切ない 小説一覧
201
婚約者の家に行ったら幼馴染がいた。彼と親密すぎて婚約破棄したい。
クロエ子爵令嬢は婚約者のジャック伯爵令息の実家に食事に招かれお泊りすることになる。
彼とその妹と両親に穏やかな笑顔で迎え入れられて心の中で純粋に喜ぶクロエ。
しかし彼の妹だと思っていたエリザベスが実は家族ではなく幼馴染だった。彼の家族とエリザベスの家族は家も近所で昔から気を許した間柄だと言う。
クロエは彼とエリザベスの恋人のようなあまりの親密な態度に不安な気持ちになり婚約を思いとどまる。
文字数 52,428
最終更新日 2021.10.31
登録日 2021.04.30
202
愛されたことのない妖精は、今日も抱かれる 2
妖精売買禁止法が成立し、妖精は商品ではなくなった。
人間と妖精のパートナーシップ制度も作られ、表向きは平等な時代。
――それでも。
人間と妖精が共に生きることを選ぶ者は少なく、差別は今も残っていた。
何度も人を好きになり。
何度も傷ついてきた妖精のルカ。
いつしか彼は、
「どうせ自分は誰かの一番にはなれない」
そう思うようになっていた。
ある日。
既婚者との関係を、勤め先の上司である伯爵アシュレイに見つかってしまう。
「お前は本当にそれでいいのか?」
冷たいはずのその言葉が、なぜか胸に残る。
愛されることを諦めた妖精と、
それを許せない伯爵。
これは、
「どうせ愛されない」と思い込んだ妖精が、
もう一度、自分を大切にしてもいいと知るまでの物語。
感想数 0
文字数 44,012
最終更新日 2026.09.10
登録日 2026.07.14
203
鳴弦の天使~あの日に出会った旋律
溺愛ドS×天然系ボーカル 古い家柄の養子になった主人公の愛溢れる日常。病弱な主人公を支える俺様副社長。
心臓に疾患を抱えながら、ロックバンドのボーカルとしてステージに立つ夏樹(23)。彼を溺愛するのは、年上で俺様な副社長・黒崎圭一(38)。夏樹は養子として古い家柄の黒崎家に迎えられ、音楽と経営、二つの人生の狭間で揺れていた。それでも黒崎は、束縛と独占欲を隠すことなく、夏樹のすべてを受け止めようとする。ステージを降りる日が近づくかもしれない中、家族の問題、過去の傷、そして未来への不安が静かに忍び寄る。繋いだ手を、決して離さないと誓った二人の、溺愛と再生の物語。※本作からでもお読みいただけます。前作は「青い月の天使~あの日の約束の旋律」です。
何かと物騒な日々の中、黒崎は同じ敷地内に立つ父の家で夏樹と同居しようと考えている。夏樹の健康面で不安があるためだ。黒崎家には兄弟たちが住んでおり、常ににぎわっている。黒崎家と親しくしているバーテルス家から来たドイツ人男性のユリウスの恋愛、兄の一貴の恋愛、弟の朝陽と一貴の秘書である六槍との恋の駆け引きなど、ほろ苦く、ほっこりする日常を送っている。そんな暮らしの中、黒崎に過去の恋人の影が現れる。その時、夏樹は不思議な声を聴く。「もう一度、君の音を聴かせてほしい」
その一言をきっかけに、夏樹の中で眠っていた感情が、張り詰めた弦のように震え始める。
作品時系列:「恋人はメリーゴーランド少年だった。」→「恋人はメリーゴーランド少年だった~永遠の誓い編」→「アイアンエンジェル~あの日の旋律」→「夏椿の天使~あの日に出会った旋律」→「白い雫の天使~親愛なる人への旋律」→「上弦の月の天使~結ばれた約束の夜」→「青い月の天使~あの日の約束の旋律」→本作「鳴弦の天使~あの日に出会った旋律」
文字数 905,429
最終更新日 2026.09.10
登録日 2026.03.28
204
兄妹狂愛奇譚 お還りなさい。お兄ちゃん
私は校内で"ある噂"を聞いた。
それは…《観魚ン様》
『校舎裏の池に"大事な物"を投げ込み
"お願い事"をして、大事な物が対価として
吊り合えば願いを叶えてくれる』そうだ。
だから、私は"お願い事"をしてしまった。
「…私の双子の兄を…御堂 翔を
生き返らせて。」
そして、兄さんは帰ってきた。帰ってきた兄は前よりずっと過保護になり、異常な程
私に執着し束縛する。
不信感と恐怖を覚える
私をよそに帰ってきた兄は笑う。
「俺たち双子は二人で一人なんだよ?
