夜 小説一覧

109
1

欠けた月

欠けた月
夜になると 人は少しだけ本音に近くなる 欠けたものを抱えたまま 何もないふりをして生きていた啓介 そこへ美鳥が来る 勝手に部屋に馴染み 猫と遊び 静かな暮らしを少しずつ塗り替えていく けれど啓介の中には 拭えない影が残っていた 冷めたコーヒー 消えかけの煙草 猫の鳴き声 隣にいたはずの誰か 欠けてしまったまま それでも続いていく ばらばらに見える日々が あとから少しずつ繋がっていく
現代文学 連載中 長編
感想数 0 文字数 8,297 最終更新日 2026.07.18 登録日 2026.04.04
2

『修正中』イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?

『修正中』イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?
ある日、彼氏が勝手に自分の住んでるアパートを引き払い、当然のように『同棲』を迫ってきた。 「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」 家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートの誘いすらない。 そんな生活に限界を感じて、私は叫んだ。 「私は母親じゃない・・・!」 そう言って家を飛び出した私は、夜遅くに何も持たず、靴も履かずに一人で泣きながら歩いていた。 そんな私を保護してくれたのは、仕事場のカフェに通ってくれる常連さんだったのだ。 「何があった?送ってく。」 彼は優しく紳士的だった。 その厚意に甘え、一晩の宿を借りた次の日――― 「俺と・・・結婚してほしい。」 「!?」 突然の結婚の申し込みに戸惑うものの、彼に惹かれていくのは時間の問題だった。 愛してれる人に惹かれない人は……いないだろう。 「俺に・・・すべてを見せて」 苦手意識の強かった『営み』。 私は―――彼の手によって『愛される』という感覚を知っていく。 ※お話はすべて想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。 ※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。 ※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけるとうれしいです。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。 ※2025/09/17修正に入ります。ご迷惑をおかけしますが、完結までお付き合いいただけると嬉しいです。 それではお楽しみください。すずなり。
恋愛 連載中 長編 R15
文字数 194,500 最終更新日 2020.05.30 登録日 2020.05.14
3

Stray tune ー 真夜中サビねこ放送局 ー

Stray tune ー 真夜中サビねこ放送局 ー
・。☆・*ฅ^•ﻌ•^ฅ*・♪。☆ 根岸津奈子 大学3年・ラジオ同好会所属 ☆ ザラメ 『ミッドナイトねこねこレディオ』DJ ザラメ糖みたいな色のサビ猫 ・。☆・*ฅ^•ﻌ•^ฅ*・♪。☆ 根岸津奈子はラジオ好きな大学生。 アルバイト帰りには電車でラジオを聴くのが毎晩のお楽しみ。 今夜もお気に入りの番組を聴いていたのに…… ……ガガッ…… 混信して、別の番組の電波を受信してしまった。 実はここ最近よくあることなのだ。 それもいつも決まって同じ番組。 その番組というのは……
キャラ文芸 完結 短編
感想数 0 文字数 20,730 最終更新日 2026.01.12 登録日 2025.12.31
4

いたずら好きな妖精たちの森

いたずら好きな妖精たちの森
主人公たちの住む街の近くにある森に、夜になると妖精たちが現れ、人々を驚かせていた。
児童書・童話 完結 短編
感想数 0 文字数 8,141 最終更新日 2026.07.17 登録日 2026.07.15
5

ある夜の過ごし方
恋愛 連載中 ショートショート
感想数 1 文字数 139 最終更新日 2019.04.11 登録日 2019.04.11
6

夜行衝動

夜行衝動
さようなら。 彼女のために祈ってください。 ――夢野久作「少女地獄・何でも無い」より抜粋
現代文学 完結 ショートショート
感想数 0 文字数 2,490 最終更新日 2022.01.15 登録日 2022.01.15
7

霞む位なら、いっそ見えなくなればいい。

霞む位なら、いっそ見えなくなればいい。
( *´꒳`* )
ライト文芸 完結 ショートショート
感想数 0 文字数 950 最終更新日 2020.03.30 登録日 2020.03.30
8

