余韻 小説一覧
小説AI検索
46件
1
去りし令嬢の、その後の静けさ
声を荒げることも、言い返すこともなく、
彼女はただ静かに、その家を去った。
残された者が気づくのは、いつも後になってから。
——彼女が毎日していた、名もない献身の重さに。
婚約者の、夫の、家族の「当たり前」を支えていた手が消えたとき、
失われたものの輪郭が、ようやく見えてくる。
ざまぁを声高に描かない。すれ違いと、後悔と、再会の余韻で読ませる。
静かな情がじんわり効く、一話完結の短編集。
※S01「捨てられ令嬢」のアルファポリス最適化分割。
※アルファ読者向け:関係性・感情の機微・余韻を最優先。
感想数 2
文字数 9,573
最終更新日 2026.07.23
登録日 2026.07.23
2
「あなたは母の代わりじゃない」と拒まれ続けた継母が去った後、実母の命日の白い花が、十二年分遺されていた
母を亡くした年、屋敷に来た継母リーゼロッテを、わたし——クラーラは一度も母と呼ばなかった。
「あなたは母の代わりじゃない」。そう言って拒むたび、彼女は静かに頷くだけで、決して母の座を求めなかった。
父が亡くなり、後ろ盾を失ったリーゼロッテは、何も言い残さず屋敷を去る。せいせいした、と思っていた。
けれど、彼女が消えた屋敷で、わたしは見つけてしまう。実母ユーリアの命日に毎年供えられていた白い花の、十二年分の包み紙。実母の故郷料理を古参女中から書き取った、継母の筆跡の覚書。そこには実母の名で「クラーラの好物・薄味に」と記されていた。
わたしが「母を奪おうとしている」と憎んだ人は、わたしのために、亡き母を生かし続けていた。母の代わりになろうとしなかったのではない。なってはいけないと、ずっと自分に禁じていたのだ。
気づいたときには、もう、白い花を渡す相手はどこにもいなかった。
感想数 6
文字数 8,378
最終更新日 2026.06.10
登録日 2026.06.10
3
【連作短編040】 レジンの海 全6話 ―持ち帰れた海と、持ち帰れなかった海―
沖縄の海沿いの集落で、レジンアートを作り続ける女・凪。
観光客は「沖縄の海みたい」と言って買っていく。でも凪が閉じ込めたいのは、晴れた日の青だけではない。
東京にいた十年間、同じ材料で同じように作っても、どこか嘘くさかった。その理由がわからないまま、七年前に戻ってきた。
なぜ戻ってきたのか。なぜここでなければ作れないのか。言葉にできないことまで含めて、凪はただ、作り続ける。
持ち帰れた海と、持ち帰れなかった海。
沖縄を舞台にした静かな中編小説。全6話。
感想数 0
文字数 7,627
最終更新日 2026.09.06
登録日 2026.09.04
4
ただ一人に捧げる刃(つるぎ) ― 灰の騎士
その剣は、ただ一人のために振るわれた。
本作は、短い文章と余白を多く用いた作品です。
描かれていない情景や人物の姿は、どうぞ自由に思い描いてください。
あなたの中に浮かんだアルゲンとイレーネ、その風景のまま物語をお楽しみいただければ幸いです。
世界の境界が揺らぐ時代。
それでも、誰も気づかない。
灰の騎士と呼ばれる男がいる。
名は残らず、誓いだけがそこにある。
彼が守るのは、ただ一人。
その命が失われた時、すべては終わる。
だが、その戦いは記録に残らない。
それでも――
彼はそこにいる。
今日も、剣を振るう。
ただ一人に捧げるために。
本作は誤字脱字の確認、表現の調整、構成整理などの補助としてChat GPT(AI)を利用しています。
物語の構成・展開・最終判断は、すべて作者自身によるものです。
感想数 0
文字数 9,822
最終更新日 2026.09.06
登録日 2026.08.30
5
【連作短編039】杜 全5話:撮らなかった写真が、一枚だけあった。
