの無能と捨てられましたが、実は獣たちの通訳は国宝級でした
聖獣の言葉がわかる。それだけが取り柄の子爵令嬢マドレーヌは、婚約者の宮廷魔術師イザークに「翻訳の魔道具があれば君は不要」と婚約破棄され、聖獣対話係の職まで奪われてしまう。
けれど聖獣の言葉は、鳴き声ではなく「心」。音だけを訳す水晶に、それが聴けるはずもなく――。
国を出たマドレーヌは吹雪の夜、罠にかかった伝説の神狼ルーンと出会い、「千年待った心聴きの巫女」と告げられる。隣国の若き外務卿アンセルムに迎えられた彼女は、こじれにこじれた聖獣との対話を次々と解きほぐし、あっという間に「生きた国宝」に。
一方、祖国では水晶が最悪の誤訳事故を起こし、怒った聖獣たちが全員ストライキ。国が傾き、元婚約者が迎えに来るけれど……お断りいたします。ただし、大好きな聖獣さまたちのためなら、話は別ですわ。
もふもふ大渋滞の、心を聴く通訳無双ファンタジー。全8話完結。
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文字数 10,212
最終更新日 2026.09.08
登録日 2026.09.05
4
離縁されましたので、王妃の紋章はただの飾りになります
「十七年、お前は子を成さなかった」
朝の食卓で、パンを切りながら、王はわたくしを離宮へ移すと仰いました。侍女のロゼッタが身籠ったから、と。
わかりました。いつ発てばよろしいでしょう。
——ただ、皆さまおひとつだけご存じありませんの。
この国の王妃紋章は、装飾品ではございません。国庫と神殿と各領主の署名権を束ねる、血の魔術認証。わたくしの血に紐づいたそれは、他人が持てば、ただの銀の飾り。
引き継ぎの手引きは、九十六頁、書いて置いてまいりましたわ。読まれるかどうかは、存じませんけれど。
翌週から、国庫の支払いが、一件も通らなくなりました。
感想数 19
文字数 16,281
最終更新日 2026.08.20
登録日 2026.08.16
5
「更新は、いたしません」〜白い結婚五年目、満了まであと三十日〜
結婚して五年、アメリアが夫オズワルドと交わした会話は、用件だけだった。
「妻は、よくできた調度のようでいてくれればいい」と言われた契約結婚。それでも五年、家政も、社交も、領地の調停も、夫の妹の支度も、アメリアは全部きちんと回してきた。契約とは、果たすものだから。
満了の三十日前の朝、夫は手紙の束から顔も上げずに言った。「更新の書類、いつものように任せていいか」
「更新は、いたしません」
その日から、伯爵家の何かが毎日ひとつずつ止まっていく。夫が五年間、見ようともしなかったものの形に沿って。
隣領の伯爵レナードだけが、満了の「その後」の話をしたがっている。
あと三十日。アメリアは指折り数えて、満了の日を楽しみに待っている。
感想数 10
文字数 81,089
最終更新日 2026.08.23
登録日 2026.08.05
6
【完結】後戻りはできません~婚約破棄されたので、あなたに尽くすのはやめようと思います~
「お前との婚約は解消させてもらう。それに伴い、学園生徒会会計職を解く」
名誉男爵家の養女にして貴族学園主席の才媛、リリテア。婚約者として、生徒会長エドワルドが押し付けてきた業務をこなしてきた。
けれどエドワルドは感謝するどころか、大勢の前で婚約破棄を宣言。リリテアは生徒会からも追放されてしまう。さらには予算の横領という身に覚えのない罪まで着せられてしまう事態に。
そんなリリテアに手を差し伸べたのは、公爵のルヴィアス。
「君はもう、あの生徒会を気に掛ける義理はない」
その一言で、リリテアは今までエドワルドに尽くしていた全てを、やめることにした。
リリテアの去った生徒会は静かに崩壊していく。そんな中、学園最大の行事・建国祭が刻一刻と迫っていた。
一方で、大量の業務から解放されたリリテアは、頻繁に会いに来るルヴィアスに少しずつ惹かれていく。
今さら全てに気付いても、もう遅いのです。
感想数 2
文字数 28,464
最終更新日 2026.08.11
登録日 2026.08.09
7
【完結】ずっと、ずっとあなたを愛していました 〜後悔も、懺悔も今更いりません〜
リスティアナ・メイブルムには二歳年上の婚約者が居る。
婚約者は、国の王太子で穏やかで優しく、婚約は王命ではあったが仲睦まじく関係を築けていた。
それなのに、突然ある日婚約者である王太子からは土下座をされ、婚約を解消して欲しいと願われる。
何故、そんな事に。
優しく微笑むその笑顔を向ける先は確かに自分に向けられていたのに。
婚約者として確かに大切にされていたのに何故こうなってしまったのか。