生まれて死ぬまで…ずっと一緒にいよう。
二人で依存し合って生きていこう。
二度と離れたりしないよ。」
あんなに愛おしかった兄が怖くて仕方ない…
狂愛怪異奇譚。八咫神学園七不思議 その2。
"観魚ン様"にまつわる話。
性的描写有りには*
双子の兄✖️妹
怪談✖️狂愛サイコホラー
性的な表現アリ、近親相姦アリ
感想数 1
文字数 18,856
最終更新日 2026.09.10
登録日 2026.08.26
205
忠誠の鎖と血の輪廻
貴族家嫡男のヴィンセントに婚約者が決まった夜、幼少期から付き人をしていたメイドのエリアナがヴィンセントに夜伽指南をする旨を告げる。
ヴィンセントにとってエリアナは初恋の相手であるが、エリアナはあくまで自分は道具であるとヴィンセントの気持ちに応じない。エリアナはヴィンセントと婚約者との間に生まれた子の乳母となるべく、夜伽の指南としてヴィンセントの子種を授かる。これは叶わぬ恋と忠義に身を捧げる悲しき女の物語。
感想数 0
文字数 25,877
最終更新日 2026.09.11
登録日 2026.02.11
206
来年も、このままなら――そして消えた彼女
1992年冬。
パチンコ店のグランドオープン研修で、私は二歳年上の女性と出会った。
毎朝、駅で待っていてくれたこと。
仕事帰りに他愛もない話をしたこと。
何気ない笑顔や、交わした約束。
あの頃の私は、その一つひとつが、かけがえのない思い出になるとは思っていなかった。
これは、私が18歳の冬に経験した実話です。
本作は、私自身の実体験と記憶をもとに綴った回想録です。プライバシー保護のため、人物名や一部の地名・施設名は変更しています。数十年前の出来事のため、記憶違いが判明した箇所については、その都度、可能な限り事実に沿って訂正していきます。なお、物語として面白くするために、実際にはなかった出来事を創作して加えることはしていません。
文字数 68,415
最終更新日 2026.09.10
登録日 2026.08.23
207
愛してた人、これから愛する人〜最後のデートで知った年下夫の不器用な愛の形〜
高校教師の洵(オメガ)と、10歳年下の元教え子・旺志郎(アルファ)。「先生を守る」という真っ直ぐな愛にほだされ夫婦となったが、「妊娠しにくい身体」と判明して以来、洵は若く優秀な夫に重い罪悪感を抱き続けていた。
彼を縛り付けないよう、わざと突き放す洵。そんなある日、雨の交差点で慎が見知らぬ若い妊婦に優しく寄り添う姿を目撃してしまう。
すべてを悟った洵は離婚届を鞄に忍ばせ、かつて教え子の彼と初デートをした思い出のレストランへ向かう。「愛してた人」を、これからは別の誰かを「愛する人」として未来へ見送るために――。
互いを愛しすぎるあまりすれ違う、元教師と教え子の切ないオメガバース。
感想数 11
文字数 67,721
最終更新日 2026.08.25
登録日 2026.08.23
208
ずっと好きだった獣人のあなたに別れを告げて
女性騎士イヴリンは、騎士団団長で黒豹の獣人アーサーに密かに想いを寄せてきた。しかし獣人には番という運命の相手がいることを知る彼女は想いを伝えることなく、自身の除隊と実家から届いた縁談の話をきっかけに、アーサーとの別れを決意する。
前半は回想多めです。恋愛っぽい話が出てくるのは後半の方です。よくある話&書きたいことだけ詰まっているので設定も話もゆるゆるです(-人-)
感想数 1
文字数 32,370
最終更新日 2020.12.27
登録日 2020.12.08
209
【完結】幼馴染から離れたい。
隣に立つのは運命の番なんだ。
βの谷口優希にはαである幼馴染の伊賀崎朔がいる。だが、ある日の出来事をきっかけに、幼馴染以上に大切な存在だったのだと気づいてしまう。
番外編 伊賀崎朔視点もあります。
(12月:改正版)
8/16番外編出しました!!!!!
読んでくださった読者の皆様、たくさんの❤️ありがとうございます😭
1/27 1000❤️ありがとうございます😭
3/6 2000❤️ありがとうございます😭
4/29 3000❤️ありがとうございます😭
8/13 4000❤️ありがとうございます😭
12/10 5000❤️ありがとうございます😭
5/27 6000❤️ありがとうございます😭
8/6 7000❤️ありがとうございます😭
感想数 2
文字数 7,903
最終更新日 2025.08.16
登録日 2024.03.26
210
《完結》私が知らないと思ったの?
夫婦で小さな宝石店を持ったクラリスは最近の夫ルークが朝帰りに仕事先での宿泊で帰った日には甘い香水の香りをして帰るのが多くなった。
クラリスは、夫に聞きたいが仕事で会うのが女性かもしれないと仕事だからと自分に言って夫を信じていた。
誤字脱字があります。更新が不定期ですがよろしくお願いします。
文字数 104,506
最終更新日 2026.02.28
登録日 2026.01.18
211
孕めないオメガでもいいですか?
病院で子供を孕めない体といきなり診断された俺は、どうして良いのか判らず大好きな幼馴染の前から消える選択をした。不完全なオメガはお前に相応しくないから……
オメガバース作品です。
感想数 3
文字数 4,096
最終更新日 2020.07.06
登録日 2020.07.06
212
転生したら、主人公の宿敵(でも俺の推し)の側近でした
「しごとより、いのち」厚労省の過労死等防止対策のスローガンです。過労死をゼロにし、健康で充実して働き続けることのできる社会へ。この小説の主人公は、仕事依存で過労死し異世界転生します。
仕事依存だった主人公(20代社畜)は、過労で倒れた拍子に異世界へ転生。目を覚ますと、そこは剣と魔法の世界——。愛読していた小説のラスボス貴族、すなわち原作主人公の宿敵(ライバル)レオナルト公爵に仕える側近の美青年貴族・シリル(20代)になっていた!