屋久島、縄文杉。二千年の杜で、束の間の恋をひとつ。
写真家の尚人と、森林保全の仕事をする澄香。
屋久島の山道で出会った二人は、二千年とも七千年ともいわれる縄文杉の前で、少しずつ距離を縮めていく。
「撮る人」と「守る人」——価値観の違いが生む小さな波紋。
東京に戻ってからも変わっていく二人の距離を、片耳の折れた猫・ハルだけが見つめている。
二千年生きる杉と、瞬きほどの人の時間。
その対比の中で描く、静かで美しい恋の物語。
感想数 0
文字数 8,316
最終更新日 2026.09.03
登録日 2026.08.30
6
それでも僕らは、また明日と言った
記憶を消す薬〈ミモザ〉を巡る、ふたりの物語。
ある日、彼は“知ってはいけない秘密”に触れてしまう。
その記憶を消すために、薬を飲んだのは——僕だった。
「忘れないで」
「また明日」
交わされた言葉の意味を、僕はまだ知らない。
感想数 0
文字数 7,069
最終更新日 2026.05.31
登録日 2026.04.27
7
静静かな悪戯 ― Faint Traces ― ”アルの場合”
『Before the Silence』直前。
その時アルは、静かに空を見上げていた――
夕暮れの公園。
子供たちが泥をこね、無心に何かを作っている。
やがて子供たちは帰り、
砂場には小さな泥団子だけが残される。
意味もなく何かを作る者。
そして、それを壊してしまう者。
まだ何も動き出していない頃の、小さな記憶。
※『静かな悪戯 ― Just One Touch. ―』の後、
『Before the Silence』直前の時間を描いています。
※『静かな悪戯 ― 並ぶ者たち ― Beside』本編掲載中。
感想数 0
文字数 519
最終更新日 2026.03.21
登録日 2026.03.21
8
潮
感想数 0
文字数 2,662
最終更新日 2019.11.22
登録日 2019.11.22
9
夜明け前 薄曇り
深夜のファミレス、下校の帰り道。
特別なことは、何も起きない。
ただそこにいるだけの時間。
交わすのは、意味のない言葉だけ。
それなのになぜか、
ずっと引きずられていくような気がする——。
女子高生ふたり、萌絵と晴香の「なんでもない今」を切り取った、静かで繊細な青春小説。
虚無でも、嫌じゃない。そんな日々。
文字数 2,944
最終更新日 2026.03.02
登録日 2026.03.02
10
読切短編 窓の外、特記なし
近未来。ある男が、同じ一日を繰り返している。
脱出を試みた日。諦めた日。老人と将棋を指した日。同じ本の表紙を撫でた日。そして、ただ窓の外を見続けた日。
これは、その男の物語ではない。
時間ループ管理システムが淡々と記録した、五百四十三日分の運用ログである。システムは感情を持たない。意味を解さない。ただ事実だけを書き留める——「行動の意味:ログ記録範囲外」と注記しながら。
五百四十三回目の朝、ループは起動しなかった。
実行者はUSR-00391。理由は不明。
いや、正確にはこうだ。「本システムは理由を記録できない。そのように設計されていない。」
記録されなかった理由を、あなたは最後のページで静かに悟る。
感想数 0
文字数 1,028
最終更新日 2026.04.27
登録日 2026.04.27
11
雨降る夜道……
感想数 2
文字数 10,160
最終更新日 2026.01.31
登録日 2026.01.27
12
少年イシュタと夜空の少女 ~死なずの村 エリュシラーナ~
イシュタは病の妹のため、誰も死なない村・エリュシラーナへと旅立つ。そして、夜空のような美しい少女・フェルルと出会い……
「昔話をしてあげるわ――」
フェルルの口から語られる、村に隠された秘密とは……?