リスティアナの思いとは裏腹に、ある時期からリスティアナに悪い噂が立ち始める。
悪い噂が立つ事など何もしていないのにも関わらず、リスティアナは次第に学園で、夜会で、孤立していく。
感想数 237
文字数 156,153
最終更新日 2023.07.05
登録日 2023.05.21
8
《完結》私になりたい令嬢に婚約者を奪われましたので、話の通じる方と幸せになります。
「すまない、アプリコット。僕はアザリアを本気で愛してしまったんだ」
幼い頃からの婚約者ジョナサンに突然そう告げられた、アプリコット・フラクタル。
しかもオルスタイン家とアザリアの実家では、すでに次の婚約について話を進めていたという。
アザリアは、以前からアプリコットの服や髪形、持ち物、言葉遣いまで真似してきた令嬢だった。
ジョナサンを取り戻す気はない。
自分なら理解してくれる、自分なら次の相手が見つかる――そんな理由で誠実さを省いた男など、もう結構。
家族に次の釣り書きを頼んだアプリコットは、学者肌の侯爵家次男ヘルムート・ナイヤガラと出会う。
彼はアプリコットの長い話を最後まで聞く。
ただし、何でも肯定するわけではない。途中で反論し、間違いを指摘し、それでも続きを求めてくる。
一方、念願どおりジョナサンと結婚したアザリアは、今度はアプリコットの新しい暮らしまで真似し始める。
そこでジョナサンはようやく気づく。
アザリアが欲しかったのは自分ではない。
アプリコットという女性と、その隣にあった席だったのだと……
※初日だけは12時・16時・18時・20時・22時の投稿となります。
その後は12時・22時投稿です。
感想数 195
文字数 126,666
最終更新日 2026.08.17
登録日 2026.08.02
9
あなたが大好きでした ――届くはずだった言葉――
筆頭公爵令嬢クラリスは、自ら望んで子爵家三男アルベルトと婚約した。
アルベルトは公爵家へ婿入りし次期公爵となるため必死に努力し、その能力は公爵や王太子からも高く評価されていた。
しかし、アルベルトを誰より愛しているクラリスだけが、素直になれない。
褒めたい時には否定し、会いたい時には王城へ逃げる。
そして夜会で嫉妬したクラリスは、
「あなたが次期公爵候補なのは、わたくしの婚約者だからです。能力で選ばれたわけではありません」
と、アルベルトが最も恐れていた言葉を告げてしまう。
その夜を境に、アルベルトは心身を崩していく。
やがてクラリスが自分の過ちを理解した時には、彼女の名前を見るだけでアルベルトが体調を崩すほど、すべてが手遅れになっていた。
感想数 2
文字数 16,636
最終更新日 2026.08.29
登録日 2026.08.29
10
『嘘の病気で同情を買うな』と私を死に追いやった婚約者、私の墓標の前で額を叩きつけ、血の涙を流して号泣する大破滅!
婚姻届を出す前日、久世景人はようやく、十年遅れの婚約指輪を私の指にはめた。
銀色の輪が薬指に滑り込んだ瞬間、私は照明の下で光るダイヤをぼんやり見つめた。長く続いた待ち時間が、やっと終わったような気がした。けれど次の瞬間、彼は私の手を見下ろし、まるで似合わない品物を評するように静かな声で言った。
「正直、澪の手ってあまりきれいじゃないよな」
私は言葉を失った。
景人はそのまま私の指先を取ると、さっきはめたばかりの指輪を抜き取った。十年待ち続けた指輪は、彼の手のひらの上で冷たく光っていた。
「この指輪、瑠奈の手にあったほうが似合うと思う」
私は手を引き戻し、信じられない思いで彼を見た。
「どういう意味? 瑠奈と結婚するつもりなの?」
景人は目を伏せ、指輪の縁を指先でなぞった。まるで、たいしたことではない問いを少し考えているだけのようだった。
「そこまでじゃない。ただ、会えない時間が長くなると、どうしても瑠奈のことを考えるんだ」
その瞬間、私は自分がどうやってあのタワーマンションを出たのかさえ覚えていない。
感想数 27
文字数 20,838
最終更新日 2026.07.07
登録日 2026.07.07
11
今更気付いてももう遅い。
ある晴れた日、卒業の季節に集まる面々は、一様に暗く。
今更真相に気付いても、後悔してももう遅い。何もかも、取り戻せないのです。
感想数 40
文字数 13,142
最終更新日 2021.02.18
登録日 2021.02.16
12
お望み通り、別れて差し上げます!
「幼なじみと子供が出来たから別れてくれ。」
本当の理解者は幼なじみだったのだと婚約者のリオルから突然婚約破棄を突きつけられたフェリア。彼は自分の家からの支援が無くなれば困るに違いないと思っているようだが……?