原作小説では悪役のレオナルト公爵。でも主人公はレオナルトに感情移入して読んでおり彼が推しだった! なので嬉しい!
だが問題は、そのラスボス貴族・レオナルト公爵(30代)が、物語の中では原作主人公にとっての宿敵ゆえに、原作小説では彼の冷酷な策略によって国家間の戦争へと突き進み、最終的にレオナルトと側近のシリルは処刑される運命だったことだ。
「俺、このままだと死ぬやつじゃん……」
死を回避するために、主人公、すなわち転生先の新しいシリルは、レオナルト公爵の信頼を得て歴史を変えようと決意。しかし、レオナルトは原作とは違い、どこか寂しげで孤独を抱えている様子。さらに、主人公が意外な才覚を発揮するたびに、公爵の態度が甘くなり、なぜか距離が近くなっていく。主人公は気づく。レオナルト公爵が悪に染まる原因は、彼の孤独と裏切られ続けた過去にあるのではないかと。そして彼を救おうと奔走するが、それは同時に、公爵からの執着を招くことになり——!?
原作主人公ラセル王太子も出てきて話は複雑に!
見どころ
・転生
・主従
・推しである原作悪役に溺愛される
・前世の経験と知識を活かす
・政治的な駆け引きとバトル要素(少し)
・ダークヒーロー(攻め)の変化(冷酷な公爵が愛を知り、主人公に執着・溺愛する過程)
・黒猫もふもふ
番外編では。
・もふもふ獣人化
・切ない裏側
・少年時代
などなど
最初は、推しの信頼を得るために、ほのぼの日常スローライフ、かわいい黒猫が出てきます。中盤にバトルがあって、解決、という流れ。後日譚は、ほのぼのに戻るかも。本編は完結しましたが、後日譚や番外編、ifルートなど、続々更新中。
感想数 0
文字数 140,534
最終更新日 2025.11.30
登録日 2025.09.20
213
コートニーの箱庭
コートニーの世界は黄色で溢れている。
家族は皆、美しい金色の髪をしており、婚約者も王族ゆかりの金髪である。晩秋の今は、鮮やかな銀杏の葉で足下まで黄色一色になっている。
コートニーただ一人が焦げ茶の髪で、黄色の世界にぽつんと身を置いていた。
コートニーには、公爵令息である婚約者ベネディクトがいる。
見目よく知的で社交的でもある彼は友人も多く、カリスマ的な魅力がある。
彼の周りは直ぐに人が集まり、華やかな集団となる。
コートニーはそんなベネディクトの婚約者として隣に並び立ち、彼らの会話に耳を傾けるのだった。
❇こちらの作品は、他サイトへも別名義にて公開致しております。
❇鬼の誤字脱字を修復すべく公開後に激しい修正が入ります。
「間を置いて二度美味しい」とご笑覧下さいませ。
❇登場人物のお名前が他作品とダダ被りする場合がございます。皆様別人でございます。
❇100%妄想の産物です。妄想なので史実とは異なっております。
❇妄想遠泳の果てに波打ち際に打ち上げられた妄想スイマーによる寝物語です。
疲れたお心とお身体を妄想で癒やして頂けますと泳ぎ甲斐があります。
文字数 76,224
最終更新日 2025.11.17
登録日 2025.11.01
214
潮待ち
六十年間、帰らぬ夫を海で待ち続けた女性・志乃の純粋で幸福な一生。
感想数 3
文字数 9,021
最終更新日 2026.04.18
登録日 2026.04.18
215
【BL】声にできない恋
<年上アルファ×オメガ>
オメガの浅葱(あさぎ)は、アルファである樋沼(ひぬま)の番で共に暮らしている。だけどそれは決して彼に愛されているからではなくて、彼の前の恋人を忘れるために番ったのだ。だけど浅葱は樋沼を好きになってしまっていて……。不器用な両片想いのお話。
文字数 6,590
最終更新日 2022.03.31
登録日 2022.03.31
216
木漏れ日の唄
遥か遠い昔、神々が創った国フィルメーシュに大厄災が訪れた。
空一面に降り注ぐ赤黒い星々、太古の人々はそれを『綺羅星の涙』と名付けた。それはかつて、この地に生き、無残にも殺された古代竜が流した多くの血の様に大地に降り注いだ。草花は生き絶え、人々もまた多くの命を失った。人は天を見上げ、神々と多くの光に願った。
「どうか、私たちの祖が犯した罪をお許しください」と
しかし、人の願いは届くことなく厄災はこの国に降り注いだ
その時、誰もが諦めていた空から、ふわりと小さな女神が一本の苗木を抱えて舞い降りた。女神は苗木を天に翳すと優しい光が国全体を包み込み、降り注ぐ厄災はやがて霧のように消えた。
女神は人に苗木を渡し、それを誰にも知られない深い森に植えるよう言い渡すと天へと姿を消した。人は、荒れ果てた大地を歩き続け、そして厄災を逃れた不思議な森を見つけた。人は苗木を森の奥に植え、静かに祈った。すると、苗木は瞬く間に大樹へと育ち、木漏れ日が差し込む。人は大樹に『月慈ノ母樹』と名付けこの萌黄に囲まれた場所をフルアの森と呼んだ。
人は女神との約束を果たし、そして数千年経った。
大地には、様々な種族が暮らしていた。古い約束が眠っているフルアの森にも木霊の子供達が森を守りながら暮らしていた。これは、木霊の男の子ルノと行方不明の妹を探す竜人族の王子グレンが出会い、そして再び訪れる厄災に立ち向かう為の旅へと向かう。これは、優しくて切ない、さよならの御伽話。
感想数 0
文字数 18,392
最終更新日 2026.09.10
登録日 2026.09.06