7月7日、七夕の夜。~夫婦喧嘩は牛も食わぬし、いつものことよ~

 7月7日、とある年の七夕でのできごと。  天の川を挟んで彦星の住む側の街にある繁華街は、年に一度しか愛しの妻に会えない彦星の寂しさを埋める第二の安らぎの場所。  その中でも常連となっていた一軒の店で今夜も、彦星は大事な大事な七夕を控えている前日だというのにまたホステスである天女に手を出そうとする程に泥酔しちゃっているのです。  毎年のこととはいえ、この日ばかりはと見かねたこの店の経営者であるママは追加注文をストップ!  彦星に「もう帰ったら?」と帰宅を促して送り出すのですが……。    すっかりと中年になったダメダメ彦星とポンコツ織姫の2人の七夕物語。  きっと今年もあの空の上で2人は――。
ライト文芸 完結 短編 R15
感想数 0 文字数 3,422 最終更新日 2022.07.07 登録日 2022.07.07
9

詩「静かな夜」

詩「静かな夜」
・詩人会議2024年2月号に掲載された作品です。 ※2023年9月の作品です。 読んでいただけると幸いです。 いいね、スキ、フォロー、シェア、コメント、サポート、支援などしていただけるととても嬉しいです。 これからも応援よろしくお願いします。
現代文学 完結 ショートショート
感想数 0 文字数 250 最終更新日 2024.04.17 登録日 2024.04.17
10

夜散歩

澄んでいて、何もかもを闇で包み込みそうな夜。そんな夜の中を散歩する一人の少女がいた。今日も色々なことを思いながら、彼女は夜散歩をする。 同作を「小説家になろう」様と「カクヨム」様にも載せています。
青春 完結 短編
感想数 0 文字数 3,687 最終更新日 2019.05.06 登録日 2019.04.27
11

星の御伽噺

 星、切断、空想というテーマからの初ワンライです。  眠る前にちょっとだけ何かを読みたい……。そんなときにも、是非。  どこかの世界のちょっとした御伽噺へ、ようこそ。  そして__おやすみなさい。
児童書・童話 完結 ショートショート
感想数 0 文字数 1,095 最終更新日 2022.09.19 登録日 2022.09.19
12

コーヒーブレイク

コーヒーブレイク
港でコーヒーブレイクする20代男性の脳内。
現代文学 完結 ショートショート
感想数 0 文字数 897 最終更新日 2021.05.31 登録日 2021.05.31
13

星が光る街で

私の彼は天文部に入っている学校でも有名な星座好き。でも私は、星座なんて大嫌いだった──。星が光る夜の、切ないラブストーリー。
恋愛 完結 短編
感想数 0 文字数 1,262 最終更新日 2023.09.14 登録日 2023.09.14
14

眠れない夜の記録

私の人生観
エッセイ・ノンフィクション 連載中 ショートショート
感想数 0 文字数 10,609 最終更新日 2026.06.09 登録日 2026.06.09
15

星空

夏に近づく夜の空は 虫たちの声をバックに 静かにまたたいている
現代文学 完結 ショートショート
感想数 0 文字数 118 最終更新日 2023.05.27 登録日 2023.05.27
16

も〜がやってくる

夜になるとやってくる「も〜」。 ちょっとこわいその正体は…? 子どもの想像とやさしさを描いた、ほっとするお話。
児童書・童話 完結 ショートショート
感想数 0 文字数 175 最終更新日 2026.05.13 登録日 2026.05.13
17

つきあたまさん

つきあたまさん
頭が月のつきあたまさんと、頭が紙袋のふくろあたまさんが出会って、夜空に星が無くなった原因を探しに行きます。そこで見つけたものは・・・。 
児童書・童話 完結 短編
感想数 0 文字数 3,208 最終更新日 2026.01.20 登録日 2026.01.20
18