感想数 22
文字数 49,766
最終更新日 2025.03.27
登録日 2024.12.14
13
今さら気づいてももう遅いのだから
王太子の婚約者候補だった少女が隣国の王太子に見初められて嫁ぐことになった。誰もが祝福する中、長年彼女を毛嫌いしていた王太子だけは反対する。国王は息子の話に耳を傾け、彼が最後まで気づくことができなかった本心を心の奥底に沈めた。今さら気づいても不幸になるだけだから。
*こじらせ父子がひたすら言い訳して、自分たちのやらかしに気づいて後悔するお話。暗いです。
文字数 11,305
最終更新日 2026.07.11
登録日 2026.07.11
14
庶民は恋人にできないですって。貴族に戻るヒモ様に、五年分のお代をきっちり請求いたします
下町で珈琲店『止まり木』を営むコレットは、五年間、働かない恋人ジェレミーを養ってきた。
ある日、彼のもとに伯爵家の迎えが来る。「実は俺、貴族の息子だったんだ。世話になった礼に、望みを何でも叶えてやる。ただ――貴族だから、庶民の珈琲屋を恋人にはできない」
コレットは笑顔で答えた。「では、五年分の生活費をきっちり清算していただきますわ」
金貨を受け取り、きれいさっぱりお別れ。――実は彼、半年前から貴族復帰を知っていて、「金目当てに縋られる前に」と近所のちょっと美人な女に乗り換え済みだったのだ。
そんな彼女に、五年間毎朝通ってきた常連の紳士が告げる。「ずっと、あなたが好きだった」――彼の正体は、王国鋳貨局を統べるルヴェリエ公爵。金の匂いに群がる人間しか周りにいなかった彼にとって、見返りひとつ求めず、たったひとりで店を切り盛りする彼女は、はじめて出会う種類の人だった。
晩餐会で元恋人に嘲られても、公爵は揺らがない。公爵母は彼女を溺愛する(「昔飼っていた犬のマローにそっくり」らしい)。そしてその夜、王弟大公が彼女の顔を見て杯を落とす。「……二十三年前に消えた、わたしの娘ではないのか」と。
お代も、幸せも、きっちり受け取る。下町の珈琲屋の、後味すっきり逆転ロマンス。
感想数 8
文字数 23,447
最終更新日 2026.08.30
登録日 2026.08.28
15
白狼の毛繕い係を解雇されたので、聖獣の森でカフェを開きます
王宮で十年、白狼の毛繕い係を務めてきた男爵令嬢プリムラ。しかし新任の聖獣管理長官ハンフリーに「毛を撫でるだけの閑職」と嗤われ、ある日突然、解雇されてしまう。
行く当てを失ったプリムラは、亡き祖母が暮らした聖獣の森のほとりで、お茶と焼き菓子の小さなカフェを開くことに。飄々とした樹医の管理官バジルに支えられて迎えた開店――のはずが、夜ごと窓を叩くのは、王宮にいるはずの筆頭聖獣・白狼のブランシュ。おまけに狐も鷲も兎も、聖獣たちが次々と「常連さま」になってしまい……?
一方そのころ王宮では、聖獣たちの毛並みが荒れ、国を守る結界が静かに緩みはじめていた。祖母がプリムラに遺したのは、聖獣の魔力を毛から調える幻の技「調毛の手」。「毛を撫でるだけ」と疎まれた十年は、実はこの国を支えていた十年だった――。
もふもふと焼き菓子に癒される、静かに痛快な自己肯定ファンタジー。毛並みは、心の鏡ですのよ。
感想数 2
文字数 20,725
最終更新日 2026.08.28
登録日 2026.08.25
16
幼馴染も義妹も……誰も俺を信じてくれなかった。今さら信じているなんて言われても、もう手遅れです
だれも信じてくれなかった。
だから今さら信じるなんて言われても困るだけだ。
幼馴染も義妹もメガネ女子も、今さら俺に関わろうとする。
もういいんだ。俺に構うな。
これは誰も信じない男が繰り広げる恋愛物語
感想数 4
文字数 183,065
最終更新日 2026.05.26
登録日 2026.05.10
17
「存じ上げませんが、どちら様ですか?」——忘れることが、最も残酷な復讐になった
伯爵令嬢フィーネは婚約破棄のショックで過去の記憶を全て失った。名前も、家族も、婚約者も——何もかも。保護してくれた辺境の薬師に弟子入りし、「フィー」と名乗る少女として穏やかに暮らし始めた。朝は薬草を摘み、昼は薬を調合し、夕方は師匠の息子——無口だが優しい青年ルカスと一緒に夕焼けを見る。「私、前の自分より今の自分が好きです」。五年後。辺境に一人の貴族が現れた。やつれた顔で「フィーネ、迎えに来た」と。彼女は首を傾げた。「存じ上げませんが、どちら様ですか?」——嘘ではなく、本当に覚えていない。忘れることが、最も残酷な復讐になった。
感想数 6
文字数 10,372
最終更新日 2026.04.11
登録日 2026.04.11
18
十八年前の赤子の取り違え——婚約破棄された「養女」が、公爵家のただ一人の正統な令嬢だと判明した日