217
劇作家の助手は、また誰かのために脚本を書く
劇作家ジョバンニ・ラットの助手マリア・グランデ。マリアはジョバンニのために、彼の名前で脚本を書いた。
世間はジョバンニの才能を讃えたが、その脚本は全てマリアの書いたものだった。マリアの名が世に出ることはなかった。それでも構わない、とマリアは思っていた。愛する人を助けられる。ジョバンニの栄光を、陰から支えられる。それだけで、十分な意味があるのだと。
ジョバンニはマリアの髪に触れ、「君を愛している」と囁いた。その言葉を聞くたびに、マリアの心は満たされた。
ある日、ジョバンニはイザベラ・レオナルディを助手として雇い入れた。才能に溢れたイザベラは、マリアが三年かけて身につけた技術を、たった一年で吸収した。
「あの娘、ジョバンニ先生と寝たらしいわよ」
古参の助手がマリアの耳元で囁いた。マリアは苦笑いして取り合わなかった。しかし、不安になったマリアの足はイザベラの借家へと向かった。
カーテンの隙間から、部屋の中が見えた。そこには、イザベラの肩を抱き、その耳元に顔を寄せて「君を愛している」と囁くジョバンニがいた。
(全9話で完結予定です。他サイトにも掲載しています)
文字数 15,431
最終更新日 2026.09.10
登録日 2026.09.03
218
離婚前提の仮面結婚のはずが、妊娠してしまったのですが…?〜夫は最初から私じゃない誰かを愛していました。〜
「ねえ、ブレイブ。自分でも分かっているんでしょう?あなたは妻《ティーナ》を愛していないの。あなたが愛しているのは、最初からあたしだけ。」
思いがけず聞こえたその声に私はその場に立ち止まる。海岸にある大きな岩の影から、二人の男女が見つめ合っているのがはっきりと見えた。
「リリー……僕は……。」
「ずっと昔に約束したでしょう?二人で幸せになろうって。ねえ、ブレイブ思い出して。」
茶髪の女性を見つめる男はブレイブ・ヴィギルト。ブレイブは一ヶ月前に結婚したばかりの私の夫だ。
その夫を目に涙を浮かべて見つめる女の名はリリー。リリーはブレイブの幼馴染みで、元婚約者らしい。2人は親によって無理矢理、婚約破棄させられた過去がある。
二人は私の姿に気がついていないようだ。私は、岩の影に隠れてブレイブとリリーの姿を食い入るように見つめた。
「僕には妻がいるんだよ……リリー……。」
「だからなに?」
「それは……守られなくちゃいけない契約だ……君だってわかるだろ?」
ブレイブの言葉を聞いて、私は心臓のあたりを押さえた。
「あたしとの約束はそれよりずっと前に結んだでしょう。ティーナとの結婚の様に嘘にまみれた汚らわしいものじゃなくて、もっと美しくて純粋なものよ。」
リリーが一歩ブレイブに近づく。ブレイブはこちらに背を向けていて、彼がどんな表情を浮かべているのか分からない。
「リリー……、分かってくれ。僕らはもう、あの時の二人じゃないんだ……。」
「あたしはなにも変わらないわ。ブレイブの事を愛している、リリーのまま、ずっとあなたを待っていた。」
「リリー……。」
苦しげな声で、ブレイブは幼馴染の名前を呼ぶ。
私がブレイブと結婚してから、ずっと抱いていた違和感。彼はとても優しかったけれど、いつもどこか遠くを見つめていた。
「わかってよ、ブレイブ。あなたがあたし以外のものになるなんて許せないの。」
リリーがゆっくりとブレイブの頬に手を伸ばした。ブレイブはその手を振り払わない。彼は微動だにせずその場に立っている。二人の影が、長く砂浜に伸びていた。
「愛しているわ、ブレイブ。嘘の結婚なんて終えて、あたしを愛してよ。」
リリーはブレイブの顔を両手で挟んで言った。
逆光がまぶしくて、私は目を閉じる。もしくは二人の姿を見ていたくなかったからかもしれない。
再び目を開けたとき、ブレイブとリリーは口づけをしていた。
***
最初からわかっていた、私たちの結婚が嘘だって。それでも、信じたかったの。
文字数 108,132
最終更新日 2026.07.03
登録日 2025.03.01
219
死に戻ってはみたけれど
ヒルデガルドは思った。
今の自分は、ヒルデガルド・へスティング・ラドモンド。多分。
多分というのは、つい数刻前、夜が明ける前までは、別の名であったから。
一番新しい記憶では、ヒルデガルド・ウォール・ロングフォール。ロングフォール侯爵夫人と呼ばれていた。
ヒルデガルドは夕べまで、正確には三日前まで夫だった男性を思い浮かべた。
クリスフォード・ウォール・ロングフォール。三日前まで、ロングフォール侯爵家当主だった。
享年四十一歳。
昨日は、夫の弔いの日だった。
ヒルデガルドはどうやら、夫の葬儀を終えたその夜に、自分もまた命を終えたらしい。
命の幕を閉じる直前に、ヒルデガルドは神に祈った。
ヒルデガルドには後悔があった。
「後悔することが二つございますの。まず一つは、夫の妻になったことです。あの方それで、愛する女性を長いこと妾にするしかなかったのです。ですから、ダメ元でお願いしてみたいのですけど、」
「死に戻っても良いかしら」
果たして神は、ヒルデガルドの願いを叶えた。
❇こちらの作品は、他サイトへ別名義にて公開しております。
❇鬼の誤字脱字を修復すべく公開後に激しい修正が入ります。
「間を置いて二度美味しい」とご笑覧下さいませ。