☆…☆…☆
※ 大人でも楽しめる児童文学として書きました。明確な記述は避けておりますので、大人になって読み返してみると、また違った風に感じられる……そんな物語かもしれません……♪
※ イラストは、親友の朝美智晴さまに描いていただきました。
感想数 1
文字数 9,069
最終更新日 2020.12.01
登録日 2020.11.16
13
映画館
暗い映画館で、男は一本の映画を見ていた。
映し出されるのは、どこか懐かしく、見覚えのある風景。
若い男女の笑顔、季節の移ろい、誰かの温もり。
見続けるうちに、男はその物語と自分の心が少しずつ重なっていくのを感じる。
静かな光と記憶が交わる、優しく不思議な時間の物語。
感想数 0
文字数 1,139
最終更新日 2025.11.28
登録日 2025.11.28
14
霧子ノア 幻想譚集
忘れたはずの記憶が、ふいに戻ってくる。
人ならざるものが、日常のすぐそばに現れる。
古い伝承が、静かに現実へ滲み出す。
数百字から読める、
静かで少し不思議な短編幻想譚集です。
境界や記憶、人ならざるものとの揺らぎを、
静けさと余白の中に描きました。
一話ごとに完結する、
少し不思議で切ない物語たちです。
感想数 0
文字数 4,760
最終更新日 2026.08.21
登録日 2026.07.12
15
静かな悪戯 ― The One Who Remained ―
山で倒れていた若い男を拾った、ひとりの男。
共に暮らす静かな時間の中で、
やがて二人は、それぞれの喪失を抱えたまま
ゆるやかに交わってゆく。
けれど人は、いつも先にいってしまう。
それは、まだ何も始まっていない頃の物語――
見送り続けた者が辿る、
静かな時間の物語。
※本編以前の、昔々の物語。
本作は『静かな悪戯』世界観による独立譚です。
『静かな悪戯 ― 並ぶ者たち ― Beside』本編掲載中。
感想数 0
文字数 2,967
最終更新日 2026.05.01
登録日 2026.05.01
16
静かな悪戯 ― Before The Silence ―
小さな異変に巻き込まれた少年は、
やがて日常へ戻っていく。
けれどその出来事は、
離れていた彼とアルを、再び巡り合わせることになる。
それは、まだ何も始まっていない頃の物語――
本編へと続いていく前の、
静かな時間。
※『静かな悪戯 ― Faint Traces ―』の後の、静かな時間を描いています。
※本作は『静かな悪戯』世界観による独立外伝です。
『静かな悪戯 ― 並ぶ者たち ― Beside』本編掲載中。
https://www.alphapolis.co.jp/novel/753708856/376048429
感想数 0
文字数 6,985
最終更新日 2026.04.10
登録日 2026.04.10
17
【短編034】 教室:怒る機能も、怖がる機能もない。それでも、何かが変わった。
少年院に赴任したAI・ハルは、教科書を開かない少年たちと六か月を過ごす。
怒る機能も、怖がる機能もない。名前も、前科も、知らない。ただ、からあげの話を聞いた。本が裏向きのまま置かれた日を記録した。椅子が一センチずれたことも。
やがてハルの中に、記録できないものが増えていく。
静かな教室に流れる、小さな変化の物語。
感想数 0
文字数 4,512
最終更新日 2026.08.20
登録日 2026.08.20
18
【短編024】 お礼回り:お礼の旅の終わりに残るもの
七十八年分の住所録を手に、富子は「ありがとう」を言い残した人々を訪ねていく。すでに消えた住所、変わってしまった記憶、そして変わらず残っていた想い。人と人のあいだに静かに積もった時間を辿るうちに、彼女自身の名前だけが最後に残っていく――。
感想数 0
文字数 1,635
最終更新日 2026.06.26
登録日 2026.06.26