メリルは、レイクハート公爵家に引き取られた「遠縁の養女」として育った。社交界に出ることも許されず、領地の治療院で病人の世話に明け暮れる日々。義姉ソフィアが王家に嫁ぐまでの「つなぎ」として第二王子の仮の婚約者に立てられても、メリルは「いずれ退く身代わり」と承知していた。
けれど治療院に通う第二王子リオネルと、メリルは本当に心を通わせてしまう。義姉ソフィアと後見人ライラは「養女が分を超えた」と激怒し、婚約を破棄してメリルを治療院ごと辺境へ追放した。
だが、辺境で疫病が広がったとき、王都は気づく。病を癒せる「聖癒」の力を持つ者が、もう一人も残っていないことに。
十八年前、ひとつの嘘があった。公爵令嬢の赤子と、後見人の娘の赤子がすり替えられていたのだ。社交界の令嬢ソフィアではなく——治療院の「養女」メリルこそが、公爵家のただ一人の正統な令嬢だった。
日陰で生きてきた手が、王国を救う。
感想数 2
文字数 178,135
最終更新日 2026.06.15
登録日 2026.05.24
19
これでお仕舞い~婚約者に捨てられたので、最後のお片付けは自分でしていきます~
婚約者である王子からなされた、一方的な婚約破棄宣言。
それを聞いた侯爵令嬢は、すべてを受け入れる。
戸惑う王子を置いて部屋を辞した彼女は、その足で、王宮に与えられた自室へ向かう。
たくさんの思い出が詰まったものたちを自分の手で「仕舞う」ために――。
※この作品は、「小説家になろう」にも掲載しています。
感想数 9
文字数 6,165
最終更新日 2023.05.27
登録日 2023.05.27
20
寝ているだけと嗤われたので、悪夢はもう預かりません
わたくし、ミラベル。王族の悪夢を食べる聖獣・獏(ばく)の親子のお世話係――「夢守(ゆめもり)」でございます。
……でしたの。「昼間から獏と寝ているだけの陰気な女」と嗤われ、婚約破棄のうえ、お役目ごと廃止されましたのよ。
けれど、ご存じかしら。獏は満腹では悪夢を食べませんの。毛を梳き、庭を歩かせ、ちょうどよくお腹を空かせておく――あの昼寝に見えた時間こそが、王宮の夜を守っておりましたのよ。
そしてもうひとつ。獏に食べられた悪夢は、消えてなどおりませんの。――お預かりしていただけですわ。
獏の去った王宮で、殿下は十年ぶりの悪夢に襲われますの。眠り薬に頼れば昼が霞み、しまいには山から野生の獏を捕まえてくる始末。夢守のいない獏は加減を知りませんのよ。悪夢も、良い夢も、志の夢まで――。
わたくしは丘の家で、寝台職人の伯爵さまと眠りの相談を続けておりましたけれど、それを聞いては黙っておられませんわ。獏を、迎えに参ります。
復讐はいたしません。けれど今回は、待ってもおりませんの。もふもふの獏親子と、世界一やさしい眠りの物語。
感想数 0
文字数 19,979
最終更新日 2026.08.23
登録日 2026.08.20
21
愛のない貴方からの婚約破棄は受け入れますが、その不貞の代償は大きいですよ?
公爵令嬢アズールサは隣国の男爵令嬢による嘘のイジメ被害告発のせいで、婚約者の王太子から婚約破棄を告げられる。
「どうぞご自由に。私なら傲慢な殿下にも王太子妃の地位にも未練はございませんので」
しかし愛のない政略結婚でこれまで冷遇されてきたアズールサは二つ返事で了承し、晴れて邪魔な婚約者を男爵令嬢に押し付けることに成功する。
「――ああそうそう、殿下が入れ込んでいるそちらの彼女って実は〇〇ですよ? まあ独り言ですが」
嘘つき男爵令嬢に騙された王太子は取り返しのつかない最期を迎えることになり……。
※この作品は過去に公開したことのある作品に修正を加えたものです。
またこの作品とは別に、ハーメルンなど他サイトでも本作を元にしたリメイク作を別のペンネー厶で公開していますがそのことをあらかじめご了承ください。
感想数 3
文字数 14,761
最終更新日 2024.03.31
登録日 2024.03.23
22
「君なら我慢できるだろう」と義妹を優先されたので、婚約を白紙にしました
伯爵令嬢アリアは、婚約者カイルとの食事の約束を二時間待たされていた。
理由は、カイルの義理の妹セレーネの体調が悪化したから。
セレーネは聖女候補で、体が弱く、国を救う力があるから仕方がない。そう言われ、アリアは何度も自分の約束を後回しにされてきた。
けれど、その日、アリアはついに告げる。
「婚約は白紙に戻しましょう」
翌日、王都の神殿では、セレーネが正式に聖女として認められるための認定式が開かれる。
アリアはいつものように補佐席へ案内されるが、そこで足を止めた。
「本日は、補佐に入りません」
これまでアリアは、正式な辞令も報酬もないまま、善意でセレーネの祈りを支えてきた。