❇登場人物のお名前が他作品とダダ被りする場合がございます。皆様別人でございます。
❇100%妄想の産物です。妄想なので史実とは異なっております。
❇妄想遠泳の果てに波打ち際に打ち上げられた妄想スイマーによる寝物語です。
疲れたお心とお身体を妄想で癒やして頂けますと泳ぎ甲斐があります。
❇座右の銘は「知らないことは書けない」「嘘をつくなら最後まで」
文字数 100,419
最終更新日 2025.08.31
登録日 2025.08.11
220
アラタ
現代日本の死刑執行人であるアラタはあるとき、恋人であるハルの死刑執行を命じられる。
感想数 0
文字数 105,415
最終更新日 2026.09.09
登録日 2026.09.09
221
【改稿・完結】祈りの果て、君を想う
【全編改稿しました】
初投稿作品を、物語の構成や人物の心情から見直し、全編にわたって改稿しました。
以前お読みくださった方にも、新たな物語として楽しんでいただけましたら幸いです。
華やかな美貌を持つ妹・ミレイア。
静かに咲く野花のような、穏やかな優しさを持つ姉・リリエル。
騎士の青年ラズは、いつも傍にいたリリエルの存在を当然のものと思いながら、ミレイアへ心を寄せていた。
けれど、彼が下した一つの選択によって、三人の運命は大きく変わっていく。
傷ついたリリエルは、すべてを手放すように修道院へ身を寄せる。
そこで出会ったのは、ひょうひょうとした元軍人の旅人――その正体は、王族の血を引く男・ユリアンだった。
愛するとは、選ばれることなのか。
それとも、自ら誰かを選ぶことなのか。
沈黙と祈りの中で、それぞれが胸に秘めた想いと向き合っていく。
運命ではなく、自らの意志で人を愛するとき。
その想いは、誰のもとへ届くのか――。
文字数 116,044
最終更新日 2026.08.22
登録日 2026.07.31
222
婚約破棄はまだですか?─豊穣をもたらす伝説の公爵令嬢に転生したけど、王太子がなかなか婚約破棄してこない
火事のあと、私は王太子の婚約者:シンシア・ウォーレンに転生した。王国に豊穣をもたらすという伝説の黒髪黒眼の公爵令嬢だ。王太子は婚約者の私がいながら、男爵令嬢ケリーを愛していた。「王太子から婚約破棄されるパターンね」…私はつらい前世から解放された喜びから、破棄を進んで受け入れようと自由に振る舞っていた。ところが王太子はなかなか破棄を告げてこなくて…?
文字数 17,960
最終更新日 2024.08.14
登録日 2024.08.12
223
俺でいいだろ
俺、大空海斗にはずっと片思いしている幼馴染のαがいる。
俺はそいつのそばにいるために、自分がΩだってこと、絶対に言わないと決めた。
でも、いつかは打ち明けて、そいつと幸せな家庭を築きたい。
そんなこと思ってた。
でも、そいつは俺じゃなくて、違うやつを好きになったらしい。
何で俺じゃダメなんだ?
あんなぽっと出のΩ野郎なんかより、俺の方がずっとずっと好きだったのに。
だから、やってはいけないことをした。
それ以降、幼馴染とは連絡を絶った。
そして俺は、思惑通り、俺よりも大事な、あいつとの宝物を手に入れた。
それから至って普通の大学生として生活していた。
けれども、突如、件の幼馴染が現れて…
0話〜10話+1話
文字数 44,575
最終更新日 2026.07.25
登録日 2026.07.16
224
乙女ゲームの前日譚で、捨てられた第一王女は聖剣を手に生き抜く【ゲーム本編で再会したかつての初恋のひとは、私の記憶を失っていた】
転生先は乙女ゲームの前日譚。
国ごと滅ぶ「存在しないはずの第一王女」だった。
過酷な運命を生き抜くため、身分を捨てて戦士となった私。
そこで命を懸けて互いを支え合った、大切な幼なじみ。
この感情は、恋なのか、まだ分からなかった。
自分の思いを自覚する前に、過酷な世界の終わりとともに、残酷な運命が待ち受けていた。
長い時を経て、ようやく迎えた乙女ゲームの本編。
伝説の騎士として陰から世界を見守る私の前に、かつての初恋の人が現れる。
けれど、彼の瞳に私を映す記憶は、もう残っていなかった。
「……君は、誰だ?」
本来の物語では、主人公が愛され苦悩しながら国の滅びを見届け、転生するはず。
だけど私は主人公じゃない。
すべてを知る『仮面の騎士』として、愛した人の記憶から消えたまま、私は再び運命に立ち向かう。
王国を揺るがす陰謀。交錯する思惑。失われた真実。
これは、役割を捨てた元王女が、切ない忘却の果てに自らの未来を切り開く、愛と戦いの物語。
感想数 0
文字数 245,443
最終更新日 2026.09.11
登録日 2026.07.26
225
皆様、お待ちかねの断罪の時間です!!~不遇の悪役顔令嬢の思うがままに~
毒親に取り上げられたゲーム――華やかなヒロインが『誰か』を救済していく物語。その世界に転生したのが、没落令嬢のアマリア・グラナト・ペタイゴイツァ。悪役顔の彼女には婚約者がいた。学園に通う彼の卒業をもって、婚姻となっていた――が。
婚約者の行方が知れない……どころではなかった。彼の『存在自体』が消えつつあった。
婚約者の安否を求めて、アマリアは学園に編入することになった。
ここは名門プレヤーデン学園。雁字搦めの牢獄のような学園、楽しみも何もないところと……ただ。