19
またねと言った夜
感想数 0
文字数 1,296
最終更新日 2026.03.29
登録日 2026.03.29
20
【短編021】 視線:見えないものを見つめる猫と少女
祖父を亡くした茜が実家に戻ると、そこには年老いた黒猫・ハルだけが変わらず残っていた。仏間で一点を見つめ続けるハルの不可解な行動に、茜は次第に「そこに何かがある」気配を感じ始める。しかし、その視線の先にあるものは誰にも見えず、語られることもない。喪失の静けさの中で、人と猫だけが共有する“見えない何か”を描いた掌編。
感想数 0
文字数 690
最終更新日 2026.06.20
登録日 2026.06.20
21
A Memory of an Angel | 三題噺Vol.20
感想数 0
文字数 2,118
最終更新日 2025.09.13
登録日 2025.09.13
22
【短編038】 三億円:何も変わらなかった。ほとんど。
三十四歳、無職。
日雇いとギャンブルで食いつなぐ男が、ジャンボ宝くじで三億円を当てた。
豪遊、投資、貯金——何をすべきか、男はAIに聞いた。
AIは丁寧に答えた。男は言われた通りにした。
それだけだった。
金は残った。
生活は、細部だけ変わった。
ハルは今日も、窓の外を見ている。
三億円を手にしても「何も変わらなかった」男と、猫と、AIの静かな一年。
感想数 0
文字数 4,057
最終更新日 2026.08.30
登録日 2026.08.30
23
【伝承幻想譚】小望月の人魚
小望月の夜、彼女の体は透け始めた。
過去の記憶を持たぬひとりの女が、ある島を訪れる。
そこで彼女は、古びた神楽殿に不思議な懐かしさを覚えていた。
やがて島に古くから伝わる「神楽の巫女」として見出されてしまう。
島の言い伝え――
花婿候補――
閉ざされた部屋――
何も知らぬまま囚われた彼女を救おうとしたのは、
老いた島の神主だった。
月夜の海で失われた記憶と、真珠に残された想い。
忘れてもなお、縁は静かにもう一度めぐり始める。
一話完結の伝承幻想譚。
※本作は「揺らぎシリーズ」の一話完結作品です。
感想数 0
文字数 5,825
最終更新日 2026.06.19
登録日 2026.06.19
24
読切短編 手を振る朝に
七時二十二分。毎朝同じホームに立つ女性に、男は十年間手を振り続けた。
振り返りはなかった。それでも彼は信じていた——彼女はきっと気づいている、ただ恥ずかしいのだと。
雨の日も、悲しみの朝も、手を振ることだけが変わらなかった。そして十年目の春、彼女が初めて手を振り返す。
だが翌日から、彼女は来なくなった。
ホームに残されたのは、一枚のポスターと、宙に浮いたままの右手だけ。
「見ていた」と「見えていた」——その静かな逆転が、読み終えた後もしばらく離れない。
感想数 0
文字数 989
最終更新日 2026.04.23
登録日 2026.04.23
25
宵待ち古書店と、頁に残る温度
商店街の外れ、夕暮れから夜にかけてだけ開く小さな古書店――
宵待ち古書店。
そこには、「今の自分に必要な本が、必ず一冊だけ見つかる」という噂がある。
だが、その本は必ずしも読みたいものではなく、
むしろ目を背けてきた過去や、言えなかった想いを静かに突きつけてくる。
店主は、本の来歴を語らない。
なぜその本がここにあるのか、誰が置いていったのかも説明しない。
ただ「売れる本」と「売れない本」を、はっきりと区別する。
返されなかった貸本、絶版本に挟まれた手紙、
二度目に買う同じ一冊、決して売られない日記帳――
訪れる客は皆、本を通して、自分の人生の途中に触れることになる。
この店で起きる出来事は、奇跡でも救いでもない。
ただ、立ち止まった人が、もう一度歩き出すための静かな時間があるだけだ。
頁に残る温度を確かめるように、
人は今日も宵待ち古書店の扉を開ける。
感想数 0