だが、婚約を白紙にした今、彼女を支える理由はもうない。
神官たちは「一人欠けても問題ない」と式を進める。
しかし、セレーネの祈りは失敗した。
魔力供給記録を確認した第二王子レナードは、衝撃の事実を明らかにする。
セレーネの祈りのほとんどは、アリアの魔力によって支えられていたのだ。
さらに、セレーネの体調不良は嘘だった。
彼女はカイルの一番でいるために体調不良を装い、アリアとの約束の日を狙って彼を呼び出していた。
偽りの聖女候補は資格を失い、カイルもまた、アリアを軽んじ続けた責任を突きつけられる。
一方、アリアは王子レナードから正式に請われ、結界を安定させる。
力を認められたアリアに、レナードは手を差し出す。
「もしよければ、私の傍にいてくれないか?」
婚約者におざなりにされてきた少女はその日、ようやく自分だけを見てくれる人の隣に立つことになるのだった。
感想数 6
文字数 100,501
最終更新日 2026.07.16
登録日 2026.07.04
23
精霊を操りきれない公爵令嬢が追放されたら、国が滅びました
「地味な女に王妃は務まらない」と婚約破棄された公爵令嬢。
だが翌日、彼女が消えた途端、国の花は枯れ作物は全滅する。
――彼女こそが、この国を支えていた存在だった。
一方、彼女は隣国で“氷の将軍”に溺愛されていた。
手遅れになってから縋る王子と滅びゆく国をよそに、彼女は初めての恋を知る。
感想数 0
文字数 6,664
最終更新日 2026.04.12
登録日 2026.04.12
24
去りし令嬢の、その後の静けさ
声を荒げることも、言い返すこともなく、
彼女はただ静かに、その家を去った。
残された者が気づくのは、いつも後になってから。
——彼女が毎日していた、名もない献身の重さに。
婚約者の、夫の、家族の「当たり前」を支えていた手が消えたとき、
失われたものの輪郭が、ようやく見えてくる。
ざまぁを声高に描かない。すれ違いと、後悔と、再会の余韻で読ませる。
静かな情がじんわり効く、一話完結の短編集。
※S01「捨てられ令嬢」のアルファポリス最適化分割。
※アルファ読者向け:関係性・感情の機微・余韻を最優先。
感想数 2
文字数 9,573
最終更新日 2026.07.23
登録日 2026.07.23
25
【完結】婚約破棄され毒杯処分された悪役令嬢は影から王子の愛と後悔を見届ける
「クアリフィカ・アートルム公爵令嬢! 貴様との婚約は破棄する」
王太子との結婚を半年後に控え、卒業パーティーで婚約を破棄されてしまったクアリフィカ。目の前でクアリフィカの婚約者に寄り添い、歪んだ嗤いを浮かべているのは異母妹のルシクラージュだ。
クアリフィカは既に王妃教育を終えているため、このタイミングでの婚約破棄は未来を奪われるも同然。こうなるとクアリフィカにとれる選択肢は多くない。
せめてこれまで努力してきた王妃教育の成果を見てもらいたくて。
キレイな姿を婚約者の記憶にとどめてほしくて。
クアリフィカは荒れ狂う感情をしっかりと覆い隠し、この場で最後の公務に臨む。
卒業パーティー会場に響き渡る悲鳴。
目にした惨状にバタバタと倒れるパーティー参加者達。
淑女の鑑とまで言われたクアリフィカの最期の姿は、良くも悪くも多くの者の記憶に刻まれることになる。
そうして――王太子とルシクラージュの、後悔と懺悔の日々が始まった。
文字数 37,793
最終更新日 2024.12.18
登録日 2024.11.29
26
婚約破棄されたので、隠していた古代魔法で国を救ったら、元婚約者が土下座してきた。けどもう遅い。
侯爵令嬢の前で婚約破棄された平凡な男爵令嬢エレナ。
しかし彼女は古代魔法の使い手で、3年間影から婚約者を支えていた恩人だった!
王国を救い侯爵位を得た彼女に、没落した元婚約者が土下座するが「もう遅い」。
文字数 14,383
最終更新日 2025.11.02
登録日 2025.11.02
27
「婚約破棄してやった!」と元婚約者が友人に自慢していましたが、最愛の人と結婚するので、今さら婚約破棄を解消してほしいなんてもう遅い
とある伯爵家の長女、シーア・ルフェーブルは、元婚約者のリュカが「シーア嬢を婚約破棄にしてやった!」と友人に自慢げに話しているのを聞いてしまう。しかし、実際のところ、我儘だし気に入らないことがあればすぐに手が出る婚約者にシーアが愛想を尽かして、婚約破棄をするよう仕向けたのだった。
その後リュカは自分の我儘さと傲慢さに首を締められ、婚約破棄を解消して欲しいと迫ってきたが、シーアは本当に自分を愛してくれる人を見つけ、結婚していた。
だから今更もう一度婚約して欲しいなんて、もう遅いのですっ!