生徒の夢の中に現れるのが――『劇場街』。醜聞にまみれた生徒を観劇する、数少ない娯楽に溢れた場所。
奇しくもゲームの舞台となった学園、ゲームのヒロイン同様、消えつつある『誰か』の存在を救う為に奮闘していくことになる――。
「―そちらのご令嬢を罰するのは、この私よ」
――これは敗北から始まる物語。折れなかった『悪役』が舞台に返り咲いていく。
恋焦がれた『誰か』を取り戻す為に。
感想数 0
文字数 492,114
最終更新日 2026.09.11
登録日 2026.02.13
226
寡黙な貴方は今も彼女を想う
婚約者以外の女性に夢中になり、婚約者を蔑ろにしたうえ婚約破棄した。
ーーそんな過去を持つ私の旦那様は、今もなお後悔し続け、元婚約者を想っている。
シドニーは王宮で側妃付きの侍女として働く18歳の子爵令嬢。見た目が色っぽいシドニーは文官にしつこくされているところを眼光鋭い年上の騎士に助けられる。その男性とは辺境で騎士として12年、数々の武勲をあげ一代限りの男爵位を授かったクライブ・ノックスだった。二人はこの時を境に会えば挨拶を交わすようになり、いつしか婚約話が持ち上がり結婚する。
言葉少ないながらも彼の優しさに幸せを感じていたある日、クライブの元婚約者で現在は未亡人となった美しく儚げなステラ・コンウォール前伯爵夫人と夜会で再会する。
※設定はゆるいです。
※溺愛タグ追加しました。
文字数 37,192
最終更新日 2023.08.01
登録日 2023.07.09
227
【完結】戦死認定された薬師は辺境で幸せを勝ち取る
薬師一族の長女として生まれた主人公は、薬師になった直後に始まった戦争に従軍させられる。
三年後、自国の敗戦により帰還した主人公を待っていたのは、困惑する家族と国から出された自身の戦死認定書だった。
次期後継の座も婚約者も妹に奪われ、労りの言葉一つもなく、心配するのは下賜された慶弔金の返還のこと。家族を見限った主人公は、戦死したままでいい、二度と戻らないと宣言して家を出る。
向かう先は苦渋の三年を過ごした辺境伯領で、そこで薬師として身を立てることを決意。
新しい目標を胸に、主人公は単身辺境領を目指す。
R15は保険です。
魔法は出てきませんが恋愛要素が薄いのでファンタジーにしました。
ご都合主義の話なので、広いお心でお読みください。
2025.11.06完結しました。
感想数 97
文字数 398,944
最終更新日 2026.03.09
登録日 2025.04.29
228
ひと筆
書道家の青年と、その生徒であるシニア男性との、つかの間のやり取りを書いた短編です。BLしか扱っていないのでBLカテゴリーではりますが、本人同士のそういったシーンは一切ございません。同性に恋をする切なさを、ただ真面目に書きました。
感想数 0
文字数 10,766
最終更新日 2026.09.11
登録日 2026.09.11
229
皇帝の命令で、側室となった私の運命
フリード皇太子との密会の後、去り行くアイラ令嬢をアーノルド皇帝陛下が一目見て見初められた。そして、その日のうちに側室として召し上げられた。フリード皇太子とアイラ公爵令嬢は幼馴染で婚約をしている。
自分の婚約者を取られたフリードは、アーノルドに抗議をした。
「父上には数多くの側室がいるのに、息子の婚約者にまで手を出すつもりですか!」
「美しいアイラが気に入った。息子でも渡したくない。我が皇帝である限り、何もかもは我のものだ!」
その言葉に、フリードは言葉を失った。立ち尽くし、その無慈悲さに心を打ちひしがれた。
魔法、ファンタジー、異世界要素もあるかもしれません。
文字数 44,460
最終更新日 2025.11.19
登録日 2025.11.15
230
クローディアの物語
後妻というものがどんな存在なのかをクローディアは知っているつもりだった。
八歳の年に母を亡くして、喪が明けきらぬうちに迎えられた父の妻は、後妻という立場であった。
父が後妻の義母を得た十年後に、真逆、自分が後妻となって義母という立場になるのだとは思いもしなかった。
クローディアがローレンスに嫁いだのは、彼女が学園を卒業して直ぐのことだった。ローレンスにとっては二度目の妻で、彼には既に前妻との間に十歳の娘がいた。
夫のローレンスと出会う前、クローディアには婚約者がいた。それが同い年のクラウスだった。
❇こちらの作品は、他サイトへも別名義にて掲載しております。
❇鬼の誤字脱字を修復すべく公開後に激しい修正が入ります。
「間を置いて二度美味しい」とご笑覧下さいませ。
❇登場人物のお名前が他作品とダダ被りする場合がございます。皆様別人でございます。
❇100%妄想の産物です。妄想なので史実とは異なっております。
❇妄想遠泳の果てに波打ち際に打ち上げられた妄想スイマーによる寝物語です。
疲れたお心とお身体を妄想で癒やして頂けますと泳ぎ甲斐があります。
❇座右の銘は「知らないことは書けない」「嘘をつくなら最後まで」
文字数 111,473
最終更新日 2025.07.19
登録日 2025.06.27
231
事故つがいの夫は僕を愛さない ~15歳で番になった、オメガとアルファのすれちがい婚~【本編完結】
2023.9.19~完結一日目までBL1位、全ジャンル内でも20位以内継続。
2025.4.28にも1位に返り咲きました。
ありがとうございます!