詩「とある夜の路地裏にて」

詩「とある夜の路地裏にて」
※2022年9月の作品です。   読んでいただけると幸いです。 いいね、スキ、フォロー、シェア、コメント、サポート、支援などしていただけるととても嬉しいです。 これからも応援よろしくお願いします。       あなたの人生の 貴重な時間をどうもありがとう。
現代文学 完結 短編
感想数 0 文字数 585 最終更新日 2023.03.14 登録日 2023.03.14
19

粘着

突然呼び出された、僕。そして……。 ※ある小説の一部を切り取ったような掌編。 こんな雰囲気と流れが好きです。
ホラー 完結 短編
感想数 0 文字数 1,664 最終更新日 2019.07.24 登録日 2019.07.24
20

詩「線香花火」

詩「線香花火」
※2022年8月の作品です。   読んでいただけると幸いです。 いいね、スキ、フォロー、シェア、コメント、サポート、支援などしていただけるととても嬉しいです。 これからも応援よろしくお願いします。       あなたの人生の 貴重な時間をどうもありがとう。
現代文学 完結 短編
感想数 0 文字数 208 最終更新日 2023.03.08 登録日 2023.03.08
21

ミッドナイトデイズ

深夜。そこでは犯罪が起きやすい。 深夜を舞台とした短編集。
ミステリー 連載中 短編
感想数 0 文字数 1,678 最終更新日 2024.02.08 登録日 2024.02.08
22

夜明けを待つ歌

眠れない夜を共に過ごそう
感想数 0 文字数 653 最終更新日 2020.07.28 登録日 2020.07.28
23

工場注意報

工場注意報
 夜の工場で起こった惨劇。  そして生み出される悲劇。  工場内に響き渡る注意報の本当の意味とは…。
ホラー 完結 ショートショート
感想数 0 文字数 2,100 最終更新日 2018.11.18 登録日 2018.11.18
24

ただ今ヒツジ電話番

「夜中の2時に、部屋は真っ暗にして、ひとりで。」 「え、なにまって怖い話はやめて?」 「ちょっとまだ話してる途中なんだから最後まで聞いてよ。夜中の2時に、真っ暗な部屋で、ひとりで、電話をするの。」 「・・・電話?」 「そう。333。この番号にかけるとね。」 そこまで言って、彼女は急に表情を無くした。 「向こうの世界に、繋がるらしいよ。」 あなたは、夜が怖いですか。
ライト文芸 連載中 長編
感想数 0 文字数 55,159 最終更新日 2025.12.07 登録日 2025.05.25
25

夜に奏でる唄は私の中だけで

強い憧れ、取り戻したい時間、叶わない夢、これまでの後悔、願望。 知っている気持ちと知りたい気持ちを短い物語に込めます。
ライト文芸 完結 ショートショート
感想数 0 文字数 4,506 最終更新日 2019.10.24 登録日 2019.09.11
26

珈琲

珈琲
飲めば流れる。何もかも。 薄暗い喫茶店の中。紅茶と奴が相対している。珈琲の出る幕はない。すでにタイトルに出ているのだから。
ファンタジー 完結 短編
感想数 0 文字数 10,097 最終更新日 2024.08.16 登録日 2024.08.12
27

真夜中の朧月夜

真夜中の朧月夜
真夜中に出会ったのは不思議な少年だった──。 高校生の千野(せの)は、眠れない夜に家を抜け出して散歩をするのが日課だった。 ある朧月の夜に出会った人物によって、千野の運命は変わっていく──。
青春 完結 ショートショート
感想数 0 文字数 777 最終更新日 2023.04.30 登録日 2023.04.30
28

夜はたのしいかい

君と、夜と、それから、
恋愛 連載中 長編
感想数 0 文字数 2,825 最終更新日 2020.11.25 登録日 2020.11.23
29

ノック ノック

夜中にノックが聞こえても、絶対に出ちゃいけないよ。 それはお母さんでも、お父さんでもない。 ましてや、夜中に友達は来ない。 それは、こわいこわーい妖怪かもしれないよ。
絵本 完結 ショートショート
感想数 0 文字数 233 最終更新日 2022.05.09 登録日 2022.05.09
30