感想数 2
文字数 2,972
最終更新日 2021.08.17
登録日 2021.08.17
28
【完結】馬車の行く先【短編】
王命による婚約を、破棄すると告げられたフェリーネ。
婚約者ヴェッセルから呼び出された学園の予備室で、フェリーネはしばらく動けずにいた。
同級生でありフェリーネの侍女でもあるアマリアと、胸の苦しさが落ち着くまで静かに話をする。
一方、ヴェッセルは連れてきた恋の相手スザンナと、予備室のドアの外で中の様子を伺っている。
フェリーネとアマリアの話を聞いている、ヴェッセルとスザンナは……。
*ハッピーエンドではありません
*荒唐無稽の世界観で書いた話ですので、そのようにお読みいただければと思います。
*他サイトでも公開しています
文字数 9,078
最終更新日 2025.05.17
登録日 2025.05.17
29
嘘をありがとう
「まあ、なんて図々しいのでしょう」
おっとりとしていたはずの妻は、辛辣に言った。
「要するにあなた、貴族でいるために政略結婚はする。けれど女とは別れられない、ということですのね?」
妻は言う。女と別れなくてもいい、仕事と嘘をついて会いに行ってもいい。けれど。
「必ず私のところに帰ってきて、子どもをつくり、よい夫、よい父として振る舞いなさい。神に嘘をついたのだから、覚悟を決めて、その嘘を突き通しなさいませ」
文字数 10,606
最終更新日 2025.01.09
登録日 2025.01.09
30
【完結】“元”旦那様、今世は白い結婚を所望します ~結婚式で前世を思い出したら~
結婚相手は、前世で離婚した“元”旦那様────!?
婚約者の浮気が発覚して捨てられた過去を持つ子爵令嬢のニーナ。
もう結婚は望めないと思っていたところ、
新たな結婚話が舞い込みとんとん拍子で結婚が決まる。
そうして迎えた結婚式。
ニーナは夫となるレオンと誓いのキスをする寸前に、前世の記憶を思い出した。
同時に夫、レオンもその場で自分の前世を思い出す。
そうして発覚したのは、自分たちは前世で離婚した元夫婦だったということ。
(どうしてこうなった!?)
かつて離婚した相手となんて上手くやって行ける気がしない。
しかし、この結婚は政略結婚で今は新婚ホヤホヤ。
離縁は簡単ではない……
そんなニーナの出した結論は“白い結婚”だった。
こうして、仕方なくやり直し? の白い結婚の夫婦生活が始まったけれど……
感想数 37
文字数 66,242
最終更新日 2025.04.02
登録日 2025.03.17
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わたくしの葬儀へようこそ
婚約者の尻拭い、義妹の世話、傾いた家の帳簿。すべてを押しつけられて「陰気で可愛げのない女」と呼ばれた伯爵令嬢コーデリア。
冬の橋から馬車ごと川に落ちた彼女は――死んだことになった。
生きているのに。
老執事の手引きで田舎に身を隠した彼女のもとに、届くのは葬儀の報せ。
祭壇の前で、婚約者が泣いている。義妹が「お姉さまだけが味方でしたのに」と崩れ落ちる。あの家の帳簿は三月で破綻し、社交界は今さら囁き始めた。「あの方は、得がたい人だったのでは」と。
……あら、皆さま。
わたくしの価値は、わたくしが死なないと見えませんの?
これは「いない」ことで証明されていく女の、一年後の生存報告の物語。
感想数 5
文字数 19,915
最終更新日 2026.08.13
登録日 2026.08.10
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婚約破棄され「彼女だけを守る」と告げられた伯爵令嬢~承りました、どうぞ末永くお幸せに! 婚約破棄を止める? いえ、お断りいたします!
伯爵令嬢イリアス・クローディアは、春の舞踏会の夜、婚約者の侯爵家子息ユリウス・アーデルハイドから一方的な婚約破棄を宣言される。
その場に響くのは、ユリウスを称える声とイリアスを非難する怒号──陰で囁かれる嘘があった。
だが、イリアスは微笑を崩さず、静かに空気を支配し、したたかな反撃を開始する。これは、婚約破棄を断絶として受け止めた令嬢が、空気を反転させ、制度の外で生きるための物語。
「爵位契約の破棄として、しかと受けとめました」──その一言が、今を、すべてを変える。
♧完結までお付き合いいただければ幸いです。
感想数 2
文字数 11,940
最終更新日 2026.05.04
登録日 2026.04.27
33
序盤でボコられるクズ悪役貴族に転生した俺、死にたくなくて強くなったら主人公にキレられました。 え? お前も転生者だったの? そんなの知らんし
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★2024/2/25〜3/3 男性向けホットランキング1位!