美形アルファと平凡オメガのすれ違い結婚生活
(登場人物)
高梨天音:オメガ性の20歳。15歳の時、電車内で初めてのヒートを起こした。
高梨理人:アルファ性の20歳。天音の憧れの同級生だったが、天音のヒートに抗えずに番となってしまい、罪悪感と責任感から結婚を申し出た。
(あらすじ)*自己設定ありオメガバース
「事故番を対象とした番解消の投与薬がいよいよ完成しました」
ある朝流れたニュースに、オメガの天音の番で、夫でもあるアルファの理人は釘付けになった。
天音は理人が薬を欲しいのではと不安になる。二人は五年前、天音の突発的なヒートにより番となった事故番だからだ。
理人は夫として誠実で優しいが、番になってからの五年間、一度も愛を囁いてくれたこともなければ、発情期以外の性交は無く寝室も別。さらにはキスも、顔を見ながらの性交もしてくれたことがない。
天音は理人が罪悪感だけで結婚してくれたと思っており、嫌われたくないと苦手な家事も頑張ってきた。どうか理人が薬のことを考えないでいてくれるようにと願う。最近は理人の帰りが遅く、ますます距離ができているからなおさらだった。
しかしその夜、別のオメガの匂いを纏わりつけて帰宅した理人に乱暴に抱かれ、翌日には理人が他のオメガと抱き合ってキスする場面を見てしまう。天音ははっきりと感じた、彼は理人の「運命の番」だと。
ショックを受けた天音だが、理人の為には別れるしかないと考え、番解消薬について調べることにするが……。
表紙は天宮叶さん@amamiyakyo0217
感想数 309
文字数 157,854
最終更新日 2025.01.05
登録日 2023.09.18
232
幼なじみの王子には、既に婚約者がいまして
幼なじみの王子の婚約者の女性は美しく、私はーー。
文字数 1,732
最終更新日 2024.01.06
登録日 2024.01.06
233
「今日でやめます」
ウエブデザイン会社勤務。二十七才。
ある日突然届いた、祖母からのメッセージは。
「もうすぐ死ぬみたい」
――幼い頃に過ごした田舎に、戻ることを決めた。
🌟2026年のライト文芸に参加しています。
投票や閲覧など、応援して頂けると嬉しいです(^^)
楽しんで頂けるように、頑張ります✨
感想数 26
文字数 99,416
最終更新日 2026.07.01
登録日 2024.04.30
234
(完結)元お義姉様に麗しの王太子殿下を取られたけれど・・・・・・(5話完結)
私(エメリーン・リトラー侯爵令嬢)は義理のお姉様、マルガレータ様が大好きだった。彼女は4歳年上でお兄様とは同じ歳。二人はとても仲のいい夫婦だった。
けれどお兄様が病気であっけなく他界し、結婚期間わずか半年で子供もいなかったマルガレータ様は、実家ノット公爵家に戻られる。
マルガレータ様は実家に帰られる際、
「エメリーン、あなたを本当の妹のように思っているわ。この思いはずっと変わらない。あなたの幸せをずっと願っていましょう」と、おっしゃった。
信頼していたし、とても可愛がってくれた。私はマルガレータが本当に大好きだったの!!