夜明けまでにキスをして

夜明けまでにキスをして
私たちは、曇り空の下、ある森で出会った。 その日から、運命は少しずつ動き出す。
ファンタジー 連載中 短編
感想数 0 文字数 8,553 最終更新日 2023.03.22 登録日 2023.03.19
31

昼夜逆転転生異世界生活〜夜に強いヴァンパイヤになりました

お決まりの展開で異世界に転生し、少し変わった事情で異世界の夜を中心に生活する事になった男性の話です。 ポジティブ思考の主人公を暖かく見守っていただけると幸いです。
ファンタジー 連載中 長編 R18
感想数 0 文字数 12,719 最終更新日 2018.12.18 登録日 2018.12.11
32

同じ夜空を見ている

同じ夜空を見ている
あの日見た死んだ星。一緒に見たあの空は、あれから何年も経った今でも同じ星だった。でも、見え方は違っていた。歳をとり、目が衰えてしまったせいか、君が隣にいないからか・・・定かではない。ただ、あの日見た時よりも悲しく切ない気がするのは何故だろう・・・
ライト文芸 完結 ショートショート
感想数 0 文字数 1,685 最終更新日 2021.12.28 登録日 2021.12.28
33

迷い猫 シティーナイトキャット

迷い猫 シティーナイトキャット
林檎の花言葉をご存知でしょか? その花言葉はまさに、 シティーナイトキャット、世間知らずの白猫ノアが夜の町を歩き回るうちに 経験したことにふさわしいでしょう。 ともとも林檎には花、木、実と部位によってそれぞれ違う言葉があります。 まず始めに、木の意味は名誉。 一章は主に、ノアのこれまでの過去や家庭環境についてで、受験によってノアの家族に対しての「名誉」を込めました。 次に、実の意味は誘惑と後悔。 林檎の実といえばアダムとイブを連想してしまいますよね。そこに登場する蛇。家出てしたノアの運命を変える元凶、スカウトマンを蛇に例えました。生活のためとはいえ金銭に目のくらんだノアの「誘惑と後悔」を込めて二章。 そして最後は、花の意味、優先と好み。 恋は盲目。ミケツさんのどこがノアの好みだったのでしょうか?最後までミケツさんのことを考えてしまうノア。やはり「優先と好み」が三章には当てはまります。 リアル過ぎないように、皆猫設定ですが、拡張現実だと思って楽しんで頂ければ幸いです。また感想も是非聞かせ下さい。
ファンタジー 連載中 長編
感想数 0 文字数 1,167 最終更新日 2021.06.18 登録日 2021.06.18
34

宵の帰るさ

ある夏の日の夜。いつもと変わらぬ塾の帰るさ、私は通行を禁止されている近道を行くことに決めた。近道は暗然とした森の木々に覆われており、人の気配がなかった。私は引き返すべきだった。後悔の念は今もなお胸にわだかまり続け、しかし時の移ろいはもはや事実と夢想との境を曖昧にさせてしまった。ゆえに、これより記す物語に確乎たる実正はない。心して見られよ。
ホラー 完結 ショートショート
感想数 0 文字数 3,754 最終更新日 2017.12.23 登録日 2017.12.23
35

詩「静寂の体の中にある、」

詩「静寂の体の中にある、」
※2022年12月の作品です。 読んでいただけると幸いです。 いいね、スキ、フォロー、シェア、コメント、サポート、支援などしていただけるととても嬉しいです。 これからも応援よろしくお願いします。 あなたの人生の 貴重な時間をどうもありがとう。
現代文学 完結 短編
感想数 0 文字数 435 最終更新日 2023.04.25 登録日 2023.04.25
36

コチラ、たましい案内所!