★2024/2/25 ファンタジージャンル1位!(24hポイント)
「主人公が俺を殺そうとしてくるがもう遅い。なぜか最強キャラにされていた~」
『醜い豚』
『最低のゴミクズ』
『無能の恥晒し』
18禁ゲーム「ドミナント・タクティクス」のクズ悪役貴族、アルフォンス・フォン・ヴァリエに転生した俺。
優れた魔術師の血統でありながら、アルフォンスは豚のようにデブっており、性格は傲慢かつ怠惰。しかも女の子を痛ぶるのが性癖のゴミクズ。
魔術の鍛錬はまったくしてないから、戦闘でもクソ雑魚であった。
ゲーム序盤で主人公にボコられて、悪事を暴かれて断罪される、ざまぁ対象であった。
プレイヤーをスカッとさせるためだけの存在。
そんな破滅の運命を回避するため、俺はレベルを上げまくって強くなる。
ついでに痩せて、女の子にも優しくなったら……なぜか主人公がキレ始めて。
「主人公は俺なのに……」
「うん。キミが主人公だ」
「お前のせいで原作が壊れた。絶対に許さない。お前を殺す」
「理不尽すぎません?」
原作原理主義の主人公が、俺を殺そうとしてきたのだが。
※ カクヨム様にて、異世界ファンタジージャンル表紙入り。5000スター、10000フォロワーを達成!
感想数 71
文字数 204,836
最終更新日 2025.02.18
登録日 2024.02.23
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【完】婚約破棄&処刑されて転生しましたけれど、家族と再会し仲間もできて幸せです
お嬢様はいつでも笑みを心に太陽を オムニバスシリーズ1【婚約破棄&処刑されて転生しましたけれど、家族と再会し仲間もできて幸せです。亡国に瀕したダメ皇子が今更取り戻しにいらしたけれど、出来のいい第二皇子に抹殺されるようです】
「お前とは婚約破棄する! 処刑だ!」
国防の要、五大伯爵家のひとつに組する令嬢ミラ。
聖なる力を持っているにも関わらず処刑されてしまった。
「私、甦ったの?」
二十一年後、隣国の教会で孤児として暮らすラーラは、突如として前世を思い出す。
奇しくも隣国に亡命していた家族と再会し、年若い友人たちを得る。
さらには、ヴァレンティーノ皇子に見初められ、熱烈なアプローチを受ける。
「その令嬢を奪い返せ!」
聖なる力を失い、亡国に瀕しかけていた祖国の第一皇子がミラの噂を聞きつけた。
聖なる力を持つミラを取り戻そうと挙兵したが返り討ち。
帰国するも、出来のいい第二皇子に抹殺されてしまう。
「どうか、我が妃に……」
新たに王座に就いた第二皇子がこれまでの非礼を詫び、妃として迎えたいとミラを迎えに来るが……。
R指定描写はありませんが、気になる方は目次※マークをスルーして下さい。
***
表紙、挿絵には、イラストAC様、AIイラストを使用。AI校正利用。
感想数 1
文字数 85,547
最終更新日 2026.09.02
登録日 2026.08.12
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これでもう、『恥ずかしくない』だろう?
俺には、婚約者がいた。
俺の家は傍系ではあるが、王族の流れを汲むもの。相手は、現王室の決めた家の娘だそうだ。一人娘だというのに、俺の家に嫁入りするという。
婚約者は一人娘なのに後継に選ばれない不出来な娘なのだと解釈した。そして、そんな不出来な娘を俺の婚約者にした王室に腹が立った。
顔を見る度に、なぜこんな女が俺の婚約者なんだ……と思いつつ、一応婚約者なのだからとそれなりの対応をしてやっていた。
学園に入学して、俺はそこで彼女と出逢った。つい最近、貴族に引き取られたばかりの元平民の令嬢。
婚約者とは全然違う無邪気な笑顔。気安い態度、優しい言葉。そんな彼女に好意を抱いたのは、俺だけではなかったようで……今は友人だが、いずれ俺の側近になる予定の二人も彼女に好意を抱いているらしい。そして、婚約者の義弟も。
ある日、婚約者が彼女に絡んで来たので少し言い合いになった。
「こんな女が、義理とは言え姉だなんて僕は恥ずかしいですよっ! いい加減にしてくださいっ!!」
婚約者の義弟の言葉に同意した。
「全くだ。こんな女が婚約者だなんて、わたしも恥ずかしい。できるものなら、今すぐに婚約破棄してやりたい程に忌々しい」
それが、こんなことになるとは思わなかったんだ。俺達が、周囲からどう思われていたか……
それを思い知らされたとき、絶望した。
【だって、『恥ずかしい』のでしょう?】と、
【なにを言う。『恥ずかしい』のだろう?】の続編。元婚約者視点の話。
一応前の話を読んでなくても大丈夫……に、したつもりです。
設定はふわっと。
感想数 13
文字数 9,670
最終更新日 2025.05.15
登録日 2025.05.14