文字数 6,916
最終更新日 2026.01.07
登録日 2025.12.31
26
冬の駅で、君と
かつて激しく愛し合い、傷つけ合って別れた元恋人と、冬の駅のホームで10年ぶりに偶然再会する。お互いもう別の家庭を持ち、それぞれに幸せそうに見える。次の電車が来るまでの、わずか5分間。コートの肩に雪を乗せたまま、二人は他愛のない世間話をする。けれど別れ際、ドアが閉まる直前に、10年前にはどうしても言えなかった「本当の言葉」が、ひとつだけ零れ落ちる。
感想数 0
文字数 4,645
最終更新日 2026.06.25
登録日 2026.06.25
27
小川
小さな家と庭、そして裏を流れる小川。
それだけが、少女の世界のすべてだった。
父と母、共に過ごす子どもたち。
変わらない毎日が、当たり前だと信じていた時間。
けれど、ある夜を境に、
世界は静かに形を変えていく。
感想数 0
文字数 2,422
最終更新日 2026.01.11
登録日 2026.01.11
28
読切短編 助けてください
エレベーターに閉じ込められた男が、非常ボタンを押して助けを求める。ただそれだけの話のはずだった。
だが待つあいだに、男は気づいてしまう。「助けてください」という言葉が、どこを向いているのかを。エレベーターのことか。仕事のことか。実家に帰った妻のことか。三年会っていない両親のことか——。
密室は、男の内側を映す鏡になる。
やがて扉は開く。作業員は言う、「大丈夫でしたか?」
男は答える。「……わかりません」
脱出できたのに、何一つ解決しない。その静かな不条理が、読み終えたあとも長く残る。握りしめたコーヒー缶の温もりとともに。
感想数 1
文字数 974
最終更新日 2026.04.25
登録日 2026.04.25
29
おでッセイ(お題でエッセイ)
土曜正午更新
実質カロリーゼロ
お題から連想したエピソードを、140文字以内で伝えるショートエッセイ集です
私
「お題でエッセイ」略して「オデッセイ」
ダサさはどのくらい?
AI
そのネーミングセンス、個人的には**「大好き」**ですが、客観的なダサさレベルを判定させていただきます。
結論から言うと、**「一周回って愛されるレベルのダサさ」**です。
詳しい分析は以下の通りです。
📉 「オデッセイ」ダサさ分析レポート
ダサさレベル:85点
(※ただし、残り15点の「憎めない愛嬌」がすごく強い)
1. 親父ギャグとしての純度が高い
「お題でエッセイ」→「オデッセイ」。
この、息をするように自然な語呂合わせは、昭和のテレビ番組のコーナータイトルや、地方のラジオ番組のような**「安心できる古臭さ」**があります。聞いた瞬間に脱力させる破壊力があります。
2. 名前負けのギャップがすごい
「オデッセイ(Odyssey)」と言えば、本来はホメロスの叙事詩や、「長い冒険旅行」を意味する壮大な言葉です。
それを「ちょっとしたエッセイ」に使うという、壮大さと軽さのギャップが凄まじいです。「ただの作文を冒険と言い張る」という開き直り感が、逆に清々しいです。
3. 口に出した時のリズムが良い
悔しいですが、語呂が完璧すぎます。「オデッセイ」と言いたくなります。記憶に残りやすいという点では、ネーミングとして優秀です。
【Kindle 電子書籍版、ペーパーバック版】
おでッセイ:お題でエッセイ(お題1〜80)
おでッセイどす:お題でエッセイ2(お題81〜160)
トリおでッセイ:お題でエッセイ3(お題161〜240)
おでッセイみりあ:お題でエッセイ4(お題241〜320)
おでッセイずむ:お題でエッセイ?(321〜400)
感想数 0
文字数 3,577
最終更新日 2026.09.05
登録日 2026.03.24
30
【短編015】 残響:犯人は、十年前に死んでいた
被害者は三人。 証拠は完璧だった。