コチラ、たましい案内所!
――手違いで死んじゃいました。 小学五年生の七瀬こよみの死因は、事故でも事件でもなく書類上のミス!? 生き返るには「たましい案内所」略してタマジョとして働くしかないと知ったこよみは、自分を手違いで死に追いやった閻魔見習いクロノとともにタマジョの仕事を始める。 表紙:asami様
児童書・童話 完結 長編
感想数 1 文字数 57,326 最終更新日 2019.06.30 登録日 2018.12.30
37

満天の星空[1分まとめ]☆

風の強かった日は 夜の空気が澄んでいる。
ライト文芸 連載中 ショートショート
感想数 0 文字数 11,415 最終更新日 2023.08.18 登録日 2022.07.24
38

「通り××」

夜の駅の階段。 気を付けないと、あなたの身にも降りかかるかもしれない。 そんな恐怖体験。 あなたは耐えられますか?
ホラー 完結 ショートショート
感想数 0 文字数 998 最終更新日 2020.09.04 登録日 2020.09.04
39

はうとゅーえんじょいおぶとろぴかるないと

はうとゅーえんじょいおぶとろぴかるないと
クーラーが故障し、暑い夜を一晩乗り切らなくてはならなくなった女の子二人のお話。
大衆娯楽 完結 短編
感想数 0 文字数 6,959 最終更新日 2023.06.20 登録日 2023.06.14
40

必要最小限の優しさ -二本の傘と一つの判断

 夜明け前の温泉街は、雨の匂いと湯気で肺がぬるくなる。アスファルトに赤と青が跳ね、反射ベストの蛍光を細かく砕く。無線が胸骨の上で震え、名前を呼ぶたび心臓が一回、律義に返事をする。  長峰トンネルで停車車両、運転手意識レベル低下。排気の逆流かもしれない——。  口の中に金属の味が広がったのは、マスクのゴムと不安の擦れ合いのせいだ。トンネルの口は巨大な獣の喉みたいで、湿った冷気と排気が少しずつ吐き出されてくる。見えない火の匂いがする。一酸化炭素。目に見えないものほど、人は後回しにする。  私たちは“必要最小限”を合言葉にしている。触れるのは脈と皮膚温、問うのは名前と痛みの場所、渡すのは呼吸と止血だけ。余計な励ましは、時に判断を濁らせる。けれど、手袋越しの鼓動だけは、どうしても嘘がつけない。  車内は曇った窓に外の雨が滲み、運転席の男の顔色は紙のようだ。相棒が声をかける。「聞こえますか」男は浅くうなずいた。排気口は潰れて、黒い煤がバンパーの下に濡れた線を作っている。ビニールの匂い、消毒液の鋭さ、タイヤが水を割る遠い音。世界は役割ごとに層をなして、私の耳に順番を付けて落ちてくる。  酸素を当て、呼吸を飼い慣らしていく。男の胸がわずかに高くなり、低くなる。私は数える。吸って、吐いて、二、三。指先のパルスオキシメータが波を描き、相棒の額に雨粒が細い道を作る。ここでは希望も数値になる。数えられるものだけが、いったんの真実だ。  トンネルの奥から、遅れてパトのライトが滲んでくる。赤が壁に当たって、濡れた岩肌の皺が一瞬だけ浮き彫りになる。その皺のどれかを、私は昔知っている気がした。二本の傘の影。夜勤明けに並んで歩いた雨の朝。思い出は、現場の匂いを嗅ぐと、勝手に箱を開ける。  「戻ろう」相棒が合図する。男は自力で立てる。必要最小限が、今夜はぎりぎり届いたらしい。救急車のドアが閉まり、世界は再び雨の音で満たされる。私は手袋を外す。指の皮膚に残った体温が、雨に薄められて消えていく。  何かを助けるたび、何かを手放す。掟のような均衡だ。私たちはその上で歩く。次の無線が鳴るまでのわずかな間、庁舎前のベンチで二本の傘をひらく。一本は私のため、もう一本は、いつも誰かのため。  必要最小限の優しさとは、濡れないように傘を差し出すことではなく、濡れながら隣に立ち続けることだ、とまだ言えないままに。
恋愛 完結 短編
感想数 0 文字数 27,305 最終更新日 2025.09.12 登録日 2025.09.12
109