36
【短編】捨てられた公爵令嬢ですが今さら謝られても「もう遅い」
「すまなかった、ヤシュナ。この通りだ、どうか王都に戻って助けてくれないか」
ザイード第一王子が、婚約破棄して捨てた公爵家令嬢ヤシュナに深々と頭を垂れた。
「お断りします。あなた方が私に対して行った数々の仕打ち、決して許すことはありません。今さら謝ったところで、もう遅い。ばーーーーーか」
王家と四大公爵の子女は、王国を守る御神体を毎日清める義務がある。ところが聖女ベルが現れたときから、朝の清めはヤシュナと弟のカルルクのみが行なっている。務めを果たさず、自分を使い潰す気の王家にヤシュナは切れた。王家に対するざまぁの準備は着々と進んでいる。
文字数 3,701
最終更新日 2022.09.16
登録日 2022.09.16
37
「あなたは母の代わりじゃない」と拒まれ続けた継母が去った後、実母の命日の白い花が、十二年分遺されていた
母を亡くした年、屋敷に来た継母リーゼロッテを、わたし——クラーラは一度も母と呼ばなかった。
「あなたは母の代わりじゃない」。そう言って拒むたび、彼女は静かに頷くだけで、決して母の座を求めなかった。
父が亡くなり、後ろ盾を失ったリーゼロッテは、何も言い残さず屋敷を去る。せいせいした、と思っていた。
けれど、彼女が消えた屋敷で、わたしは見つけてしまう。実母ユーリアの命日に毎年供えられていた白い花の、十二年分の包み紙。実母の故郷料理を古参女中から書き取った、継母の筆跡の覚書。そこには実母の名で「クラーラの好物・薄味に」と記されていた。
わたしが「母を奪おうとしている」と憎んだ人は、わたしのために、亡き母を生かし続けていた。母の代わりになろうとしなかったのではない。なってはいけないと、ずっと自分に禁じていたのだ。
気づいたときには、もう、白い花を渡す相手はどこにもいなかった。
感想数 6
文字数 8,378
最終更新日 2026.06.10
登録日 2026.06.10
38
死んで初めて分かったこと
ヴィリジアの王女ロザリアは、大国アルデラ王国のエアル王子の婚約者として王城で暮らしていたが、エアル王子には罵倒され遠ざけられ続け、次第に周辺の人々も近づかなくなっていた。
しかし、エアル王子が故郷ヴィリジアを滅ぼしたことをきっかけに、ロザリアは何もかもを諦める。「殿下。あなた様との婚約は、破棄いたします」、そう宣言して、ロザリアは——。
感想数 3
文字数 24,564
最終更新日 2026.01.23
登録日 2026.01.23
39
さようなら、私の初恋
「さよなら、私の初恋。……もう、全部お返しします」
物心ついた時から、彼だけが世界のすべてだった。 幼馴染の騎士団長・レオンに捧げた、十数年の純粋な初恋。 彼が「無敵」でいられたのは、アリアが無自覚に与え続けた『治癒の加護』があったから。
だが婚約直前、アリアは知ってしまう。 彼にとって自分は、仲間内で競い合う「賭けの対象」でしかなかったことを。
「あんな女、落とすまでのゲームだよ」
感想数 5
文字数 62,169
最終更新日 2026.02.26
登録日 2026.01.31
40
【完結】大聖女は無能と蔑まれて追放される〜殿下、1%まで力を封じよと命令したことをお忘れですか?隣国の王子と婚約しましたので、もう戻りません
「稀代の大聖女が聞いて呆れる。フィアナ・イースフィル、君はこの国の聖女に相応しくない。職務怠慢の罪は重い。無能者には国を出ていってもらう。当然、君との婚約は破棄する」
アウゼルム王国の第二王子ユリアンは聖女フィアナに婚約破棄と国家追放の刑を言い渡す。
フィアナは侯爵家の令嬢だったが、両親を亡くしてからは教会に預けられて類稀なる魔法の才能を開花させて、その力は大聖女級だと教皇からお墨付きを貰うほどだった。
そんな彼女は無能者だと追放されるのは不満だった。
なぜなら――
「君が力を振るうと他国に狙われるし、それから守るための予算を割くのも勿体ない。明日からは能力を1%に抑えて出来るだけ働くな」
何を隠そう。フィアナに力を封印しろと命じたのはユリアンだったのだ。
彼はジェーンという国一番の美貌を持つ魔女に夢中になり、婚約者であるフィアナが邪魔になった。そして、自らが命じたことも忘れて彼女を糾弾したのである。
国家追放されてもフィアナは全く不自由しなかった。
「君の父親は命の恩人なんだ。私と婚約してその力を我が国の繁栄のために存分に振るってほしい」
隣国の王子、ローレンスは追放されたフィアナをすぐさま迎え入れ、彼女と婚約する。
一方、大聖女級の力を持つといわれる彼女を手放したことがバレてユリアンは国王陛下から大叱責を食らうことになっていた。
感想数 51
文字数 36,326
最終更新日 2021.01.07
登録日 2020.12.12