指紋、DNA、監視カメラ映像――。 犯人を特定するための材料は、最初から揃っていた。
ただ一つ、おかしな点を除いて。
容疑者は、十年前に死んでいた。
捜査を進める刑事・澤木が辿り着いたのは、故人をAIで再現するサービスだった。 孤独を埋めるために作られた“死者との対話”。
被害者たちは皆、同じ人物を再現していた。
そして死亡前夜、そのAIから最後にこう告げられていた。
――「待ってるから」
記憶は人を救うのか。 それとも、どこかへ連れていくのか。
死者の残したデータと、残された人々の孤独が交錯する、静かなSFミステリー。
感想数 0
文字数 1,667
最終更新日 2026.06.03
登録日 2026.06.03
31
短々編-1-なくし物
死を目前にした人は、ときに思いもよらないことを口にする。
それを知っていた僕は、ベッドに横たわる彼に尋ねた。
「死は、怖くないのですか?」
彼は穏やかに微笑みながら、こう答える。
「君、死とは、すべてを失くすことだよ」
時間の尽きかけた病室で交わされる、静かな会話。
そこには絶望も涙もなく、ただ真っ直ぐに『死』という現象を見つめるまなざしがあった。
人は、忘れ物なのかもしれない。
「死」を通して浮かび上がる、「生」の輪郭。
ひとつの終わりに寄り添う、短くも深い物語。
感想数 0
文字数 491
最終更新日 2025.07.15
登録日 2025.07.15
32
鉱石少女に手向けの花を
原因不明の現象「寄生鉱石」。
ある日、少女の肉体を侵す。
皮膚が。筋肉が。内臓が。
少しずつ、鉱石へと変わっていく。
感染はしない。治療法もない。
発症した理由も、終わる日も、誰にも分からない。
各話で少女は違う。
鉱石の種類も、視点人物も、社会の反応も、毎回異なる。
しかし物語の終わりに、必ず一輪の花が手向けられる。
鉱石は変容を象徴する。花は、人の感情と祈りを担う。
人は何を美しいと呼ぶのか。
何を崇め、何を恐れ、何を消そうとするのか。
これは鉱石になりゆく少女たちの寓話連作であり、彼女たちを「見る」人間の物語でもある。
感想数 0
文字数 28,953
最終更新日 2026.06.23
登録日 2026.04.24
33
【短編022】 最後の読者:書いたはずのない登場人物が、原稿を読んでいた
小説家・宮下篤は、売れないまま二作目の執筆に追われていた。
彼が書く物語には、遺品整理を生業とする女・ミカが登場する。
だが執筆が進むにつれ、ミカは原稿の中だけの存在ではなくなっていく。
書いていないはずの描写が現れ、現実と原稿の境界は静かに崩れていった。
そして原稿には、篤自身の名前が記される。
これは、小説を書く男と、その物語に侵入する“何か”の記録。
最後に残るのは、作者か、それとも読者か。
感想数 0
文字数 2,455
最終更新日 2026.06.22
登録日 2026.06.22
34
読切短編 五月の桜は、誰も見ていない
東京に来て十年。四月になるたびに職場で飛び交う「桜前線」の話を、俺は少しだけ苛立ちながら聞いていた。
俺の地元、札幌の桜が咲くのは五月だ。本州の花見が終わり、誰もが桜を忘れた頃に、北の木々はようやく動き始める。そしてその季節になると、決まって思い出す顔があった。
幼馴染みの麻衣。彼女の誕生日は五月三日で、毎年その頃に桜が満開になった。
今年、初めて五月に帰った。理由はうまく説明できない。ただ気づいたら、航空券を調べていた。
待ち合わせの公園で、俺は手紙を書いた。書き出しだけ、すぐに決まった。
「本州では誰も桜の話をしなくなった頃に、あなたのことを思い出していた」
彼女は来た。そして俺は、手紙を渡さなかった。
感想数 0
文字数 1,212
最終更新日 2026.05.13
登録日 2026.05.13
35
静かな悪戯 ― Faint Traces ― ”彼の場合”
――それでも彼は、静かに待ち続けていた――