でも、それは見事に裏切られて・・・・・・
ヒロインは、マルガレータ。シリアス。ざまぁはないかも。バッドエンド。バッドエンドはもやっとくる結末です。異世界ヨーロッパ風。現代的表現。ゆるふわ設定ご都合主義。時代考証ほとんどありません。
エメリーンの回も書いてダブルヒロインのはずでしたが、別作品として書いていきます。申し訳ありません。
元お姉様に麗しの王太子殿下を取られたけれどーエメリーン編に続きます。
感想数 31
文字数 6,701
最終更新日 2022.06.08
登録日 2022.06.05
235
婚約者の姉に薬品をかけられた聖女は婚約破棄されました。戻る訳ないでしょー。
いくら謝っても無理です。
感想数 1
文字数 1,169
最終更新日 2022.05.20
登録日 2022.05.20
236
バースデイ
花邑歩十九歳。
もうすぐ二十歳の誕生日がやって来る。彼には二十歳で亡くなった兄がいた。その兄の恋人であった月城蒼矢とは今でも関わりがあり、ほのかに恋心を抱いている。
事故死とされていた兄の死の真相が十年経って暴かれる――。
ホラーミステリー要素のある切ないラブストーリー。
他サイトでは完結済み。
100話完結です。
感想数 0
文字数 24,195
最終更新日 2026.09.11
登録日 2026.08.22
237
空海の青春 ― 消えた七年
千二百年前、出世を約束された一人の男が、全部捨てて、山に消えた。
身分も、未来も、恋も。何もかもを捨てて、誰にも行き先を告げずに。なぜ。
その男の名は、佐伯真魚《さえきのまお》。のちの空海。日本仏教の巨人になる男だ。
不思議なのは、ここから。二十四歳から三十一歳まで、その七年間だけ、どの史書にも彼の記録が一行も残っていない。何をしていたのか。どこにいたのか。誰も知らない。人はその空白を「神秘」と呼ぶ。
でも、人が何かを消すとき、それは自慢したいものじゃない。隠したいものだ。聖人が、自分の手で歴史から消した七年。そこに、何があったのか。
真魚は、讃岐で神童と呼ばれた男だった。一度聞いたことは、忘れない。お経も漢文も、耳に入れればそのまま覚えられた。だが、覚えたものは、覚えた瞬間に手からこぼれていく。何を覚えても、埋まらない。腹の底に、穴が空いていた。ずっと渇いていた。
一族の期待を背負って、都の大学に入った。役人としての出世は、もう約束されていた。それでも、渇きは消えなかった。
ある寺の前で、一人の女とすれ違う。何も期待していない目をした女だった。女は、すれ違いざま、ひとことだけ言った。真魚は、その言葉を、死ぬまで誰にも明かさなかった。
覚えたのに、掴めない。それでいて、消えもしない。暗記すれば、何だって手に入るはずだった。この女だけは、違った。生まれて初めて、覚えるだけでは手に入らないものに出会った。それは、真理じゃなかった。人間だった。
そして、ある日、彼は全部捨てた。身分を捨てた。約束された未来を捨てた。恋を捨てた。名前さえ捨てて、山に消えた。
なぜ、そこまでしたのか。
わかっているのは、山に入った真魚が、壮絶なまでに自分を追い込んだ、ということだけだ。真言を百万回唱えた。米を断った。滝に打たれた。眠らなかった。
苛烈な行の果て、室戸の洞窟で、明けの明星が口の中に飛び込んでくる。真魚は、空海になった。
海を渡り、長安まで行った。そこで、ありえないことが起きる。密教の正統を継ぐ高僧が、会ったばかりの、異国から来た若造に、教えのすべてを丸ごと授けた。まるで、この男が来るのを、ずっと待っていたかのように。
なぜ、日本から来た空海が、密教のすべてを受け継げたのか。
答えは、誰も知らない、あの七年の中にある。空海が、空海になった七年の中に。
「あの七年に、何があったのか。私はまだ、本当のことを一度も書いていない」
感想数 0
文字数 290,028
最終更新日 2026.09.10
登録日 2026.06.29
238
いつか笑って、ライムライト
最近、隣人の姿を見ない。
タワーマンションの隣室に住む蓮水夫妻は、いつも仲睦まじい二人だった。
爽やかな夫と、春の陽だまりのように可愛らしい「妻」。
けれど、いつからか二人の姿はぷつりと消え、バルコニーに置かれたライムの木だけが、誰にも水を与えられぬまま枯れかけていた。
そんなある夜、隣室から何かが砕ける激しい音が響く。
気になって訪ねた先で主人公が目にしたのは、血まみれになった蓮水だった。
そして部屋の奥には、夫の遺影と、白い骨箱。
死者を愛し続ける男と、そんな男を愛してしまった男。
これは、ひとりの死をきっかけに始まる、残された者たちの、少し不器用で、とても優しい恋の話。
残された者たちの、少し不器用で、とても優しい恋の話。
感想数 0
文字数 6,526
最終更新日 2026.09.10
登録日 2026.09.08
239
初恋失恋
※公開中のあの短編たちを元にした長編です。不定期更新ですがよろしくお願いします※
大学生の詩乃はある日、双子の姉と買い物に行っての帰り路で、戸崎恭一とぶつかってしまう。
姉の柚乃は、詩乃が怪我をしたのは戸崎がぶつかったせいだとして、彼に対して悪印象を持つ。
実はこの時、詩乃は戸崎に恋をしたが、彼を良く思っていない姉には秘密にしておこうと考える。
その日以降、詩乃は戸崎との偶然の再会を望んでいたが、ある日その偶然が訪れて――。
【登場人物】
藤川詩乃:双子の妹
藤川柚乃:双子の姉
杉本碧斗:藤川姉妹の幼馴染
戸崎恭一:柚乃と碧斗と同じ大学に通う学生
◇表紙はガーリードロップ様からお借りしています
文字数 19,676
最終更新日 2026.09.11
登録日 2026.09.03
240
去りゆく今日にさようならの一文を
二度と帰ってこない、今日という一日。
去りゆく今日に哀悼を。
そんな気持ちで、一日一文、悪魔ノ海賊放送が書いていきます。
今日を弔う一文で、二度とは帰らぬ今日を、君と分かち合えたなら。
そんな気持ちで書いていきます。
感想数 0
文字数 57,718
最終更新日 2026.09.11
登録日 2025.12.19