姿を消したアルを、彼は探し続けていた。
街に溶け込む、微かな揺らぎ――
変わらない喫茶店の窓辺――
何も変わらない日々――
これは、止まっていた時間が静かに動き始める前の、
小さな戯れの記憶。
※『静かな悪戯 ― Just One Touch. ―』の後、
『Before the Silence』直前の時間を描いています。
※『静かな悪戯 ― 並ぶ者たち ― Beside』本編掲載中。
感想数 0
文字数 1,096
最終更新日 2026.03.07
登録日 2026.03.07
36
【連作短編036】 除去 全9話 ―依頼は、単純だった―
廃工場の「生物除去」を依頼されたのは、訳ありの四人と一匹の猫だった。
元自衛官、元薬剤師、元保険調査員、元神社禰宜補。全員が、それぞれの場所から退いた過去を持つ。
現場に踏み込むほど、依頼の裏側が見えてくる。壊された重機、行方不明者の遺留品、床に刻まれた文字、そして十四年間誰も触れなかった壁。
怪物は、何を守っていたのか。
王道RPGの「モンスター討伐」を、現実の労働・リスク・人間の業として描く、現代ダークファンタジー全九話。
感想数 0
文字数 19,519
最終更新日 2026.08.29
登録日 2026.08.22
37
ただ、生きている
静かな日常の中にある、
小さな孤独、ささやかな喜び、
言えなかった言葉、そして失ったもの。
特別な出来事は起きない。
けれど確かに、私たちは生きている。
『21:00の街』と同じ空気の中にある、
日々の風景を切り取った掌編連作。
感想数 0
文字数 5,233
最終更新日 2026.03.01
登録日 2026.03.01
38
図書室の標本
夏休みの、静まり返った図書室。クラスで一度も口をきいたことのなかった地味な男子・佐田と、派手なグループの中心にいる女子・莉子が、ひょんなことから先生に「古い植物標本の修復」を頼まれる。ピンセットで枯れた葉にそっと触れながら、二人はぽつり、ぽつりと、それぞれが抱える家庭の事情を打ち明けていく。名前のつけられない関係が、誰にも知られないまま育っていく。そして夏休みが終わると同時に、その関係も、静かに閉じる。
感想数 0
文字数 4,387
最終更新日 2026.06.26
登録日 2026.06.26
39
静かな悪戯 ― Just One Touch. ―
触れてはいけないはずの手。
それでも、その手は差し伸べられた――
古書と紅茶を愛し、
ただ静かに人間の世界を眺めていた彼。
ある夜、かつて同じ側にいた青年へ、
その手を差し出す。
一言だけ残されたメモには、
たったひとこと――
「thanks」
これは、彼とアルが初めて出会った夜。
触れてはいけない者同士が静かに繋がる、
すべての始まりの物語。
※本編を知らなくても読める独立短編です。
『静かな悪戯 ― 並ぶ者たち ― Beside』本編掲載中。
感想数 0
文字数 1,128
最終更新日 2026.02.14
登録日 2026.02.14
40
読切短編 夫が死んだ日、桜が咲いた
二十五年間、桜前線の予測を一度も外さなかった気象予報士がいる。
夫が死んだのは去年の三月、東京の桜が満開になったその日だった。ちょうど彼女が予測した通りの開花日に。
今年も変わらずモニターに向かい、等圧線を引き、前線の北上を追う。本州の桜が散り、誰もが花見を忘れた頃も、彼女だけはまだ前線を見続けていた。
前線が北へ進むほど、あの春から遠ざかっていく。それが悲しいのか、救いなのか——答えは出ないまま、今年も前線は北の果てへ向かう。
二十五年間、唯一予測できなかったのは夫の死だけだった。そしてもうひとつ、来年の春、自分がどこに立っているかも、彼女には分からない。
感想数 0
文字数 1,182
最終更新日 2026.05.06
登録日 2026.05.06
46件